法律トピックス

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雇用保険の適用が拡大されました!

少子高齢化が進展する中で高齢者等の就業促進及び雇用継続を図ること等を目的とした雇用保険法の改正が行われ、平成29年1月1日以降、65歳以上の労働者についても、「高年齢被保険者」として雇用保険が適用されることとなりました。

 

1、「高年齢被保険者」とは?

65歳以上の被保険者であって、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者を「高年齢被保険者」といいます。

従来は、65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている労働者(高年齢継続被保険者)を除き、雇用保険の適用から除外されていましたが、高年齢者の雇用を一層推進するため、65歳以降に新たに雇用される労働者も雇用保険の適用対象とされました。

 

2、資格取得の手続きは?

65歳以上の労働者についても、雇用保険の適用要件(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込があること)に該当する場合には、資格取得手続が必要です。

(1)平成29年1月1日以降に新たに雇用した場合

当初から適用要件に該当する労働者は、雇用した時点から高年齢被保険者となります。

この労働者の資格取得届は、雇用した日の属する月の翌月10日までに提出します。

一方、雇い入れ後に所定労働時間などの労働条件の変更により適用要件に該当することとなった労働者は、その時点から高年齢被保険者となります。

この労働者の資格取得届は、労働条件が変更となった日の属する月の翌月10日までに提出します。

 

(2)平成28年12月31日までに雇用し、平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合

適用要件に該当する労働者は、平成29年1月1日から高年齢被保険者となります。

この労働者の資格取得届は、提出期限について特例が設けられており、平成29年3月31日までに提出することとなっています。

一方、平成29年1月1日以降に所定労働時間などの労働条件の変更により適用要件に該当することとなった労働者は、その時点から高年齢被保険者となります。

この労働者の資格取得届は、労働条件が変更となった日の属する月の翌月10日までに提出します。

 

(3)平成28年12月31日時点で高年齢継続被保険者である労働者を平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合

この労働者については、自動的に高年齢被保険者に被保険者区分が変更されますので、資格取得届の提出は不要です。

 

3、雇用保険料の徴収は?

高年齢被保険者についての保険料は、平成31年度までは免除されます。

したがって、平成31年度までは、これまでと同様に、保険年度の初日(4月1日)において64歳以上の労働者からは、雇用保険料の労働者負担分を徴収する必要もありません。

 

4、受けることができる給付は?

平成29年1月1日より、高年齢被保険者も各給付の対象となります。

(1)高年齢求職者給付金

平成29年1月1日以降に高年齢被保険者として離職した場合には、受給要件を満たすごとに、高年齢求職者給付金が支給されます(年金との併給も可能です。)。

また、高年齢求職者給付金の支給を受けることができる資格を有する者(高年齢受給資格者)等については、就職促進給付のうち常用就職支度手当、移転費及び求職活動支援費の支給対象となります。

 

(2)育児休業給付金及び介護休業給付金

平成29年1月1日以降に高年齢被保険者として育児休業や介護休業を新たに開始する場合には、要件を満たせば、育児休業給付金や介護休業給付金の支給対象となります。

 

(3)教育訓練給付金

次のいずれかに該当する者が平成29年1月1日以降に厚生労働大臣が指定する教育訓練を開始する場合には、要件を満たせば、教育訓練給付金の支給対象となります。

①教育訓練を開始した日において高年齢被保険者である者

②離職により高年齢被保険者(平成28年12月31日までに離職した者は高年齢継続被保険者)でなくなった日の翌日から教育訓練の開始日までの期間が1年以内の者

 

5、今回の改正を受けて

平成28年版高齢社会白書(内閣府)によれば、60歳以上の高齢者のうち就労を希望する高齢者の割合は約7割に達しています。

また、平成27年時点で65歳以上の雇用者は458万人にまで増加しています。

今回の改正を契機に、65歳以上の雇用者がさらに増加することが見込まれますので、受け入れる企業側も、このような人材の有効な活用策を検討したいものです。

まずは雇用保険の被保険者について、資格取得届などの必要な届出をお忘れなく!

2017年3月6日

続/育児・介護休業法等が改正されました!

