多田労務管理事務所 西新宿の社労士事務所

西新宿の社労士事務所

 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-17-7 廣田ビル3F TEL.03-6304-0230

法律トピックス

法律トピックス

健康保険・厚生年金保険の適用が拡大されます!

 

令和4年10月1日施行の厚生年金保険法等の改正により、健康保険及び厚生年金保険法の適用が拡大されます。

 

1、改正の概要(令和4年10月1日施行)

 

健康保険・厚生年金保険の適用拡大に関する改正点は、次のとおりです。

(1)短時間労働者への適用拡大

(2)適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種への追加)

(3)被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

 

2、短時間労働者への適用拡大

 

1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者のものと比べて

4分の3以上の短時間労働者は、通常の労働者と同様に、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

それ以外の短時間労働者についても、所定の要件を満たす場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者と

なりますが、その適用対象が拡大されます。

 

(1)特定適用事業所の要件の見直し

短時間労働者(1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される

通常の労働者のものと比べて4分の3以上を除き、次の(2)の要件を満たす者に限ります。)であっても、

特定適用事業所で働くものは、健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。

特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く。)の

総数が常時500人を超える事業所をいいますが、今回の改正により、人数の要件が、常時101人以上となります。

これにより、厚生年金保険の被保険者数が101人以上500人以下の事業所で働く短時間労働者についても、

健康保険・厚生年金保険の加入が義務化されます。

 

(2)短時間労働者の勤務期間要件の撤廃

健康保険・厚生年金保険の適用対象となる短時間労働者の要件について、

「当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること」という要件が撤廃されます。

これにより、次のいずれにも該当する短時間労働者は、適用除外事由に該当しない限り、

健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

②報酬月額が88,000円以上であること。

③学生ではないこと。

 

3、適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種追加)

 

これまで非適用業種とされていた事業のうち、「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に

基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」(一部の士業)が適用業種となります。

適用の対象となる士業は、弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、

土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士です。

これにより、常時5人以上の従業員を雇用しているこれらの士業の個人事業所は、健康保険・厚生年保険の

強制適用事業所になり、これに使用される70歳未満の者は、適用除外事由に該当しない限り、

厚生年金保険の被保険者となります。

 

4、被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

 

これまで、2か月以内の期間を定めて使用される者については、健康保険・厚生年金保険の適用が除外

されており、この者は、所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合に限り、

そのときから被保険者となることとされていました。

今回の改正により、2か月以内の期間を定めて雇用される者のうち、適用除外となるのは、

当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものに限られることとなりました。

これにより、2か月以内の期間を定めて雇用される者であっても、当該期間を超えて雇用されることが

見込まれるものは、雇用期間の当初から、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

具体的には、次のいずれかに該当する場合には、当該期間を超えて雇用擦れることが見込まれるものと

判断されます。

①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」又は「更新される場合がある旨」が

明示されている場合

②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を

超えて雇用された実績がある場合

 

5、適用拡大に伴う主な手続き

 

(1)被保険者の資格取得の届出

特定適用事業所(令和4年10月以降新たに特定適用事業所に該当する事業所を含みます。)の事業主は、

令和4年10月から新たに被保険者となる従業員がいる場合は、5日以内に、「被保険者資格取得届」等を

提出しなければなりません。

 

(2)新規適用事業所の届出

常時5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所の事業主は、適用事業所となった日から5日以内に、

「新規適用届」を提出しなければなりません。

「男女の賃金の差異」の情報公表について

 

令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正が行われ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を

追加するともに、常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主に対して、当該項目の公表が

義務づけられました。

 

1、我が国における男女間賃金格差の現状

 

我が国における男女間賃金格差は、長期的に見ると縮小傾向にありますが、他の先進国と比較すると、

依然として大きい状況にあります。

 

(1)令和3年6月分の賃金における現状(「令和3年賃金構造基本統計調査」参照)

・所定内賃金は、男女計30万7,400円、男性33万7,200円、女性25万3,600円となっています。

・男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は75.2で、

前年に比べ0.9ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

・一般労働者のうち、正社員・正職員の男女の所定内給与額を見ると、男性の給与水準を100としたときの

女性の給与水準は77.6となり、前年に比べ0.8ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

 

