「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」

 

能登半島地震を受け、被災時の対応について、厚生労働省から、令和6年2月2日付で

「令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A」(以下「Q&A」とします。)が

公表されました。

 

1、「Q&A」の概要

 

自然災害が発生すると、被災地に所在する事業場においては、事業の継続が困難になったり、

事業活動が著しく制限されたりします。

また、被災地以外に所在する事業場においても、道路の途絶等から原材料、製品等の流通に支障が生じるなど、

事業活動に影響が出ることも少なくありません。

この「Q&A」においては、そのような中にあって、労働者に対して使用者が守らなければならない事項等

について、一般的な考え方が取りまとめられています。

 

取り上げられている項目は、次のとおりです(〔 〕内はQの数)。

・地震、洪水等の自然災害の影響に伴う休業に関する取扱いについて〔5〕

・派遣労働者の雇用管理について〔2〕

・地震、洪水等の自然災害の影響に伴う解雇等について〔7〕

・労働基準法第24条(賃金の支払)について〔3〕

・労働基準法第25条(非常時払)について〔2〕

・労働基準法第32条の4(1年単位の変形労働時間制)について〔1〕

・労働基準法第33条(災害時の事業外労働等)について〔1〕

・労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について〔1〕

・労働基準法第39条(年次有給休暇)について〔2〕

・労災補償について〔2〕

・安全衛生関係について〔4〕

・その他〔2〕

 

2、「Q&A」の具体的な内容

 

被災した場合においても、基本的には、使用者には労働基準法などの遵守が求められます。

以下においては、「Q&A」から、回答を抜粋・要約してご紹介します。

 

(1)地震、洪水等の自然災害の影響に伴う休業に関する取扱いについて

・被災により、事業の休止などを余儀なくされた場合において、労働者を休業させるときには、

労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切です。

また、休業を余儀なくされた場合の支援策(災害時における雇用保険制度の特別措置や雇用調整助成金など)を

活用し、労働者の保護を図ることが望まれています。

・災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、

休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても

なお避けることのできない事故に該当すると考えられます。したがって、このような場合には、原則として、

使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当の支払義務はないものと考えられます。

 

(2)地震、洪水等の自然災害の影響に伴う解雇等について

・災害を理由とすれば 無条件に解雇や雇止めが認められるものではありません。

・災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けたために事業の全部又は大部分の継続が不可能

となった場合は、原則として、労働基準法第19条(解雇制限)及び同法第20条(解雇の予告)の除外に係る

「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に当たるものと考えられます。

したがって、このような場合には、所轄労働基準監督署長の除外認定の対象になり得ます。

 

(3)労働基準法第24条(賃金の支払)について

・賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないと

されています。

天災事変などの理由により、この賃金支払義務を免除する規定はありません。

・会社が災害により倒壊したことにより、事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金の支払いの

見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払いする

「未払賃金立替払制度」を利用することができます。

 

(4)労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)について

・労働基準法第33条第1項の適用については、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、

当該労働の緊急性・必要性等を勘案して個別具体的に判断することになります。

・災害により、被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインの早期復旧のため、被災地域外の他の事業者が

協力要請に基づき作業を行う場合であって、労働者に時間外・休日労働を行わせる必要があるとき等についても、

被害が相当程度のものであり、一般に早期のライフラインの復旧が人命・公益の保護の観点から急務と

考えられる場合は、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。

 

(5)労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について

・事業活動再開後の業務量の増加に伴い、36協定で定める範囲を超える時間外労働が必要となった場合において、

これを可能とするためには、新たに36協定を締結し直し、届け出ることが必要です。

ただし、36協定の再締結を行う場合であっても、対象期間の起算日を変更することは

原則として認められないこととされています。

2024年3月1日

産前産後期間における国民健康保険料(税)の免除

 

厚生年金保険及び健康保険のほか、国民年金については、産前産後期間の保険料を免除する措置がありましたが、

国民健康保険保険料(税)については、これまで、そのような措置がありませんでした。

こども・子育て支援の拡充を図る観点から、国民健康保険法等が改正され、

2024(令和6)年1月から、都道府県等が行う国民健康保険についても、届出により、

産前産後期間における国民健康保険料(税)を免除(減額)する措置が導入されました。

 

1、制度の概要

 

・世帯に出産する予定の国民健康保険の被保険者又は出産した被保険者(出産被保険者)がある場合には、

当該世帯の世帯主に対して賦課する国民健康保険料の所得割額及び被保険者均等割額が減額されます。

・減額される額は、出産被保険者の出産予定月の前月(多胎妊娠の場合には、3か月前)から

出産予定月の翌々月までの期間に係る所得割額及び被保険者均等割額です。

・減額分については、国が2分の1、県と市町村で4分の1ずつを負担します。

・出産被保険者に係る国民健康保険税についても、同様の措置が講じられます。

 

2、免除(減額)措置の対象者及び内容など

 

