法律トピックス
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女性活躍の更なる推進に向けた女性活躍推進法の改正
多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るための労働施策の総合的な推進
並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律が
令和7年6月11日に公布され、順次施行されています。
この改正法においては、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(略称:女性活躍推進法)の
改正も行われ、女性活躍の更なる推進が図られています。
1、改正の概要
女性活躍推進法は、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進することにより、
男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化
その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とした法律です。
この女性活躍推進法に関して、次のような改正が行われ、又は予定されています。
①有効期限の延長(施行日:令和7年6月11日)
令和8年3月31日までとなっていた同法の有効期限が、令和18年3月31日までに、10年間延長されました。
②情報公表の必須項目の拡大(施行日:令和8年4月1日)
従業員数101人以上の企業に「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務づけられます。
③プラチナえるぼし認定の要件追加(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)
プラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に
係る措置の内容を公表していることが追加されます。
2、情報公表の必須項目の拡大(施行日:令和8年4月1日)
女性活躍推進法に基づき、現在、一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主)については、
次の区分に応じて、女性の職業選択に資する情報の公表が義務づけられています。
【従業員数(常時雇用する労働者の数)が301人以上の企業】
・男女間賃金差異
・①「職業生活に関する機会の提供に関する実績」から1項目以上、
②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績」から1項目以上の計2項目以上
【従業員数101人以上300人の企業】
・①「職業生活に関する機会の提供に関する実績」及び
②「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績」の全体から1項目以上
【従業員数100人以下の企業】
・女性の職業選択に資する情報のいずれかの公表に努めること(努力義務)
この点について、これまで従業員数301人以上の企業に公表が義務づけられていた「男女間賃金差異」について、
101人以上の企業に公表義務が拡大されるとともに、新たに「女性管理職比率」についても
101以上の企業に公表が義務づけられます。
従業員数100人以下の企業は努力義務の対象であり、この点に変更はありません。
3、プラチナえるぼし認定の要件追加(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)
女性活躍推進法においては、一般事業主⾏動計画の策定・届出を行った事業主のうち、
⼥性の活躍推進に関する状況が優良である等の⼀定の要件を満たしたものを認定(えるぼし認定)し、
さらに、この認定を受けた事業主のうち、⼥性の活躍推進に関する状況が優良である等の⼀定の要件を
満たしたものを認定(プラチナえるぼし認定)する制度があります。
今回の改正により、プラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対する
セクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることが追加されます。
現在、プラチナえるぼし認定を受けている企業も、認定を維持するためには、
事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を
公表することが要件となります(ただし、一定の猶予が設けられる予定です。)。
4、その他の改正等
(1)基本原則(施行日:令和7年6月11日)
女性の職業生活における活躍の推進に当たり留意すべき事項として、
「女性の健康上の特性」が加えられました。
(2)基本方針(施行日:令和7年6月11日)
女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針において定める事項として、
職場において行われる就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために
必要な措置に関する事項(ハラスメント対策)が加えられました。
(3)特定事業主行動計画の変更手続の見直し(施行日:令和8年4月1日)
特定事業主(国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるもの)が
策定する特定事業主行動計画の変更手続の効率化が図られます。
(4)事業主行動計画策定指針
事業主行動計画策定指針の項目として、
「女性の健康上の特性に係る取組例」を新設するなどしたうえで、
女性の健康上の特性による健康課題(月経、更年期等に伴う就業上の課題)に関して、
職場の理解増進や配慮等がなされるよう、今後企業の取組例を示し、
事業主による積極的な取り組みを促していくことが予定されています。
社会保険料における「年収の壁」への対応
いわゆる「年収の壁」とは、それを超えると税金や社会保険料の負担が発生する年収額の境目のことをいい、
パートタイマーやアルバイトで働く方々の就労制限や就労調整につながるものとして、特にここ数年、
その問題が取りざたされています。
税制改革とともに、社会保険料における「年収の壁」についても各種の取り組みにより、
対策が講じられています。
1、社会保険料における「年収の壁」
(1)106万円の壁
次のいずれにも該当する場合には、社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入義務が生じ、
社会保険料の負担が発生します。
①所定の月額賃金が88,000円以上(年収約106万円)であること(賃金要件)
②従業員が51人以上の企業の事業所に勤めていること(企業規模要件)
③週の所定労働時間が20時間以上であること
④2か月を超える雇用の見込みがあること
⑤学生ではないこと
「106万円の壁」となっている上記①の賃金要件については、令和7年の年金制度改正法により、
