法律トピックス
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育児・介護休業法の施行状況について
厚生労働省では毎年、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況を
公表しています。
この中では、全体の状況のほか、男女雇用機会均等法の施行状況、労働施策総合推進法
(パワーハラスメント関係)の施行状況、パートタイム・有期雇用労働法の施行状況、
育児・介護休業法の施行状況が取りまとめられています。
育児・介護休業法に関する相談が多く、中でも育児関係の相談が多くなっていることが分かります。
1、全体の状況
(1)相談の状況
令和5年度、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法及び育児
・介護休業法について労働者や事業主等から寄せられた相談件数は167,158件(対前年度比13.2減)でした。
その内訳は、次のとおりであり、育児・介護休業法に関する相談が最も多くなっています。
・男女雇用機会均等法に関する相談:19,482件(構成割合11.7%)
・労働施策総合推進法に関する相談:62,863件(同37.6%)
・パートタイム・有期雇用労働法に関する相談:6,781件(同4.1%)
・育児・介護休業法に関する相談:78,032件(同46.7%)
(2)是正指導の状況
雇用環境・均等部(室)が行った男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法及び育児
・介護休業法に関する是正指導件数は57,707件(対前年度比105.2%増)でした。
その内訳は、次のとおりであり、育児・介護休業法関係が最も多くなっています。
・男女雇用機会均等法関係:6,214件(構成割合10.8%)
・労働施策総合推進法関係:3,746件(同6.5%)
・パートタイム・有期雇用労働法関係:20,515件(同35.6%)
・育児・介護休業法関係:27,232件(同47.2%)
2、育児・介護休業法の施行状況
(1)相談の状況
・令和5年度の育児・介護休業法の相談件数は78,032件(対前年度比32.1%減)でした。
・相談内容をみると、育児関係の相談が62,870件(80.6%)、介護関係の相談が12,086件(15.5%)となり、
育児関係の相談が8割を占めています。
・育児関係の相談について、その内訳を見ると、「育児休業」が42,572件(67.7%)、
「育児休業以外(子の看護休暇、所定労働時間の短縮の措置等など)」が11,302件(18.0%)、
「育児休業に係る不利益取扱い」が5,179 件(8.2%)の順になっており、「育児休業」に関する相談が
最も多くなっています。
・介護関係の相談について、その内訳を見ると、「介護休業」が6,441件(53.3%)、
「介護休業以外(介護休暇、所定労働時間の短縮の措置等など)」が4,490件(37.2%)、
「介護休業等に関するハラスメントの防止措置」が623件(5.2%)の順となっており、
「介護休業」に関する相談が最も多くなっています。
・契約期間の定めのある労働者からの相談内容をみると、「育児休業」が1,101件(64.8%)、
「育児休業に係る不利益取扱い」が404件(23.8%)、「介護休業」が180件(10.6%)、
「介護休業に係る不利益取扱い」が13件(0.8%)となっています。
(2)是正指導の状況(育児・介護休業法第56条)
育児・介護休業法第56条によれば、厚生労働大臣は、育児・介護休業法の施行に関し必要があると認めるときは、
事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができます。
これに基づく、是正指導の状況は、次のようになっています。
・雇用管理の実態把握を行った8,839事業所のうち何らかの育児・介護休業法違反が確認された7,557事業所
(85.5%)に対し、27,232件の是正指導が実施されています。
・是正指導を行った27,232件のうち育児関係は14, 819件、介護関係は9,568件でした。
・育児関係での指導事項の内容は、「第22条第1項関係(雇用環境整備)」が3,458件(23.3%)、
「第5条関係(育児休業)」が2,709件(18.3%)、「第25条関係(休業等に関するハラスメントの防止措置)」が
2,106件(14.2%)となっています。
・介護関係での指導事項の内容は、「第11条関係(介護休業)」が2,406件(25.1%)、
「第25条関係(休業等に関するハラスメントの防止措置)」が2,053件(21.5%)、
「第16条の5、第16条の6関係(介護休暇)」が1,471件(15.4%)となっています。
(3)紛争解決の援助
・都道府県労働局長による紛争解決援助の申立受理件数は150件でした。
・都道府県労働局長による紛争解決援助の申立内容をみると、育児関係では
「第10条関係(育児休業及び出生時育児休業に係る不利益取扱い)」が74件(53.2%)と最も多く、
介護関係では「第16条、第16条の7、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2関係(不利益取扱い)」が
4件(36.4%)と最も多くなっています。
・令和5年度中に援助を終了した142件のうち、112件(78.9%)について都道府県労働局長が
助言・指導・勧告を行った結果、解決しました。
・両立支援調停会議による調停の申請受理件数は19件でした。
児童手当法が改正されます!
