法律トピックス

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進む女性活躍~女性活躍推進法に基づく取り組み状況

 

1、改めて「女性活躍推進法」

 

(1)制定の背景

女性活躍推進法は、わが国における次のような状況を踏まえ、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため制定された法律です。

①働く場面において女性の力が十分に発揮できているとはいえない状況にあること

(具体的な状況)

・就業を希望していながら働いていない女性が約300万人に上っている。

・出産・育児を理由に離職する女性は依然として多く、再就職にあたって非正規労働者となる場合が多いことなどから、女性雇用者の半数以上は非正規労働者として働いている。

・管理職に占める女性の割合は、欧米、アジア諸国と比べても低い状況にある。

②女性の活躍の推進の重要性が高まっていること

(具体的な状況)

・急速な人口減少局面を迎え、労働力不足が懸念されている。

・企業等における人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠となっている。

 

(2)女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法では、国、地方公共団体、事業主の責務や女性の活躍の推進に関して実施すべき義務などが定められています。

常時301人以上の労働者を雇用する事業主については、①自社の女性の活躍に関する状況の把握及び課題の分析を行い、それを踏まえた一般事業主行動計画の策定し、届け出ること等、②女性の活躍に関する情報の公表を行うことが義務づけられています。

常時300人以下の労働者を雇用する事業主については、これらが努力義務とされています。

また、一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち女性の活躍推進に関する状況等が優良なものは、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

 

2、女性活躍推進法に基づく取り組み状況(平成30年6月末現在)

 

(1)一般事業主行動計画の策定・届出

策定・届出が義務づけられている301人以上の労働者を雇用する一般事業主の行動計画策定届の件数は15,983社(平成28年4月1日時点では11,068件)、届出率は98.1%(同71.5%)と、ほぼすべての事業主から策定届が提出されています。

策定・届出が努力義務企業である300人以下の労働者を雇用する事業主についても、届出件数は4,711社(同724件)となっています。

 

(2)女性の活躍推進企業データベースにおける情報公表

女性活躍推進法ではインターネットの利用などにより情報の公表を義務(または努力義務)としており、厚生労働省では「女性の活躍推進企業データベース」を運営していいます。

①「女性の活躍推進企業データベース」の登録企業は13,306社となっています。

②情報公表企業は9,276社となっています。

③女性の活躍状況(公表項目の平均値)は、次のとおりです。

・採用した労働者に占める女性の割合の平均値は39.8%(企業規模別では「101~300人」が44.0%と最も高く、産業別では「医療,福祉」が71.7%と最も高い。)

・管理職に占める女性労働者の割合の平均値は14.3%(企業規模が大きくなるほど女性の割合は低い。)

 

(3)厚生労働大臣の認定(「えるぼし」認定

「えるぼし」認定には3段階あり、①採用、②継続就業、③労働時間等の働き方、④管理職比率、⑤多様なキャリアコースの五つの評価項目により、一定の基準を満たす項目数に応じて認定段階が決定されます。

「えるぼし認定」取得企業は630社(平成28年6月末時点では105社)となっています。

認定段階別にみても、すべての段階において認定企業が増加しています。

また、企業規模別にみると、認定取得企業630社のうち300人以下の企業が147社と23.3%(平成28年6月末時点では7社で6.7%)を占めており、中小企業でも認定取得が広がりつつあります。

 

3、働きやすい環境づくりのために

 

「えるぼし」認定企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品や広告などに付すことができ、女性活躍推進事業主であることをPRすることで、優秀な人材の確保や企業イメージの向上等につながることが期待できます。

また、中小企業が一般事業主行動政策の策定・届出や「えるぼし」認定を取得すると、公共調達において加点評価を受けることができたり、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」の利用の対象となったりします。

「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)」などもありますので、優秀な人材の確保や職場定着を図るための一つの契機として、積極的に取り組みたいところです。

一方で、公表されている情報は、就職先・転職先を選ぶ指標としてのみならず、勤務している企業の状況を知るためにも一度、確認してみるとよいかもしれませんね。

2018年11月1日

中小企業退職金共済制度~加入促進強化月間によせて

中小企業における退職金制度の一つとして、中小企業退職金共済制度があります。

毎年10月は中小企業退職金共済制度の「加入促進強化月間」ですが、ご存じでしたか?

