法律トピックス

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確定拠出年金法が改正されました!

 

平成29年1月1日から個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo)の加入者の範囲が拡大されるなど、確定拠出年金については最近、耳にすることが多くなりました。

さらなる普及促進のため、平成30年5月1日施行の確定拠出年金法等の改正により、確定拠出年金における運用の改善、中小企業向けの対策などが図られました。

 

1、そもそも確定拠出年金とは?

確定拠出年金は、拠出限度額の範囲で拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度です。

給付額が確定している厚生年金基金や確定給付企業年金等とは異なり、将来の給付額が運用の結果により決定される点と、掛金の運用についての指図を個人が自己の責任において行う点に特徴があります。

確定拠出年金には、「企業型年金」と「個人型年金」があります。

(1)企業型年金

企業型年金の実施主体は、企業型年金規約の承認を受けた企業です。

実施企業に勤務する従業員(厚生年金保険の被保険者のうち第1号厚生年金被保険者又は第4号厚生年金被保険者)が、加入することができます。

掛金は、原則として、事業主が拠出しますが、規約に定めた場合は加入者も拠出することができます。

(2)個人型年金

個人型年金の実施主体は、国民年金基金連合会です。

次のとおり、基本的に、20歳以上60歳未満のすべての者が加入することができます。

①国民年金第1号被保険者:自営業者等(農業者年金の被保険者の者、国民年金の保険料を免除されている者を除きます。)

②国民年金第2号被保険者:厚生年金保険の被保険者(公務員や私学共済制度の加入者を含みます。企業型年金加入者においては、企業年金規約において個人型年金への加入が認められている者に限ります。)

③国民年金第3号被保険者:専業主婦(夫)等

掛金は、原則として、加入者自身が拠出します。

 

2、平成30年5月からの改正点

(1)簡易企業型年金の創設(企業型確定拠出年金関係)

簡易企業型年金は、設立条件を一定程度パッケージ化された制度とすることで、中小企業向けにシンプルな制度設計とした企業型年金です。

設立時に必要な書類等を削減して設立手続きを緩和するとともに、制度運営についても負担の少ないものにするなどの措置が講じられています。

簡易型企業年金は、厚生年金適用事業所の事業主であって、実施する企業型年金の企業型年金加入者の資格を有する者の数が100人以下であるものにおいてのみ、実施することができます。

(2)中小事業主掛金納付制度の創設(個人型年金関係)

中小事業主掛金納付制度は、企業年金を実施していない中小企業が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、個人型年金に加入する従業員の掛金に追加して、事業主が掛金を拠出することができる制度です。

事業主が拠出することができる掛金の額は、その従業員の掛金との合計が個人型年金の拠出限度額の範囲内(月額23,000円相当)とされます。

中小事業主掛金納付制度は、厚生年金適用事業所の事業主であって、使用する第1号厚生年金被保険者が100人以下のものにおいてのみ、実施することができます。

この制度を利用する場合は、個人型年金の実施主体である国民年金基金連合会及び厚生労働大臣(地方厚生(支)局長)に届け出る必要があります。

掛金は、中小事業主掛金と合わせて、事業主を介して国民年金基金連合会に納付します。

(3)その他

次のような改正がなされています。

①確定拠出年金における運用の改善(企業型年金、個人型年金関係)

②企業型年金加入者が資格喪失した場合における説明事項の追加(企業型年金関係)

③継続投資教育の努力義務化

 

3、選択肢の一つとしての確定拠出年金!?

確定拠出年金制度は、国民年金や厚生年金保険の給付と組み合わせることで、より豊かな老後生活を送ることができるよう、自助努力による資産形成方法の一つとして、平成13年10月に導入されました。

掛金拠出時、運用時、給付受取り時に、それぞれ税制上の優遇措置も講じられています。

厚生労働省によれば、平成30年2月末現在、企業型年金に約648万人、個人型年金に約85万人が加入しているそうです。

今回の改正では、確定給付企業年金制度や中小企業退職金共済制度との間での資産移換(ポータビリティ)の拡充などにより、継続的な自助努力を行う環境の整備も図られました。

そうは言っても、「運用」や「投資」などと聞くとハードルが高く感じ、何かきっかけがなければ、なかなか踏み出せないことも実情だろうと思います。

これを機に、まずは少し興味を持つところから始めていくとよいかもしれませんね。

2018年6月6日

年金分野などでもマイナンバーの利用が拡大されています!

