法律トピックス

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障害者雇用~「納付金を納めれば済む」と思わないで!!

障害者の雇用の促進等の関する法律(通称:障害者雇用促進法)の規定に基づく障害者雇用義務と障害者雇用納付金制度については、前回取り上げましたが、「納付金を納めれば済むことではないか」と思っていませんか?

障害者雇用率達成に向けては、障害者雇用促進法に基づき、次のような流れで、行政指導などが行われます。

 

1、雇用状況報告

雇用労働者数が常時50人以上の事業主は、毎年、6月1日現在における身体障害者、知的障害者及び精神障害者の雇用に関する状況を、翌7月15日までに、管轄公共職業安定所長に報告しなければなりません。

障害者雇用納付金制度の対象となる事業主のみならず、障害者を1人以上雇用しなければならない事業主は、この報告義務を負っているわけです。

 

2、雇入れ計画作成命令の発出

障害者実雇用率が著しく低く、計画命令基準(実雇用率が前年の全国平均実雇用率未満であり、かつ、法定雇用障害者数に対して不足している障害者数が5人以上であることなど(※))に該当する企業については、事業主に対して、公共職業安定所長から「障害者の雇入れに関する計画」(翌年1月を始期とする2年間の計画)を作成するように命じられます。

この計画は、計画期間中に障害者雇用率を達成する(不足数を0にする)ように、次の事項について作成しなければなりません。

(1) 計画の始期及び終期

(2) 雇入れを予定する常時雇用する労働者の数及び雇入れを予定する障害者の数

(3) 計画の終期において見込まれる常時雇用する労働者の総数及び障害者の数

計画を作成した事業主は、遅滞なく、管轄公共職業安定所にその計画を提出しなければなりません。

また、計画期間中は毎年6月1日現在の計画の実施状況を翌7月15日までに、計画の終期には、終期おける状況を終期の翌日から起算して45日以内に、管轄公共職業安定所に報告しなければなりません。

 

3、雇入れ計画の適正実施勧告

「雇入れ計画は作成したけれども、障害者の雇用が進んでいない」など、計画の実施状況が悪い企業については、事業主に対して、計画期間中(計画の1年目終了時)において、その適正な実施に関し勧告が行われます。

 

4、雇入れ計画作成の再命令及び適正実施勧告の発出

雇入れ計画の結果、再計画命令基準をクリアしなかった場合には、再度、障害者雇入れに関する計画を作成するように命じられ、適正実施勧告がなされます。

ちなみに、この再計画命令基準(実雇用率が計画始期の年の全国平均実雇用率未満であることなど)は、当初の計画命令基準(※)よりも厳しいものとなっています。

たとえば、法定雇用者数が5人以上の企業で、雇用障害者の不足数が5人未満となれば、当初の計画命令基準はクリアしますが、実雇用率が全国平均実雇用率未満であれば、再計画命令基準をクリアすることはできません。

また、全国平均実雇用率も年々上昇しています(平成24年1.69%、平成25年1.76%、平成26年1.82%)ので、その点でも再計画命令基準をクリアすることが厳しくなるといえます。

 

5、特別指導

雇用状況の改善が特に遅れている企業については、事業主に対して、計画の終期の翌年4月1日から12月31日までの間に、公表を前提とした特別指導が実施されます。

また、不足数の特に多い企業については、当該企業の幹部に対し、厚生労働省本省による直接指導が実施されることもあります。

 

6、企業名の公表

雇入れ計画の適正な実施に関し勧告を受け、一連の指導を受けたにもかかわらず、改善が見られない企業については、企業名が公表されます。

つまり、最終的には、企業名の公表により、社会的な制裁も受けかねないということです。

障害者施策の基本理念である「すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」のためには、職業を通じた障害者の社会参加が重要です。

障害者の就労意欲の高まりに加え、CSR(企業の社会的責任)への関心に高まりなどを背景として、積極的に障害者雇用に取り組む企業も増加していますが、現状では、法定雇用率達成企業の割合は50%(平成26年6月1日現在で44.7%)を下回っています。

障害者の雇用にあたって事業主の皆様が利用することのできる支援制度もありますので、他人事と思わずに、障害者雇用を含めた多様な就業形態を模索してみてはいかがでしょうか?

2015年7月7日

知っていますか、「障害者雇用促進法」とその改正

平成27年4月1日施行

障害者の雇用の促進等に関する法律(通称「障害者雇用促進法」)が、平成27年4月1日から、一部改正されました。

 

障害者雇用促進法については、意欲・能力に応じた障害者の雇用機会を拡大する目的で、平成21年4月1日から順次、改正が行われてきましたが、今回の改正により、障害者雇用納付金制度の適用対象が、常用雇用労働者が100人を超える中小企業にまで拡大されました。

 

1、障害者の雇用義務

まず、障害者雇用促進法により、事業主には障害者(※1)の雇用が義務づけられています。

事業主は、その雇用する障害者である労働者の数が、法定雇用障害者数以上であるようにしなければなりません。

 