産前産後期間の国民健康保険料(税)の免除(減額)の措置は、各市町村の定める条例に基づき行われますが、

おおむね次のとおり、国民年金保険料の産前産後期間の免除措置に準じた内容となっています。

 

(1)免除の対象者

国民健康保険料(税)の納付が免除されるのは、2023(令和5)年11月1日以降に出産する予定の

又は出産した被保険者の分です。

出産する予定の、又は出産した被保険者以外で、同一世帯に属する被保険者の分は、免除の対象となりません。

 

(2)免除(減額)の内容

対象となる被保険者につき、出産予定日又は出産日が属する月の前月から起算して4か月間

(多胎妊娠(双子以上)の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3か月前から起算して6か月間)の

所得割額及び均等割額が免除されます。所得制限はありません。

免除の対象となるのは、2024(令和6)年1月分以降の国民健康保険料(税)です。

したがって、例えば、2023(令和5)年11月1日の出産(予定)であった場合は、

該当期間は2023(令和5)年10月~2024(令和6)年1月の4か月ですが、

実際に免除の対象となるのは、2024(令和6)年1月の1か月分となります。

③国民健康保険料(税)については、次のような軽減制度がありますが、

このような他の事由で保険料の軽減を受けている場合であっても、この免除措置が併用されます。

・所定の所得基準を下回る世帯について、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、

5割又は2割を減額する制度

・未就学児の均等割保険料を軽減する制度(2022(令和4)年4月導入)

 

(3)届出

産前産後期間の国民健康保険料(税)の免除(減額)措置は、出産予定、

または出産した被保険者が属する世帯の世帯主等からの届出に基づき、行われます。

この届出は、出産予定日の6か月前から行うことができます。

ただし、届出がない場合でも出産の事実等が確認できた場合は、職権でこの措置が行われる場合があります。

 

なお、国民健康保険組合が行う国民健康保険の多くでも、同じような産前産後期間の保険料の免除措置が

講じられているようです。

 

3、産前産後期間における国民年金保険料の免除(参考)

 

国民年金法においても、国民年金第1号被保険者が出産した際に、出産前後の一定期間の国民年金保険料が

免除される制度が2019(平成31)年4月から導入されています。

 

(1)免除の対象

出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の

3か月前から6か月間)の国民年金保険料が免除されます。

なお、任意加入被保険者は、免除の対象となりません。

 

(2)届出

国民年金第1号被保険者は、産前産後期間の保険料の免除の適用を受けようとするときは、

所定の事項を記載した届書を市町村長に提出する必要があります。

この届出は、出産予定日の6か月前から行うことができます。

 

(3)手続きをするメリット

産前産後期間の保険料の免除制度では、「保険料が免除された期間」も保険料を納付したものとして

老齢基礎年金の受給額に反映されます。

届出を行う期間について、すでに国民年金保険料免除・納付猶予、学生納付特例が承認されている場合でも、

届出が可能です。

産前産後期間の保険料が免除される期間であっても、付加保険料を納付することができます。

また、国民年金基金の加入員の資格も喪失しません。

2024年2月2日

労働条件の明示事項が追加されます!

 

「労働基準法施行規則」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が改正され、

2024(令和6)年4月1日から、労働条件の明示事項等が追加されます。

今回は、概要をお知らせしますので、早めに確認して、必要な準備を進めてくださいね。

 

1、追加される明示事項

 

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。

この明示事項には、①労働契約の期間、②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準、

③就業の場所及び従事すべき業務、④始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等、

⑤賃金、昇給、⑥退職その他の14事項が定められています。

今回の改正により、これに次の事項が追加されます。

・就業場所・業務の変更の範囲

・更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容

・無期転換申込機会

・無期転換後の労働条件

 

2、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示について

 

すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、

これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。

・明示の対象となる労働者は、すべての労働者です。

無期契約労働者だけでなく、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、定年後に再雇用された労働者などの

有期契約労働者も含みます。

・変更の範囲の明示が必要となるのは、2024(令和6)年4月1日以降に契約締結・契約更新をする労働者です。

・「就業場所と業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と、

労働者が通常従事することが想定されている業務のことを指します。

ただし、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が

一時的に変更される際の一時的な変更先の場所や業務は含まれません。

・「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や

従事する業務の変更の範囲のことをいいます。

・いわゆるテレワークを雇入れ直後から行うことが通常想定されている場合は、「雇入れ直後」の就業場所として、

また、その労働契約期間中にテレワークを行うことが通常想定される場合は、「変更の範囲」として明示します。

 

3、「更新上限の有無と内容」の明示について

 

(1)有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、

更新上限(有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。

・明示の対象となる労働者は、パート・アルバイトや契約社員、派遣労働者、

定年後に再雇用された労働者などの有期契約労働者です。

・更新上限がない場合にその旨を明示することは求められていませんが、

有期労働契約の更新上限の有無を書面等で明示することは労働契約関係の明確化に資するため、

モデル労働条件通知書では更新上限がない場合にその旨を明示する様式とされています。

 

