令和4年7月1日施行の雇用保険法に改正により、基本手当の受給資格者が離職後に事業を開始した場合等に、
当該事業の実施期間を基本手当の受給期間に算入しない特例が新設されました。
1、基本手当の受給期間
(1)基本手当の原則的な受給期間
雇用保険の基本手当の受給期間は、原則、離職日の翌日から1年です。
具体的には、次のように定められています。
①次の②③以外の受給資格者にあっては、1年
②所定給付日数が360日である受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間
③所定給付日数が330日である受給資格者にあっては、1年に30日を加えた期間
(2)受給期間の延長
次の場合には、受給資格者の申出により、受給期間の延長が認められます。
①前記(1)の受給期間内に、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上職業に
就くことができない日がある場合
→この場合には、前記(1)の期間に、当該理由により職業に就くことができない日数を
加算した期間(その加算された期間が4年を超えるときは、4年)が受給期間となります。
②受給資格に係る離職が定年等の理由による者が当該離職後一定期間求職の申込みをしないことを
希望する場合
→この場合には、前記(1)の期間に、求職の申込みをしないことを希望するとしてその者が申し出た期間
(離職日の翌日から起算して1年が限度)に相当する期間を加算した期間が受給期間となります。
2、事業開始等による受給期間の特例
受給資格者が事業を開始した場合等においては、その事業を行っている期間等を、最大3年間、
基本手当の受給期間に算入しないことする特例が創設されました。
これにより、雇用保険に一定期間加入した後に離職し起業した者が休廃業した場合でも、
その後の再就職活動に当たって基本手当を受給することが可能となります。
(1)受給期間の特例の適用要件等
この特例の適用の対象は、離職日の翌日以後に、事業を開始した受給資格者、事業に専念し始めた受給資格者、
事業の準備に専念し始めた受給資格者です。
ただし、事業を開始し、事業に専念し始め、又は、事業の準備に専念した日は、
令和4年7月1日以降でなければなりません。
また、この特例の適用を受けるためには、その事業について、次の要件のすべてを満たす必要があります。
①事業の実施期間が30日以上であること。
②「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」の
いずれかから起算して30日を経過する日が本来の受給期間の末日以前であること。
③当該事業について、就業手当又は再就職手当の支給を受けてないこと。
④当該事業により自立することができないと認められる事業でないこと。
→例えば、雇用保険の被保険者資格を取得する者を雇い入れ、適用事業の事業主になる場合や、
登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で事業の開始、事業内容と事業所の実在が
確認できる場合には、この④の要件を満たすこととされます。
⑤離職日の翌日以後に開始した事業であること。
→離職日以前に事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合も含まれます。
(2)特例が適用された場合の受給期間
この特例が適用された場合には、当該事業の実施期間(起業等から休廃業までの期間)が受給期間に
算入されないこととなります。
ただし、実施期間の日数が、4年から前記1により算定される期間の日数を除いた日数を
超える場合においては、当該超える日数は受給期間に算入されます。
つまり、前記1(1)の本来の受給期間が1年の受給資格者であれば、前記1(2)で加算された日数と
通算した期間が最大で3年間、受給期間に算入されないこととなるわけです。
3、受給期間の特例の申請手続等
前記2の特例の適用を受けるためには、公共職業安定所長にその旨を申し出る必要があります。
①この申出は、受給期間延長等申請書に、次の書類を添付して、管轄公共職業安定所の長に
提出することによって行います。
・受給資格者証(受給資格の決定を受けていない場合には、離職票-2)
・事業を開始等した事実と開始日を確認できる書類(登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等)
②この申請書の提出は、天災その他やむを得ない理由がある場合を除き、事業を開始した日
(又は事業に専念し始めた日、事業の準備に専念し始めた日)の翌日から2か月以内に行わなければ
なりません。
③この受給期間の特例の申請手続をした後、当該事業を廃止し、又は休止した場合等においては、
その旨を速やかに管轄公共職業安定所の長に届け出なければなりません。