青少年の雇用の促進などを図り、能力を有効に発揮できる環境を整備するため、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(通称「若者雇用促進法」)などが平成27年10月1日から順次施行され、青少年に対して、適切な職業選択の支援に関する措置や職業能力の開発・向上に関する措置などを総合的に講じることとされています。
すでに、①国が、地方公共団体などと連携し、青少年に対し、職業訓練の推進、ジョブ・カード(職務経歴等記録書)の普及の促進など必要な措置を講じるように努めることや、②青少年に係る雇用管理の状況が優良な中小企業について、厚生労働大臣による新たな認定制度を創設することなどについては、平成27年10月1日から施行されています。
今回は、平成28年3月1日施行の内容のうち、事業主の皆様に特に関係のあるものを取り上げます。
1、事業主による職場情報の提供の義務化
新規学校卒業段階でのミスマッチによる早期離職を解消し、若者が充実した職業人生を歩んでいくため、労働条件を的確に伝えることに加えて、平均勤続年数や研修の有無及び内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供する仕組みがスタートします。
企業にとっても、採用・広報活動を通じて詳しい情報を提供することによって、求める人材の円滑な採用が期待できます。
具体的には、新卒者等(※)であることを条件とした募集・求人申込みを行う場合に、次のような情報提供が必要となります。
(1)企業規模を問わず、青少年雇用情報の幅広い情報提供を行うこと(努力義務)
青少年雇用情報とは、次の(2)①~③に掲げる情報をいいます。
これらの事項のすべてについて、ホームページでの公表、会社説明会での情報提供、求人票への記載などにより、積極的に情報提供を行うことが望ましいものとされています。
(2)応募者等からの個別の求めがあった場合に、メール又は書面などの適切な方法により、次の①~③の3類型ごとに1つ以上の情報提供を行うこと(義務)
①青少年の募集及び採用の状況に関する事項(過去3年間の新卒採用者数・離職者数、過去3年間の新卒採用者数の男女別人数、平均勤続年数)
②職業能力の開発及び向上に関する取り組みの実施状況に関する事項(研修の有無及び内容、自己啓発支援の有無及び内容、メンター制度の有無、キャリアコンサルティング制度の有無及び内容、社内検定等の制度の有無及び内容)
③職場への定着の促進に関する取り組みの実施状況に関する事項(前年度の月平均所定外労働時間の実績、前年度の有給休暇の平均取得日数、前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)、役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合)
情報の提供に当たっては、企業全体の雇用形態別の情報を提供します。また、採用区分や事業所別などの詳細情報についても、追加情報として提供することが望まれます。
2、労働関係法令違反の事業主に対する、ハローワークの新卒者向け求人の不受理
ハローワークでは、労働基準法などの労働関係法令の規定に違反し、是正勧告を受けたり、公表されたりした事業所などからの新卒者等(※)であることを条件とした求人を一定期間、受け付けないこと(不受理)となります。
不受理となる対象となる規定には、次のものがあります。
①過重労働の制限などに対する規定(賃金関係、労働時間、休憩・休日・年次有給休暇など)
②性別や仕事と育児などの両立などに関する規定(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等、性別を理由とする差別の禁止、セクハラなど)
③青少年に固有の事情を背景とする課題に関する規定(労働条件の明示など)
不受理期間は、違反の程度や内容によって定められています。
例えば、時間外労働に関する割増賃金を支払っていないものとして、1年に2回以上是正勧告を受けた場合には、法違反が是正されるまでの期間に加え、是正後6か月が経過するまでの期間、新卒者等であることを条件として求人が不受理となります。
この期間中は、事業主からハローワークにすでに提出済みの求人についても、ハローワークから求職者の職業紹介が行われません。
※新卒者等の範囲は、以下のとおりです。
ただし、当該募集・求人又は応募の対象外となっている者は除かれます。
①学校(小学校及び幼稚園を除く。)、専修学校、各種学校、外国の教育施設に在学する者で、卒業することが見込まれる者
②公共職業能力開発施設や職業能力開発総合大学校の職業訓練を受ける者で、修了することが見込まれる者
③上記①又は②の卒業者及び修了者
若年者の雇用不安が指摘されて久しいですが、人材は企業にとって欠くことのできない要素の一つです。
貴重な人材を確保し、十分な能力を発揮してもらえるよう、これを機会に、労働関係法令の規定などをもう一度、確認してみてください。