(2)最初の労働契約の締結後に、更新上限を新設し、又は、短縮しようとする場合は、

あらかじめ(更新上限の新設又は短縮をする前のタイミングで)、更新上限を設定する、

又は、短縮する理由を労働者に説明することが必要になります。

 

4、「無期転換申込機会」の明示について

 

無期転換ルールに基づく「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、

無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。

・「無期転換ルール」は、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるときに、

労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する制度です。

・明示の対象となる労働者は、無理転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する有期契約労働者です。

無転換申込権を行使しない旨を表明している有期契約労働者も含まれます。

・初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、

更新のたびに、無期転換申込機会の明示が必要になります。

 

5、「無期転換後の労働条件」の明示について

 

(1)「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

・明示の対象となる労働者は、無期転換申込権が発生する有期契約労働者です。

・明示する労働条件は、労働契約締結の際の明示事項と同じものです。

・初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、

更新のたびに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

 

(2)「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、

他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項

(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう

努めなければならないこととなります。

2024年1月9日

いわゆる年収の壁~支援強化パッケージについて

 

人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、

その環境づくりが進められています。

社会保険分野における環境づくりを支援するため、厚生労働省から、当面の対応として

支援強化パッケージが示され、これが実施されています。

 

1、「年収の壁」とは?

 

年収が一定の金額を超えると、税金や社会保険(厚生年金保険料及び健康保険)の保険料がかかり始めたり、

給料から控除される金額が増えたりする場合があります。

この税金や社会保険の保険料がかかり始めたり、給料から控除される金額が増えたりする基準として

意識される収入の金額が、「年収の壁」といわれるものです。

「年収の壁」には、税制上の壁(103万円、150万円など)と、

社会保険上の年収の壁(106万円、130万円)があります。

例えば、年収が103万円を超えると所得税が課税され始めます。

また、一定規模以上の企業にお勤めの場合に年収が106万円を超えると社会保険の保険料の負担が発生します。

これらが給料から控除されることで手取り収入が減少することがあるわけです。

 

2、「年収の壁」による課題

 

社会保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(20歳以上60歳未満の配偶者は、

併せて国民年金第3号被保険者となります。)として、保険料の負担が発生しません。

そのため、現状では、被扶養者として社会保険料の負担がないまま働くために、

就業調整をしている方々が一定程度存在します。

 

一方で、昨今、高い水準で行われている賃上げの流れをパートやアルバイトで働く短時間労働者の方々にも

波及させていくためには、この「年収の壁」を意識することなく、本人の希望に応じて可能な限り

労働参加ができる環境をつくることが重要です。

また、深刻化する人手不足への対応が急務となっていますが、

本人の希望に応じて可能な限り労働参加できる環境をつくることは、人手不足への対応にもつながります。

 

このようなことから、だれもが「年収の壁」を意識することなく働くことができるような環境づくりが

求められているわけです。

 

3、年収の壁・支援強化パッケージ(厚生労働省・令和5年10月から)

 

短時間労働者への被用者保険の適用が拡大されている中、パートやアルバイトで働く方々が、

社会保険上の「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを後押しするため、

令和5年10月から、次のような施策(支援強化パッケージ)が実施されています。

 

(1)「106万円の壁」への対応

厚生年金保険の被保険者数101人以上(令和6年10月以降:51人以上)の企業等においては、

短時間労働者であっても、年収が106万円以上となり、所定の要件を満たすと、社会保険に加入することとなります。

①キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設

このような方々の被用者保険の加入に併せて、手取り収入を減らさせない取り組みを実施する企業を対象として、

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)が新設されました。

10月1日以降、事業主が新たに社会保険の適用を行った場合に、労働者1人あたり最大50万円が助成されます。

②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外

事業主が、被用者保険の適用に併せて、手取り収入を減らさないよう手当を支給した場合は、当面の措置として、

本人負担分の保険料相当額を上限として、社会保険料の算定対象としないこととされています。

 

(2)「130万円の壁」への対応

短時間労働者であっても、年収が130万円以上となると、被扶養者の範囲を超えるため、

ご自身で国民年金・国民健康保険に加入することとなります。

短時間労働者が、繁忙期に労働時間を延ばしたことなどにより、収入が一時的に上がったとしても、

事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みが、

当面の措置として、設けられました。

この措置(事業主の証明による被扶養者認定の円滑化)は、被扶養者の収入確認に当たって、

通常提出が求められる書類と併せて、一時的な収入変動である旨の事業主の証明を提出することで、

保険者による円滑な被扶養者認定を図るものです。

 

(3)配偶者手当への対応

配偶者の勤務先から配偶者手当をもらうために就業調整をしている短時間労働者もいることから、

企業の配偶者手当の見直しを促すリーフレット等が作成・公表されています。

具体的には、配偶者手当の見直しの手順が、

「①賃金制度・人事制度の見直し検討に着手」

→「②従業員のニーズを踏まえた案の策定」

→「③見直し案の決定」

→「④決定後の新制度の丁寧な説明」

といった4ステップのフローチャートで示されています。

また、手当の見直し内容の具体例としては、

「配偶者手当の廃止(縮小)+基本給の増額」

「配偶者手当の廃止(縮小)+子ども手当の増額」

「配偶者手当の廃止(縮小) + 資格手当の創設」

「配偶者手当の収入制限の撤廃」

などが挙げられています。

2023年12月5日

労働者協同組合を知っていますか?