 

前回もお知らせしましたが、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称「育児・介護休業法」)が、平成29年1月1日より一部改正されました。

この改正では、次のような雇用環境の整備が図られています。

(1)介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備

(2)多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備

(3)妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備

 

今回は、このうちの(2)及び(3)について、取り上げます。

 

1、子の看護休暇の取得単位の柔軟化

子の看護休暇は、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇です。

子の看護休暇についても、介護休暇と同様に、半日単位で取得することができることとなりました。

その対象から除外となる労働者などについては、介護休暇に関するものと同様です。

 

2、有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和

育児休業は、子を養育するためにする休業です。

もちろん子の父親、母親のいずれでも育児休業をすることができますが、有期契約労働者については、所定の要件を満たす者に限られます。

この有期契約労働者の育児休業の取得要件が、次のように緩和されました。

①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること

②子が1歳6か月になるまでの間に、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと

 

このうちの②が今回、改正のあった部分です。

育児休業の申出があった時点で労働契約の期間満了や更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。

 

3、育児休業等の対象となる子の範囲の拡大

労働者と法律上の親子関係がある子であれば、実子であるか養子であるかを問わず、育児休業の対象となる「子」となります。

また、今回、育児休業の対象となる「子」に、次の関係にある子が追加されました。

①特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子を養育している場合

②養子縁組里親に委託されている子を養育している場合

③当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子を養育する場合

 

これに伴い、子の看護休暇、育児のための所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務の対象となる子の範囲も同様に拡大されます。

一方、介護休業の対象となる子については、従来どおり、法律上の親子関係がある子に限られます。

 

4、育児休業等に関するハラスメントの防止措置

育児休業等に関するハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務づけられました。

育児休業等に関するハラスメントとは、職場において、上司又は同僚による育児休業等の制度又は措置の申出・利用に関する言動により就業環境が害されることをいいます。

 

具体的には、事業主は、次の措置を講じなければなりません。

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

②相談(苦情を含みます。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

④育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

⑤これらの措置と併せて講ずべき措置

・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること

・相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

なお、平成29年1月1日施行の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称「男女雇用機会均等法」の改正により、「妊娠、出産等に関するハラスメントの防止措置」を講ずることも、事業主の義務となりました。

 

 

子育てや介護など家庭の状況から時間的制約を抱えている時期の労働者とって、子育てや介護と仕事の両立は、大きな課題の一つです。

法律でこのような労働者の就業環境の整備等が進められていますが、それだけで家庭と仕事を両立することができるわけではありません。

このような制度を生きたものにしていくためには、職場での取り組みが欠かせませんね。

2017年2月2日

育児・介護休業法が改正されました!

 

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称「育児・介護休業法」)が、平成29年1月1日より一部改正されました。

この改正では、次のような雇用環境の整備が図られています。

(1)介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備

(2)多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備

(3)妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備

今回は、これらのうちの(1)の介護離職の防止に関する内容について、取り上げます。

 

1、介護休業の分割取得

介護休業は、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業です。

これまで、介護休業の取得は、対象家族1人につき、要介護状態ごとに1回、通算して93日までとされていました。

介護の始期、終期、その間の期間にそれぞれ対応することができるよう、対象家族1人につき、要介護状態が異なるか否かにかかわらず、3回を上限として、通算して93日まで、介護休業を分割して取得することができることとなりました。

 

2、介護休暇の取得単位の柔軟化

介護休暇は、対象家族の介護や通院等の付添い、対象家族が介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行等の対象家族の必要な世話を行うための休暇です。

このようなに日常的な介護ニーズに対応するため、1日単位に加えて、半日単位で介護休暇を取得することができることとなりました。

ただし、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者については、1日単位の取得のみが認められます。

また、業務の性質や業務の実施体制に照らして、半日単位の取得が困難と認められる労働者については、労使協定により除外することができます。

なお、半日単位は、原則として、1日の所定労働時間の2分の1であって、始業時刻から連続し、又は終業時刻に連続するものとされていますが、労使協定により、所定労働時間の2分の1以外を半日とすることができます。

 

3、介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)

要介護状態にある対象家族を介護する労働者の日常的な介護ニーズに対応するため、事業主は、次のいずれかを選択して講じなければなりません。

①所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)

②フレックスタイム制度

③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)

④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度

事業主が講じた介護のための所定労働時間の短縮措置等について、これまでは、介護休業と通算して93日の範囲内での利用が可能でしたが、より柔軟な利用が可能となるよう、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となりました。

