法律トピックス
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産前産後期間における国民健康保険料(税)の免除
厚生年金保険及び健康保険のほか、国民年金については、産前産後期間の保険料を免除する措置がありましたが、
国民健康保険保険料(税)については、これまで、そのような措置がありませんでした。
こども・子育て支援の拡充を図る観点から、国民健康保険法等が改正され、
2024(令和6)年1月から、都道府県等が行う国民健康保険についても、届出により、
産前産後期間における国民健康保険料(税)を免除(減額)する措置が導入されました。
1、制度の概要
・世帯に出産する予定の国民健康保険の被保険者又は出産した被保険者(出産被保険者)がある場合には、
当該世帯の世帯主に対して賦課する国民健康保険料の所得割額及び被保険者均等割額が減額されます。
・減額される額は、出産被保険者の出産予定月の前月(多胎妊娠の場合には、3か月前)から
出産予定月の翌々月までの期間に係る所得割額及び被保険者均等割額です。
・減額分については、国が2分の1、県と市町村で4分の1ずつを負担します。
・出産被保険者に係る国民健康保険税についても、同様の措置が講じられます。
2、免除(減額)措置の対象者及び内容など
産前産後期間の国民健康保険料(税)の免除(減額)の措置は、各市町村の定める条例に基づき行われますが、
おおむね次のとおり、国民年金保険料の産前産後期間の免除措置に準じた内容となっています。
(1)免除の対象者
国民健康保険料(税)の納付が免除されるのは、2023(令和5)年11月1日以降に出産する予定の
又は出産した被保険者の分です。
出産する予定の、又は出産した被保険者以外で、同一世帯に属する被保険者の分は、免除の対象となりません。
(2)免除(減額)の内容
①対象となる被保険者につき、出産予定日又は出産日が属する月の前月から起算して4か月間
(多胎妊娠(双子以上)の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3か月前から起算して6か月間)の
所得割額及び均等割額が免除されます。所得制限はありません。
②免除の対象となるのは、2024(令和6)年1月分以降の国民健康保険料(税)です。
したがって、例えば、2023(令和5)年11月1日の出産(予定)であった場合は、
該当期間は2023(令和5)年10月~2024(令和6)年1月の4か月ですが、
実際に免除の対象となるのは、2024(令和6)年1月の1か月分となります。
③国民健康保険料(税)については、次のような軽減制度がありますが、
このような他の事由で保険料の軽減を受けている場合であっても、この免除措置が併用されます。
・所定の所得基準を下回る世帯について、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、
5割又は2割を減額する制度
・未就学児の均等割保険料を軽減する制度(2022(令和4)年4月導入)
(3)届出
産前産後期間の国民健康保険料(税)の免除(減額)措置は、出産予定、
または出産した被保険者が属する世帯の世帯主等からの届出に基づき、行われます。
この届出は、出産予定日の6か月前から行うことができます。
ただし、届出がない場合でも出産の事実等が確認できた場合は、職権でこの措置が行われる場合があります。
なお、国民健康保険組合が行う国民健康保険の多くでも、同じような産前産後期間の保険料の免除措置が
講じられているようです。
3、産前産後期間における国民年金保険料の免除(参考)
国民年金法においても、国民年金第1号被保険者が出産した際に、出産前後の一定期間の国民年金保険料が
免除される制度が2019(平成31)年4月から導入されています。
(1)免除の対象
出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の
3か月前から6か月間)の国民年金保険料が免除されます。
なお、任意加入被保険者は、免除の対象となりません。
(2)届出
国民年金第1号被保険者は、産前産後期間の保険料の免除の適用を受けようとするときは、
所定の事項を記載した届書を市町村長に提出する必要があります。
この届出は、出産予定日の6か月前から行うことができます。
(3)手続きをするメリット
産前産後期間の保険料の免除制度では、「保険料が免除された期間」も保険料を納付したものとして
老齢基礎年金の受給額に反映されます。
届出を行う期間について、すでに国民年金保険料免除・納付猶予、学生納付特例が承認されている場合でも、
届出が可能です。
産前産後期間の保険料が免除される期間であっても、付加保険料を納付することができます。
また、国民年金基金の加入員の資格も喪失しません。
労働条件の明示事項が追加されます!