 

令和4年10月1日に労働者協同組合法が施行され、「労働者協同組合」に関する法人制度がスタートして、

1年ほどが経過しました。

厚生労働省が把握している限りでも、令和5年10月23日時点で、1都1道1府21県で計60法人が

労働者協同組合として設立されているとのことです。

厚生労働省も、労働者協同組合を通じ、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題の解決のために活動される方々の

選択肢が広がるよう、さまざまな周知広報に取り組んでいます。

そこで、今回は、労働者協同組合について、概要をご紹介します。

 

1、「労働者協同組合法」について

 

(1)目的

労働者協同組合法は、労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。

その目的は、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における

多様な需要に応じた事業が行われることを促進することにより、持続可能で活力ある地域社会の実現に

資することにあります。

 

(2)労働者協同組合法ができた背景

我が国では、少子高齢化が進む中、人口の減少する地域において、介護、障害福祉、子育て支援、

地域づくりなど幅広い分野で、多様なニーズが生じており、その担い手が必要とされています。

これまでは、これらの多様なニーズに応え、担い手となろうとする人々は、それぞれのさまざまな生活スタイルや

多様な働き方が実現されるよう、状況に応じてNPOや企業組合といった法人格を利用し、

あるいは任意団体として法人格を持たずに活動していました。

しかし、これらの枠組みのもとでは、出資ができないこと、営利法人であること、財産が個人名義となることなど

、いずれも一長一短があります。

そこで、多様な働き方を実現しつつ地域の課題に取り組むための新たな組織として、

労働者協同組合という新たな組合が創設されることとなったわけです。

 

2、「労働者協同組合」の要件

 

労働者協同組合は、次の①~③の基本原理に従い事業が行われることを通じて、

持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とするものである必要があります。

①出資原則:組合員が出資すること

②意見反映原則:その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること

③従事原則:組合員が組合の行う事業に従事すること

 

この基本原理のほかに、労働者協同組合は、次の要件を備えなければなりません。

・組合員が任意に加入し、又は脱退することができること

・組合員との間で労働契約を締結すること

・組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること

・組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有すること

・剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこと

 

3、労働者協同組合の主な特色

 

(1)労働者協同組合が行う事業

基本原理に従って行われる、持続可能で活力ある地域社会の実現に資する事業であれば、

労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能です。

介護・福祉関連(訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域づくり関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)

など、地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。

ただし、介護保険事業など、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。

 

(2)設立手続き

労働者協同組合は、NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、行政庁による許認可等を必要とせず、

法律に定めた要件を満たし、登記をすれば法人格が付与されます。

また、これらの法人よりも少ない人数である、3人以上の発起人がいれば、労働者協同組合を設立することができます。

 

(3)事業の運営等

労働者共同組合は法人格を持ちます。そのため、労働者協同組合の名義で契約などをすることができます。

株式会社の株主と異なり、出資額にかかわらず、組合員は平等に1人1個の議決権と選挙権を保有しています。

組合員が平等の立場で、話し合い、合意形成をはかりながら事業を実施します。

また、組合は定款にどのように意見反映を行うかを明記し、理事は意見反映状況とその結果を総会で報告します。

労働者協同組合は組合員との間で労働契約を締結します。

これにより、組合員は労働基準法、最低賃金法、労働組合法などの法令による労働者として保護されます。

 

(4)その他

剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて(従事分量配当)行うことができます。

都道府県知事に決算関係書類などを提出する必要があるなど、都道府県知事による監督を受けます。

2023年11月1日

心理的負荷による精神障害の労災認定基準が新しくなりました!

 

心理的負荷による精神障害の労災請求事案については、「心理的負荷による精神障害の認定基準」

(以下「認定基準」とします。)により、当該精神障害が業務上の疾病に該当するか否かの認定が行われます。

この認定基準について、近年の社会情勢の変化等や最新の医学的知見を踏まえた検討が行われた結果、改正が行われ、

令和5年9月1日より適用されています。

 

1、認定基準の概要

 

(1)対象疾病

この認定基準で対象とする疾病(対象疾病)は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(ICD-10)

第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを

除くこととされています。

対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主としてICD-10のF2からF4に分類される

精神障害です。

たとえば、統合失調症はF2、気分障害はF3、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害はF4に

分類されています。

また、気分障害のなかに躁病エピソード、双極性感情障害、うつ病エピソード、反復性うつ病性障害、

持続性気分障害、他の気分障害、特定不能の気分障害と分類されています。

 

