先日、兵庫県にある城崎(きのさき)温泉に行ってきました。
関東ではあまりなじみがないかもしれませんが、平安時代から歌にも詠まれるほどの湯治場で、
多くの文豪・文人に親しまれた歴史ある温泉街です。
日本海に面している場所柄、松葉ガニが美味!
七つの外湯(公衆浴場)めぐりでも有名です。
そんな楽しみどころが多い城崎温泉ですが、今回、私の一番の目的は、
城崎温泉でしか売っていない本を買うことでした。
それがこちら。
左から、
志賀直哉:城崎にて(解説書付き)
万城目学:城崎裁判(お風呂でも読める装丁)
湊かなえ:城崎にかえろ(カニの装丁)
tupera tupera:城崎ユノマトペ(絵本)
まずは志賀直哉の「城崎にて」を読書。
読んでビックリしました…!
タイトルから、城崎温泉を舞台にした素敵な物語が繰り広げられるかと思っていましたが、
書かれていたのは、城崎でみかけた蜂・ネズミ・イモリの「死」から感じることでした。
小動物の現実的な「死」を突きつけられ、何とも苦しい思いになってしまう私小説です。
ちなみに「城崎にて」は、他の短編と一緒になった文庫が出ているので、
図書館で借りられます。そして短いのですぐに読めてしまいます。
ギョッとしたところで次は、安心できそうな湊かなえの「城崎にかえろ」を読書。
これは城崎温泉を舞台にした物語でしたので、旅で見たもの・食べたものを思い出しながら読むことが出来ました。
ちょっとほろりとする温かみのあるお話です。
また、志賀直哉の「城崎にて」を先に読んでいたからこそクスッと笑えるところもありました。
そして現在進行中で読んでいるのは、今年、直木賞を受賞した作家・万城目学の「城崎裁判」。
こちらも志賀直哉の「城崎にて」を読んでいないと面白さが半減する物語です。
なぜなら「城崎にて」でギョッとさせられたものの一つ、死んだイモリが出てくるからです。
ということで、現代作家2人の小説は、志賀直哉の「城崎にて」に繋がっていました~
実は旅行当日、新幹線で人身事故があり、城崎温泉に着いたのは、夕方の18時20分過ぎでした。
翌日は天の橋立を通る観光列車に乗り、西舞鶴から京都に行く計画でしたので、
旅館を朝9時30分に出発したため、城崎温泉での観光はまったくできませんでした。
買ってきた本を読んで、現代を生きている作家2人のイマジネーションを多いに刺激した
志賀直哉が見た風景を散策してみたくなりましたので、いつかもう一度、今度はゆっくりと
城崎温泉を訪ねてみよう!という楽しみが出来ました。 (多田容子)