 

1、中小企業退職金共済制度とは?

中小企業退職金共済制度は、中小企業対策の一環として制定された中小企業退職金共済法に基づく社外積み立て型の退職金制度です。

単独では退職金制度を持つことが困難である中小・零細企業の実情を考慮して、中小企業者の相互扶助の精神と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り、中小企業の振興と発展に寄与することを目的としています。

この制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構(機構)が運営しています。

一般の中小企業退職金共済制度と特定業種退職金共済制度があります。

 

2、一般の中小企業退職金共済制度のしくみ

(1)申し込み

事業主が雇用する従業員を対象に、機構と「退職金共済契約」を結びます。

この契約では、事業主が機構に掛金を納付することを約し、機構がその事業主の雇用する従業員の退職について、退職金を支給することを約します。

(2)掛金

毎月の掛金(加入従業員の総額)は、金融機関の預金口座から、振り替えられます。

加入従業員ごとの「納付状況」「退職金試算額」が、年1回事業主に通知されます。

(3)退職金の支払い

退職した従業員の請求に基づき、機構から退職金が直接、支払われます。

退職した従業員が、事業主から交付される「退職金共済手帳(請求書)」を機構に送付すると、これに基づいて、退職した従業員の預金口座に退職金が振り込まれます。

退職金額等は、事業主および従業員に振り込み前に通知されます。

 

3、加入できる企業

一般の中小企業退職金共済制度に加入できるのは、次の企業です。ただし、個人企業や公益法人等の場合は、常用従業員数によります。

一般業種(製造業、建設業等):常用従業員数300人以下または資本金・出資金3億円以下

卸売業:常用従業員数100人以下または資本金・出資金1億円以下

サービス業:常用従業員数100人以下または資本金・出資金5,000万円以下

小売業:常用従業員数50人以下または資本金・出資金5,000万円以下

 

加入後に従業員の増加などにより条件を満たさなくなった場合には、中退共制度との契約は解除されます(従業員には解約手当金が支払われます。)が、一定の要件を備えていれば、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度または特定退職金共済事業に退職金相当額を引き継ぐことができます。

 

なお、加入に際しては、原則として、従業員の全員を加入させる必要があります。

ただし、期間を定めて雇用される者、短時間労働者など一定の者は、加入させなくてもよいことになっています。

 

4、掛金月額

一般の中小企業退職金共済制度の掛金月額は、5,000円から30,000円までの範囲で定められた額の中から、従業員ごとに選択することができます。

掛金月額は、加入後いつでも増額できますが、減額する場合は、一定の条件が必要です。

なお、新規加入や掛金の増額に対して国の助成制度があります

 

掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります(ただし、資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されます。)。

 

5、退職金

一般の中小企業退職金共済制度において支給される退職金の金額は、基本退職金(掛金月額と掛金納付月数に応じて定められている金額)と付加退職金(運用収入の状況等に応じて定められる金額)を合算した額となります。

掛金の納付が1年未満の場合は、退職金は支給されません。

1年以上2年未満の場合は掛金相当額を下回る額になりますが、2年から3年6か月では掛金相当額となり、3年7か月から掛金相当額を上回る額になります。

なお、退職金は退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます。

 

6、従業員の将来の安心材料の一つに。

退職金制度があることは、従業員の将来への安心感や、仕事への意欲につながります。

また、国が掛金の一部を助成するほか、管理も簡単で、税制上の優遇措置が受けられるなどのメリットがあるため、平成30年7月末時点で約54万6,000の中小企業が中小企業退職金共済制度に加入しています。