法定雇用障害者数は、「常用雇用労働者数×法定雇用率」(1人未満の端数は切り捨て)により計算します(※2)一般事業主に係る法定雇用率は、現在「100分の2.0」です。

したがって、たとえば、労働者を120人雇用している事業主は、2人(≒120人×100分の2.0)の障害者を雇用しなければならないこととなります。

 

(※1)

現在、事業主がその雇用を義務づけられている対象(雇用義務の対象)は、身体障害者または知的障害者である労働者ですが、精神障害者である労働者についても、身体障害者または知的障害者である労働者とみなして、障害者である労働者の数に算入します。

なお、平成30年4月1日以降は、精神障害者も、事業主の雇用義務の対象となります。

(※2)

常用雇用労働者数及び障害者である常用雇用労働者数の計算に当たっては、短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)1人を0.5人カウントとするなどのルールが定められています。

そのため、これらの労働者数は、実際の労働者数と異なることがあります。

 

2、障害者雇用納付金制度(納付金の徴収・調整金の支給等)

企業が障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要とされることが多く、経済的負担が伴います。

障害者雇用納付金制度は、事業主間のこのような経済的負担を調整する観点から、(1)雇用障害者数が法定雇用率に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1か月当たり5万円の障害者雇用納付金を徴収し、これを原資として、(2)法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主等に対し、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金及び各種助成金を支給する仕組みです。

 

3、障害者雇用納付金制度の対象範囲の拡大

近年、障害者の雇用が着実に進展する一方で、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用状況の改善が遅れている現状があります。

このような現状を踏まえ、中小企業における障害者雇用の促進を図る目的で、かつて常用雇用労働者が300人を超える事業主のみであった障害者雇用納付金制度の対象が、平成22年7月から、常用雇用労働者が200人を超え300人以下である事業主に拡大されていました。

今回の改正により、その対象が、さらに常用雇用労働者が100人を超え200人以下である事業主にまで拡大されたわけです。

 

4、障害者雇用納付金の減額特例

障害者の実雇用率(常用雇用労働者に占める障害者である常用雇用労働者の割合)は、常用雇用労働者が100人~299人規模の企業が最も低い状況にあるといわれています。

今回の改正により、この規模の企業もすべて障害者雇用納付金制度の対象となったわけですが、常用雇用労働者が100人を超え200人以下の事業主については、平成27年4月から平成32年3月までの5年間、障害者雇用納付金が5万円から4万円に減額されます。

 

※常用雇用労働者が200人を超え300人以下の事業主についても、平成22年7月から平成27年6月までの5年間、障害者雇用納付金が5万円から4万円に減額されています。

 

5、申告・納付期限など

障害者雇用納付金の申告書等は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県申告申請窓口を経由して提出します。

障害者雇用納付金の申告・納付期限は、申告年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです(納付額が100万円以上の場合には延納も認められます。)。

 

障害者の就労意欲は近年、急速に高まっており、障害者が職業を通じ、誇りをもって自立した生活を送ることができるよう障害者雇用対策が進められています。

その中で、障害者雇用納付金制度は、「障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任である」との社会連帯責任の理念に基づいて設けられた制度です。

このような社会的責任にも目を向けて、特に新たに対象となった事業主の皆様にあっては、平成27年4月から翌年3月までの各月の雇用障害者数等を把握・確認するなど、申告・納付に向けて具体的な準備を進めましょう。

2015年6月2日

「パートタイム労働法」が改正されました!

平成27年4月1日  施行

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称「パートタイム労働法」)が、平成27年4月1日から一部改正されました。今回の改正の目的は、パートタイム労働者の方々の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにすることにあります。

 

今回の主な改正のポイントは、次の3つです。

1、パートタイム労働者の公正な待遇の確保
2、パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
3、パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設

 

では、それぞれの内容について、少し詳しく説明していきます。

 

1、パートタイム労働者の公正な待遇の確保

(1) 正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大

ここでは、前提として、「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」については、パートタイム労働者であることを理由として、待遇について正社員と差別的取扱いをしてはならないということを確認してください。

今回の改正では、この「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の範囲が、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者にまで拡大されました。

具体的には、①職務の内容(業務の内容やその業務に伴う責任の程度)が正社員と同一であって、②人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一であるパートタイム労働者について、労働時間以外のすべての待遇における正社員との差別的取扱いが禁止されます。

これによって、例えば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も、職務の内容も人事活用の仕組みも正社員と同じであれば、これまで正社員のみが支給対象とされていた各種手当の支給対象となることなどが考えられます。

 

(2) 短時間労働者の待遇の原則の新設

パートタイム労働者の待遇について、「正社員の待遇との相違は、職務の内容、人材活用の仕組みその他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」とする規定が創設されました。

この待遇の原則は、広くすべてのパートタイム労働者に適用されます。

したがって、事業主の皆さんは今後、パートタイム労働者の待遇に関するこのような一般的な考え方も念頭に、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図っていく必要があります。

 

