「介護休業給付金」の給付率が引き上げられましたが?!

 

政府の掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けた取り組みの一つとして、「介護離職ゼロ」を推進していくこととされています。

その一環として、平成28年8月1日施行の雇用保険法の改正により、介護休業給付金の給付率が引き上げられました。

 

1、そもそも介護休業給付金を知っていますか?

介護休業給付金は、雇用保険の雇用継続給付の一つで、所定の要件を満たす雇用保険の被保険者が対象家族を介護するための休業をした場合に、支給されます。

具体的には、原則として、介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある被保険者が、次の要件をいずれも満たす場合に、支給されます。

(1)介護休業期間中の各1ヵ月(支給単位期間)について、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。

(2)就業している日数が支給単位期間ごとに10日以下(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であり、かつ、休業日が1日以上)あること。

 

2、介護休業給付金の額

介護休業給付の支給対象期間(1か月)ごとの支給額は、原則として、「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で計算します。

(1)賃金日額

賃金日額は、介護休業開始前6か月の賃金を180で除した額です。

 

また、賃金日額には、上限額と下限額(平成28年8月1日以降は2,290 円)があります。

上限額については、平成28年8月1日以降に開始した介護休業には、年齢にかかわらず、45歳から59歳までの者に適用されるもの(同日以降は15,550円)が適用されます。

従来は、30歳から44歳までの賃金日額の上限額(同日は14,150 円)が適用されていましたので、上限額が引き上げられたことになります。

 

(2)支給日数

支給日額は、1支給対象期間につき30日(休業終了日の属する支給対象期間にあっては、当該支給対象期間の日数)です。

 

(3)給付率

平成28年8月1日以降に開始した介護休業に係る給付率は、これまでの100分の40から100分の67に引き上げられました。

 

したがって、休業終了日が属する支給対象期間以外における介護休業給付金の額は、例えば、休業開始時賃金日額が10,000円であれば、1支給対象期間(1か月)につき20万1,000円(=10,000円×30日×100分の67)となります。

なお、介護休業給付金の支給に当たっては、事業主から支払われた賃金の額に応じて、調整が行われることがあります。

 

3、申請手続き

介護休業給付金の支給を受けるためには、次の手続きが必要です。

(1)休業開始時賃金月額証明書の提出

被保険者が対象家族の介護のため休業を開始したときは、事業主は、休業開始時賃金月額証明書を、支給申請書を提出する日までに、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します(次の申請書の提出と同時でもかません。)。

(2)申請書の提出

介護休業給付金の支給を受けようとする者は、介護休業終了日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに、事業主を経由して申請書を提出します。

 

4、介護休業給付金の受給も選択肢の一つに!

総務省「就業構造基本調査」で、家族の介護や看護による離職者数の推移を見ると、離職者数は増減を繰り返しているものの、平成23年10月から平成24年9月の1年間では、約9万5,000人となっています。

これに対して、厚生労働省の資料によれば、介護休業給付金の平成26年の受給者数は9,600人にとどまっています。

 

その理由の一つとして、この制度自体が利用しづらいものであることが挙げられます。

この点については、平成29年1月1日施行の育児・介護休業法の改正に伴い、介護休業給付金においても、①介護休業の分割取得を可能にし、②対象家族の範囲を拡大することが予定されています。

 

ただ、いくら制度が使いやすくなったとしても、必要な方々にその制度自体を知ってもらえなければ、いつまでたってもこれが有効に活用されることはありません。

介護休業給付金に限らず、「介護に係る両立支援制度が分からない」という理由で離職している方も少なくないようです。

どのような制度があるのかについては、また順次ご紹介しますが、介護休業をした場合に受けられるこのような給付があることも、知っておいていただければと思います。

2016年9月5日