法律トピックス

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治療と仕事の両立支援の推進~労働施策総合推進法の改正

 

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

(略称:労働施策総合推進法)が改正され、令和8年4月1日より、事業主に対し、

職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じることについて努力義務が課せられます。

 

1、治療と就業の両立支援対策に関する改正の概要

 

労働施策総合推進法に、「治療と就業の両立支援」に関する章が新設され、

次のことなどが規定されます。

①事業主の努力義務:事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、

就業によって疾病又は負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、

必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。

②指針の策定・公表:厚生労働大臣は、前記①の措置に関して、その適切かつ有効な実施を

図るため必要な指針(治療と就業の両立支援指針)を定め、これを公表します。

 

2、「治療と就業の両立支援指針」の概要

 

前記1②に基づき、「治療と就業の両立支援指針」が策定され、令和8年2月10日に公表されました。

その概要は次のとおりです。

この指針は、従来の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を参考に、

本文部分を基本的に引用する形で作成されています。

 

(1)治療と就業の両立支援の趣旨

・治療と就業の両立支援の取り組みには、労働者の健康確保及び就業継続という意義とともに、

事業主にとって、継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着、

生産性の向上、治療と就業の両立支援の充実が取り組みの一要素を構成する健康経営の実現、

多様な人材の活用による組織や事業の活性化、組織としての社会的責任の実現、

ワーク・ライフ・バランスの実現といった意義があるとされています。

・この指針は、雇用形態にかかわらず、労働者全てを対象とすることも明示されています。

 

(2)労働安全衛生法との関係

・事業主が疾病を抱える労働者を就業させると判断した場合に、就業により疾病が増悪しないよう、

治療と就業の両立のために必要となる一定の就業上の措置及び治療に対する配慮を行うことを、

労働者の健康確保対策等として位置づけています。

・治療と就業の両立支援は、事業場において労働安全衛生法に基づいて行われる健康保持増進措置や

対策とともに実施することが望ましいものとされています。

 

(3)治療と就業の両立支援を行うに当たっての留意事項

留意事項として、次のことなどが示されています。

・業務の繁忙等を理由に必要な就業上の措置及び治療に対する配慮を行わないことは

あってはならないこと。

・治療と就業の両立支援を申し出た労働者への対応の検討にあたっては、

労働者に対する措置等を事業主が一方的に判断しないよう、所定の取り組みが必要であること。

・時間的制約に対する配慮だけでなく、労働者本人の健康状態や業務遂行能力も踏まえた就業上の措置

及び治療に対する配慮が必要となること。

・事業場と医療機関との連携が重要であり、労働者本人を通じた主治医との情報共有や、

本人の同意を得た上での産業保健スタッフや人事労務担当者と主治医との連携が必要であること。

 

(4)治療と就業の両立支援を行うための環境整備

・環境整備に関する措置として、①事業主による基本方針の表明等と労働者への周知、

②研修等による意識啓発、③相談窓口等の明確化、④治療と就業の両立支援に関する制度、

体制等の整備、⑤事業場内外の連携が掲げられています。

・治療と就業の両立支援に関する制度、体制等の整備に関しては、次のような休暇制度、

勤務制度について、各事業場の実情に応じて導入し、治療のための配慮を行うことが

望ましいものとされています。

【休暇制度】①時間単位の年次有給休暇、②傷病休暇、病気休暇

【勤務制度】①時差出勤制度、②短時間勤務制度、③在宅勤務制度、④ 試し出勤制度

 