企業の活性化や優秀な人材の確保のための企業の魅力づくりの一環として、選択肢の一つに加えてみるのもよいかもしれませんね。

2018年10月3日

労働者派遣法改正から3年~派遣可能期間の延長

 

平成27年労働者派遣法の改正により、派遣可能期間について新たな制限ルールが導入されましたが、平成30年9月30日で、その制限ルールに係る3年を迎えることになります。

 

1、派遣可能期間に関する制限ルール

派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合や60 歳以上の派遣労働者を派遣する場合などの一定の場合を除いて、派遣可能期間には次の制限があります。

 

(1)派遣先事業所単位の期間制限

派遣先の同一の事業所に対し派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則3年が限度です。

この3年の派遣可能期間の起算日は、改正法の施行日である平成27年9月30日以後、最初に新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日となります。

それ以降、3年までの間に派遣労働者が交替したり、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めたりした場合でも、派遣可能期間の起算日は変わりません。

 

(2)派遣労働者個人単位の期間制限

同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に派遣できる期間は、3年が限度です。

派遣労働者の従事する業務が変わっても、同一の組織単位内である場合は、派遣期間は通算されます。

組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することができますが、事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されていることが前提となります。

 

2、過半数労働組合等への意見聴取手続

派遣先は、前記1(1)の事業所単位の期間制限による3年の派遣可能期間を延長しようとする場合は、次の流れに従って、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合には、過半数代表者)からの意見を聴く必要があります。

 

(1)意見聴取

派遣先は、過半数労働組合等に十分な考慮期間を設けたうえで、事業所単位の期間制限の抵触日の1か月前までに、事業所の過半数労働組合等からの意見を聴きます。

派遣先が意見を聴く際は、「派遣可能期間を延長しようとする事業所」及び「 延長しようとする期間」を書面で通知しなければなりません。

また、派遣先が意見を聴く際は、事業所の派遣労働者の受入れの開始以来の派遣労働者数や派遣先が無期雇用する労働者数の推移等の過半数労働組合等が意見を述べる参考になる資料を提供する必要があります。

過半数労働組合等が希望する場合は、部署ごとの派遣労働者の数、個々の派遣労働者の受入期間等の情報を提供することが望まれます。

意見を聴いた後は、所定の事項を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存するとともに、事業所の労働者に周知する必要があります。

 

(2)対応方針等の説明

派遣先は、意見を聴いた過半数労働組合等が異議を述べたときは、延長しようとする派遣可能期間の終了日までに、「派遣可能期間の延長の理由及び延長の期間」及び「異議への対応方針」について説明しなければなりません。

また、説明した日及び内容を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存するとともに、事業所の労働者に周知する必要があります。

 

(3)派遣可能期間の延長

派遣可能期間を延長できるのは3年間までです。延長した派遣可能期間を再延長しようとする場合は、改めて過半数労働組合等から意見を聴かなければなりません。

派遣先の事業所で受け入れているすべての労働者派遣が意見聴取の対象となるため、意見聴取を行うことで、原則としてすべての労働者派遣の派遣可能期間が一律に延長になります。ただし、過半数労働組合等からの意見を踏まえ、個別の労働者派遣ごとに、延長の幅を設定したり、延長しないこととしたりすることも可能です。

なお、派遣先事業所単位の派遣可能期間を延長した場合でも、前記1(2)の個人単位の期間制限を超えて、同一の有期雇用の派遣労働者を引き続き同一の組織単位に派遣することはできません。

 

3、適正な労働者派遣のために

派遣可能期間に係る制限ルールについては、派遣先のみならず、派遣労働者を雇用する派遣元事業主や派遣により働く派遣労働者においても、これに抵触することがないかを再度確認する必要があります。

また、平成30年9月30日以降、許可を受けていない(旧)特定労働者派遣事業を行う事業主から、派遣労働者を継続して受け入れると、法違反となりますので、同日以降に派遣を受け入れる際には、必ず派遣元事業主の許可取得・申請状況を確認してください。

派遣労働者の雇用安定措置やキャリアアップ措置などと併せて、労働者派遣の受け入れが適正に行われるよう、派遣労働者の方々が十分に活躍できる環境をつくりたいものです。

2018年9月6日

職場においても熱中症予防対策を!