(2)認定要件

次の①~③のいずれの要件も満たす対象疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する

業務上の疾病として取り扱われます。

①対象疾病を発病していること。

②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。

また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に付随する疾病として認められるか

否かを個別に判断し、これが認められる場合には当該対象疾病と一体のものとして取り扱われます。

 

(3)業務による強い心理的負荷の有無の判断

前記(2)の認定要件のうち②に関し、心理的負荷の評価に当たっては、発病前おおむね6か月の間に、

対象疾病の発病に関与したと

考えられるどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであったのかが具体的に把握され、

その心理的負荷の強度が判断されます。

この判断に際しては、精神障害を発病した労働者が、その出来事及び出来事後の状況を主観的に

どう受け止めたかではなく、同じ事態に遭遇した場合に、同種の労働者が一般的にその出来事及び出来事後の状況を

どう受け止めるかという観点から評価されます。

そのうえで、「業務による心理的負荷評価表」などにより、心理的負荷の全体を総合的に評価して

「強」と判断される場合には、認定要件の②を満たすものとされます。

 

(4)業務による心理的負荷の強度の判断

業務による心理的負荷の強度の判断は、実際に発生した業務による出来事を、「業務による心理的負荷評価表」に示す

「具体的出来事」に当てはめることにより行われます。

 

2、認定基準の改正のポイント

 

認定基準については、次の「心理的負荷評価表」の明確化等により、より適切な認定、審査の迅速化、

請求の容易化が図られました。

(1)業務による心理的負荷評価表の見直し

新たな認定基準においては、「業務による心理的負荷評価表」について、次のような見直しが行われました。

①具体的出来事の追加、類似性の高い具体的出来事の統合等

具体的出来事に追加されたものは、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた

(いわゆるカスタマーハラスメント)」、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」の二つです。

②心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充

・パワーハラスメントの6類型すべての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことが

明記されました。

・一部の心理的負荷の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例が

明記されました。

 

(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し

従前の認定基準では、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ

業務起因性が認められませんでした。

新たな認定基準では、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」

により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性が認められることとなりました。

 

(3)医学意見の収集方法を効率化

従前の認定基準では、例えば、自殺事案や、心理的負荷の強度が「強」かどうかが不明な事案などについては、

専門医3名の合議による意見収集が必須とされていました。

新たな認定基準では、これらの専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き、

1名の意見で決定できるよう変更されました。

2023年10月2日

賃金不払いが疑われる事業場に対する監督指導結果について

 

先日、厚生労働省から、令和4年に賃金不払いが疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した

監督指導の結果について、その取りまとめが公表されました。

これによると、労働基準監督署が取り扱った賃金不払い事案のうち、令和4年中に、

労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたものは、約2万の事業場で、

支払総額は約79億円に上っています。

 

1、集計内容の変更について

 

従来は、労働基準監督署が監督指導を行った結果、支払額が1企業当たり100万円以上の割増賃金不払い事案のみが

集計の対象となっていましたが、今回からは、それ以外の事案を含めた賃金不払い事案全体が

集計の対象とされています。

これに伴う、前回の取りまとめからの変更点は、次のとおりです。

集計期間:年度単位(令和3年4月から令和4年3月)→年単位(令和4年1月から令和4年12月)

集計対象となる賃金:割増賃金のみ→定期賃金(退職金を含む。)、割増賃金、休業手当

集計対象となる事案:1事案当たり100万円以上支払ったもののみ→1事案当たり1円以上支払ったもの

 

2、賃金の支払いに関する労働基準法上の定め

 

今回の取りまとめにおいて、集計対象となった賃金に関しては、労働基準法上、次のような基準が定められています。

 

(1)賃金(労働基準法第24条)

賃金は、原則として、①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、

⑤一定の期日を定めて支払わなければなりません。

なお、退職金についても、支給条件が労働協約、就業規則、労働契約等により明確に定められ、

労働者が権利として請求することができる場合には、賃金に該当し、これを支給しない場合には、

前記③に抵触することとなります。

 

(2)割増賃金(労働基準法第37条)

時間外労働、休日労働、深夜労働については、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金は、

1時間当たりの賃金に割増賃金率を乗じることにより計算します。

時間外労働(法定労働時間を超えて労働させた場合)の割増賃金率は、2割5分以上の率です。

ただし、1か月に60時間を超える時間外労働の割増賃金率は5割以上の率となります。

休日労働(法定休日に労働させた場合)の割増賃金率は、3割5分以上の率です。

深夜労働(原則として午後10時~午前5時に労働させた場合)の割増賃金率は、2割5分以上の率です。

 

(3)休業手当(労働基準法第26条)

会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)により、労働者を休ませた場合には、平均賃金の6割以上の手当を

支払わなければなりません。

 

3、監督指導結果について

 