 

平成28年1月にマイナンバー(個人番号)の利用が開始されてから、気づけば2年以上が経過し、その利用範囲も少しずつ拡大しています。

年金分野においても、平成30年3月5日施行の国民年金法施行規則、厚生年金法施行規則などの改正により、その利用がさらに拡大されました。

 

1、日本年金機構におけるマイナンバーの利用

 

(1)マイナンバーを活用した窓口における相談・照会対応

日本年金機構では、個人番号による年金相談・照会を受け付けています。

基礎年金番号が分からない場合であっても、マイナンバーカード(個人番号カード)を提示することで、年金に関する相談や年金記録に関する照会を行うことができます。

 

(2)マイナンバーによる各種届出・申請

平成29年1月以降、一部の届書には受給権者本人等の個人番号を記入することとなっていましたが、今後は、これまで基礎年金番号を記入していた届書にも、原則として個人番号を記入することとなり、届出様式も一部、変更されました。

 

これにより、年金関係の手続きの際には、原則として、個人番号を記入することとなりますが、その記入が困難な場合は、引き続き基礎年金番号を用いることができます。

届書に個人番号を記入する場合には、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)の添付が必要となります。

一方、届書に基礎年金番号を記入する場合には、年金手帳その他の基礎年金番号を確認できるものの添付が必要です。

 

(3)住所変更届及び氏名変更届の省略

日本年金機構においては、住基ネットから個人番号を基に最新の住所情報等を取得し、更新処理を行っています。

そのため、今後は、個人番号と基礎年金番号がひもづいている方については、被保険者の住所変更届及び被保険者・受給権者の氏名変更届を省略できることとなりました。

ちなみに、受給権者の住所変更届については、平成23年7月から省略できることとなっています。

 

(4)死亡届の省略

これまでも、個人番号と基礎年金番号がひもづいている受給権者については、その死亡の日から7日以内に戸籍法の規定による死亡の届出がされた場合には、死亡の届出を省略できることとされていました。

今後は、個人番号と基礎年金番号がひもづいている国民年金の第1号被保険者及び第3号被保険者についても、同様の場合には、死亡の届出を省略できることとなりました。

 

2、マイナンバーの利用に伴う取り扱い

 

(1)健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届について

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届にも、個人番号を記入することとなります(基礎年金番号の記入は不要ですので、採用時の基礎年金番号の確認も不要となります。)

個人番号を記入した場合には、被保険者住所の記載を省略できますが、住民票上の住所と異なるところ(いわゆる「居所」)に住んでいる被保険者については、別に住所変更届(居所届)が必要です。

 

(2)利用目的の明示と本人確認措置など

健康保険・厚生年金関係の各種届書等において、従業員の個人番号を記入する際には、事業主が、利用目的の明示と本人確認措置を行う必要があります。

①利用目的の明示

個人情報保護法の規定に基づき、事業主が従業員の個人番号を取得するときは、利用目的(年金関係事務において利用すること等)を本人に通知又は公表しなければなりません。

②本人確認措置

本人確認にあたっては、個人番号が正しい番号であることの確認(番号確認)と、個人番号を提出する者が個人番号の正しい持ち主であることの確認(身元(実存)確認)が必要です。

 

なお、国民年金の第3号被保険者(厚生年金被保険者の被扶養配偶者)に関する届出は、厚生年金被保険者の勤務先の事業主を経由して行います。

第3号被保険者が本人の個人番号を記載して届出をする場合には、事業主又はその委託を受けた厚生年金被保険者が、第3号被保険者の本人確認を行う必要があります。

 

3、今後に向けて

 

導入当時はその取扱方法などがかなり話題になったマイナンバーですが、知らぬ間に、その利用範囲は、行政主導で着実に拡大しています。

2020年度から、マイナンバーカードを健康保険証の代わりとして使えるようになるようなことも報道されており、マイナンバーの利用範囲は、ますます拡大していくようです。

情報セキュリティ対策などへの懸念は残りつつも、この流れが止まらないのであれば、せめて個人番号を含めた個人情報の管理については、十分に注意したいものですね。

マイナンバーカードも、あまり普及していないようですが、個人的には、交付申請をして、どの程度使えるものなのかを試してみてもよいかもしれないと最近、少し思っています!

