令和4年10月1日施行の厚生年金保険法等の改正により、健康保険及び厚生年金保険法の適用が拡大されます。
1、改正の概要(令和4年10月1日施行)
健康保険・厚生年金保険の適用拡大に関する改正点は、次のとおりです。
(1)短時間労働者への適用拡大
(2)適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種への追加)
(3)被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し
2、短時間労働者への適用拡大
1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者のものと比べて
4分の3以上の短時間労働者は、通常の労働者と同様に、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
それ以外の短時間労働者についても、所定の要件を満たす場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者と
なりますが、その適用対象が拡大されます。
(1)特定適用事業所の要件の見直し
短時間労働者(1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される
通常の労働者のものと比べて4分の3以上を除き、次の(2)の要件を満たす者に限ります。)であっても、
特定適用事業所で働くものは、健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。
特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く。)の
総数が常時500人を超える事業所をいいますが、今回の改正により、人数の要件が、常時101人以上となります。
これにより、厚生年金保険の被保険者数が101人以上500人以下の事業所で働く短時間労働者についても、
健康保険・厚生年金保険の加入が義務化されます。
(2)短時間労働者の勤務期間要件の撤廃
健康保険・厚生年金保険の適用対象となる短時間労働者の要件について、
「当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること」という要件が撤廃されます。
これにより、次のいずれにも該当する短時間労働者は、適用除外事由に該当しない限り、
健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
②報酬月額が88,000円以上であること。
③学生ではないこと。
3、適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種追加)
これまで非適用業種とされていた事業のうち、「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に
基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」(一部の士業)が適用業種となります。
適用の対象となる士業は、弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、
土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士です。
これにより、常時5人以上の従業員を雇用しているこれらの士業の個人事業所は、健康保険・厚生年保険の
強制適用事業所になり、これに使用される70歳未満の者は、適用除外事由に該当しない限り、
厚生年金保険の被保険者となります。
4、被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し
これまで、2か月以内の期間を定めて使用される者については、健康保険・厚生年金保険の適用が除外
されており、この者は、所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合に限り、
そのときから被保険者となることとされていました。
今回の改正により、2か月以内の期間を定めて雇用される者のうち、適用除外となるのは、
当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものに限られることとなりました。
これにより、2か月以内の期間を定めて雇用される者であっても、当該期間を超えて雇用されることが
見込まれるものは、雇用期間の当初から、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
具体的には、次のいずれかに該当する場合には、当該期間を超えて雇用擦れることが見込まれるものと
判断されます。
①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」又は「更新される場合がある旨」が
明示されている場合
②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を
超えて雇用された実績がある場合
5、適用拡大に伴う主な手続き
(1)被保険者の資格取得の届出
特定適用事業所(令和4年10月以降新たに特定適用事業所に該当する事業所を含みます。)の事業主は、
令和4年10月から新たに被保険者となる従業員がいる場合は、5日以内に、「被保険者資格取得届」等を
提出しなければなりません。
(2)新規適用事業所の届出
常時5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所の事業主は、適用事業所となった日から5日以内に、
「新規適用届」を提出しなければなりません。