(1)監督指導状況

①件数:20,531 件、このうち指導により支払われたものは19,708件(96.0%)

②対象労働者数:179,643 人、このうち指導により支払われものは175,893人(98.0%)

③金額:121 億2,316 万円、このうち指導により支払われたものは79 億4,597万円(65.5%)

※1事案における最大支払金額は2.7億円

 

(2)業種別の監督指導状況(割合は、いずれも賃金不払い事案全体に占める割合)

①件数

商業(4,476件・22%)が最も多く、次いで、製造業(4,168件・20%)、保健衛生業(2,773件・14%)、

建設業(2,398件・12%)、接客娯楽業(2,224件・11%)、運輸交通業(1,115件・5%)等となっています。

②対象労働者数

商業(41,907人・23%)が最も多く、次いで、製造業(36,661人・20%)、保健衛生業(30,889人・17%)、

建設業(12,350人・7%)、接客娯楽業(8,416人・5%)、運輸交通業(6,595人・4%)等となっています。

③金額

製造業(37.2億円・31%)が最も多く、保健衛生業(16.2億円・13%)、商業(15.7億円・13%)、

建設業(13.1億円・11%)、運輸交通業(4.1億円・3%)、接客娯楽業(3.9億円・3%)等となっています。

 

(3)その他

以上のような結果と併せて、監督指導による是正事例及び送検事例が公表されています。

監督指導による是正事例としては、「タイムカード等がなく、労働時間が適正に把握されていない

(労働時間の適正把握の阻害)事例や、「一定の時刻以降の残業時間に対する残業代が支払われない

(労働時間記録と労働実態の乖離)事例などについて、指導の内容及び企業が実施した解決策が示されています。

送検事例としては、月20時間を超える時間外割増賃金を支払わなかった疑いで送検された事例、

時間外割増賃金を支払わず、監督官に虚偽の陳述をした疑いで送検された事例が示されています。

2023年9月1日

精神障害に関する労災請求件数が過去最多に~過労死等の労災補償状況より

 

先日、厚生労働省より、令和4年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。

これによれば、精神障害に関する労災請求件数と支給決定件数が、前年度に続き過去最多を更新したとのことです。

 

1、「過労死等の労災補償状況」について

 

厚生労働省は、

過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、

労災請求件数や、「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを、平成14年以降年1回、

取りまとめて公表しています。

 

「過労死等」とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは

業務における強い心理負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは

心臓疾患若しくは精神障害をいう」と定義されています(過労死等防止対策推進法2条)。

また、今回公表された支給決定件数は、令和4年度以前に請求があったものを含めて、

令和4年度中に「業務上」と認定した件数です。

 

2、精神障害に関する事案の労災補償状況(令和4年度)

 

(1)請求件数は2,683件で、前年度比337件の増加となり、2年連続で過去最多となっています。

うち未遂を含む自殺の件数は、前年度比12件増の183 件です。

 

(2)支給決定件数は710件で、前年度比81件の増加となり、4年連続で過去最多となっています。

うち未遂を含む自殺の件数は、前年度比12件減の67件です。

 

(3)業種別(大分類)の傾向

請求件数は、最も多いのが「医療,福祉」(624件)であり、次いで「製造業」(392件)、

「卸売業,小売業」(383件)などとなっています。

支給決定件数も、最も多いのが「医療,福祉」(164件)であり、次いで「製造業」(104件)、

「卸売業,小売業」(100件)などとなっています。

 

(4)職種別(大分類)の傾向

請求件数は、最も多いのが「専門的・技術的職業従事者」(699件)であり、次いで「事務従事者」(566件)、

「サービス職業従事者」(373件)などとなっています。

支給決定件数も、最も多いのが「専門的・技術的職業従事者」(175件)であり、次いで「事務従事者」(109件)、

「サービス職業従事者」(105件)などとなっています。

 

(5)年齢別の傾向

請求件数は、最も多いのが「40~49歳」(779件)であり、次いで「30~39歳」(600件)、

「50~59歳」(584件)の順となっています。

支給決定件数は、最も多いのが「40~49歳」(213件)であり、次いで「20~29歳」(183件)、

「30~39歳」(169件)の順となっています。

 

(6)時間外労働時間別(1か月平均)の傾向

支給決定のあった710件について、心理的負荷の評価期間における1か月平均の時間外労働時間数をみると、

「20時間未満」が87件で最も多く、次いで「100時間以上~120時間未満」が45件となっています。

 

(7)出来事別の傾向

「出来事」とは、精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、

認定基準において、一定の事象を類型化したもののことです。

 

支給決定のあった710件について、業務による負荷につながった出来事をみると、

最も多いのが「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(147件)であり、

次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(89件)、

「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(78件)などとなっています。

また、自殺未遂を含む自殺(支給決定のあった67件)について見ると、

最も多いのが「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(16件)であり、

次いで「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(12件)などとなっています。

 

3、その他の状況(令和4年度)

 