「労働基準法施行規則」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が改正され、
2024(令和6)年4月1日から、労働条件の明示事項等が追加されます。
今回は、概要をお知らせしますので、早めに確認して、必要な準備を進めてくださいね。
1、追加される明示事項
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。
この明示事項には、①労働契約の期間、②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準、
③就業の場所及び従事すべき業務、④始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等、
⑤賃金、昇給、⑥退職その他の14事項が定められています。
今回の改正により、これに次の事項が追加されます。
・就業場所・業務の変更の範囲
・更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
・無期転換申込機会
・無期転換後の労働条件
2、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示について
すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、
これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。
・明示の対象となる労働者は、すべての労働者です。
無期契約労働者だけでなく、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された労働者などの
有期契約労働者も含みます。
・変更の範囲の明示が必要となるのは、2024(令和6)年4月1日以降に契約締結・契約更新をする労働者です。
・「就業場所と業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と、
労働者が通常従事することが想定されている業務のことを指します。
ただし、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が
一時的に変更される際の一時的な変更先の場所や業務は含まれません。
・「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や
従事する業務の変更の範囲のことをいいます。
・いわゆるテレワークを雇入れ直後から行うことが通常想定されている場合は、「雇入れ直後」の就業場所として、
また、その労働契約期間中にテレワークを行うことが通常想定される場合は、「変更の範囲」として明示します。
3、「更新上限の有無と内容」の明示について
(1)有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、
更新上限(有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。
・明示の対象となる労働者は、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、
定年後に再雇用された労働者などの有期契約労働者です。
・更新上限がない場合にその旨を明示することは求められていませんが、
有期労働契約の更新上限の有無を書面等で明示することは労働契約関係の明確化に資するため、
モデル労働条件通知書では更新上限がない場合にその旨を明示する様式とされています。
(2)最初の労働契約の締結後に、更新上限を新設し、又は、短縮しようとする場合は、
あらかじめ(更新上限の新設又は短縮をする前のタイミングで)、更新上限を設定する、
又は、短縮する理由を労働者に説明することが必要になります。
4、「無期転換申込機会」の明示について
無期転換ルールに基づく「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、
無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。
・「無期転換ルール」は、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるときに、
労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する制度です。
・明示の対象となる労働者は、無理転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する有期契約労働者です。
無転換申込権を行使しない旨を表明している有期契約労働者も含まれます。
・初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、
更新のたびに、無期転換申込機会の明示が必要になります。
5、「無期転換後の労働条件」の明示について
(1)「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
・明示の対象となる労働者は、無期転換申込権が発生する有期契約労働者です。
・明示する労働条件は、労働契約締結の際の明示事項と同じものです。
・初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、
更新のたびに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
(2)「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、
他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項
(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう
努めなければならないこととなります。
いわゆる年収の壁~支援強化パッケージについて
人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、
その環境づくりが進められています。
社会保険分野における環境づくりを支援するため、厚生労働省から、当面の対応として
支援強化パッケージが示され、これが実施されています。
1、「年収の壁」とは?
年収が一定の金額を超えると、税金や社会保険(厚生年金保険料及び健康保険)の保険料がかかり始めたり、
給料から控除される金額が増えたりする場合があります。
この税金や社会保険の保険料がかかり始めたり、給料から控除される金額が増えたりする基準として
意識される収入の金額が、「年収の壁」といわれるものです。
「年収の壁」には、税制上の壁(103万円、150万円など)と、
社会保険上の年収の壁(106万円、130万円)があります。
例えば、年収が103万円を超えると所得税が課税され始めます。
また、一定規模以上の企業にお勤めの場合に年収が106万円を超えると社会保険の保険料の負担が発生します。
これらが給料から控除されることで手取り収入が減少することがあるわけです。
2、「年収の壁」による課題
社会保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(20歳以上60歳未満の配偶者は、