最低賃金の状況を踏まえ、令和7年6月から3年以内に撤廃されます。
なお、上記②の企業規模要件についても、段階的に縮小・撤廃されることとされています。
(2)130万円の壁
年収が130万円以上(60歳以上または障害者にあっては180万円以上)になると、
社会保険の扶養範囲を超えます。
勤務先が社会保険の適用事業所であれば、社会保険に加入することになり、
勤務先が社会保険の適用事業所でなければ、ご自身で国民年金及び国民健康保険に
加入することになりますので、社会保険料の負担が生じます。
2、「年収の壁・支援強化パッケージ」による取り組み(令和5年10月~)
短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するための当面の施策として、
「年収の壁・支援強化パッケージ」があります。
(1)「106万円の壁」への対応~キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
「手当等支給メニュー」、「労働時間延長メニュー」、「併用メニュー」があります。
・手当等支給メニュー:事業主が労働者に社会保険を適用させる際に、「社会保険適用促進手当」※の
支給等により労働者の収入を増加させる場合に助成するもの
※給与・賞与とは別に支給され、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、
最大2年間、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないことができる
こととされています。
・労働時間延長メニュー:所定労働時間の延長等により社会保険を適用させる場合に
事業主に対して助成を行うもの
(2)「130万円の壁」への対応~事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、
事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となります。
3、令和7年度以降のその他の取り組み
(1)キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)の新設
令和7年7月1日より、キャリアアップ助成金に短時間労働者労働時間延長支援コースが
新設されました。
労働者を新たに社会保険に加入させるとともに、収入増加の取り組みを行った事業主を対象に、
労働者1人につき、最大75万円が助成されます。
(2)19歳以上23歳未満の者の被扶養者認定における年間収入要件の緩和
令和7年度税制改正を踏まえて、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、
扶養認定を受ける者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満の場合の年間収入の要件が、
現行の「130万円未満」が「150万円未満」に変更されました。
なお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。
(3)労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における
年間収入の取扱いについて
現在、被扶養者としての届出に係る者(認定対象者)の年間収入については、認定対象者の過去の収入
、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定されています。
この点に関し、令和8年4月1日からは、労働契約で定められた賃金から見込まれる
年間収入が130万円(又は150万円若しくは180万円)未満であり、かつ、他の収入が見込まれず、
次のいずれかに該当するときは、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱われることとなります。
①認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の
2分の1未満であると認められる場合
②認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、
被保険者からの援助による収入額より少ない場合
「教育訓練休暇給付金」が創設されます!
令和7年10月1日施行の雇用保険法の改正により、教育訓練給付の一つとして、
教育訓練休暇給付金が創設されます。
教育訓練休暇給付金は、労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、
自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、
基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する制度です。
1、教育訓練休暇給付金の支給要件等
教育訓練休暇給付金は、一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者である労働者本人が、
その意思で、業務命令によらず、就業規則等に基づき連続した30日以上の
無給の教育訓練休暇を取得する場合に、支給されます。
(1)支給対象者
教育訓練休暇給付金の支給を受けることができるのは、
次の①②の両方の要件を満たす一般被保険者です。
高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者は対象外です。
①教育訓練休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
・原則として、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が算定の対象になります。
※教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合には、被保険者期間はリセットされます。
②教育訓練休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
・離職期間があったとしても、12か月以内であれば、離職前後の期間を通算することができます。
・過去に基本手当や教育訓練休暇給付金、育児休業給付、出生時育児休業給付金の支給を
受けたことがある場合には、通算できない期間が生じる場合があります。
なお、解雇等を予定している労働者は、教育訓練休暇給付金の支給対象にはなりません。
解雇等を予定している労働者について虚偽の届出を行った場合は、罰則の対象になります。
(2)支給対象となる休暇
教育訓練休暇給付金の支給対象となる休暇は、次のすべての要件を満たす休暇です。
①就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇であること
②労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、
事業主の承諾を得て取得する30日以上の無給の休暇であること
・教育訓練以外の目的を含む休暇制度に基づく休暇であっても、