(1)脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

請求件数は803件で、前年度比50件の増加(3年ぶりの増加)、

うち死亡件数は前年度比45件増の218件となっています。

支給決定件数は194件で、前年度比22件の増加(6年ぶりの増加)、

うち死亡件数は前年度比3件減の54件となっています。

 

(2)裁量労働制対象者に関する労災補償状況

裁量労働制対象者に関する脳・心臓疾患の支給決定件数は3件で、いずれも専門業務型裁量労働制対象者でした。

また、精神障害の支給決定件数は8件で、いずれも専門業務型裁量労働制対象者でした。

 

4、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」について

近年の社会情勢の変化等を踏まえ、精神障害事案の審査をより適切・迅速に行うため認定基準全般について

検討が行われ、これを取りまとめた報告書が別途、公表されています。

この報告書では、

①業務による心理的負荷評価表の見直し、②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し、

③医学意見の収集方法を効率化などについて、検討が行われたことが示されています。

この報告書を受け、今後、精神障害の労災認定基準の改正が行われる予定です。

2023年8月2日

ジェンダーギャップ指数~経済分野での男女格差と現状

 

先日、世界経済フォーラムが世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」の

2023年版報告書を発表したとの報道がありました。

日本は国別のランキングで対象146か国中125位と、過去最低の結果だったとのことです。

そこで、この指数の構成分野のうち「経済」に関連するデータを見てみたいと思います。

 

1、「ジェンダーギャップ指数」について

 

(1)ジェンダーギャップ指数」とは?

「ジェンダーギャップ指数」は、スイスの非営利団体「世界経済フォーラム」が公表しているもので、

次の4分野からなり、男性に対する女性に割合を示す指数です。

完全不平等の「0」から完全平等の「1」までの範囲で示されます。

①経済分野(労働参加率の男女比、同一労働における賃金の男女格差、推定勤労所得の男女比、

管理的職業従事者の男女比、専門・技術者の男女比)

②教育分野(識字率の男女比、初等、中等、高等教育の就学率の男女比)

③健康分野(出生児性比、健康寿命の男女比)

④政治分野(国会議員(下院)の男女比、閣僚の男女比、最近50年における行政府の長の在任年数の男女比)

 

(2)2023年版報告書の結果

・2023年の世界全体の総合スコアは0.684で、前年と比較可能な145カ国をみると0.003ポイント改善しました。

・国別にみると、1位は14年連続アイスランド(指数0.912)であり、2位以降はノルウェー、フィンランド、

ニュージーランド、スウェーデンと続いています。一方、最下位はアフガニスタン(指数0.405)です。

・日本は125位(指数0.647)となり、昨年の116位から大きく後退し、依然として主要先進国(G7)の中で

最下位となっています。

特に「政治」(指数0.057・138位))と「経済」(指数0.561・123位)の分野で格差解消が進んでいない状況です。

 

2、経済分野におけるわが国のジェンダーギャップ指数

 

経済分野におけるわが国のジェンダーギャップ指数は、次のとおりであり、特に女性管理職比率の低さは、

世界的にみても下位に位置しています。

・労働参加率の男女比:0.759(81位)

・同一労働における男女の賃金格差:0.621(75位)

・推定勤労所得の男女比:0.577(100位)

・管理的職業従事者の男女比:0.148(133位)

 

3、わが国の現状~その他の各種統計

 

必ずしも「ジェンダーギャップ指数」の算定に用いられる統計結果ではありませんが、関連する統計結果によれば、

わが国の現状は次のようになっています。

(1)労働力人口比率(総務省統計局「労働力調査」(基本集計)2022年(令和4年)平均結果)

・労働力人口比率15歳以上人口に占める労働力人口の割合は、2022年平均で 62.5%となっており、

男女別にみると、男性は 71.4%、女性は 54.2%となっています。

 

(2)賃金格差(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」結果の概況:令和4年6月分の賃金等についての調査)

【短時間労働者以外の一般労働者の賃金について】

・賃金は、男女計 311.8千円、男性342.0千円、女性258.9千円となっています。

また、男女間賃金格差(男=100)は、75.7となっています。

・男女別に賃金カーブをみると、男性では、年齢階級が高くなるにつれて賃金も高く、

55~59歳で416.5千円(20~24歳の賃金を100とすると188.9)と賃金がピークとなり、その後下降しています。

女性も、55~59歳の280.0千円(同129.4)がピークとなっていますが、男性に比べ賃金の上昇が緩やかとなっています。

・雇用形態別の賃金をみると、男女計では、正社員・正職員328.0千円に対し、正社員・正職員以外221.3千円となっています。

男女別にみると、男性では、正社員・正職員353.6千円に対し、正社員・正職員以外247.5千円、

女性では、正社員・正職員276.4千円に対し、正社員・正職員以外198.9千円となっています。

雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は、男女計67.5、男性70.0、女性72.0となっています。

 