 

4、介護のための所定外労働の免除(新設)

要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、①1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働及び②深夜業(午後10時から午前5時までの間の労働)の制限を請求することができます。

これらに加えて、1回の請求につき1か月以上1年以内の期間で、介護のための所定外労働の免除を請求することができることとなりました。

この請求がなされたときは、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、当該労働者を、所定労働時間を超えて労働させてはなりません。

ただし、①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者、②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定により除外することができます。

 

5、有期契約労働者の介護休業の取得要件の緩和

有期契約労働者の介護休業取得要件が、次のように緩和されました。

①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること

介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと

 

6、介護休業等の対象家族の範囲の拡大

対象家族に、労働者が同居や扶養をしていない祖父母、兄弟姉妹及び孫が追加されました。

これにより、対象家族の範囲は、①労働者の配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹及び孫、②配偶者の父母に拡大されました。

 

これらの改正により、「介護離職ゼロ」に向けた取り組みが少しずつ進められています。

これらは法律で定める最低限のものですから、労働者がより仕事と介護との両立をしやすくなるような制度を、就業規則などで設けることももちろん可能です。

事業主の方々は、まずは就業規則の見直しをお忘れなく!

そして、労働者の方々は、どのような制度を利用することができるのかを知ることから始めてみてはいかがでしょうか?

2017年1月11日

長時間労働削減に向けた取り組みを始めてみませんか?

ワーク・ライフ・バランスの意識が高まる一方で、依然としてわが国では、長時間労働が大きな問題の一つとなっています。

今回は、長時間労働削減に向けた行政の取り組みと、企業で検討したい取り組みをほんの少しご紹介します。

 

1、行政の取り組み(労働基準監督官による監督指導の強化)

(1)重点監督対象の拡大

平成27年4月から12月までの間に、月100時間を超える残業が疑われるすべての事業場(8,530 事業場)を対象とした労働基準監督署による監督指導が実施されました。

その結果、6割弱の事業場で違法な残業が行われており、そのうち、約8割の事業場で月80時間を超える残業が、約6割の事業場で月100時間を超える残業があったことが報告されています。

このような結果を踏まえ、平成28年4月から、監督指導の対象が、残業が月80時間を超える事業場(年間約2万事業場)にまで拡大されています。

 

(2)監督指導・捜査体制の強化と全国展開

平成28年4月に、次のような体制強化が図られています。

厚生労働省本省:「過重労働撲滅特別対策班」(本省かとく)の新設

ここでは、企業本社への監督指導のほか、労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよう、労働局に対し必要な指導調整を行っています。

 

各都道府県労働局(47局):「過重労働特別監督監理官」の新設

すべての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監督監理官」が1名ずつ配置されました。

これにより、平成27年4月に東京労働局及び大阪労働局の2局のみに設置された「過重労働撲滅特別対策班」(かとく)の機能が全国に拡大されました。

 

2、企業で取り組みたいこと

(1)年次有給休暇の取得促進(計画的付与制度の導入などによる職場環境の整備)

例えば、年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができます。これを年次有給休暇の計画的付与制度といいます。

この制度を導入すると、休暇取得の確実性が高まり、労働者にとっては予定した活動を行いやすく、事業主にとっては計画的な業務運営が可能になります。

この制度の活用の方式としては、企業や事業場単位で一斉に付与する方式のほか、班やグループ別、個人別に付与する方式など様々な方式が考えられます。

実際には、夏季や年末年始に年次有給休暇を計画的に付与し、大型連休としたり、暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡しとして計画的付与制度を活用し、連休としたりするためにも利用されています。

 

(2)所定外労働の削減

例えば、「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」を導入し、計画的に業務を行わせることで、残業をなくす取り組みも行われています。

また、長時間労働が続いている場合は、その原因を検討したうえで、人員配置を考慮したり、作業者の増員を図ったりすることで、業務内容の見直しを行うことも重要です。

 

(3)特別な休暇制度の導入

特別な休暇制度(特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度)とは、休暇の目的や取得形態を労使による話し合いにおいて任意で設定できる法定外休暇のことです。