(5)治療と就業の両立支援の進め方

治療と就業の両立支援は、次の流れで進めることが望ましいものとされています。

①労働者が、事業主に申出を行った上で、主治医から支援に必要な情報を収集して

事業主に提出する。

②事業主が、主治医から提供された情報を産業医等に対して提供し、就業継続の可否、

就業上の措置及び治療に対する配慮に関する産業医等の意見を聴取する。

③事業主が、主治医や産業医等の意見を勘案し、就業継続の可否を判断する。

④労働者の就業継続が可能と判断した場合は、就業上の措置及び治療に対する配慮の内容、

実施時期等を検討・決定し、実施する。

⑤労働者に対し、長期の休業が必要と判断した場合は、休業開始前の対応及び休業中の

フォローアップを行うとともに、労働者の疾病の症状が回復した際には、主治医や産業医等の意見、

労働者本人の意向、復帰予定の職場の意見等を総合的に勘案し、職場復帰の可否を判断した上で、

職場復帰後の就業上の措置及び治療に対する配慮の内容、実施時期等を検討・決定し、実施する。

2026年3月2日

子ども・子育て支援金制度がスタートします!

 

子育て支援策を拡充するため、「子ども・子育て支援金制度」が令和8(2026)年度から

段階的に実施されます。

子ども・子育て支援金制度は、独身の方、子育てを終えられた方、高齢者の方を含む全ての世代、

そして、企業からの拠出により、子育てを支え合う仕組みです。

 

1、こども未来戦略「加速化」プランによる子育て支援の拡充とこども・子育て支援金

 

令和5(2023)年12月にこども未来戦略「加速化プラン」が策定され、3.6兆円規模の子育て支援の

抜本的拡充に取り組むこととされました。

この「加速化プラン」により新設・拡充する制度であって、次の6つの子育て施策に係る費用

(支援納付金対象費用)については、子ども・子育て支援金が充てられることとされています。

①児童手当の抜本的拡充(所得制限の撤廃、高校生年代までの支給期間の延長、

第3子以降の支給額増額)

②妊娠の為の支援給付(妊娠・出産時の10万円相当の給付金)

③「こども誰でも通園制度」(乳児等のための支援給付)

④出生後休業支援給付(育児休業給付手取り10割相当)

⑤育児時短就業給付(時短勤務中の賃金の10%支給)

⑥国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料免除措置

 

2、子ども・子育て支援金制度

 

(1)概要

政府は、支援納付金対象費用に充てるため、令和8年度から、医療保険制度

(国民健康保険、後期高齢者医療、被用者保険)の納付ルートを活用して支援金を徴収します。

徴収した支援金はすべて支援納付金対象費用に充当することが法定されており、

流用はないものとされています。

 

(2)子ども・子育て支援金の額と拠出方法

子ども・子育て支援金は加入する医療保険制度ごとに保険料が決められ、

令和8年4月分から医療保険料と併せて拠出することとなります。

①被用者保険に加入している方

・支援金額(月額)は、「標準報酬月額×支援金率」になります。

・被用者保険については、国が一律の支援金率(保険料率)を示すこととされており、

令和8年度の一律の支援金率は0.23%とされました。

・基本的に支援金額の半分は事業主が負担しますので、実際の支援金額(月額)は、

標準報酬月額に「0.0023」を乗じた金額の半分の額になります。

・令和8年4月保険料(5月に給与天引き)より拠出します。

 

②国民健康保険に加入されている方

・支援金額(月額)は、住所地の市区町村が定める条例に基づき、

世帯や個人の所得等に応じて決定されます。

・支援金に係る保険料率は市町村ごとに異なります。

・令和8年4月分から拠出しますが、実際の支援金額や具体的な徴収開始時期は

住所地の市区町村が決定し、各被保険者に通知されます。

 

③後期高齢者医療制度に加入されている方

・支援金額は、住所地の都道府県後期高齢者医療広域連合が定める条例に基づき、

個人の所得等に応じて決定されます。

・支援金に係る保険料率は後期高齢者医療広域連合ごとに異なります。

・令和8年4月分から拠出しますが、支援金額の月額や具体的な徴収開始時期は中処置の

都道府県後期高齢者医療広域連合が決定し、各被保険者に通知されます。

 

3、健康保険法上の取扱い~被用者保険に加入している方~

 

健康保険法においては、子ども・子育て支援金に係る料率は、

医療保険上の給付や介護保険に係る保険料率とは区分した上で、保険料の一部として規定されています。

(1)毎月の保険料

・介護保険第2号被保険者(40~64歳)