「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)の「加速化プラン」に盛り込まれた施策を着実に実行するため、
子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律が成立し、今後、順次施行されます。
これに基づき、まず令和6年10月1日から、児童手当法が改正されます。
1、「こども未来戦略」~令和5年12月22日閣議決定
急速な少子化が大きな問題となっていますが、「こども未来戦略」では、
①若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない、
②子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある、
③子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する
といったことをこども・子育ての政策課題として掲げ、次の3つをこの戦略の基本理念としています。
(1)若い世代の所得を増やす
(2)社会全体の構造・意識を変える
(3)全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する
そのうえで、今後3年間の集中的な取組として「加速化プラン」が示されました。
この「加速化プラン」において、「ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化や
若い世代の所得向上に向けた取組」の1つとして、児童手当の抜本的拡充が位置づけられています。
2、児童手当法の改正の概要~令和6年10月1日施行
児童手当法の改正により、児童手当については、次代を担う全てのこどもの育ちを支える
基礎的な経済支援としての位置づけが明確化されます。
主な改正点は、次のとおりであり、これらによる拡充後の児童手当の初回の支給は、
令和6年12月となります。
①支給期間を中学生までから高校生年代までとすること(支給期間の延長)
②支給要件のうち所得制限を撤廃すること(所得制限に撤廃)
③第3子以降の児童に係る支給額を月額3万円とすること(第3子以降の支給額の増額)
④支払月を年3回から隔月(偶数月)の年6回とすること(支払月の変更)
3、支給期間の延長と所得制限の撤廃
児童手当法においては、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者であって、
日本国内に住所を有するもの又は留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないものを
「児童」と定義しています。
これまで、「児童」であっても児童手当の支給対象外となる者がありましたが、今回の改正で、支給期間が延長され、
かつ、所得制限が撤廃されることにより、全ての「児童」が児童手当の支給対象となります。
(1)支給期間の延長
児童手当の支給期間は、これまで、児童が15歳に達する日以後の最初の3月31日まで(中学生まで)でしたが、
これが、児童が18歳に達する日以後の最初の3月31日まで(高校生年代まで)となります。
(2)所得制限の撤廃
児童手当の支給に当たっては、これまで所得制限(前年の所得が所定の額未満であること)が設けられていましたが、
これが撤廃されます。
これにより、これまでは所得制限により特例給付の対象となり、又は、支給対象外となっていた者についても、
児童手当が支給されることとなります。
4、第3子以降の支給額の増額
(1)児童手当の額
児童手当の額は、原則として、3歳未満の児童について、1人当たり月額1万5,000円、3歳以上の児童について、
1人当たり月額1万円です。
ただし、こども3人以上の世帯数の割合が特に減少していることや、こども3人以上の世帯はより経
済的支援の必要性が高いと考えられること等から、個人受給資格者(一般受給資格者のうち法人受給資格者以外のもの)
については、第3子以降の児童に係る児童手当の額を加算する措置が執られています。
(2)第3子以降の児童手当の額
第3子以降の児童に係る児童手当の額は、これまでは、3歳以上小学校修了前の児童に限り、
月額1万5,000円に引き上げられていましたが、これが、0歳から高校生年代までの児童について、
全て月額3万円に引き上げられます。
(3)第3子以降の加算に係るカウント方法
第3子以降の加算に係るカウント方法についても、これまでの高校生年代までの取扱いを見直し、
大学生に限らず、22歳に達する日以後の最初の3月31日(22歳年度末)までの間にある上の子も、
親等の経済的負担がある場合は、カウント対象となります。
5、支払月の変更
児童手当の支払月は、これまで、2月、6月及び10月の3期でしたが、
これが2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期(隔月(偶数月)の年6回)となります。
合計特殊出生率は過去最低~令和5年人口動態統計月報年計(概数)より
先日、「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)」が公表されました。
合計特殊出生率が過去最低の「1.20」となったことが大きな話題となっていますので、
