障害者の雇用の促進等に関する法律(略称:障害者雇用促進法)等の改正により、
法定雇用率の引上げ等が行われました。
今回の改正の多くは令和6年4月1日に施行されますが、令和5年4月1日に施行された部分と
それに関係する部分について、併せてお知らせします。
1、法定雇用率の段階的引上げ(令和6年4月以降)
民間の企業に係る法定雇用率(障害者雇用率)が2.7%に引き上げられます。
ただし、引上げは、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度は2.3%に据え置いたうえで、
令和6年4月から2.5%、令和8年7月から2.7%と段階的に行われます。
これに伴い、障害者を雇用しなければならない対象事業者についても、常時雇用する労働者の数が、
令和5年度は43.5人以上の事業主ですが、令和6年4月からは40.0人以上、
令和8年7月からは37.5人以上である事業主に拡大されます。
2、障害者雇用における障害者の算定方法の変更
(1)精神障害者の算定特例の延長(令和5年4月以降)
精神障害者の職場定着を進める観点から、平成30年4月から令和5年3月まで、
精神障害者である短時間労働者であって、雇入れの日又は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた日の
いずれか遅い日から起算して3年を経過するまでの間にあるものについては、障害者雇用率の算定に当たり、
これを1人とカウントする特例措置が設けられていました。
この点について、令和5年4月1日からは、精神障害者である短時間労働者については、当分の間、
雇入れ等からの期間にかかわらず、障害者雇用率の算定に当たり、これを1人とカウントすることとなりました。
(2)一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定(令和6年4月以降)
障害者雇用促進法においては、現在、障害者の職業的自立を促進するという法の趣旨から、
事業主に雇用義務が課せられているのは、週所定労働時間が20時間以上の労働者となっています。
他方で、障害特性で長時間の勤務が難しいこと等により、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する者は、
いずれの障害種別でも一定数存在し、特に精神障害者で多くなっています。
このようなニーズを踏まえ、週20時間未満の労働時間であれば働くことができる者の雇用機会の拡大を図るため、
令和6年4月以降、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び
重度知的障害者について、障害者雇用率の算定に当たり、0.5人とカウントして算定できるようになります。
3、障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化
「すべての事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有する」との理念の下、
障害者の雇用に伴う経済的負担を調整するとともに、障害者を雇用する事業主に対する助成を行うため、
障害者納付金制度が整備されています。
この障害納付金制度について、限られた財源を効果的に運用し、雇用の質の向上に向け、
事業主による障害者の職場定着等の取り組みに対する支援を充実させるため、次のような見直しが行われます。
(1)障害者雇用調整金等の見直し(令和5年4月・令和6年4月以降)
障害者雇用調整金及び報奨金は、いずれも障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合に支給されるものです。
令和5年度以後の年度分として支給する障害者雇用調整金(常時雇用している労働者数が100人を超える
事業主が対象)の額が、1人につき月額29,000円に引き上げられました。
一方で、令和6年度からは、障害者雇用調整金の支給対象人数が10人を超える場合には、
当該超過人数分への支給額が、1人につき月額23,000円(本来の額から6,000円の減額)となります。
また、報奨金(常時雇用している労働者数が100人以下の事業主が対象)の支援対象人数が35人を超える場合には、
当該超過人数分への支給額を1人につき月額16,000円(本来の額(21,000円)から5,000円の減額)となります。
なお、障害者雇用率を未達成の場合に徴収される障害者雇用納付金(常時雇用している労働者数が100人を
超える事業主が対象)の額(1人につき月額5万円)に変更はありません。
(2)特例納付金の廃止(令和6年4月以降)
前記2(2)により、週所定労働時間20時間以上の雇用が困難な者に対する就労機会の拡大を
直接図ることが可能となるため、特例給付金は廃止されます。
(3)障害者雇用のための事業主支援の強化(令和6年4月以降)
①雇入れやその雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金の新設
・障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で、雇入れやその雇用継続を図るために必要な
一連の雇用管理に関する相談援助を受けることができるようになります。
・加齢により職場への適応が難しくなった障害者に雇用継続の支援を行った場合に、助成が受けられるようになります。
②既存の障害者雇用関係の助成金の拡充
障害者介助等助成金や職場適応援助者助成金の拡充、職場実習・見学の受入れ助成の新設など、
事業主の障害者雇用の支援が強化されます。