企業・労働者を取り巻く環境が急速かつ広範に変化し、労働者の職業人生の長期化も同時に進行する中で、
労働者の学び・学び直しの必要性がますます高まっています。
そのような流れを受けて、教育訓練給付金についても、令和6年10月1日施行の雇用保険法の改正による
給付率の引上げ等が行われています。
1、教育訓練給付金制度とは?
労働者の主体的なスキルアップを支援するため、教育訓練給付対象者が厚生労働大臣の指定を受けた
教育訓練を受講・修了した場合であって、所定の要件を満たすときに、その費用の一部が支給される制度です。
対象となる教育訓練は、そのレベルなどに応じて、次の3種類があり、いずれもその要件を満たすものとして
厚生労働大臣が指定します。
(1)専門実践教育訓練
雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練のうち中長期的なキャリア形成に資する
専門的かつ実践的な教育訓練
(2)特定一般教育訓練
雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練のうち速やかな再就職及び早期のキャリア形成に
資する教育訓練
(3)一般教育訓練
雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練
2、教育訓練給付金の支給額(令和6年10月1日以降)
教育訓練給付金の額は、教育訓練給付対象者が当該教育訓練の受講のために支払った費用
(厚生労働省令で定める範囲内のものに限られます。)の額に所定の給付率を乗じて得た額
(その額が厚生労働省令で定める額を超えるときは、その定める額)となります。
この給付率は、従来、100分の20以上100分の70以下の範囲内において厚生労働省令で定める率とされていましたが、
令和6年10月1日施行の改正により、訓練効果を高めるためのインセンティブを強化するため、
その上限が100分の80に引き上げられました。
教育訓練の種類に応じた支給額及び上限額は、次のとおりです。
(1)専門実践教育訓練給付金(専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金)
・本体給付……専門実践教育訓練を受け、修了した者(当該専門実践教育訓練を受けている者を含む。)について、
受講費用の100分の50(上限年間40万円)
・追加給付①…専門実践教育訓練を受け、修了し、当該専門実践教育訓練に係る資格の取得等をし、かつ、
修了1年以内に雇用保険の一般被保険者又は高年齢被保険者(特例高年齢被保険者を除きます。)として
雇用された場合等に、受講費用の100分の20(上限年間16万)
・追加給付②…専門実践教育訓練を受け、修了し、当該専門実践教育訓練に係る資格の取得等をし、かつ、
訓練前後で賃金が5%以上上昇した場合には、受講費用の100分の10(上限年間8万円)
これらにより、専門実践教育訓練給付金の額は、受講費用の最大100分の80に相当する額(年間上限64万円)
となります。
ただし、上記「追加給付②」については、令和6年10月1日以降に受講を開始した者に限り、適用されます。
(2)特定一般教育訓練給付金(特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金)
・本体給付……特定一般教育訓練を受け、修了した者について、受講費用の100分の40(上限20万円)
・追加給付……特定一般教育訓練を受け、終了し、当該特定一般教育訓練に係る資格の取得等をし、かつ、
一般被保険者又は高年齢被保険者(特例高年齢被保険者を除きます。)として雇用された場合等は、
受講費用の100分の10(上限5万円)
これらにより、特定一般教育訓練給付金の額は、受講費用の最大100分の50に相当する額(上限額25万円)と
なります。
ただし、上記「追加給付」については、令和6年10月1日以降に受講を開始した者に限り、適用されます。
(3)一般教育訓練給付金(一般教育訓練に係る教育訓練給付金)
一般教育訓練を受け、修了した者について、受講費用の100分の20(上限額10万円)
3、受講前の必要書類の提出期限の緩和(令和6年4月1日施行)
特定一般教育訓練又は専門実践教育訓練を受講しようとする者(受講予定者)は、受講する前に、ハローワークで
受給資格確認を受ける必要があります。
この特定一般教育訓練給付金又は専門実践教育訓練給付金の受給資格確認については、
従来は、訓練前キャリアコンサルティングを受けたうえで、受講を開始する日の1か月前までに
職務経歴等記録書(ジョブ・カード)その他の必要書類をハローワークに提出する必要がありましたが、
この必要書類の提出期限が、令和6年4月1日から、「受講を開始する日の原則2週間前まで」に緩和されています。
訓練前キャリアコンサルティングにおいては、担当キャリアコンサルタントが、
当該特定一般教育訓練受講予定者又は専門実践教育訓練受講予定者就業に関する目標その他職業能力の開発及び向上に
関する事項についてキャリアコンサルティングを行い、これを踏まえて、「職務経歴等記録書」(ジョブ・カード)を
作成します。