(2)男女間賃金格差の国際比較(「令和4年版男女共同参画白書」参照)

・男女間賃金格差を国際比較すると、男性のフルタイム労働者の賃金の中央値を100とした場合の

女性のフルタイム労働者の賃金の中央値は、OECD(経済協力開発機構)諸国の平均値が88.4と

なっています。

・これに対して、我が国は77.5であり、我が国の男女間賃金格差は国際的に見て大きい状況にあることが

分かります。

・OECD諸国の状況をみると、男女間賃金格差が小さい国は、1位がニュージーランド、

2位がノルウェー、3位がデンマーク、男女間賃金格差が大きい国は、1位が韓国、2位がイスラエル、

3位が日本となっています。

 

2、女性の職業選択に資する情報の公表

 

(1)一般事業主による女性の職業選択に資する情報の公表(女性活躍推進法20条)

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)に基づき、

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人を超えるものには、その事業における

女性の職業生活における活躍に関する情報の公表が義務づけられています。

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人以下のものについては、この情報の公表が

努力義務とされています。

 

(2)公表すべき事項

①その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績

(a:採用した労働者に占める女性労働者の割合その他の8項目、

b:その雇用する労働者の男女の賃金の差異)

②その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

(c:男女の平均継続勤務年数の差異その他の7項目)

 

一般事業主は、その企業規模(常時使用する労働者数)に応じて、次の事項を公表しなければなりません。

【300人を超える事業主】

上記①についてaの8項目から1項目以上及びb、並びに上記②についてcの7項目から1項目以上

(3項目以上の情報)

【300人以下の事業主】

上記①及び②の全16項目のうちから1項目以上

 

3、「男女の賃金の差異」の公表

 

前記2(2)の公表すべき事項のうち、①bの「その雇用する労働者の男女の賃金の差異」は、

今回の改正により追加され、常時使用する労働者の数が300人を超える一般事業主に公表が

務づけられたものです。

 

(1)算出方法等

・「男女の賃金の差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を

割合(パーセント)で示します。

・「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者(短時間・有期雇用労働者)」の

区分での公表が必要です(派遣労働者は、派遣労働者は派遣元事業主において算出します。)。

→全労働者の①女性・②男性、正規雇用労働者の③女性・④男性、非正規雇用労働者の⑤女性・⑥男性の

6区分で、それぞれ「総賃金額÷人員数」により平均年間賃金を計算します。

そのうえで、「①÷②×100」(全労働者の男女の賃金の差異)、

「③÷④×100」(正規雇用労働者の男女の賃金の差異)、

「⑤÷⑥×100」(非正規雇用労働者の男女の賃金の差異)を算出します

(小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。)。

・「男女の賃金の差異」の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するため、

「説明欄」において、より詳細な情報や補足的な情報を公表することもできます。

 

(2)公表時期・方法

・令和4年7月8日以後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後

おおむね3ヵ月以内に、公表した日を明らかにして、公表する必要があります。

・計算の前提とした重要事項(対象期間、対象労働者の範囲、賃金の範囲等)を付記します。

・インターネットの利用その他の方法により、女性の求職者等が容易に閲覧できるように

しなければなりません。

事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例の創設

 

令和4年7月1日施行の雇用保険法に改正により、基本手当の受給資格者が離職後に事業を開始した場合等に、

当該事業の実施期間を基本手当の受給期間に算入しない特例が新設されました。

 

1、基本手当の受給期間

 

(1)基本手当の原則的な受給期間

雇用保険の基本手当の受給期間は、原則、離職日の翌日から1年です。

具体的には、次のように定められています。

①次の②③以外の受給資格者にあっては、1年

②所定給付日数が360日である受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間

③所定給付日数が330日である受給資格者にあっては、1年に30日を加えた期間

 

