65歳までの雇用確保措置の進展等を踏まえて、令和7年4月1日施行の雇用保険法の改正により、
高年齢雇用継続給付の支給率が引き下げられました。
1、高年齢雇用継続給付とは?
高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用の継続を援助・促進することを目的として、
60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の
一定の雇用保険の一般被保険者に対して給付金を支給する制度です。
高年齢雇用継続給付には、基本手当(再就職手当など基本手当を支給したとみなされる給付を含みます。
以下同じ。)を受給していない方を対象とする「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給し、
60歳以後に再就職した方を対象とする「高年齢再就職給付金」とがあります。
2、高年齢雇用継続給付の支給要件等
(1)支給要件
高年齢雇用継続給付の支給を受けるためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
①60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
②被保険者であった期間が5年以上あること。
③原則として60歳時点と比較して、60歳以後の賃金(みなし賃金を含みます。)が
60歳時点の75%未満となっていること。
④高年齢再就職給付については、再就職の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。
(2)支給期間
【高年齢雇用継続基本給付金】
被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月までですが、各暦月の初日から末日まで
被保険者であることが必要です。
この期間内にある各暦月のことを「支給対象月」といいます。
【高年齢再就職給付金】
再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が200日以上のときは、
再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで、100日以上200日未満のときは、
再就職日の翌日から1年です。ただし、被保険者が65歳に達した場合は、その期間にかかわらず、
65歳に達した月までとなります。
また、各暦月の初日から末日まで被保険者であることが必要であることや、
その月のことを支給対象月という点については、高年齢雇用継続基本給付金と同じです。
3、高年齢雇用継続給付の支給額
支給額は、支給対象月ごとに、「その月に支払われた賃金額×支給率」により算定されます。
「支給率」は、その月に支払われた賃金の低下率に応じて定められており、低下率が逓増する程度に応じ、
一定の割合で逓減するように定められています。
「低下率」は、「支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時の賃金月額×100」により計算されます。
今回の改正により、この「支給率」の最高率が、従来の15%から10%に変更されました。
具体的には、60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない者については、
その期間が5年となった日)が令和7年4月1日以降の者にあっては、
各月に支払われた賃金の低下率が64%以下のときに、支給率が最高の10%となります。
なお、60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない者はについては、
その期間が5年となった日)が令和7年3月31日以前の者にあっては、従来の支給率が適用されますので、
各月に支払われ賃金の低下率が61%のときに、支給率が最高の15%となります。
なお、高年齢雇用継続給付は、支給対象月に支払われた賃金が支給限度額以上の場合は支給されません。
また、支給対象月に支払われた賃金額と算定された支給額の合計が支給限度額を超える場合は、
支給限度額からその賃金を差し引いた額が支給されます。
一方、高年齢雇用継続給付として算定された支給額が低額である場合は、
支給なされなくなることがあります。
4、高年齢雇用継続基本給付と厚生年金保険の老齢厚生年金との調整
厚生年金保険の被保険者で、65歳になるまでの間に特別支給の老齢厚生年金を受けているものが、
雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けることができるときは、在職老齢年金制度による
支給停止に加えて、老齢厚生年金の一部の支給が停止されます。
これにより支給停止される年金額についても、高年齢雇用継続給付の支給率の変更に伴い、
最高で賃金(標準報酬月額)の4%に当たる額に変更となっています。
なお、令和7年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした者が
次のいずれかに該当するときは、改正前の高年齢雇用継続給付の支給額(新賃金の15%に相当する額)、
高年齢雇用継続給付の受給による年金の支給停止額(標準報酬月額の最大6%に相当する額)が
適用されます。
・60歳到達日が令和7年4月1日より前の者が高年齢雇用継続基本給付金を受給する場合
・令和7年4月1日より前に再就職した者が高年齢再就職給付金を受給する場合