新型コロナウイルス感染症の影響により、事業等に係る収入に相当の減少があった事業主の方について、厚生年金保険料等の納付を1年間猶予することができることとなりました。
この納付猶予の特例が適用された場合には、担保の提供が不要となり、延滞金もかからなくなります。
1、納付猶予の特例の適用要件
次の(1)から(4)に掲げる要件のすべてに該当する場合には、厚生年金保険料等の納付猶予の特例の適用を受けることができます。
(1)令和2年2月1日以後に適用事業所の事業につき相当な収入の減少(前年同期に比べておおむね20%以上の減少)があったこと
「事業につき相当な収入の減少」とは、令和2年2月1日から猶予を受けようとする保険料等の指定期限までの間の任意の期間(1か月以上。以下「調査期間」という。)の収入金額につき、その調査期間の直前1年間における調査期間に対応する期間(※1)の収入金額(※2)に対して、おおむね20%(※3)以上減少していると認められることをいいます。
(※1)調査期間に対応する期間がない場合は、その期間に近接する期間その他調査期間の収入金額と比較する期間として適当と認められる期間となります。
(※2)調査期間に対応する期間の収入金額が不明な場合は、調査期間の直前1年間の収入金額を12で割り、これを割り当てる方法その他適当な方法により算定した金額となります。
(※3)現に収入の減少が20%に満たないことのみをもって、一概に納付猶予の特例の適用が否定されるわけではなく、個々の適用事業所の状況を十分に聴取し、今後さらに減少率が悪化することが見込まれるなどによりおおむね20%以上減少していると認められるかどうかをみて、猶予を適用することが相当であるかが判断されます。
(2)その相当な収入の減少等が、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響によるものであること
新型コロナウイルス感染症の影響によるイベント開催又は外出等の自粛要請、入国制限、その他の理由で収入が減少していることが要件となります。
「海外からの材料の輸入停止」のような直接的な影響によるもののほか、間接的な影響によるものも広く含まれます。
(3)一時に納付することが困難であると認められる保険料等があること
「一時に納付が困難」とは、納付すべき保険料等を一時に納付する資金がないこと、又は納付すべき保険料等を事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金に充てた場合に保険料等を納付する資金がないことをいいます。
(4)指定期限内に申請がされたこと(やむを得ない理由がある場合を除く。)
納付猶予の特例の申請は、後述の「指定期限」までに提出する必要があります。
2、対象となる厚生年金保険料等
令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が、この納付猶予の特例の対象となります。
令和2年2月1日から令和2年4月30日(特例施行日)までの間に納期限が到来している厚生年金保険料等(令和2年1月分から3月分)は、令和2年6月30日までの申請により、遡って特例の適用を受けることができます。
3、猶予期間
この納付猶予の特例により、納付の猶予を受けることができる期間は、猶予を受ける保険料等ごとに納期限の翌日から1年間です。
4、申請手続
(1)申請書の提出
「納付の猶予(特例)申請書」を管轄の年金事務所に提出します(郵送での申請も可)。
申請書は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。
根拠となる書類の準備が難しい場合は、まずは、申請書のみを提出することでも差し支えないようです。
また、国税、地方税、労働保険料等の納付猶予の特例が許可された場合は、その際の申請書と許可通知書の写しを併せて提出することで、申請書の一部記載を省略することができます。
(2)申請期限
納付猶予の特例の申請は、指定期限までに行う必要があります。
この指定期限は、毎月の納期限からおおよそ25日後になります。
月々の指定期限は、納期限までに保険料等の納付がない場合に送付される「督促状」に記載されます。
なお、やむを得ない理由があって指定期限内の申請が困難な場合は、指定期限後の申請が認められることがあります。
やむをえない理由がある場合には、事業所の事業について新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことに伴う貸付けを受けるための手続を行っていたこと等により、猶予申請ができなかった場合などが該当します。