前回に引き続き、労働者派遣法の改正(平成27年9月30日施行)についてです。
派遣元事業主は、新たに次のような措置を講じなければならないこととなりました。
(1)雇用安定措置の実施
派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して3年以上派遣される見込みがある派遣労働者について、派遣終了後の雇用を継続させるための措置(雇用安定措置)を講じなければなりません(同一の組織単位に継続して1年以上3年未満派遣される見込みがある派遣労働者については、雇用安定措置を講ずるように努めなければなりません。)。
雇用安定措置には、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな派遣先の提供(合理的なものに限る。)、③派遣元事業主による(派遣労働者以外としての)無期雇用、④その他雇用の安定を図るために必要な措置(新たな就業の機会を提供するまでの間に行われる有給の教育訓練、紹介予定派遣など)があります。
(2)キャリアアップ措置の実施
派遣元事業主は、雇用している派遣労働者のキャリアアップを図るため、①段階的かつ体系的な教育訓練、②希望者に対するキャリア・コンサルティングを実施しなければなりません。
(3)均衡待遇の推進~待遇に関する事項等の説明
従来から、派遣元事業主には、派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しながら、①賃金の決定、②教育訓練の実施、③福利厚生の実施を行うよう配慮することが義務づけられていましたが、これに加えて、派遣労働者が希望する場合には、派遣元事業主は、この待遇の確保のために考慮した内容を、本人に説明することが義務づけられました。
(4)派遣元管理台帳に記載する事項の追加
派遣元管理台帳に記載する事項に、①無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの別、②雇用安定措置として講じた内容、③段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時及び内容などが追加されました。
一方、派遣先事業主も次のような措置を講じなければならないこととなりました。
(1)派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進
派遣先は、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、以下のような点に配慮しなければなりません。
①派遣元事業主に対し、派遣先の労働者に関する賃金水準の情報提供等を行うこと
②派遣先の労働者に対し業務と密接に関連した教育訓練を実施する場合において、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主で実施可能な場合を除き、派遣労働者に対してもこれを実施すること
③派遣労働者に対しても、派遣先の労働者が利用する給食施設、休憩室、更衣室の利用の機会を与えること
(2)派遣労働者のキャリアアップ支援
①キャリアアップ支援に必要な情報の提供:派遣元から求めがあったときは、派遣元によるキャリアアップ支援に資するよう、派遣労働者の職務遂行状況や職務遂行能力の向上度合などの情報を提供するよう努めなければなりません。
②雇入れへの努力:派遣労働者を受け入れていた組織単位で、派遣終了後、同じ業務に従事させるため新たに労働者を雇い入れようとする際、一定の場合には、その派遣労働者を雇い入れるよう努めなければなりません。
③募集情報の提供:派遣先の同一の事業所で同一の派遣労働者を継続して1年以上受け入れており、その事業所で働く正社員を募集する場合には、受け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を周知しなければなりません。
また、正社員に限らず、派遣先の事業所で労働者の募集を行う際、一定の場合には、受け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を周知しなければなりません。
(3)派遣先管理台帳に記載する事項の追加
派遣労働者ごとに派遣先管理台帳に記載すべき事項に、①無期雇用の派遣労働者であるか有期雇用の派遣労働者であるかの別、②60歳以上であるか否かの別、③就業した組織単位、④業務内での計画的なOJTによる教育訓練や業務外の教育訓練を行った日時及び内容が追加されました。
今回の労働者派遣法の改正は、派遣労働者のより一層の雇用の安定・保護等を図ることをその目的として行われました。
派遣元事業主及び派遣先事業主にはそれぞれ新たな義務が課せられていますが、今後、これらが適正に運用され、今回の改正の目的が果たされていくことを願うばかりです。
なお、平成27年10月1日から、派遣先がいわゆる違法派遣を受け入れた場合の労働契約申込みみなし制度も施行されていますので、こちらにも注意してください。