教育訓練を受講するための休暇であれば、これに該当します。
・事業主や上司からの案内がきっかけであっても、本人の意思で取得を希望する休暇であれば、
これに該当します。
・収入を伴う就労を行った日、教育訓練休暇とは異なる休暇・休業(有給休暇や育児休業等)を
取得した日は、教育訓練のための休暇とは認められず、当該日については、
教育訓練休暇給付金の支給を受けることができません。
③次の教育訓練等を受けるための休暇であること
・学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等
・教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの
(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)
2、教育訓練休暇給付金の受給期間・給付日額・所定給付日数
教育訓練休暇給付金は、受給期間内の教育訓練休暇を取得した日について支給されます。
受給期間と所定給付日数の範囲内であれば、教育訓練休暇を複数回に分割して取得した場合であっても、
教育訓練休暇給付金の支給を受けることができます。
(1)受給期間:休暇開始日から起算して1年間です。
(2)給付日額:離職した場合の基本手当と同じ日額です。
原則として、休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます。賃金や年齢に応じて決定され、
上限額及び下限額があります。
(3)所定給付日数:雇用保険の被保険者であった期間(加入期間)に応じて、
90日(加入期間5年以上10年未満)、120日(加入期間10年以上20年未満)、
150日(加入期間20年以上)です。
3、教育訓練休暇給付金の支給申請手続
教育訓練休暇給付金の支給を受けるのは労働者本人であり、支給申請手続も本人が行いますが、
事業主の対応が必要な手続きもあります。
①教育訓練休暇制度を就業規則又は労働協約等に規定し、そのことを周知します。
②労働者から教育訓練休暇の取得について申出があったときは、労働者本人と事業主とで、
その取得について合意します。合意後、労働者は事業主に教育訓練休暇取得確認票を提出し、
事業主はこれに必要事項を記載します。
③事業主は、教育訓練休暇の取得を開始した労働者について、休暇開始日から起算して10日以内に、
賃金月額証明書を記載し、ハローワークに必要な書類を提出します。
その後、ハローワークから賃金月額証明票及び教育訓練休暇給付金支給申請書が交付されます。
④労働者は、休暇開始後、事業主から賃金月額証明票及び教育訓練休暇金支給申請書の交付を受け、
必要事項を記入してハローワークに提出します。
⑤労働者は、休暇開始日から30日ごとに、ハローワークに認定申請書等を提出します。
育児・介護休業法が改正されます! ~子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充~
令和7(2025)年10月1日から、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(略称:育児・介護休業法)が改正され、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充が図られます。
就業規則等の見直しが必要な事項もありますので、早めに準備をしたいところです。
1、今回の改正の概要
(1)柔軟な働き方を実現するための措置等
3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、
柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることとともに、
当該措置の個別の周知・意向確認が義務づけられます。
(2)仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する
個別の意向の聴取・配慮が事業主に義務づけられます。
2、柔軟な働き方かを実現するための措置等
(1)育児期の柔軟な働き方を実現するための措置
事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、
次に掲げる「選択して講ずべき措置」の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。
労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
事業主が講ずる措置を選択する際、過半数労働組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
【選択して講ずべき措置】
①始業時刻等の変更:フレックスタイム制又は始業・終業の時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)
②テレワーク等:1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの
③保育施設の設置運営等:保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与をするもの
(ベビーシッターの手配および費用負担など)
④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与:
1日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できるもの
⑤短時間勤務制度:1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの
なお、前記②と④については、原則として、時間単位での取得を可能とする必要があります。
(2)柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認
3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、
事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として、前記(1)で選択した制度(対象措置)に関する周知と
制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
この周知は、労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間
(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)に行うものとされています。
また、労働者が選択した制度が適切であるか確認すること等を目的として、
この時期以外(育児休業後の復帰時、短時間勤務や対象措置の利用期間中など)にも
定期的に面談を行うことが望ましいものとされています。
周知事項には、①事業主が前記(1)で選択した対象措置(2つ以上)の内容、②対象措置の申出先