2018年5月1日

障害者の法定雇用率が引き上げられました!

 

障害者の雇用の促進等に関する法律(通称「障害者雇用促進法」)が改正され、平成30年4月1日から、障害者雇用率制度に係る障害者雇用率が引き上げられました。

 

1、障害者雇用率制度とは?

 

障害者雇用率制度とは、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定し、事業主等に障害者雇用率達成義務を課すものです。

障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる「共生社会」実現の理念の下、この制度により、障害者に一般労働者と同じ水準で常用労働者となり得る機会を与えようとしているわけです。

 

これまで、障害者雇用率制度における障害者雇用義務の対象は、身体障害者と知的障害者とされ、精神障害者を雇用した場合には、身体障害者または知的障害者である労働者を雇い入れたものとみなすといった取り扱いがされていました。

今回の改正により、この障害者雇用義務の対象に、精神障障害者が加えられました。

 

2、障害者雇用率の引上げ

 

(1)平成30年4月1日以降の障害者雇用率

障害者雇用義務の対象に精神障害者が加えられたことに伴い、障害者雇用率の算定基礎にも精神障害者が加えられることとなり、障害者雇用率も引上げとなりました。

平成30年4月1日からの障害者雇用率は、2.2%(国・地方公共団体等にあっては2.5%、都道府県等の教育委員会にあっては2.4%)となります。

 

ちなみに、障害者雇用納付金なども、申告対象期間が平成30年4月から平成31年3月までの分からは、引上げ後の障害者雇用率で算定することとなります。

 

(2)対象事業主の範囲の拡大

この障害者雇用率の引上げに伴い、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲も、従業員50人以上から45.5人以上に広がりました。

従業員45.5人以上の事業主には、次の義務があります。

①毎年6月1日時点の障害者雇用状況を報告すること

②障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めること

 

3、精神障害者の取り扱い

 

(1)対象障害者の範囲

前述のように、今回の改正により、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加えられました。

これにより、雇用義務の対象となる「対象障害者」が、身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限ります。)となりました。

 

(2)精神障害者である短時間労働者の算定方法の見直し

精神障害者の職場定着を促進するため、法定雇用率制度などにおける精神障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者)に関する算定方法が見直されました。

具体的には、精神障害者である短時間労働者であって、次の①及び②をともに満たすものについては、1人をもって、0.5人ではなく、1人とみなします。

①新規雇入れから3年以内の者または精神障害者保健福祉手帳の取得から3年以内の者であること

②平成35年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること

 

ただし、退職後3年以内に、同じ事業主に再雇用された場合は、特例の対象となりませんので、原則どおり、精神障害者である短時間労働者1人をもって、0.5人と算定します。

また、発達障害により知的障害があると判定されていた者が、その発達障害により精神障害者保健福祉手帳を取得した場合は、判定の日を、精神保健福祉手帳取得の日とみなします。

 

4、障害者雇用義務を果たしていますか?

 

平成29年の障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)によれば、雇用障害者数、実雇用率はともに過去最高を更新し、法定の障害者雇用率を達成している企業の割合も50.0%となっています。

「共生社会」の実現に向けたこのような流れの一方で、未達成企業のうち障害者を1人も雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)の割合は、58.7%に上っています。

 

障害者の「できること」に目を向け、活躍の場を提供することで、貴重な労働力を確保することができたり、障害者がその能力を発揮することができるよう職場環境を改善することで、他の従業員にとっても安全で働きやすい職場環境を整えることができたりすれば、企業にとっても大きなメリットとなるでしょう。

厚生労働省のホームページなどでは、精神障害者が企業で活躍している事例などが紹介されています。

また、障害者雇用のための各種助成金や職場定着に向けた人的支援など、さまざまな支援制度もありますので、これらを活用することも含めて、まずは1人からでも、障害者の雇用に目を向けてみませんか?

