仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、
令和7(2025)年4月1日から、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(略称:育児・介護休業法)が改正され、介護離職防止のための雇用環境の整備、
個別周知・意向確認の義務化などが図られます。
1、改正の主な内容
今回の改正の主な内容は、次のとおりです。
(1)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。
(2)介護離職防止のための雇用環境整備
介護休業等の申出が円滑に行われるようにするための雇用環境の整備が事業主に義務づけられます。
(3)介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
次のことが、事業主に義務づけられます。
①介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
②介護に直面する前の早い段階での情報提供
(4)介護のためのテレワーク導入
家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークが追加されます。
2、介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができません。
ただし、労使協定で、介護休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの
介護休業申出があった場合は、これを拒むことができます。
この労使協定で介護休業をすることができないものとして定めることができる労働者として、
これまで、①週の所定労働日数が2日以下の労働者及び②継続雇用期間が6か月未満の労働者が
掲げられていましたが、このうちの②が廃止されます。
これにより、継続雇用期間が6か月未満の労働者も、原則として、その事業主に申し出ることにより、
介護休業をすることができることとなりますので、労使協定を締結している場合は就業規則等の見直しが必要です。
3、介護離職防止のための雇用環境整備
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、次のいずれかの措置を講ずること
が事業主に義務づけられます。
また、この措置を講ずるに当たっては、これらのうち複数の措置を講ずることが望ましいものとされています。
①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
4、介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
(1)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する次の事項の周知と
介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
当然のことながら、取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。
①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③介護休業給付金に関すること
(2)介護に直面する前の早い段階での情報提供
労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を
深めるため、事業主は介護休業制度等に関する次の事項について情報提供しなければなりません。
①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
②介護休業・介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など)
③介護休業給付金に関すること
この情報提供は、「労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)」
又は「労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間」のいずれかに行います。
情報提供に当たっては、「介護休業制度」は介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に
対応するものなど、各種制度の趣旨・目的を踏まえて行うことのほか、情報提供の際に併せて
介護保険制度について周知することが望ましいものとされています。
5、介護のためのテレワーク導入
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、
事業主に努力義務化されます。
この措置を講ずる場合には、就業規則の見直しが必要です。