「標準報酬月額」に「一般保険料率+子ども・子育て支援金率+介護保険料率」を乗じた額となります。

・介護保険第2号被保険者以外の被保険者

「標準報酬月額」に「一般保険料率+子ども・子育て支援金率」を乗じた額となります

(介護保険料額は、介護保険法に基づき、別途、徴収されます。)。

 

(2)賞与に係る保険料

子ども・子育て支援金は、健康保険料や厚生年金保険料と同様に、毎月の報酬のみならず、

賞与からも拠出することになります。

保険料率は、毎月の保険料に係るものと同様です。

 

(3)育児休業等期間中等の保険料の免除

育児休業等をしている被保険者、産前産後休業をしている被保険者などについては、

健康保険料や厚生年金保険料と同様に、子ども・子育て支援金の拠出も免除されます。

2026年2月2日

在職老齢年金制度の見直しについて

 

令和8年4月1日施行の厚生年金保険法の改正により、

在職老齢年金制度により老齢厚生年金が支給停止となる基準額(支給停止調整額)が

62万円に引き上げられます。

 

1、在職老齢年金制度の概要

 

在職老齢年金制度は、老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険の適用事業所で働く高齢者

(60歳以上の者)について、老齢厚生年金の支給を調整する仕組みです。

この制度は、一定額以上の報酬のある方は年金制度を支える側に回っていただくという考え方に

基づいています。

 

この制度では、総報酬月額相当額と基本月額の合計が支給停止調整額を超えると、

超えた分の半額が支給停止となります。

【総報酬月額相当額】

その者の標準報酬月額と、その月以前の1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額とを

合算して得た額をいいます。

ボーナスを含む年収の12分の1に相当します。

【基本月額】

加給年金額や繰下げ加算額を除いた老齢厚生年金の額を12で除して得た額をいいます。

老齢厚生年金の1か月当たりの額に相当します。

【支給停止調整額】

在職老齢年金制度による老齢厚生年金の支給停止の基準となる額です。

支給停止調整額は法律で規定されていますが、実際の額は毎年度、賃金や物価の変動を踏まえて

調整されます。

 

2、改正の概要(令和8年4月1日施行)

 

在職老齢年金制度について、支給停止調整額(法定額)が62万円に引き上げられます。

これにより、老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険の適用事業所で働く高齢者が、

年金を減額されにくくなり、より多く働けるようになります。

 

【支給停止調整額の引上げによる年金額の変化の例】

総報酬月額相当額が45万円、基本月額が10万円の方の場合には、これらの合計額は55万円となります。

(現行)支給停止調整額:51万円(令和7年度)

(総報酬月額相当額+基本月額)が支給停止調整額を超えています。

したがって、支給停止調整額を超える分(4万円=55万円-51万円)の半額(2万円)が

支給停止となります。

 

(改正後)支給停止調整額:62万円(改正後の法定額)

(総報酬月額相当額+基本月額)は55万円であり、支給停止調整額を超えていないため、

在職老齢年金制度による支給停止は行われません。

 

3、高齢者の動向~在職老齢年金を取り巻く環境

 

今回の改正は、次のような背景から、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ労働を抑制しない、

働きたい人がより働きやすい仕組みとする観点から行われています。

 

(1)働き続けることを希望する高齢者の増加(令和7年版高齢社会白書21頁)

・「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」に関して、

60歳以上(令和6年10月1日現在)の者全体では、約2割が「働けるうちはいつまでも」と回答しており、

70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約6割となっています。

・現在収入のある仕事をしている60歳以上の者に限れば、

約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、

70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を

持っている様子がうかがえます。

 

(2)人材確保・技能継承等の観点からの高齢者の活躍を求める世の中のニーズの高まり

(令和7年版高齢社会白書17~18頁、22頁)