併せて国民年金第3号被保険者となります。)として、保険料の負担が発生しません。
そのため、現状では、被扶養者として社会保険料の負担がないまま働くために、
就業調整をしている方々が一定程度存在します。
一方で、昨今、高い水準で行われている賃上げの流れをパートやアルバイトで働く短時間労働者の方々にも
波及させていくためには、この「年収の壁」を意識することなく、本人の希望に応じて可能な限り
労働参加ができる環境をつくることが重要です。
また、深刻化する人手不足への対応が急務となっていますが、
本人の希望に応じて可能な限り労働参加できる環境をつくることは、人手不足への対応にもつながります。
このようなことから、だれもが「年収の壁」を意識することなく働くことができるような環境づくりが
求められているわけです。
3、年収の壁・支援強化パッケージ(厚生労働省・令和5年10月から)
短時間労働者への被用者保険の適用が拡大されている中、パートやアルバイトで働く方々が、
社会保険上の「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを後押しするため、
令和5年10月から、次のような施策(支援強化パッケージ)が実施されています。
(1)「106万円の壁」への対応
厚生年金保険の被保険者数101人以上(令和6年10月以降:51人以上)の企業等においては、
短時間労働者であっても、年収が106万円以上となり、所定の要件を満たすと、社会保険に加入することとなります。
①キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設
このような方々の被用者保険の加入に併せて、手取り収入を減らさせない取り組みを実施する企業を対象として、
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)が新設されました。
10月1日以降、事業主が新たに社会保険の適用を行った場合に、労働者1人あたり最大50万円が助成されます。
②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
事業主が、被用者保険の適用に併せて、手取り収入を減らさないよう手当を支給した場合は、当面の措置として、
本人負担分の保険料相当額を上限として、社会保険料の算定対象としないこととされています。
(2)「130万円の壁」への対応
短時間労働者であっても、年収が130万円以上となると、被扶養者の範囲を超えるため、
ご自身で国民年金・国民健康保険に加入することとなります。
短時間労働者が、繁忙期に労働時間を延ばしたことなどにより、収入が一時的に上がったとしても、
事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みが、
当面の措置として、設けられました。
この措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者の収入確認に当たって、
通常提出が求められる書類と併せて、一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、
保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。
(3)配偶者手当への対応
配偶者の勤務先から配偶者手当をもらうために就業調整をしている短時間労働者もいることから、
企業の配偶者手当の見直しを促すリーフレット等が作成・公表されています。
具体的には、配偶者手当の見直しの手順が、
「①賃金制度・人事制度の見直し検討に着手」
→「②従業員のニーズを踏まえた案の策定」
→「③見直し案の決定」
→「④決定後の新制度の丁寧な説明」
といった4ステップのフローチャートで示されています。
また、手当の見直し内容の具体例としては、
「配偶者手当の廃止(縮小)+基本給の増額」
「配偶者手当の廃止(縮小)+子ども手当の増額」
「配偶者手当の廃止(縮小) + 資格手当の創設」
「配偶者手当の収入制限の撤廃」
などが挙げられています。
労働者協同組合を知っていますか?
令和4年10月1日に労働者協同組合法が施行され、「労働者協同組合」に関する法人制度がスタートして、
1年ほどが経過しました。
厚生労働省が把握している限りでも、令和5年10月23日時点で、1都1道1府21県で計60法人が
労働者協同組合として設立されているとのことです。
厚生労働省も、労働者協同組合を通じ、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題の解決のために活動される方々の
選択肢が広がるよう、さまざまな周知広報に取り組んでいます。
そこで、今回は、労働者協同組合について、概要をご紹介します。
1、「労働者協同組合法」について
(1)目的
労働者協同組合法は、労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。
その目的は、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における
多様な需要に応じた事業が行われることを促進することにより、持続可能で活力ある地域社会の実現に
資することにあります。
(2)労働者協同組合法ができた背景
我が国では、少子高齢化が進む中、人口の減少する地域において、介護、障害福祉、子育て支援、
地域づくりなど幅広い分野で、多様なニーズが生じており、その担い手が必要とされています。
これまでは、これらの多様なニーズに応え、担い手となろうとする人々は、それぞれのさまざまな生活スタイルや
多様な働き方が実現されるよう、状況に応じてNPOや企業組合といった法人格を利用し、
あるいは任意団体として法人格を持たずに活動していました。
しかし、これらの枠組みのもとでは、出資ができないこと、営利法人であること、財産が個人名義となることなど
、いずれも一長一短があります。
そこで、多様な働き方を実現しつつ地域の課題に取り組むための新たな組織として、
労働者協同組合という新たな組合が創設されることとなったわけです。
2、「労働者協同組合」の要件
労働者協同組合は、次の①~③の基本原理に従い事業が行われることを通じて、
持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とするものである必要があります。
①出資原則:組合員が出資すること
②意見反映原則:その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること
③従事原則:組合員が組合の行う事業に従事すること
この基本原理のほかに、労働者協同組合は、次の要件を備えなければなりません。
・組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
・組合員との間で労働契約を締結すること
・組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること
・組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有すること
・剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこと
3、労働者協同組合の主な特色
(1)労働者協同組合が行う事業