なお、このほかにも、「通勤手当」という名称であっても、距離や実際にかかっている経費に関係なく一律の金額を支払っているもののように、職務の内容に密接に関連して支払われているものは、正社員とのバランスを考えつつ、パートタイム労働者の仕事の内容や成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定するように努めることとされました。

 

2、パートタイム労働者の納得性を高めるための措置

(1) パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設

これまでも、パートタイム労働者から説明を求められたときには、「どの要素をどのように勘案して賃金を決定したか」「どの教育訓練や福祉施設がなぜ使えるのか、使えないのか」「正社員への転換推進措置の決定にあたり何を考慮したか」など、待遇の決定に当たって考慮した事項を説明する義務が事業主に課せられていました。

今回の改正では、これに加えて、パートタイム労働者を新たに雇い入れたときや労働契約を更新するときに、実施する雇用管理の改善措置の内容を説明する義務が事業主に課せられました。

具体的には、「賃金制度はどのようになっているのか」「どのような教育訓練があるか」「どのような福利厚生施設が利用できるか」「どのような正社員転換推進措置があるか」などを分かりやすく説明していく必要があります。

 

なお、雇入れ後は、パートタイム労働者が待遇の決定に当たって考慮した事項について説明を求めたことを理由に、不利益な取扱いをしてはなりません。

また、説明を求めることにより不利益な取扱いを受けると想起されかねないような言動を避けるなど、事業主から不利益な取扱いを受けることを恐れて、説明を求めることができないといったことがないようにすることが求められます。

 

このほかにも、パートタイム労働者が親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由に解雇などが行われることは適当ではないものとされました。

 

(2) パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設及び相談窓口の周知

パートタイム労働者がその待遇について疑義などがあったとしても、各事業所にこれを相談する体制が十分に整っていなければ、前記(1)の説明による納得性の向上の実効性は確保されません。

そこで、事業主は「相談窓口」を設けるとともに、パートタイム労働者にそのことを知らせなければなければならないこととなりました。

この相談窓口の設置の方法としては、例えば、次のようなことが考えられます。

①雇用する労働者の中から相談担当者を決め、相談に対応させること

②短時間雇用管理者を選任している事業所において、短時間雇用管理者を相談担当者として定め、短時間労働者からの相談に対応させること

③事業主自身が相談担当者となり、相談に対応すること

④外部専門機関に委託し、相談対応を行うこと など

 

また、パートタイム労働者を雇い入れたときに、事業主が文書の交付などにより明示しなければならない事項に「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」が追加されました。

これにより、事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときや契約を更新するときには、①労働基準法で明示が義務づけられている項目、②昇給の有無、③賞与の有無、④退職手当の有無に加えて、⑤「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」(担当者名、役職、担当部署など)を文書の交付により、分かりやすく知らせなければなりません。

 

3、パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設

(1) 厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設

パートタイム労働法では、パートタイム労働者の雇用管理の改善のために事業主が講じなければならない措置を規定していますが、それらの規定に違反したままにしている事業主に対しては、厚生労働大臣による改善勧告が行われます。

今回の改正により、事業主がこの勧告に従わない場合には、厚生労働大臣は、その事業主名を公表できるようになりました。

 

(2) 虚偽の報告などをした事業主に対する過料の新設

パートタイム労働法が一層守られることを期待して、パートタイム労働法で定められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした事業主には、20万円以下の過料に処せられることとなりました。

 

パートタイム労働者は、今や全雇用者の3割を占めており、企業の中でも重要な役割を担う存在です。

また、パートタイム労働者のスキルアップやモチベーション向上は、業務の生産性を押し上げる要素になりますし、様々な雇用形態を組み合わせて活用できる仕組みは、経営の柔軟性を増すと期待されています。

これを機に、改めてパートタイム労働者の待遇について考えてみたいものです。

そして、その手始めとして、パートタイム労働者に交付する労働条件通知書などに「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を盛り込むことをお忘れなく!

健康保険法の給付範囲の見直し

平成25年10月1日 施行

健康保険法の給付範囲が見直され、労災保険の給付が受けられない場合には、健康保険の対象とすることとされました。(役員等については現行通りの取り扱いなのでご注意下さい)

従来の健康保険は、業務外の負傷等にのみ給付を行っていました。(逆に業務上の負傷等については労災保険の対象となるため、給付の対象外でした)

このようなすみわけを行った結果、健康保険からも労災保険からも給付を受けられない方がいました。

具体的には、扶養の範囲内で個人事業を行っている奥さんがその仕事中にケガをした場合や扶養の範囲内でシルバー人材センターからの請負業務を行っている親御さんがその業務中にケガをした場合、業務外の負傷ではないことから健康保険での診療が受けられず、「個人事業主=労働者ではない」ため労災保険での診療も受けられませんでした。

今回の法改正により10月から上記のケースであっても健康保険での診療が受けられるようになりました。
こうやって世の中は少しずつ良くなっていくのかもしれませんね。

なお、通常の個人事業主の健康保険は国保であるため3割負担での診療が受けられます。

(国保には業務上外の定めがないため)

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