・令和6年の労働力人口は、6,957万人でした。労働力人口のうち65~69歳の者は400万人、

70歳以上の者は546万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%と

長期的には上昇傾向にあります。

・令和6年の労働力人口比率を見ると、65~69歳では54.9%、70~74歳では35.6%となっており、

いずれも上昇傾向です。

・65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると

21年連続で前年を上回っています。また、就業率については10年前の平成26年と比較して

65~69歳で13.5ポイント、70~74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイントそれぞれ伸びています。

・高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%となっています。

一方で、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は31.9%となっています。

 

(3)老齢厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方

(令和6年 内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」)

・「厚生年金を受け取る年齢になったとき、どのように働きたいと思うか」に関して、

全体では44.4%、「60~69歳」では40.4%、「70歳以上」では19.5%が「年金額が減らないように、

就労時間を調整し会社などで働く」と回答しています。

2026年1月6日

女性活躍の更なる推進に向けた女性活躍推進法の改正

 

多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るための労働施策の総合的な推進

並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律が

令和7年6月11日に公布され、順次施行されています。

この改正法においては、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(略称:女性活躍推進法)の

改正も行われ、女性活躍の更なる推進が図られています。

 

1、改正の概要

 

女性活躍推進法は、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進することにより、

男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化

その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とした法律です。

この女性活躍推進法に関して、次のような改正が行われ、又は予定されています。

①有効期限の延長(施行日:令和7年6月11日)

令和8年3月31日までとなっていた同法の有効期限が、令和18年3月31日までに、10年間延長されました。

②情報公表の必須項目の拡大(施行日:令和8年4月1日

従業員数101人以上の企業に「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務づけられます。

③プラチナえるぼし認定の要件追加(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

プラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に

係る措置の内容を公表していることが追加されます。

 

2、情報公表の必須項目の拡大(施行日:令和8年4月1日)

 

女性活躍推進法に基づき、現在、一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主)については、

次の区分に応じて、女性の職業選択に資する情報の公表が義務づけられています。

【従業員数(常時雇用する労働者の数)が301人以上の企業】

・男女間賃金差異

・①「職業生活に関する機会の提供に関する実績」から1項目以上、

②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績」から1項目以上の計2項目以上

【従業員数101人以上300人の企業】

・①「職業生活に関する機会の提供に関する実績」及び

②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績」の全体から1項目以上

【従業員数100人以下の企業】

・女性の職業選択に資する情報のいずれかの公表に努めること(努力義務)

 

この点について、これまで従業員数301人以上の企業に公表が義務づけられていた「男女間賃金差異」について、

101人以上の企業に公表義務が拡大されるとともに、新たに「女性管理職比率」についても

101以上の企業に公表が義務づけられます。

従業員数100人以下の企業は努力義務の対象であり、この点に変更はありません。

 

3、プラチナえるぼし認定の要件追加(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

 

女性活躍推進法においては、一般事業主⾏動計画の策定・届出を行った事業主のうち、

⼥性の活躍推進に関する状況が優良である等の⼀定の要件を満たしたものを認定(えるぼし認定)し、

さらに、この認定を受けた事業主のうち、⼥性の活躍推進に関する状況が優良である等の⼀定の要件を

満たしたものを認定(プラチナえるぼし認定)する制度があります。

 

今回の改正により、プラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対する

セクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることが追加されます。

現在、プラチナえるぼし認定を受けている企業も、認定を維持するためには、

事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を

公表することが要件となります(ただし、一定の猶予が設けられる予定です。)。

 

4、その他の改正等

 

(1)基本原則(施行日:令和7年6月11日)

女性の職業生活における活躍の推進に当たり留意すべき事項として、

「女性の健康上の特性」が加えられました。

 

(2)基本方針(施行日:令和7年6月11日)

女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針において定める事項として、

職場において行われる就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために

必要な措置に関する事項(ハラスメント対策)が加えられました。

 

(3)特定事業主行動計画の変更手続の見直し(施行日:令和8年4月1日)

特定事業主(国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるもの)が

策定する特定事業主行動計画の変更手続の効率化が図られます。

 