(3)正社員・正職員の男女比率(厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の結果概要:令和3年10月1日現在の状況)

・正社員・正職員に占める女性の割合は 27.4%であり、これを職種別にみると、総合職 20.7%、限定総合職 34.0%、

一般職 33.9%、その他 30.4%となっています。

・女性の正社員・正職員に占める各職種の割合は、一般職が 43.2%と最も高く、次いで総合職 36.1%、

限定総合職 13.5%の順となっています。

 

(4)管理職に占める女性の割合(厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」の結果概要:令和3年10月1日現在の状況)

・課長相当職以上の管理職に占める女性の割合(女性管理職割合)は12.3%です。それぞれの役職に占める女性管理職割合は、

役員では 21.4%、部長相当職では 7.8%、課長相当職では 10.7%、係長相当職では 18.8%となっています。

2023年7月4日

高年齢者の雇用状況等について

 

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(略称:高年齢者雇用安定法)では、事業主に対して、

同法に基づく高年齢者の雇用・就業機会の確保の状況等についての報告を義務づけています。

この報告は毎年、6月1日現在の状況について行いますので、この機会に昨年の報告の集計結果と併せて、

ご紹介します。

 

1、高年齢者雇用安定法に基づく事業主の義務について

 

(1)高年齢者の安定した雇用の確保の促進等のため事業主が講ずべき措置

高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる「生涯現役社会の実現」を目指して、

高年齢者雇用安定法では、事業主に、次のことを義務づけています。

①雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、高年齢者雇用確保措置のいずれかを講じること。

②高年齢者就業確保措置のいずれかの措置を講じることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう

努めること。

 

(2)高年齢者の雇用状況等の報告

事業主は、毎年1回、定年、継続雇用制度、65歳以上継続雇用制度及び創業支援等措置の状況

その他高年齢者の就業の機会の確保に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければなりません。

この報告は、毎年、6月1日現在における状況を翌月(7月)15日までに、高年齢者雇用状況等報告書を

管轄公共職業安定所の長を経由して提出することにより、行います。

 

2、令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果

 

前記1(2)の報告の集計結果は毎年、厚生労働省から公表されます。

令和4年の集計結果では、従業員21人以上の企業235,875社からの報告に基づき、

令和4年6月1日時点での企業における実施状況等がまとめられています。

なお、この集計では、従業員21人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

 

(1)65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の状況

①高年齢者雇用確保措置の実施状況

・65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%で、中小企業では99.9%、

大企業では99.9%でした。

・高年齢者雇用確保措置を「実施済み」と報告した全企業について、措置内容別の割合をみると、

「定年制の廃止」が3.9%、  「定年の引上げ」が25.5%、「継続雇用制度の導入」が70.6%であり、

定年制度の見直し(「定年制の廃止」「定年の引上げ」)よりも、  「継続雇用制度の導入」を行うことで

高年齢者雇用確保措置を講じている企業が多くなっています。

②65歳定年企業の状況

報告した全企業のうち、定年を65歳とする企業の割合は22.2%で、中小企業では22.8%、大企業では15.3%でした。

 

(2)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況

・報告した全企業において、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は27.9%で、

中小企業では28.5%、大企業では20.4%でした。

・報告した全企業について、高年齢者就業確保措置の内容別の割合に見ると、「定年制の廃止」が3.9%、

「定年の引上げ」が2.1%、「継続雇用制度の導入」が21.8%、「創業支援等措置の導入」が0.1%であり、

「継続雇用制度の導入」を行うことで高年齢者就業確保措置を講じている企業が最も多くなっています。

 

(3)66歳以上まで働ける制度のある企業の状況

・報告した全企業において、66歳以上まで働ける制度のある企業の割合は40.7%で、中小企業では41.0%、

大企業では37.1%でした。

・報告した全企業において、70歳以上まで働ける制度のある企業の割合は39.1%で、中小企業では39.4%、

大企業では35.1%でした。

・報告した全企業において、定年制を廃止している企業の割合は3.9%で、中小企業では4.2%、

大企業では0.6%でした。

・定年を66~69歳とする企業の割合は1.1%で、中小企業では1.2%、大企業では0.2%でした。

また、定年を70歳以上とする企業の割合は2.1%で、中小企業では2.2%、大企業では0.6%でした。

 

(4)60歳定年到達者の動向及び高年齢常用労働者の状況

・60歳定年企業において、過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月31日)に定年に到達した者(379,120人)

のうち、   継続雇用された者は87.1%、継続雇用を希望しない定年退職者は12.7%、継続雇用を希望したが

継続雇用されなかった者は0.2%でした。

・報告した全企業における常用労働者数(約3,4 80万人)のうち、60歳以上の常用労働者数は約470万人で1 3. 5%を

占めています。

年齢階級別に見ると、60~64歳が約254万人、65~69歳が約128万人、70歳以上が約88万人でした。

・31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約442万人で、平成21年と比較すると、

約226万人増加しています。

2023年6月8日