前回その概要をご紹介したストレスチェック制度ですが、まだ何から手をつけてよいのかが分からないといった事業者の皆様も多いのかもしれません。
そこで、今回は、ストレスチェックの実施までに事業者が取り組まなければならない事項などをいくつか取り上げたいと思います。
1 ストレスチェック制度導入前の準備
(1)方針の提示と衛生委員会での審議
①事業者による基本方針の表明
まず、会社として「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針を表明します。
②衛生委員会での調査審議
事業所の衛生委員会で、次のような事項について話し合います(衛生委員会で調査審議すべき事項は、指針で示されています。産業医に聞いてみるのもよいと思います。)。
・ストレスチェック制度の実施体制(実施者及び実施事務従事者の選任等)
・ストレスチェック制度の実施方法(ストレスチェックで使用する質問票、高ストレス者の選定基準、面接指導の申出方法や実施方法等)
・ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
・ストレスチェック結果の記録の保存方法
衛生委員会で決まったことは、社内規程として明文化し、すべての労働者に周知します。
(2)実施体制・役割分担の決定
ストレスチェック制度の実施にあたって、その実務を担当する者、実施者、実施事務従事者を指名する等、実施体制を整備することが望ましいものとされています。
実務担当者には、衛生管理者又は事業場内メンタルヘルス推進担当者を指名することが望ましいですが、監督的地位にある者を指名することもできます。
実際にストレスチェックを実施する実施者は、医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。
実施者の補助をする実施事務従事者は、質問票の回収、データ入力、結果送付など個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。
なお、人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならないものとされています。
2 ストレスチェックの実施
(1)ストレスチェックの実施(質問票の配布・記入・回収)
ストレスチェックの実施は、1年以内ごとに1回、定期に、①職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目、②当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目、③職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目についての検査を行わなければなりません。
実際には、対象となる労働者に質問票を配布し、これに記入してもらうこととなりますが、ITシステムを利用して、オンラインで実施することもできます。
質問票は、上記①~③の項目が含まれているものであれば、医師等である実施者の意見や衛生委員会での調査審議を踏まえて、事業者の判断により選択することができます。
記入が終わった質問票は、実施者(又は実施事務従事者)が回収します。
第三者や人事権を持つ職員が記入・入力の終わった質問票の内容を閲覧することは禁止されています。
(2)ストレス状況の評価・医師による面接指導の要否の判定
回収した質問票をもとに、実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導が必要な労働者を選びます。
(3)本人への結果の通知、結果の保存
ストレスチェックの結果(ストレスの程度の評価の結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否かなど)は、実施者から事業者ではなく、直接、労働者本人に通知されます。
事業者が結果の提供を受けるためには、本人への結果の通知後に、書面又は電磁的記録により、本人から同意を得る必要があります。
ストレスチェックの結果は、実施者又は実施事務従事者が保存します。
本人の同意を得て事業者に提供された結果は、事業者が5年間、保存しなければなりません。
その後、面接指導が必要と判断された労働者が申し出たときは、その労働者に対して、医師による面接指導を行い、必要な就業上の措置を講ずることなどがさらに必要となります。
労働者が50人以上いる事業所では、遅くとも平成28年11月30日までの間に、すべての労働者に対して、1回目のストレスチェックを実施しなければなりません。
ストレスチェック制度の実施にあたっては、プライバシーの保護にも留意しなければなりませんし、煩雑に感じることも多いかもしれません。
ですが、労働者が心身ともに健康であることは、労働者自身のみならず、事業主にとっても大切なことです。
ストレスチェック制度を職場環境の把握・改善のためのきっかけの一つとして捉え、産業医などとも連携して、その実施に前向きに取り組んでみてください。