 

東日本・西日本を中心とした「災害レベル」ともいわれる暑さとともに、熱中症に関するニュースが連日のように報道されていますね。

家庭のみならず、職場における熱中症による死傷災害も増加傾向にあるようです。

 

1、熱中症とは?

高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりすることなどから、発症する障害の総称です。

その症状としては、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣(けいれん)・手足の運動障害、高体温などが現れるそうです。

 

2、職場における熱中症による死傷災害の発生状況

平成30年5月31日に、厚生労働省から、平成29年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)が公表されました。

(1) 職場における熱中症による死傷者数の推移(平成20~29年)

過去 10 年間の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数(以下、合わせて「死傷者数」といいます。)は、平成22年が656人と最多であり、その後も400~500人台で高止まりの状態にあります。

平成29年の職場での熱中症による死傷者数は544名(平成28年比82人増)、このうち死亡者数は14名(同2人増)で、死傷者数、死亡者数いずれも2割程度増加しています。

 

(2)業種別発生状況(平成 25~29 年)

過去5年間の業種別の熱中症による死傷者数をみると、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しており、全体の約5割がこれらの業種で発生しています。

平成29年の業種別の死亡者をみると、建設業が最も多く、全体の約6割(8人)が建設業で発生しています。

 

(3)月・時間帯別発生状況(平成25~29年)

過去5年間の月別の熱中症による死傷者数をみると、全体の約9割が7月及び8月に発生しています。

また、時間帯別では、11時台及び14~16時台に多く発生しています。日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化し病院へ搬送されるケースも散見されます。

 

(4)発生状況(平成29年の職場における熱中症による死亡者14人について)

次のような基本的な対策が取られていなかったことが分かるとされています。

・WBGT値(暑さ指数:気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数)の測定を行っていなかった(13人)

・計画的な熱への順化期間が設定されていなかった(13人)

・事業者が水分や塩分の準備をしていなかった(4人)

・健康診断を行っていなかった(5人)など

 

3、熱中症の予防に関する数値目標

第13次労働災害防止計画において、「職場での熱中症による死亡者数を2013年から2017年までの5年間と比較して、2018年から2022年までの5年間で5%以上減少させる」との数値目標が設定されています。

具体的な対応策としては、次のことが掲げられています。

・ 日本工業規格(JIS)に適合したWBGT値測定器を普及させるとともに、夏季の屋外作業や高温多湿な屋内作業場については、WBGT値の測定とその結果に基づき、休憩の確保、水分・塩分の補給、クールベストの着用等の必要な措置が取られるよう推進すること。

・ 熱中症予防対策の理解を深めるために、建設業等における先進的な取り組みの紹介や労働者等向けの教育ツールの提供を行うこと。

 

4、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」

厚生労働省では、熱中症予防対策の徹底を図ることを目的として、関係省庁及び関係団体との連携の下、平成29年に続き、平成30年も「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(期間:5月1日から9月30日まで)を実施しています。

このキャンペーンの目的は、職場における熱中症予防対策の浸透を図るとともに、重篤な災害を防ぐために、事業場におけるWBGT値の把握や緊急時の連絡体制の整備等を特に重点的に実施し、改めて職場における熱中症予防対策の徹底を図ることにあります。

 

 

5、職場でも必要に応じた熱中症予防対策を!