基本原理に従って行われる、持続可能で活力ある地域社会の実現に資する事業であれば、
労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能です。
介護・福祉関連(訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域づくり関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)
など、地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。
ただし、介護保険事業など、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。
(2)設立手続き
労働者協同組合は、NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、行政庁による許認可等を必要とせず、
法律に定めた要件を満たし、登記をすれば法人格が付与されます。
また、これらの法人よりも少ない人数である、3人以上の発起人がいれば、労働者協同組合を設立することができます。
(3)事業の運営等
労働者共同組合は法人格を持ちます。そのため、労働者協同組合の名義で契約などをすることができます。
株式会社の株主と異なり、出資額にかかわらず、組合員は平等に1人1個の議決権と選挙権を保有しています。
組合員が平等の立場で、話し合い、合意形成をはかりながら事業を実施します。
また、組合は定款にどのように意見反映を行うかを明記し、理事は意見反映状況とその結果を総会で報告します。
労働者協同組合は組合員との間で労働契約を締結します。
これにより、組合員は労働基準法、最低賃金法、労働組合法などの法令による労働者として保護されます。
(4)その他
剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて(従事分量配当)行うことができます。
都道府県知事に決算関係書類などを提出する必要があるなど、都道府県知事による監督を受けます。
心理的負荷による精神障害の労災認定基準が新しくなりました!
心理的負荷による精神障害の労災請求事案については、「心理的負荷による精神障害の認定基準」
(以下「認定基準」とします。)により、当該精神障害が業務上の疾病に該当するか否かの認定が行われます。
この認定基準について、近年の社会情勢の変化等や最新の医学的知見を踏まえた検討が行われた結果、改正が行われ、
令和5年9月1日より適用されています。
1、認定基準の概要
(1)対象疾病
この認定基準で対象とする疾病(対象疾病)は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(ICD-10)
第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを
除くこととされています。
対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主としてICD-10のF2からF4に分類される
精神障害です。
たとえば、統合失調症はF2、気分障害はF3、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害はF4に
分類されています。
また、気分障害のなかに躁病エピソード、双極性感情障害、うつ病エピソード、反復性うつ病性障害、
持続性気分障害、他の気分障害、特定不能の気分障害と分類されています。
(2)認定要件
次の①~③のいずれの要件も満たす対象疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する
業務上の疾病として取り扱われます。
①対象疾病を発病していること。
②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか
否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして取り扱われます。
(3)業務による強い心理的負荷の有無の判断
前記(2)の認定要件のうち②に関し、心理的負荷の評価に当たっては、発病前おおむね6か月の間に、
対象疾病の発病に関与したと
考えられるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかが具体的に把握され、
その心理的負荷の強度が判断されます。
この判断に際しては、精神障害を発病した労働者が、その出来事及び出来事後の状況を主観的に
どう受け止めたかではなく、同じ事態に遭遇した場合に、同種の労働者が一般的にその出来事及び出来事後の状況を
どう受け止めるかという観点から評価されます。
そのうえで、「業務による心理的負荷評価表」などにより、心理的負荷の全体を総合的に評価して
「強」と判断される場合には、認定要件の②を満たすものとされます。
(4)業務による心理的負荷の強度の判断
業務による心理的負荷の強度の判断は、実際に発生した業務による出来事を、「業務による心理的負荷評価表」に示す
「具体的出来事」に当てはめることにより行われます。
2、認定基準の改正のポイント
認定基準については、次の「心理的負荷評価表」の明確化等により、より適切な認定、審査の迅速化、
請求の容易化が図られました。
(1)業務による心理的負荷評価表の見直し
新たな認定基準においては、「業務による心理的負荷評価表」について、次のような見直しが行われました。
①具体的出来事の追加、類似性の高い具体的出来事の統合等
具体的出来事に追加されたものは、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた
(いわゆるカスタマーハラスメント)」、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」の二つです。
②心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充
・パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことが
明記されました。
・一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例が
明記されました。
(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
従前の認定基準では、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ
業務起因性が認められませんでした。
新たな認定基準では、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」
により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性が認められることとなりました。
(3)医学意見の収集方法を効率化
従前の認定基準では、例えば、自殺事案や、心理的負荷の強度が「強」かどうかが不明な事案などについては、
専門医3名の合議による意見収集が必須とされていました。
新たな認定基準では、これらの専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き、
1名の意見で決定できるよう変更されました。