今回は、この結果の概要をお知らせします。
1、人口動態調査について
人口動態調査は、統計法に基づく基幹統計の一つである「人口動態統計」を作成するための統計調査として、
行われているものです。
その目的は、出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の人口動態事象を把握し、
人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることにあります。
今回の結果では、令和5年1年間に日本において発生した日本人の事象を集計しています。
2、令和5年の結果のポイント
①出生数:727,277人で過去最少(8年連続減少)(対前年43,482人減少)
②合計特殊出生率:1.20で過去最低(8年連続低下)(同0.06ポイント低下)
③死亡数:1,575,936人で過去最多(3年連続増加)(同6,886人増加)
④自然増減数:△848,659人で過去最大の減少(17年連続減少)(同50,368人減少)
⑤死産数:15,532胎で増加(同353胎増加)
⑥婚姻件数:474,717組で減少(同30,213組減少)
⑦離婚件数:183,808組で増加(同4,709組増加)
3、令和5年の結果の概要
(1)出生数について
・出生数は727,277人で、前年より43,482人減少し、出生率(人口千対)は6.0で、前年より低下しています。
・出生数の年次推移をみると、昭和24年をピークに、昭和50年以降は減少と増加を繰り返しながら
減少傾向が続いており、平成27年は5年ぶりに増加しましたが、平成28年から再び減少しています。
・第1子出生時の母の平均年齢は平成27年から横ばいとなっていましたが、令和3年は6年ぶりに上昇し、
令和5年は31.0歳で、2年ぶりに上昇しました。
(2)合計特殊出生率について
合計特殊出生率とは、ここでは、その年次の15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、
1人の女性がその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子ども数に相当します。
・令和5年の合計特殊出生率は1.20で、前年の1.26より低下し、過去最低となりました。
・年次推移をみると、平成18年から上昇傾向が続いていましたが、平成26年に低下し、
平成27年の再上昇の後、平成28年からは再び低下しています。
・合計特殊出生率の内訳を母の年齢(5歳階級)別にみると、最も出生率が高いのは、30~34歳となっています。
出生順位別では、全ての順位で低下しています。
・都道府県別にみると、沖縄県(1.60)、宮崎県(1.49)、長崎県(1.49)が高く、東京都(0.99)、
北海道(1.06)、宮城県(1.07)が低くなっています。
(3)死亡数・死亡率について
・令和5年の死亡数は1,575,936人で、前年より増加しています。
・死亡数の年次推移をみると、昭和50年代後半から増加傾向となり、平成15年に100万人を超え、
増加傾向が続きました。令和2年は11年ぶりに減少しましたが、再び増加に転じ令和4年に続き、
令和5年も150万人台となっています。
・死亡率(人口10万対)を年齢(5歳階級)別にみると、50~54歳及び70~74歳を除く40歳以上の各階級で
前年より低下しています。
(4)婚姻について
・令和5年の婚姻件数は474,717組で、前年より減少し、婚姻率(人口千対)は3.9で、前年より低下しています。
・婚姻件数の年次推移をみると、昭和47年をピークに、昭和50年代以降は増加と減少を繰り返しながら
推移しています。平成25年からは、令和元年に7年ぶり、令和4年に3年ぶりの増加がありましたが、
減少傾向が続いています。
・初婚の妻の年齢(各歳)の構成割合を10年ごとに比較すると、ピークの年齢は、20年前は27歳で、
令和5年は26歳となっていますが、年齢の低い者の割合が低下し、年齢の高い者の割合が上昇する傾向にあります。
・令和5年の平均初婚年齢は、夫31.1歳、妻29.7歳で、夫妻ともに前年と同年齢となっています。
これを都道府県別にみると、平均初婚年齢が最も低いのは、夫が島根県及び宮崎県の30.0歳、妻は島根県の28.9歳、
最も高いのは夫妻とも東京都で、夫32.3歳、妻30.7歳となっています。
(5)離婚について
・令和5年の離婚件数は183,808組で、前年より増加し、離婚率(人口千対)は1.52で、前年より上昇しています。
・離婚件数の年次推移をみると、昭和39年以降毎年増加を続けましたが、昭和59年からは減少しました。
平成に入り再び増加傾向にありましたが、平成14年をピークに減少傾向が続いています。
割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
在宅勤務をする労働者に使用者から支給されるいわゆる在宅勤務手当について、
割増賃金の算定基礎から除外することができる場合を明確化するため、
在宅勤務手当が実費弁償と整理される場合について、先般、厚生労働省労働基準局長から、
改めて通知が発出されました。
1、割増賃金の基礎となる賃金について(労働基準法第37条第5項、同則第21条)