(2)受給期間の延長

次の場合には、受給資格者の申出により、受給期間の延長が認められます。

①前記(1)の受給期間内に、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上職業に

就くことができない日がある場合

→この場合には、前記(1)の期間に、当該理由により職業に就くことができない日数を

加算した期間(その加算された期間が4年を超えるときは、4年)が受給期間となります。

②受給資格に係る離職が定年等の理由による者が当該離職後一定期間求職の申込みをしないことを

希望する場合

→この場合には、前記(1)の期間に、求職の申込みをしないことを希望するとしてその者が申し出た期間

(離職日の翌日から起算して1年が限度)に相当する期間を加算した期間が受給期間となります。

 

2、事業開始等による受給期間の特例

 

受給資格者が事業を開始した場合等においては、その事業を行っている期間等を、最大3年間、

基本手当の受給期間に算入しないことする特例が創設されました。

これにより、雇用保険に一定期間加入した後に離職し起業した者が休廃業した場合でも、

その後の再就職活動に当たって基本手当を受給することが可能となります。

 

(1)受給期間の特例の適用要件等

この特例の適用の対象は、離職日の翌日以後に、事業を開始した受給資格者、事業に専念し始めた受給資格者、

事業の準備に専念し始めた受給資格者です。

ただし、事業を開始し、事業に専念し始め、又は、事業の準備に専念した日は、

令和4年7月1日以降でなければなりません。

 

また、この特例の適用を受けるためには、その事業について、次の要件のすべてを満たす必要があります。

事業の実施期間が30日以上であること。

「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」の

いずれかから起算して30日を経過する日が本来の受給期間の末日以前であること。

当該事業について、就業手当又は再就職手当の支給を受けてないこと。

当該事業により自立することができないと認められる事業でないこと。

→例えば、雇用保険の被保険者資格を取得する者を雇い入れ、適用事業の事業主になる場合や、

登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で事業の開始、事業内容と事業所の実在が

確認できる場合には、この④の要件を満たすこととされます。

離職日の翌日以後に開始した事業であること。

→離職日以前に事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合も含まれます。

 

(2)特例が適用された場合の受給期間

この特例が適用された場合には、当該事業の実施期間(起業等から休廃業までの期間)が受給期間に

算入されないこととなります。

ただし、実施期間の日数が、4年から前記1により算定される期間の日数を除いた日数を

超える場合においては、当該超える日数は受給期間に算入されます。

つまり、前記1(1)の本来の受給期間が1年の受給資格者であれば、前記1(2)で加算された日数と

通算した期間が最大で3年間、受給期間に算入されないこととなるわけです。

 

3、受給期間の特例の申請手続等

 

前記2の特例の適用を受けるためには、公共職業安定所長にその旨を申し出る必要があります。

①この申出は、受給期間延長等申請書に、次の書類を添付して、管轄公共職業安定所の長に

提出することによって行います。

・受給資格者証(受給資格の決定を受けていない場合には、離職票-2)

・事業を開始等した事実と開始日を確認できる書類(登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等)

②この申請書の提出は、天災その他やむを得ない理由がある場合を除き、事業を開始した日

(又は事業に専念し始めた日、事業の準備に専念し始めた日)の翌日から2か月以内に行わなければ

なりません。

③この受給期間の特例の申請手続をした後、当該事業を廃止し、又は休止した場合等においては、

その旨を速やかに管轄公共職業安定所の長に届け出なければなりません。

職場における労働衛生基準について

 

事業者は、労働安全衛生法にも基づき、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、

通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置

その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければなりません。

事業者が講じなければならない措置の内容については、労働安全衛生規則及び事務所衛生基準規則に

具体的に定められています。

令和3年12月1日(一部未施行)及び令和4年4月1日に、これらの一部が改正されていますので、

いま一度、作業場における衛生基準が守られているかを確認したいところです。

 

1、トイレ(便所)(令和3年12月1日施行)

便所については、原則として、男性用と女性用に区別を区別し、男性用大便所は男性労働者60人以内ごとに

1個以上、男性用小便所は男性労働者30人以内ごとに1箇所以上、女性用便所は20人以内ごとに1個以上の

便房を設置しなければなりません。

これに対して、次のように、独立個室型の便所を設置した場合の特例が設けられました。

 

