平成27年4月1日施行
障害者の雇用の促進等に関する法律(通称「障害者雇用促進法」)が、平成27年4月1日から、一部改正されました。
障害者雇用促進法については、意欲・能力に応じた障害者の雇用機会を拡大する目的で、平成21年4月1日から順次、改正が行われてきましたが、今回の改正により、障害者雇用納付金制度の適用対象が、常用雇用労働者が100人を超える中小企業にまで拡大されました。
1、障害者の雇用義務
まず、障害者雇用促進法により、事業主には障害者(※1)の雇用が義務づけられています。
事業主は、その雇用する障害者である労働者の数が、法定雇用障害者数以上であるようにしなければなりません。
法定雇用障害者数は、「常用雇用労働者数×法定雇用率」(1人未満の端数は切り捨て)により計算します(※2)。一般事業主に係る法定雇用率は、現在「100分の2.0」です。
したがって、たとえば、労働者を120人雇用している事業主は、2人(≒120人×100分の2.0)の障害者を雇用しなければならないこととなります。
(※1)
現在、事業主がその雇用を義務づけられている対象(雇用義務の対象)は、身体障害者または知的障害者である労働者ですが、精神障害者である労働者についても、身体障害者または知的障害者である労働者とみなして、障害者である労働者の数に算入します。
なお、平成30年4月1日以降は、精神障害者も、事業主の雇用義務の対象となります。
(※2)
常用雇用労働者数及び障害者である常用雇用労働者数の計算に当たっては、短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)1人を0.5人カウントとするなどのルールが定められています。
そのため、これらの労働者数は、実際の労働者数と異なることがあります。
2、障害者雇用納付金制度(納付金の徴収・調整金の支給等)
企業が障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要とされることが多く、経済的負担が伴います。
障害者雇用納付金制度は、事業主間のこのような経済的負担を調整する観点から、(1)雇用障害者数が法定雇用率に満たない事業主から、その雇用する障害者が1人不足するごとに1か月当たり5万円の障害者雇用納付金を徴収し、これを原資として、(2)法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主等に対し、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金及び各種助成金を支給する仕組みです。
3、障害者雇用納付金制度の対象範囲の拡大
近年、障害者の雇用が着実に進展する一方で、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用状況の改善が遅れている現状があります。
このような現状を踏まえ、中小企業における障害者雇用の促進を図る目的で、かつて常用雇用労働者が300人を超える事業主のみであった障害者雇用納付金制度の対象が、平成22年7月から、常用雇用労働者が200人を超え300人以下である事業主に拡大されていました。
今回の改正により、その対象が、さらに常用雇用労働者が100人を超え200人以下である事業主にまで拡大されたわけです。
4、障害者雇用納付金の減額特例
障害者の実雇用率(常用雇用労働者に占める障害者である常用雇用労働者の割合)は、常用雇用労働者が100人~299人規模の企業が最も低い状況にあるといわれています。
今回の改正により、この規模の企業もすべて障害者雇用納付金制度の対象となったわけですが、常用雇用労働者が100人を超え200人以下の事業主については、平成27年4月から平成32年3月までの5年間、障害者雇用納付金が5万円から4万円に減額されます。
※常用雇用労働者が200人を超え300人以下の事業主についても、平成22年7月から平成27年6月までの5年間、障害者雇用納付金が5万円から4万円に減額されています。
5、申告・納付期限など
障害者雇用納付金の申告書等は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県申告申請窓口を経由して提出します。
障害者雇用納付金の申告・納付期限は、申告年度ごとに翌年度の4月1日から5月15日までです(納付額が100万円以上の場合には延納も認められます。)。
障害者の就労意欲は近年、急速に高まっており、障害者が職業を通じ、誇りをもって自立した生活を送ることができるよう障害者雇用対策が進められています。
その中で、障害者雇用納付金制度は、「障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任である」との社会連帯責任の理念に基づいて設けられた制度です。
このような社会的責任にも目を向けて、特に新たに対象となった事業主の皆様にあっては、平成27年4月から翌年3月までの各月の雇用障害者数等を把握・確認するなど、申告・納付に向けて具体的な準備を進めましょう。