考えられる休暇制度として、次のようなものが挙げられています。

病気休暇:治療を受けながら就労する労働者をサポートするために付与される休暇

ボランティア休暇:労働者が自発的に無報酬で社会に貢献する活動を行う際、その活動に必要な期間について付与される休暇

リフレッシュ休暇:職業生涯の節目に労働者の心身の疲労回復等を目的として付与される休暇

裁判員休暇:裁判員等として活動する労働者に対して、その職務を果たすために必要な期間について付与される休暇

犯罪被害者の被害回復のための休暇:犯罪行為により被害を受けた被害者及びその家族等に対して、被害回復のために付与される休暇

 

3、長時間労働を削減することの意義

長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性が高くなり、生産性は低下します。また、離職リスクの上昇や企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じさせることになります。

他方で、適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することにより、仕事に対する労働者の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率を向上させることが期待されます。また、育児や介護などの配慮すべき事情を抱えた労働者の活用の道も広がるでしょう。

長時間労働が当たり前のようになっている職場も少なくないと思いますが、行政の監督指導も強化されている中、労働者のためばかりではなく、企業経営の観点からも、長時間労働の削減や抑制への取り組みを一度、検討したいものです。

11月は「過労死等防止啓発月間」です!

 

過労死防止等啓発月間は、国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるために、過労死等防止対策推進法に基づき、設けられています。

 

1.過労死等防止対策推進法

近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっています。

過労死等は、本人はもとより、その遺族や家族のみならず、社会にとっても大きな損失です。

これらのことから、過労死等防止対策推進法は、過労死等の防止のための対策を推進することにより、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として、平成26年11月に施行されました。

 

2.「過労死等」の定義とその対策

過労死等防止対策推進法において「過労死等」とは、次のものをいいます。

(1)業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡

(2)業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

(3)死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

 

3.「過労死等の防止のための対策に関する大綱」

過労死等防止対策推進法に基づき、平成27年7月24日に、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されています。

この大綱では、将来的に過労死等をゼロとすることを目指し、次の目標が掲げられています。

(1)週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下に(平成32年まで)

(2)年次有給休暇取得率を70%以上に(平成32年まで)

(3)メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上に(平成29年まで)

 

4.「過労死等防止対策白書」

平成28年10月7日には、過労死等防止対策推進法に基づき、初めて「過労死等防止対策白書」が公表されました。

この白書では、(1)労働時間等の状況、(2)職場におけるメンタルヘルス対策の状況、(3)就業者の脳血管疾患、心疾患等の発生状況、(4)自殺の状況などが報告されています。

 

5.事業主が取り組むべきこと

(1)労働基準や労働安全衛生に関する法令の遵守

職場における取り組みとしては、まず事業主が労働基準や労働安全衛生に関する法令を遵守することが重要です。

(2)長時間労働の削減など

長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見が得られています。

そのため、時間外・休日労働協定の内容を労働者に周知し、週労働時間が60時間以上の労働者をなくすよう努めるなど、長時間労働の削減に取り組む必要があります。

 

また、①職場におけるメンタルヘルス対策の推進、②過重労働による健康障害の防止、③職場のパワーハラスメントの予防・解決、④働き方の見直し、⑤相談体制の整備等にも取り組みたいところです。

 

6.過労死等が起こってしまったら

過労死等と認定されるかどうかが争われることがほとんどです。

具体的には、労災認定について争われることになります。

先日(平成28年10月7日)も、大手広告会社の新入社員だった女性が自殺したことは長時間労働による過労が原因だったとして、労災と認定されたことが大きく報道されました。

 

ちなみに、脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、①発症前1か月間におおむね100時間又は②発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるものとされています。

 

また、企業が管理責任を怠ったとして民事裁判が提起されることもあります。

事業主の安全配慮義務違反があったとして、1億円近い賠償が命じられた事例もあります。

 

7.過労死防止等啓発月間に

厚生労働省では、11月中に、過労死等の防止のため、国民への周知・啓発を目的としたシンポジウムや、著しい過重労働や悪質な賃金不払残業などの撲滅に向けた監督指導や無料の電話相談などを行うこととしています。

 

過労死等が起こってしまった場合には、企業の価値を下げることになりかねません。

過労死等の防止のためには、事業主はもちろん、それぞれの職場において上司などの理解を深めることが重要です。

そして、何よりもつらい思いをしている労働者に気づくことが大切だと思います。

つらいに思いをしている方々がいないかを見つめてみる機会にしてはいかがでしょうか。

2016年11月2日

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