社会保険労務士の仕事~社会保険労務士法改正によせて

 

令和7年6月18日、社会保険労務士法の一部を改正する法律案が成立しました。

 

1、社会保険労務士の主な業務

 

社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。

その主な業務には、次のようなものがあります。

 

(1)労働社会保険手続に関する業務

・労働社会保険の適用、年度更新、算定基礎届に関する事務

・各種助成金などの申請に関する事務

・労働者名簿、賃金台帳などの法定帳簿の調製に関する事務

・就業規則や36協定の作成、変更に関する事務 など

 

(2)紛争解決手続代理業務(ADR代理業務)

ADRとは、裁判によらず、当事者双方の話し合いに基づき、あっせん、調停または仲裁などの手続きによって

紛争の解決を図る制度です。

個別労働関係紛争についても、このADRの制度が設けられています。

特定社会保険労務士(紛争解決手続代理業務試験に合格し、かつ、紛争解決手続代理業務の

付記を受けた社会保険労務士)は、所定のあっせんの手続き等について、当事者を代理することができます。

 

なお、ADRに関しては、都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争の

あっせん手続き等のほか、全国47都道府県にある社会保険労務士会では、職場のトラブルを話し合いで

解決するための民間の機関として、社労士会労働紛争解決センターを設置し、民間紛争解決手続を行っています。

 

(3)相談・指導業務

・労務管理(人事・賃金・労働時間、雇用管理・人材育成など)に関する相談・指導業務

・年金相談業務

 

(4)補佐人の業務

社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく

社会保険に関する事項について、補佐人として、弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。

 

2、改正の概要

 

今回の社会保険労務士法の改正の内容は、次のとおりです。

 

(1)「社会保険労務士の使命」に関する規定の新設

社会保険労務士法第1条について、これまでの「目的」規定に代わり、

「社会保険労務士の使命」規定が新設されました。

同条では、「社会保険労務士の使命」に関し、

「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立

及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、

事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、

もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする。」と規定しています。

 

(2)労務監査に関する業務の明記

「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく

社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること」(相談・指導業務)の中に、

「これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査すること」が

含まれることが明記されました。

 

(3)社会保険労務士による裁判所への出頭及び陳述に関する規定の整備(令和7年10月1日施行)

社会保険労務士が裁判所に補佐人として出頭し、陳述をする場合に、

裁判所にともに出頭することとされている弁護士の地位について、

「訴訟代理人」が「代理人」に改められます。

 

(4)名称使用制限に係る類似名称の例示の明記

社会保険労務士法では、次のことが禁止されていますが、これらについて、

次のように類似名称の例示が明記されました。

①社会保険労務士でない者が、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いること

→社会保険労務士でない者が用いてはならない社会保険労務士に類似する名称に

「社労士」が含まれること

②社会保険労務士法人でない者が、社会保険労務士法人又はこれに類似する名称を用いること。

→社会保険労務士法人でない者が用いてはならない社会保険労務士法人に類似する名称に

「社労士法人」が含まれること

③社会保険労務士会又は連合会でない団体が、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会

又はこれらに類似する名称を用いること

→社会保険労務士会又は全国社会保険労務士会連合会でない団体が用いてはならない社会保険労務士会

又は全国社会保険労務士会連合会に類似する名称に「社労士会」及び「全国社労士会連合会」が含まれること

2025年8月1日