労働者災害補償保険法における特別加入制度の対象拡大

 

フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険のさらなる活用を図るための

特別加入制度の対象が拡大されています。

 

1、労働者災害補償保険法における特別加入制度について

 

労災保険は、労働者が仕事または通勤によって被った災害に対して補償する制度です。

労働者以外の者でも、一定の要件を満たせば、任意に加入し、労働者と同様に補償を

受けることができます。これを「特別加入制度」といいます。

 

2、特別加入の対象者の拡大

 

特別加入の対象は、大まかに「中小事業主等」、「一人親方その他の自営業者」、

「特定作業従事者」及び「海外派遣者」に分けられます。

労働者災害補償保険法施行規則の改正により、このうちの「一人親方その他の自営業者」及び

「特定作業従事者」の範囲の拡大が図られています。

 

(1)令和3年4月1日施行分

一人親方その他の自営業者に次の2つが追加されました。

①柔道整復師……労働者以外の者で、柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業を、

労働者を使用しないで行うことを常態とする者、及びその者の行う事業に常態として従事する者

②創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者……労働者以外の者で、創業支援等措置に

基づく事業を行う高年齢者、及びその高年齢者が行う事業に常態として従事する者

「創業支援等措置に基づく事業」とは、高年齢者雇用安定法に規定する創業支援等措置に

基づき、委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は社会貢献事業に

係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業をいいます。

 

また、特定作業従事者に次の二つが追加されました。

③芸能関係作業従事者……労働者以外の者で、放送番組(広告放送を含む。)、

映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは

企画の作業に従事する者

具体的には、次のような芸能実演家や芸能製作作業従事者が想定されています。

芸能実演家:俳優(舞台俳優、映画及びテレビ等映像メディア俳優、声優等)、

舞踊家(日本舞踊、ダンサー、バレリーナ等)、音楽家(歌手、謡い手、演奏家、作詞家、

作曲家等)、演芸家(落語家、漫才師、奇術師、司会、DJ、大道芸人等)、スタント、

その他類似の芸能実演に係る作業に従事する者

芸能製作作業従事者:監督(舞台演出、映像演出)、撮影、照明、音響・効果、録音、

大道具、美術装飾、衣装、メイク、結髪、スクリプター、アシスタント、マネージャー、

その他類似の芸能製作に係る作業に従事する者

 

④アニメーション制作作業従事者……労働者以外の者であって、アニメーションの制作の

作業に従事する者

具体的には、次のようなアニメーション制作に従事する者やアニメーション演出に従事する者が

想定されています。

アニメーション制作関係:キャラクターデザイナー、作画、絵コンテ、原画、動画、背景、

その他類似する作業を行う者

アニメーション演出関係:監督(アニメ映画監督、作画監督、美術監督等)、演出家、脚本家、

編集(音響、編集等)、その他類似する作業を行う者

 

(2)令和3年9月1日施行分

一人親方その他の自営業者として、自転車を使用して行う貨物の運送の事業を行う者が

追加されます。併せて、これまで通達において特別加入の対象と認めてきた原動機付自転車を

使用して行う貨物の運送の事業についても、明確に規定されます。

 

また、特定作業従事者として、情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業従事者が

追加されます。

 

3、特別加入の手続きその他

 

(1)特別加入の手続き

新たに対象とされたこれらの者は、「一人親方その他の自営業者」又は「特定作業従事者」

として取り扱われますので、特別加入の手続きも、都道府県労働局長の承認を受けた

特別加入団体が「特別加入申請書」を提出することによって行います。

 

(2)保険給付に関する事務

保険給付に関する事務は、当該特別加入団体の主たる事務所の所在地を管轄する

労働基準監督署長が行うこととなります。

 

(3)第2種特別加入保険料率

新たに特別加入の対象とされた事業又は作業のうち、原動機付自転車又は自転車を使用して

行う貨物の運送の事業については、既存の自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業と

同じく、「1,000分の12」です。

これ以外の事業又は作業については、いずれも「1,000の3」です。

2021年8月2日