「熱中症」は、高温多湿な環境の中での作業などに起因して発症する病気です。

職場における熱中症といえば建設業というイメージもあるかもしれませんが、製造業、運送業、警備業、商業、清掃・と畜業などでも死傷者が出ています。

熱中症の予防のためにWBGT値を活用するほか、労働衛生教育を行うことも大切です。

 

必ずしも熱中症対策ばかりではないのでしょうけれども、最近では、猛暑日のテレワークを推奨する企業も出てきているようです。

職場において熱中症が起こるリスクは、業種や職場環境によって大きく異なりますが、死傷災害につながることもありますので、必要に応じた対策を検討する機会としてください。

2018年8月1日

「勤務間インターバル制度」をご存じですか?

 

長時間労働の是正に向けた取り組みとして注目されているものの一つに、「勤務間インターバル制度」があります。

今回は、この制度について、概観してみたいと思います。

 

1、「勤務間インターバル制度」とは?

 

「勤務間インターバル制度」とは、実際の終業時刻から始業時刻までの間隔を一定時間以上空ける制度をいいます。

労働者が日々働くにあたり、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息期間」を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図ろうとするものです。

 

勤務インターバルを導入する方法としては、次のようなものが考えられます。

①勤務終了後、次の始業時刻を繰り下げることで一定時間の休息時間を確保する方法

②ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないこととするなどにより「休息期間」を確保する方法

 

2、勤務インターバル制度の導入状況

 

厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」において、平成29年1月1日現在の状況として、次のような結果が示されています。

(1)実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が 11 時間以上空いている労働者の状況

1年間を通じて実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が11時間以上空いている労働者が「全員」(37.3%)である企業が最も多く、次いで「ほとんど全員」(34.3%)となっており、これらを合わせると、71.6%になります。

一方で、このような労働者が「全くいない」(9.2%)又は「ほとんどいない」(3.5%)である企業割合は12.7%となっています。

 

(2)勤務間インターバル制度の導入状況

勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合は、「導入している」が1.4%、「導入を予定又は検討している」が5.1%、「導入の予定はなく、検討もしていない」が 92.9%となっています。

 

(3)勤務間インターバル制度を導入していない理由

勤務間インターバル制度の「導入の予定はなく、検討もしていない」企業についてその理由をみると、「当該制度を知らなかったため」(40.2%)が最も多く、次いで、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」(38.0%)となっています。

 

3、普及促進施策等

 

(1)時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)

勤務間インターバルの導入に取り組む中小企業事業主を支援するため、助成金が設けられています。

労働時間等の設定の改善を図り、過重労働の防止及び長時間労働の抑制に向け、勤務間インターバルの導入に取り組んだ際に、その実施に要した費用の一部が助成されます。

 

(2)数値目標の設定

過労死等防止対策推進法に基づいて定められる「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しが行われ、その中で、勤務インターバル制度の普及に向けて、次のような数値目標が示されました。

労働者数30人以上の企業のうち、

①(2020年(平成32年)までに)勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。

②(2020年(平成32年)までに)勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定 時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を10%以上とする。

 

(3)導入の努力義務化

働き方改革法の一環として、労働時間等設定改善法において、勤務インターバル制度の導入について、事業主に努力義務が課せられる予定です(平成31年4月1日施行予定)。

事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととなります。

 

4、まずは適正な労働時間の把握を!

 

働き方改革が進む中、「長時間労働の是正」と、労働者が日々働くにあたり、必ず一定の休息時間を取れるようにするという、勤務インターバル制度の考え方は、表裏の関係にあります。

この制度は、働き方の見直しのための他の取り組みと併せて実施することで一層効果が上がるものと考えられていますが、いずれにしても、この制度を導入するにあたっては、始業時刻と終業時刻を適正に把握する必要があります。

労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの推進のために、この制度への関心が高まっていますので、労働時間を適正に把握し、適切な労働時間管理をしていく中で、「勤務インターバル制度」も検討してみてください。

2018年7月2日

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