労働基準法においては、割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金として、
①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金及び
⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つが規定されています。
この点に関し、在宅勤務手当については、労働基準関係法令上の定めはなく、
企業において様々な実態がみられますが、一般的には、この7つには該当しないと考えられます。
したがって、当該手当が労働基準法第11条に規定する賃金に該当する場合には
、割増賃金の基礎となる賃金に算入されることになります。
これに対して、在宅勤務手当が、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると
整理される場合には、当該手当は同法第11条に規定する賃金に該当せず、
割増賃金の基礎となる賃金にも算入されないこととなります。
2、実費弁償の考え方
通知によれば、在宅勤務手当が、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると
整理されるためには、次のことが必要であるとされています。
①労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、
当該金額を精算するものであることが外形上明らかであること。
②上記①のため、就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示されており、かつ、当該計算方法は、
在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法であること。
したがって、例えば、企業が従業員に対して毎月一定額を支給し、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として
使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの等は、実費弁償に該当せず、賃金に該当し、
割増賃金の基礎に算入すべきものとなります。
3、実費弁償の計算方法
在宅勤務手当のうち実費弁償に当たり得るものには、事務用品等の購入費用、
通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)、電気料金などがありますが、
これらが「事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されている」と整理されるために必要な
「在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法」としては、
次の方法などが考えられることとされています。
(1)国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」
(国税庁FAQ)で示されている計算方法
(2)前記(1)の一部を簡略化した計算方法
(3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
4、実費弁償の具体的な計算方法~通信費、電気料金等~
(1)国税庁FAQで示されている計算方法〔前記3(1)〕による場合
業務のために使用した部分の計算方法として、次のような算式が示されています。
・インターネット接続に係る基本使用料や通信料等
=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×(その従業員の1か月の在宅勤務日数÷当該月の日数)
×2分の1
・電気料金に係る基本料金や使用料
=従業員が負担した1か月の基本料金や電気使用料×(業務のために使用した部屋の床面積÷自宅の床面積)
×(その従業員の1か月の在宅勤務日数÷当該月の日数)×2分の1
(2)前記(1)の一部を簡略化した計算方法〔前記3(2)〕による場合
手当の支給対象となる労働者ごとに、手当の支給月からみて直近の過去複数月(3か月程度)の「各料金の金額」
及び「当該複数月の暦日数」並びに「在宅勤務をした日数」を用いて、業務のために使用した1か月当たりの
各料金の額を前記(1)の例により計算します。
この計算方法による場合には、在宅勤務手当の金額を毎月改定する必要はなく、
当該金額を実費弁償として一定期間(最大で1年程度)、継続して支給することができますが、
常態として当該手当の額が実費の額を上回っているような場合には、当該上回った額は、
賃金として割増賃金の基礎に算入すべきものとなります。
(3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法〔前記3(3)〕による場合
この方法は、実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定めたうえで、
当該単価に在宅勤務をした日数を乗じた額を支給するものです。
合理的・客観的に単価を定める方法としては、次の手順が例示されています。
①企業内の一定数の労働者について、国税庁FAQの例により、1か月当たりの額を計算する。