(1)少人数作業所における取り扱い

この設置基準について、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、便所を男性用と女性用に

区別することの例外として、独立個室型の便所(男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた

1個の便房により構成される便所)を設けることで足りることとなりました。

 

(2)付加的に設置した独立個室型の便所の取り扱い

男性用と女性用に区別した便所を設置したうえで、独立個室型の便所を設置する場合は、

男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする

同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ10人ずつ減ずることが

できることとなりました。

これにより、例えば、同時に就業する労働者数が男性65 人、女性65 人である場合に、男性用と女性用に

区別した便所のみを設けたときは、男性用大便所2個、男性用小便所3箇所、女性用便所4個が必要ですが、

「独立個室型の便所」を1個設けたときは、独立個室型の便所1個、男性用大便所1個、男性用小便所2箇所、

女性用便所3個で足りることとなります。

 

2、救急用具(令和3年12月1日施行)

 

事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に

周知させなければなりません。

従来は、事業者が少なくとも備えなければならない救急用具の品目が具体的に定めていましたが、

この規定が削除されました。

各事業場において想定される労働災害等に応じて、安全管理者や衛生管理者、産業医等の意見を交えながら、

衛生管理委員会等で調査審議、検討等を行い、応急手当に必要なものを備え付ける必要があります。

なお、この場合には、マスクやビニール手袋、手指洗浄薬等、負傷者などの手当の際の感染防止に必要な用具

及び材料も併せて備え付けておくことが望ましいものとされています。

 

3、温度(令和4年4月1日施行)

 

事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の労働者が常時就業する室の気温の努力目標値が、

「17度以上28度以下」から「18度以上28度以下」に変わりました。

事業者は、空気調和設備を設けている場合は、労働者を常時就業させる室の気温を18度以上28度以下に

なるように努めなければなりません。

なお、空気調和設備を設けている場合以外であっても、冷暖房器具を使用することなどにより

事務所における室の気温は18度以上28度以下になるようにすることが望ましいものとされています。

 

4、作業面の照度基準(令和4年12月1日施行)

 

事務所において労働者が常時就業する室における作業面の照度基準が、従来の3区分から2区分に

変更されます。「一般的な事務作業」(従来の「精密な作業」及び「普通の作業」に該当する作業)については

300 ルクス以上、「付随的な事務作業」(従来の「粗な作業」)については150ルクス以上であることが

求められます。

今回の改正は、照度不足の際に生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる

上肢障害等の健康障害を防止する観点から、すべての事務所に対して適用されます。

なお、個々の事務作業に応じた適切な照度については、この基準を満たしたうえで、日本産業規格

(JIS Z 9110)に規定する各種作業における推奨照度等を参照し、健康障害を防止するための照度基準を

事業場ごとに検討して定めることが適当であるとされています。

 

5、職場におけるその他の労働衛生基準

 

改正があった部分ではないですが、例えば、次のような基準が定められています。

 

(1)休養室・休養所について

常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に

区別して設け、随時利用することができるようにする必要があります。

 

(2)休憩の設備について

事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければなりません。

事業場の実状やニーズに応じて、休憩スペースの広さや設備内容について衛生委員会等で調査審議、

検討等を行い、その結果に基づいて設置するようにしましょう。

確定拠出年金の加入可能年齢が引き上げられました!

 

長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るための年金制度の機能強化の一環として、

確定拠出年金法の改正が行われ、2020(令和2)年6月から順次、施行されています。

この改正法の施行は2024(令和6)年12月まで続きますが、今回は、

2022(令和4)年4月及び5月施行分について、概要のみを簡単にご紹介します。

 

1、受給開始時期の選択肢の拡大【2022(令和4)年4月1日施行】

 

公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、確定拠出年金における老齢給付金の受給開始の上限年齢が

