前回もお知らせしましたが、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称「育児・介護休業法」)が、平成29年1月1日より一部改正されました。
この改正では、次のような雇用環境の整備が図られています。
(1)介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備
(2)多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備
(3)妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備
今回は、このうちの(2)及び(3)について、取り上げます。
1、子の看護休暇の取得単位の柔軟化
子の看護休暇は、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対し与えられる休暇です。
子の看護休暇についても、介護休暇と同様に、半日単位で取得することができることとなりました。
その対象から除外となる労働者などについては、介護休暇に関するものと同様です。
2、有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
育児休業は、子を養育するためにする休業です。
もちろん子の父親、母親のいずれでも育児休業をすることができますが、有期契約労働者については、所定の要件を満たす者に限られます。
この有期契約労働者の育児休業の取得要件が、次のように緩和されました。
①当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
②子が1歳6か月になるまでの間に、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと
このうちの②が今回、改正のあった部分です。
育児休業の申出があった時点で労働契約の期間満了や更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。
3、育児休業等の対象となる子の範囲の拡大
労働者と法律上の親子関係がある子であれば、実子であるか養子であるかを問わず、育児休業の対象となる「子」となります。
また、今回、育児休業の対象となる「子」に、次の関係にある子が追加されました。
①特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子を養育している場合
②養子縁組里親に委託されている子を養育している場合
③当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子を養育する場合
これに伴い、子の看護休暇、育児のための所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務の対象となる子の範囲も同様に拡大されます。
一方、介護休業の対象となる子については、従来どおり、法律上の親子関係がある子に限られます。
4、育児休業等に関するハラスメントの防止措置
育児休業等に関するハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務づけられました。
育児休業等に関するハラスメントとは、職場において、上司又は同僚による育児休業等の制度又は措置の申出・利用に関する言動により就業環境が害されることをいいます。
具体的には、事業主は、次の措置を講じなければなりません。
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
②相談(苦情を含みます。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
④育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
⑤これらの措置と併せて講ずべき措置
・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
・相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
なお、平成29年1月1日施行の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称「男女雇用機会均等法」)の改正により、「妊娠、出産等に関するハラスメントの防止措置」を講ずることも、事業主の義務となりました。
子育てや介護など家庭の状況から時間的制約を抱えている時期の労働者とって、子育てや介護と仕事の両立は、大きな課題の一つです。
法律でこのような労働者の就業環境の整備等が進められていますが、それだけで家庭と仕事を両立することができるわけではありません。
このような制度を生きたものにしていくためには、職場での取り組みが欠かせませんね。