先日、厚生労働省より、令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果が公表されました。
令和3年4月1日施行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)の改正により、
65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることについて、事業主に努力義務が課せられます。
その内容は改めてご紹介することとして、まずは高年齢者雇用の現状を見てみましょう。
1、高年齢者の雇用状況の報告
高年齢者雇用安定法では、事業主に、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めており、
令和2年の集計結果においては、この報告した従業員31人以上の企業164,151社の状況が
まとめられています。
なお、この集計おいては、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。
2、65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況
(1)高年齢者雇用確保措置の実施状況
高年齢者雇用安定法に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの
安定した雇用を確保するため、 ①定年制の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)
の導入いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。
高年齢者雇用確保措置の実施済企業は164,033社(99.9%)、51人以上規模の企業で107,364 社(99.9%)、
未実施の企業は118社(0.1%)、51人以上規模企業で28 社(0.1%)となっています。
高年齢者雇用確保措置を実施済の企業の割合を企業規模別に見ると、大企業では17,069社(99.9%)、
中小企業では146,964社(99.9%)となっています。
また、高年齢者雇用確保措置を実施済の企業では、定年制度(「定年制の廃止」(4,468社、 2.7%)
又は「定年の引上げ」(34,213社、20.9%))よりも、継続雇用制度(125,352社、76.4%)により
高年齢者雇用確保措置を講じる企業の比率が高くなっています。
(2)60歳定年到達者の動向
過去1年間(令和元年6月1日から令和2年5月31日)の60歳定年企業における定年到達者(363,027人)のうち、
継続雇用された者は310,267人(85.5%)、継続雇用を希望しない定年退職者は52,180人(14.4%)、
継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は 580人(0.2%)となっています。
(3)65歳定年企業の状況
定年を65歳とする企業は30,250社、報告した全ての企業に占める割合は18.4%となっています。
企業規模別では、中小企業が28,218 社(19.2%)、大企業が2,032社(11.9%)です。
3、66歳以上働ける企業の状況
(1)66歳以上働ける制度のある企業の状況
66歳以上働ける制度のある企業は54,802社、報告した全ての企業に占める割合は33.4%となっています。
企業規模別では、中小企業が49,985社(34.0%)、大企業では4,817社(28.2%)です。
(2)70歳以上働ける制度のある企業の状況
70歳以上働ける制度のある企業は51,633 社、報告した全ての企業に占める割合は31.5%となっています。
企業規模別では、中小企業が47,172社(32.1%)、大企業が4,461社(26.1%)です。
(3)希望者全員が66歳以上働ける企業の状況
希望者全員が66歳以上まで働ける企業は20,798社、報告した全ての企業に占める割合は 12.7%となっています。
企業規模では、中小企業が19,984社(13.6%)、大企業が814社(4.8%)です。
(4)定年制廃止および66歳以上定年企業の状況
①定年制を廃止している企業は4,468社、報告した全ての企業に占める割合は2.7%となっています。
企業規模別では、中小企業が4,370社(3.0%)、大企業が98社(0.6%)です。
②定年を66~69歳とする企業は1,565社、報告した全ての企業に占める割合は1.0%となっています。
企業規模別では、中小企業が1,532社(1.0%)、大企業が33社(0.2%)です。
③定年を70歳以上とする企業は2,398社、報告した全ての企業に占める割合は1.5%となっています。
企業規模別では、中小企業が2,323社(1.6%)、大企業が75社(0.4%)です。
4、進む生涯現役社会の実現に向けた取り組み
人生百年時代ともいわれる昨今、高年齢者の労働参加も進んでいることが分かります。
内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)によれば、現在仕事をしている60歳以上の方の
約9割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。
働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、多様な雇用・就業機会の確保について、
企業でも様々な取り組みを模索する時期に来ているといえますね。