(4)事業主行動計画策定指針

事業主行動計画策定指針の項目として、

「女性の健康上の特性に係る取組例」を新設するなどしたうえで、

女性の健康上の特性による健康課題(月経、更年期等に伴う就業上の課題)に関して、

職場の理解増進や配慮等がなされるよう、今後企業の取組例を示し、

事業主による積極的な取り組みを促していくことが予定されています。

2025年12月2日

社会保険料における「年収の壁」への対応

 

いわゆる「年収の壁」とは、それを超えると税金や社会保険料の負担が発生する年収額の境目のことをいい、

パートタイマーやアルバイトで働く方々の就労制限や就労調整につながるものとして、特にここ数年、

その問題が取りざたされています。

税制改革とともに、社会保険料における「年収の壁」についても各種の取り組みにより、

対策が講じられています。

 

1、社会保険料における「年収の壁」

 

(1)106万円の壁

次のいずれにも該当する場合には、社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入義務が生じ、

社会保険料の負担が発生します。

①所定の月額賃金​が88,000円以上(年収約106万円)であること(賃金要件)

②従業員が51人以上の企業の事業所に勤めていること(企業規模要件)

③週の所定労働時間が20時間以上であること

④2か月を超える雇用の見込みがあること

⑤学生ではないこと

 

「106万円の壁」となっている上記①の賃金要件については、令和7年の年金制度改正法により、

最低賃金の状況を踏まえ、令和7年6月から3年以内に撤廃されます。

なお、上記②の企業規模要件についても、段階的に縮小・撤廃されることとされています。

 

(2)130万円の壁

年収が130万円以上(60歳以上または障害者にあっては180万円以上)になると、

社会保険の扶養範囲を超えます。

勤務先が社会保険の適用事業所であれば、社会保険に加入することになり、

勤務先が社会保険の適用事業所でなければ、ご自身で国民年金及び国民健康保険に

加入することになりますので、社会保険料の負担が生じます。

 

2、「年収の壁・支援強化パッケージ」による取り組み(令和5年10月~)

 

短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するための当面の施策として、

「年収の壁・支援強化パッケージ」があります。

(1)「106万円の壁」への対応~キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」

「手当等支給メニュー」、「労働時間延長メニュー」、「併用メニュー」があります。

・手当等支給メニュー:事業主が労働者に社会保険を適用させる際に、「社会保険適用促進手当」

支給等により労働者の収入を増加させる場合に助成するもの

※給与・賞与とは別に支給され、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、

最大2年間、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないことができる

こととされています。

・労働時間延長メニュー:所定労働時間の延長等により社会保険を適用させる場合に

事業主に対して助成を行うもの

 

(2)「130万円の壁」への対応~事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、

事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となります。

 

3、令和7年度以降のその他の取り組み

 

(1)キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)の新設

令和7年7月1日より、キャリアアップ助成金に短時間労働者労働時間延長支援コースが

新設されました。

労働者を新たに社会保険に加入させるとともに、収入増加の取り組みを行った事業主を対象に、

労働者1人につき、最大75万円が助成されます。

 

(2)19歳以上23歳未満の者の被扶養者認定における年間収入要件の緩和

令和7年度税制改正を踏まえて、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、

扶養認定を受ける者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満の場合の年間収入の要件が、

現行の「130万円未満」が「150万円未満」に変更されました。

なお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。

 

(3)労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における

年間収入の取扱いについて

現在、被扶養者としての届出に係る者(認定対象者)の年間収入については、認定対象者の過去の収入

、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定されています。

この点に関し、令和8年4月1日からは、労働契約で定められた賃金から見込まれる

年間収入が130万円(又は150万円若しくは180万円)未満であり、かつ、他の収入が見込まれず、

次のいずれかに該当するときは、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱われることとなります。

①認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の

2分の1未満であると認められる場合

②認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、

被保険者からの援助による収入額より少ない場合

2025年11月5日

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