②前記①の計算により得られた額を、当該労働者が当該1か月間に在宅勤務をした日数で除し、
1日当たりの単価を計算する。
③一定数の労働者についてそれぞれ得られた1日当たりの単価のうち、最も額が低いものを、
当該企業における在宅勤務手当の1日当たりの単価として定める。
育児休業給付金の受給期間延長手続きの厳格化
育児休業給付金の受給期間について、子供を保育所に入所する意思がないにもかかわらず、
これを延長する目的で自治体に入所を申し込む者があり、これが自治体の負担となっているとの指摘などを受けて、
令和7年4月1日以降、その延長の可否の判断が厳格化されることとなりました。
1、育児休業給付金の受給期間
育児休業給付金については、原則として、子が1歳に達する日までの休業について支給することとされています。
ただし、「子が1歳に達した日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と
認められる場合」には、1歳6か月又は2歳に達する日まで支給することができます。
この「子が1歳に達した日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合」の
1つとして、「育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、
当該子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合」が規定されています。
なお、この場合の「保育所等」とは、児童福祉法に規定する保育所、認定こども園法に規定する
認定こども園又は児童福祉法に規定する家庭的保育事業等をいい、「保育所」には、
いわゆる無認可保育施設は含まれません。
2、現行の手続き
「保育所等における保育の利用を希望し申込みを行っているが、当面保育が実施されない場合」として、
育児休業給付金の受給期間の延長に当たっては、育児休業の申出に係る子について、
次のいずれにも該当することが必要です。
(1)あらかじめ市町村に対して保育利用の申込みを行っていること
この要件を満たすためには、次の2つが要件となります。
・市区町村で保育所等の入所申込みを1歳に達する日または1歳6か月に達する日までに行うこと
入所可能か市町村に問い合わせをするだけでは受給期間は延長されません。入所の申込みが必要です。
・入所希望日を子が1歳に達する日の翌日(子の1歳の誕生日)または1歳6か月に達する日の翌日以前とすること
入所申込みの際に、入所希望日を1歳に達する日の翌日または1歳6か月に達する日の翌日後とした場合は、
原則として受給期間は延長されません。
(2)原則、子が1歳に達する日の翌日または1歳6か月に達する日の翌日の時点で、
市町村から次のいずれかの通知がなされていること
・市町村が発行する教育・保育給付を受ける資格を有すると認められない旨の通知
・保育所等の利用ができない旨の通知
また、第1次申込みで内定を得た保育所等の内定を辞退した場合(内定の辞退について第1次申込みを行ったときから
内定を辞退したときまでの間に住所や勤務場所等に変更があり内定した保育所等に子を入所させることが
困難であったこと等のやむを得ない理由がある場合は除かれます。)には、当該1歳に達する日後の期間については、
育児休業給付金の対象外となります。
3、改正の概要
子供を保育所に入所させる意思がないにかかわらず、労働者が育児休業給付金の受給期間を延長する目的で、
自治体へ入所を申し込む行為を防止するため、「保育の利用を希望し、申込みを行っているが、
当該子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合」について、
「速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると
公共職業安定所長が認める場合に限る」旨が追加されました。
この「速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものであると
公共職業安定所長が認める場合」については、ハローワークにおいて、入所保留通知に加え、
本人が記載する申告書と、市町村への利用申込書の写しを提出させることにより、
次の点を確認することとなる予定です。
・利用を申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく、自宅又は勤務先からの移動に相当の時間を要する施設のみと
なっていないこと
・市区町村に対する保育利用の申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
4、改正後の規定の適用
この改正は、施行日である令和7年4月1日以後に育児休業に係る子が1歳に達する場合
(「パパママ育休プラス」により育児休業が1歳2か月に達するまでの範囲で延長されている場合は、
当該育児休業の終了予定日とされた日に達する場合)又は1歳6か月に達する場合に適用されます。
つまり、すでに育児休業給付金を受給中であっても、令和6年4月1日以降に出生した子について
延長を申請する場合などや、令和5年10月1日以降に出生した子について再延長を申請する場合にも、
今回の改正が適用されることになります。