働き方改革として、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が強く求められています。
そこで、今回は、年次有給休暇に少し焦点を当ててみたいと思います。
1、年次有給休暇の取得状況
厚生労働省「就労条件総合調査」により、年次有給休暇の状況をみると、取得率(全取得日数÷全付与日数×100)は、平成12年以降5割を下回る水準で推移しており、平成27年は48.7%でした。
平成27年7月24日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」においては、平成32 年までに年次有給休暇の取得率を70%以上とすることが目標として掲げられていますが、目標達成にはまだ程遠い状況にあります。
2、そもそも年次有給休暇とは?
年次有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利の一つで、所定の休日以外に仕事を休んでも賃金を払ってもらうことができる休暇です。
①6か月間継続して雇われていて、②全労働日の8割以上を出勤した労働者には、10日間の年次有給休暇が付与されます。
勤続年数が増えていくと、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます(ただし、20日が上限です。)。
派遣社員やパートタイム労働者など正社員以外の働き方をしている労働者でも、前記の①6か月間の継続勤務、②全労働日の8割以上の出勤に加え、③週5日以上の勤務という3つの要件を満たせば、正社員と同じだけの年次有給休暇が付与されます。
週4日以下の勤務で前記③の要件を満たしていない労働者でも、週の所定労働時間が30時間以上であれば、正社員と同じだけの年次有給休暇が付与されます。
また、週の所定労働時間が4日以下で、週の所定労働時間が30時間未満の労働者には、その所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇が付与されます。
年次有給休暇は、原則として、休養のためでもレジャーのためでも利用目的を問われることなく、取得することができます。
しかし、会社の正常な運営を妨げることになるときに限っては、使用者が別の時季に休暇を取るように休暇日を変更させることができます。
使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取扱いをしてはいけません。
3、年次有給休暇取得促進のために
(1)年次有給休暇を取得しやすい環境の整備
年次有給休暇の取得率が低い要因の一つとして、周囲に迷惑がかかること、後で多忙になること、職場の雰囲気が取得しづらいこと等を理由に、多くの労働者がその取得にためらいを感じていることが指摘されています。
そこで、「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」では、事業主に、年次有給休暇の完全取得を目指して、経営者の主導の下、取得の呼びかけ等による取得しやすい雰囲気づくりや、労使の年次有給休暇に対する意識の改革を図ることを求めています。
(2)年次有給休暇の計画的付与制度の活用
年次有給休暇の取得率を向上させる取り組みの一つに、「計画的付与制度」があります。
この計画的付与制度は、付与日数のうち、5日を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に年次有給休暇取得日を割り振ることができる制度です。
(3)「プラスワン休暇」の実施
土日・祝日に年次有給休暇を組み合わせて、連休を実現する取り組みが、「プラスワン休暇」です。
働き方や休み方を変えるきっかけとするために現在、その実施が奨励されています。
(4)「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」の改正
仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、前掲のガイドラインが改正され、平成29年10月1日から適用されています。
この改正により、事業主が講ずべき措置として、次のものが加えられました。
①雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間(6か月間)を短縮することや、年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤務期間(6年6か月)を短縮すること等について、事業場の実情を踏まえ検討すること。
②地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう配慮すること。
4、年次有給休暇の有効に活用を!
まさかいまだに「うちの会社に年次有給休暇なんてない!」「年次有給休暇なんて取れるわけがない!」などと決めつけていませんか?
年次有給休暇の取得は、心身の疲労回復などのために大切なことです。
また、年次有給休暇を取得しやすい環境は、仕事に対する意識やモチベーションを高め、仕事の生産性を向上させ、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなど、企業と労働者の双方にメリットがあります。
年次有給休暇を活用した働きやすく、休みやすい職場環境づくりを考えてみてくださいね。