70歳から75歳に引き上げられました。

これにより、確定拠出年金における老齢給付金は、60歳(加入者資格喪失後)から75歳に達するまでの間で

受給開始時期を選択することができるようになりました。

ただし、この上限年齢の引上げの対象となるのは、1952(昭和27)年4月2日以降に生まれた者に限られます。

 

2、確定拠出年金の加入可能年齢の拡大【2022年5月1日施行】

 

(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)

従来、企業型DCでは、60歳未満の厚生年金被保険者を加入者とすることができました。

また、規約に定めがある場合には、60歳前と同一事業所で引き続き使用される厚生年金被保険者について

65歳未満の規約で定める年齢まで加入者とすることができました。

今回の改正により、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば、同一事業所で引き続き使用される者に限らず、

加入者とすることができるようになり、企業の高齢者雇用の状況に応じたより柔軟な制度運営が可能となりました。

ただし、加入できる年齢などは、規約で定められることになりますので、企業によって異なります。

 

(2)個人型確定拠出年金(iDeCo)

従来、iDeCoでは、60歳未満の国民年金被保険者が加入することができました。

高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、今回の改正により、国民年金被保険者であれば

加入することができるようになりました。

これにより、60歳以上であっても、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば

iDeCoに加入することができるようになったわけです。

また、これまで海外居住者はiDeCoに加入することができませんでしたが、国民年金に任意加入していれば

iDeCoに加入することができるようになりました。

 

・国民年金の第1号・3号被保険者は60歳に達した日に加入者の資格を喪失します。

施行日(2022年5月1日)以降に国民年金の任意加入被保険者となり、iDeCoに加入するには、

受付金融機関(運営管理機関)に手続きをする必要があります。

・国民年金の第2号被保険者であって、1962(昭和37)年5月1日以前に生まれた者は、

施行日前に60歳に達しているため、60歳に達した日に加入者の資格を喪失します。

施行日以降にiDeCoの加入者となるには、受付金融機関(運営管理機関)に手続きする必要があります。

・国民年金の第2号被保険者であって、1962(昭和37)年5月2日以降に生まれた者は、

60歳に達したときには、加入可能年齢が引き上がっているため、引き続き加入者となります。

掛金の拠出を停止したいときは、受付金融機関(運営管理機関)に運用指図者となる手続きをする必要があります。

 

3、脱退一時金の受給要件の見直し【2022年5月1日施行】

 

(1)企業型DCの脱退一時金の受給要件の見直し

これまで、企業型DCの中途引き出し(脱退一時金の受給)が例外的に認められていたのは、

個人別管理資産の額が1.5万円以下である者に限られていました。

そのうえで、個人別管理資産の額が1.5万円を超える者は、他の企業型DCやiDeCoなどに資産を移換する必要があり、

iDeCoに資産を移換し、iDeCoの脱退一時金の受給要件を満たしていれば、iDeCoの脱退一時金の受給が

可能でした。

今回の改正により、個人別管理資産の額が1.5万円を超える者であっても、iDeCoの脱退一時金の受給要件を

満たしていれば、iDeCoに資産を移換しなくても、企業型DCの脱退一時金を受給できるようになりました。

 

(2)iDeCoの脱退一時金の受給要件の見直し

これまで、iDeCoの中途引き出し(=脱退一時金の受給)が例外的に認められていたのは、

国民年金の保険料免除者である者に限られていました。

また、iDeCo加入者が海外に居住して国民年金被保険者(第1号・2号・3号)に該当しなくなった場合は、

iDeCoに加入することもできず、保険料免除者に該当することはなく、中途引き出しもできませんでした。

今回の改正により、国民年金被保険者となることができない者で、通算の掛金拠出期間が短いことや、

資産額が少額であることなどの一定の要件を満たす場合は、iDeCoの脱退一時金を受給できるようになりました。

 

4、制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)の改善【2022年5月1日施行】

 

これまでも順次、個人の転職等の際の制度間の資産移換が可能となってきていましたが、

今回の改正により、「終了した確定給付企業年金(DB)からiDeCoへの年金資産の移換」と、

「加入者の退職等に伴う企業型DCから通算企業年金への年金資産の移換」が可能となりました。