、③所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度があります。
利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。
3、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
(1)妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取
事業主は、労働者が本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、
労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と
育児の両立に関する事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。
この意向聴取は、①労働者が本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき、
②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間
(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)に行うものとされています。
また、これらのほか、「育児休業後の復帰時」や「労働者から申出があった際」等にも
実施することが望ましいものとされています。
聴取内容には、①勤務時間帯(始業及び終業の時刻)、②勤務地(就業の場所)、
③両立支援制度等の利用期間、④仕事と育児の両立に資する就業の条件
(業務量、労働条件の見直し等)があります。
(2)聴取した労働者の意向についての配慮
事業主は、前記(1)により聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、
自社の状況に応じて配慮しなければなりません。
なお、①子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を
延長すること、②ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮することが
望ましいこととされています。
社会保険労務士の仕事~社会保険労務士法改正によせて
令和7年6月18日、社会保険労務士法の一部を改正する法律案が成立しました。
1、社会保険労務士の主な業務
社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。
その主な業務には、次のようなものがあります。
(1)労働社会保険手続に関する業務
・労働社会保険の適用、年度更新、算定基礎届に関する事務
・各種助成金などの申請に関する事務
・労働者名簿、賃金台帳などの法定帳簿の調製に関する事務
・就業規則や36協定の作成、変更に関する事務 など
(2)紛争解決手続代理業務(ADR代理業務)
ADRとは、裁判によらず、当事者双方の話し合いに基づき、あっせん、調停または仲裁などの手続きによって
紛争の解決を図る制度です。
個別労働関係紛争についても、このADRの制度が設けられています。
特定社会保険労務士(紛争解決手続代理業務試験に合格し、かつ、紛争解決手続代理業務の
付記を受けた社会保険労務士)は、所定のあっせんの手続き等について、当事者を代理することができます。
なお、ADRに関しては、都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争の
あっせん手続き等のほか、全国47都道府県にある社会保険労務士会では、職場のトラブルを話し合いで
解決するための民間の機関として、社労士会労働紛争解決センターを設置し、民間紛争解決手続を行っています。
(3)相談・指導業務
・労務管理(人事・賃金・労働時間、雇用管理・人材育成など)に関する相談・指導業務
・年金相談業務
(4)補佐人の業務
社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく
社会保険に関する事項について、補佐人として、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。
2、改正の概要
今回の社会保険労務士法の改正の内容は、次のとおりです。
(1)「社会保険労務士の使命」に関する規定の新設
社会保険労務士法第1条について、これまでの「目的」規定に代わり、
「社会保険労務士の使命」規定が新設されました。
同条では、「社会保険労務士の使命」に関し、
「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立
及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、
事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、
もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする。」と規定しています。
(2)労務監査に関する業務の明記
「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく
社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること」(相談・指導業務)の中に、
「これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査すること」が
含まれることが明記されました。
(3)社会保険労務士による裁判所への出頭及び陳述に関する規定の整備(令和7年10月1日施行)
社会保険労務士が裁判所に補佐人として出頭し、陳述をする場合に、
裁判所にともに出頭することとされている弁護士の地位について、
「訴訟代理人」が「代理人」に改められます。
(4)名称使用制限に係る類似名称の例示の明記
社会保険労務士法では、次のことが禁止されていますが、これらについて、
次のように類似名称の例示が明記されました。
①社会保険労務士でない者が、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いること
→社会保険労務士でない者が用いてはならない社会保険労務士に類似する名称に
「社労士」が含まれること
②社会保険労務士法人でない者が、社会保険労務士法人又はこれに類似する名称を用いること。
→社会保険労務士法人でない者が用いてはならない社会保険労務士法人に類似する名称に
「社労士法人」が含まれること
③社会保険労務士会又は連合会でない団体が、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会
又はこれらに類似する名称を用いること
→社会保険労務士会又は全国社会保険労務士会連合会でない団体が用いてはならない社会保険労務士会
又は全国社会保険労務士会連合会に類似する名称に「社労士会」及び「全国社労士会連合会」が含まれること