平成30年7月6日にいわゆる働き方改革関連法が公布され、平成31年4月1日からは、労働基準法等の改正により、労働時間に関する規制の見直し等が行われます。
その中で、年次有給休暇についても使用者による年5日の時季指定が義務づけられます。
1、年5日以上の年次有給休暇の確実な取得
(1)使用者による時季指定
使用者は、年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者に係る年次有給休暇のうち、5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないこととなります。
対象者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に限られますが、管理監督者も含まれます。
ただし、①労働者が自ら時季を指定して5日以上の年次有給休暇を取得した場合や、②計画的付与により5日以上の年次有給休暇を取得した場合には、使用者による時季指定は不要です。
(2)半日単位の年次有給休暇の取扱い
年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととされています。
これにより半日単位の年次有給休暇を労働者が取得した場合については、年次有給休暇を与えたものとして取り扱って差し支えなく、また、労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えないものとされます。
これらの場合において、半日単位の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱います。
(3)年次有給休暇を基準日より前の日から与える場合の取扱い
法定の基準日(雇入れの日から半年後)より前に年次有給休暇を付与する場合などの時季指定義務の取扱いについては、労働基準法施行規則に細かい定めがされています。
たとえば、雇入れの日から年次有給休暇を10労働日以上与えることとしたときは、当該年次有給休暇の日数のうち5日については、当該雇入れ日から1年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければなりません。
2、労働者からの意見聴取
使用者は、時季を定めることにより労働者に年次有給休暇を与えるに当たっては、あらかじめ、当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにしたうえで、その時季について当該労働者の意見を聴かなければなりません。
また、使用者は、年次有給休暇の時季を定めるに当たっては、できる限り労働者の希望に沿った時季指定となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
3、年次有給休暇管理簿
使用者は、①労働者による時季指定、②計画的付与、使用者による時季指定により年次有給休暇を与えたときは、年次有給休暇管理簿を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。
年次有給休暇管理簿とは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類です。
年次有給休暇管理簿については、これを労働者名簿又は賃金台帳と併せて調製することができます。
なお、年次有給休暇管理簿は、労働基準法によりその保存が義務づけられる「重要な書類」には該当しません。
4、罰則、施行日等
(1)罰則
使用者による時季指定に関する新労働基準法39条7項に違反した使用者に対しては、罰則の適用があり、30万円以下の罰金に処せられます。
(2)施行日
この年次有給休暇に係る改正規定の施行期日は、平成31年4月1日です。
ただし、4月1日以外の日が基準日(年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとした場合はその日)である労働者に係る年次有給休暇については、平成31年4月1日後の最初の基準日の前日までの間は、従前どおり、改正前の労働基準法39条が適用されます。
5、さらなる年次有給休暇の取得促進を!
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成30年7月24日閣議決定)においては、年次有給休暇の取得率を(2020年までに)70%以上とすること、特に、年次有給休暇の取得日数が0日の者の解消に向けた取り組みを推進することが数値目標として掲げられています。
一方、平成30年「就労条件総合調査」の結果によれば、平成29年(又は平成28会計年度)1年間の年次有給休暇の取得率は51.1%と、ようやく50%を上回りました。
年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態もありますが、この改正が契機となって、休み方の見直しも進むとよいですね。