2018年4月3日

無期転換ルールへの対応はお済みですか?

 

有期契約労働者の無期契約化を図り、雇用を安定化させる目的で、平成25年4月1日に改正労働契約法が施行されました。

この施行から5年を経過する平成30年4月から、多くの企業で本格的に無期転換申込権の発生が見込まれています。

 

1、改めて、無期転換ルールとは?

 

労働契約法の改正により、平成25年4月1日以降の有期労働契約期間が同一の使用者との間で更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールです。

 

有期契約労働者(契約期間に定めのある労働者)が、この無期転換の申込みをした場合には、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされ、その時点で、次回更新からの無期労働契約が成立します。使用者が、これを断ることはできません。

転換後の無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定め(労働協約、就業規則、個々の労働契約) がない限り、直前の有期労働契約と同一となります。

労働条件を変える場合は、別途、就業規則の改定などが必要です。

 

2、無期転換ルールへの対応

 

無期転換ルールへの対応にあたっては、中長期的な人事労務管理の観点から、次のような検討のほか、就業規則の整備などの対応が必要となります。

①円滑な導入のためにどのようにして労使双方にとって納得性の高い制度を構築するか。

②無期転換労働者の役割や責任の範囲を、どのように設定するか。

例えば、有期契約労働者の無期労働契約への転換方法としては、雇用期間のみの変更、多様な正社員への転換、正社員への転換が考えられます。

 

なお、無期転換ルールの適用に当たっては、有期雇用特別措置法により、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者等については、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換申込権が発生しないとする特例が設けられています。

この認定を受けるためには、都道府県労働局に対し申請を行う必要があます。

 

3、「いわゆる『期間従業員』の無期転換に関する調査」の結果

 

昨年12月27日に、厚生労働省から、大手自動車メーカー10社に対して行った「いわゆる『期間従業員』の無期転換に関する調査」の結果が公表されました。

次のような結果が示されています。

(1)期間従業員の有期労働契約について、10社中10社が更新上限を設けており、そのうちの7社が、更新上限を2年11か月(又は3年)としている。

(2)期間従業員の再雇用について、10社中7社が、再応募が契約終了から6か月未満の場合には再雇用しない運用としている。そのほかの3社については、再応募が契約終了から6か月未満であっても再雇用している企業が2社、再雇用をしていない企業が1社である。

(3)10社中7社で、期間従業員を正社員転換する仕組みを制度として設けており、ほかの3社中3社では、制度化しているわけではないが、正社員登用を行っている。

 

今回の調査について、厚生労働省は、無期転換ルールに関する企業の対応について外形的に把握したものであり、その限りでは、現時点で直ちに法に照らして問題であると判断できる事例は確認されなかったとしています。

しかし、この無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。

また、有期契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、雇止めをすることは許されない場合もありますので、慎重な対応が求められます。

個々の事案における雇止めや就業規則の変更の有効性については、最終的には司法において判断されることとなります。

 

4、人事管理のあり方を見直すきっかけに。

 

現在、多くの企業にとって、有期契約労働者が会社の事業運営に不可欠で、恒常的な労働力である傾向が見られます。

特に長期間雇用されている有期契約労働者は、例えば、仮に「1年契約」で働いていたとしても、ほぼ毎年「自動的に」更新を繰り返しているだけといえます。

有期契約労働者については、雇止めの不安の解消や処遇の改善も課題となっています。

 

有期契約労働者が無期に転換することで、企業にとっては、①意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなり、また、②長期的な人材活用戦略を立てやすくなるといったメリットが期待されます。

同時に、労働者にとっても、安定的かつ意欲的に働き、長期的なキャリア形成を図ることが可能になります。

 

有期契約労働者などの企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正社員化、人材育成、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対する助成制度(キャリアアップ助成金)なども設けられています。

ぜひ無期転換制度への対応を積極的に行い、人事管理の仕組みを見直す機会の一つとしてくださいね。

2018年3月2日

特別な休暇制度を考えてみませんか?

