就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者で約3割!

 

先日、厚生労働省から、「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」が公表されました。

若年層の失業率は全年齢と比べて高いものの低下傾向にあります。また、新規学卒者の就職率も改善が進んでいますが、早期に離職してしまうことも少なくないようです。

 

1、「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」

(1)学歴別就職後3年以内離職率

新規高卒就職者の約4割、新規大卒就職者の約3割が就職後3年以内に離職しています。

【大学卒】

32.0%(前年比0.2ポイント増加)

うち、1年目が11.4%、2年目が10.6%、3年目が10%

【短大等卒】

42.0%(前年比0.5ポイント増加)

うち、1年目が17.5%、2年目が12.4%、3年目が12%

【高校卒】

39.2%(前年比0.1ポイント減少)

うち、1年目が17.4%、2年目が11.7%、3年目が10.1%

【中学卒】

62.4%(前年比1.7ポイント減少)

うち、1年目が41.1%、2年目が13.6%、3年目が7.7%

 

(2)大学卒及び高校卒の事業所規模別就職後3年以内離職率

大学卒及び高校卒とも、企業規模が小さいほど就職後3年以内離職率が高くなっています。

【大学卒】

1,000人以上規模:25.0%

500~999人規模:29.6%

100~499人規模:32.2%

30~99人規模:39.3%

5~29人規模:49.7%

5人未満規模:57.7%

【高校卒】

1,000人以上規模:26.0%

500~999人規模:33.1%

100~499人規模:37.6%

30~99人規模:46.0%

5~29人規模:55.4%

5人未満規模:64.9%

 

(3)大学卒及び高校卒の産業別就職後3年以内離職率(「その他」の業種を除く。)

離職率の高い上位5産業をみると、大学卒及び高校卒のいずれでも、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」「小売業」で高くなっています。

【大学卒】

「宿泊業・飲食サービス業」(50.4%、

「生活関連サービス業・娯楽業」(46.6%)

「教育・学習支援業」(45.9%)

「医療、福祉」(39.0%)

「小売業」(37.4%)

【高校卒】

「宿泊業・飲食サービス業」(62.9%)

「生活関連サービス業・娯楽業 」(58.0%)

「教育・学習支援業 」(58.0%)

「小売業」(49.4%)

「不動産業、物品賃貸業」(46.7%)

 

2、事業主が青少年の職場への定着促進のために講じるべき措置

「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」においては、事業主が青少年の職場への定着促進のために講ずべき措置として、次のものが掲げられています。

(1)雇用管理の改善に係る措置

①賃金不払い等の労働関係法令違反が行われないよう適切な雇用管理を行うこと。

②職場に定着し、就職した企業で安定的にキャリアを形成していくため、青少年の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するよう雇用管理の改善に努めること。

③能力・資質、キャリア形成等に係る情報明示、不安定な雇用状態にある青少年の正社員登用等、労働法制に関する基礎知識の付与に努めること。

 

(2)職業能力の開発及び向上に係る措置

次に掲げる措置等を講ずるよう努めること

・OJT(業務の遂行の過程内において行う職業訓練)及びOFF-JT(業務の遂行の過程外において行う職業訓練)を計画的に実施すること。

・実習併用職業訓練を必要に応じ実施すること

・青少年の希望等に応じ、青少年が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めるために、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度、企業内におけるキャリアパス等についての必要な情報の提供、キャリアコンサルティングを受ける機会の確保その他の援助を行うこと。

 

3、若者雇用促進法に基づく「ユースエール認定制度」

「ユースエール認定制度」とは、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況等が優良な中小企業(常時雇用する労働者が300人以下)を厚生労働大臣が認定するものです。

認定企業の情報発信を後押しすること等で、企業が求める人材の円滑な採用を支援し、求職中の若者とのマッチング向上を図ることが目的とされています。

この認定を取得すると、ハローワーク等で重点的PRの実施、若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算、本政策金融公庫による低利融資、公共調達における加点評価などといったメリットがあります。

 

4、若者を貴重な戦力に!

就職後3年以内離職率に影響を及ぼす要因の一つには、卒業時の就職環境があり、新規学卒者就職率が低かった年は、離職率が高くなる傾向があるといわれています。

とはいえ、人手不足が深刻化する昨今、採用した従業員が、会社の戦力となる前に離職してしまうことは、事業主にとっても従業員本人にとっても大きな損失です。

若者の採用や人材育成については、行政のサポートや助成制度などもありますので、なかなかよい人材が集まらないと悩んでいる前に、今ある従業員が定着し、その能力を発揮できるよう、職場環境の改善に取り組んでみませんか?

2019年11月5日