 

働き方・休み方改革を進めるための支援策の一つに、特別な休暇制度の普及促進が掲げられていますが、ピンと来ないのが実情ではないでしょうか。

今回は、「特別な休暇制度」について、少しご紹介したいと思います。

 

1、特別な休暇制度とは?

特別な休暇制度とは、特に配慮を必要とする労働者に付与される休暇制度のことで、休暇の目的や取得形態を労使による話し合いにおいて任意で設定できる法定外休暇を指します。

特に配慮を必要とする労働者としては、「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針・平成20年厚生労働省告示第108号)に、次のものが例示されています。

①特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者

②子の養育又は家族の介護を行う労働者

③妊娠中及び出産後の女性労働者

④公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者

⑤単身赴任者

⑥自発的な職業能力開発を図る労働者

⑦地域活動・ボランティア等を行う労働者

⑧その他特に配慮を必要とする労働者

 

2、病気療養のための休暇制度(病気休暇)

近年、長期にわたる治療等が必要な疾病やメンタルヘルス上の問題を抱えながら、職場復帰を目指して治療を受ける労働者や治療を受けながら就労する労働者の数が増加しています。

このような労働者をサポートするための制度としては、病気休暇制度をはじめ、次のような制度が考えられます。

(1)時間単位・半日単位の年次有給休暇

治療・通院のために時間単位や半日単位で取得できる休暇制度です。

時間単位の年次有給休暇については、労働基準法に基づき、労使協定を締結することによって、年に5日を限度に取得できるようになります。

(2)失効年休積立制度

失効した年次有給休暇を積み立てて、病気等で長期療養する場合に使えるようにする制度です。

(3)病気休暇制度

私傷病の療養のために、年次有給休暇とは別に利用することができる休暇制度です。

取得要件や期間は、労使の協議あるいは休暇を与える使用者が決定することができます。

(4)短時間勤務制度

疾病治療のために、一定の期間、所定労働時間を短縮する短時間勤務制度を利用するものです。

ちなみに、事業者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断の結果を踏まえた医師等の意見や面接指導の結果を踏まえた医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少その他の労働時間等に係る措置を適切に講じなければなりません。

 

3、犯罪被害者の被害回復のための休暇

犯罪行為により被害を受けた被害者とそのご家族又はご遺族(犯罪被害者等)は、犯罪による生命、身体、財産上の直接的な被害だけではなく、さまざまな二次被害に直面します。

二次被害には、①事件に遭ったことによる精神的ショックや身体の不調、②医療費の負担や失職・転職などによる経済的困窮、③捜査や裁判の過程における精神的・時間的負担、④周囲の人々の無責任なうわさ話やマスコミの取材・報道による精神的被害などがあります。

このような被害を軽減・回復するためにも、犯罪被害者等が仕事を続けられることは重要な意味を持っています。

 

犯罪被害者の被害回復のための休暇とは、犯罪被害者等に対して、被害回復のために付与される休暇です。

例えば、犯罪被害による精神的ショックや身体の不調からの回復を目的として1週間の休暇を付与することや、治療のための通院や警察での手続き、裁判への出廷等のために利用できる休暇を付与することなどが考えられます。

また、必ずしも特別な休暇制度として設けなくても、犯罪被害者等となった従業員は休暇の取得が可能であることを周知することにより、従業員に安心感を与えることができます。

 

4、特別な休暇制度の導入・活用を!

例えば、病気休暇制度があれば、社員は、病気やケガなどの場合に一定の安心を得ることができますし、企業にとっても、これを人材の安定的な確保や仕事の質や効率の向上につなげることができるかもしれません。

一方で、平成29年就労条件総合調査(厚生労働省)によれば、平成29年1月1日現在、病気休暇制度がある企業割合は30%程度となっています。

 

特別な休暇制度には、「病気休暇」や「犯罪被害者の被害回復のための休暇」のほか、「ファミリーサポート休暇」「リフレッシュ休暇」「ボランティア休暇」「裁判員休暇」「自己啓発休暇」などが考えられています。

うまく活用すると、社員のモチベーションも上がり、意外な効果を発揮するかもしれません。

労使で十分に話し合って、社内のニーズに応じた特別な休暇制度を検討してみてはいかがでしょうか。

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