観光客の方々はもちろん、日本で働く外国人の方々を見かける機会も随分と多くなりました。
厚生労働省では、毎年6月を「外国人労働者問題啓発月間」としており、
今年は「外国人雇用はルールを守って適正に~外国人が能力を発揮できる適切な人事管理と就労環境を!~」を標語に、
事業主や国民を対象とした集中的な周知・啓発活動が行われるそうです。
1、外国人労働者の雇用状況は?
雇用対策法に基づき、すべての事業主に、外国人労働者の雇入れ・離職時の届出を義務づけています(詳細は、次の2をご参照ください。)。
この届出を取りまとめて公表される「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成28年10月現在)」(厚生労働省)によると、外国人労働者数は約108万人となり、4年連続で過去最高を更新しました。
また、外国人を雇用している事業所数も、この届出が義務化された平成19年以来初めて17万事業所を超えました。
外国人を雇用している事業所は、事業規模別では、「30人未満」規模の事業所が最も多く、産業別では、「製造業」が最も多く、次いで「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「サービス業(他に分類されないもの)」となっています。
一方で、外国人労働者の就労状況をみると、次のような課題もあるようです。
①派遣・請負の就労形態が多く雇用が不安定であること。
②社会保険に未加入の労働者が多いこと。
2、外国人労働者の雇用状況の届出をお忘れなく!
外国人雇用状況の届出制度は、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的として、雇用対策法により、すべての事業主に所定の事項の確認・届出を義務づけるものです。
事業主は、外国人労働者の雇入れ及び離職時には、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出なければなりません。
(1)届出の対象となる外国人の範囲
日本の国籍を有しない労働者で、在留資格が「外交」「公用」以外のものが、届出の対象となります。
なお、「特別永住者」については、本邦における活動に制限がないため、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、事業主の確認・届出は不要です。
(2)届出事項の確認方法
外国人労働者の在留カード又はパスポートなどの提示を求め、届出事項を確認します。
また、「留学」や「家族滞在」などの在留資格の外国人が資格外活動許可を受けて就労する場合は、在留カードやパスポートまたは資格外活動許可書などにより、資格外活動許可を受けていることを確認する必要があります。
(3)届出の方法
雇用する外国人労働者が雇用保険の被保険者となる場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」及び「雇用保険被保険者資格喪失届」の所定の欄に、必要事項を記載し提出することで、届出を行ったことになります(届出期限は、これらの届書の提出期限と同じです。)。
雇用する外国人労働者が雇用保険の被保険者とならない場合には、「外国人雇用状況届出書」に必要事項を記載し提出することで、届出を行います(届出期限は、雇入れの場合も離職の場合も、ともに翌月の末日です。)。
3、外国人労働者についても適切な雇用管理を!
外国人労働者の雇用管理の改善等に関しては、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」において、事業主が行うべき事項が定められています。
その主な内容としては、おおよそ次のようなことが挙げられています。
(1)外国人労働者の募集及び採用の適正化(国籍で差別しない公平な採用選考等)
(2)労働関係法令及び社会保険関係法令の適用(①労働条件面での国籍による差別の禁止その他適正な労働条件の確保、②安全衛生の確保、③雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険の適用等)
(3)適切な人事管理・教育訓練・福利厚生等(①能力を発揮しやすい環境の整備、②日本語教育、③相談体制の整備、④外国人労働者の雇用労務責任者の選任等)
(4)解雇の予防及び再就職の援助(①安易な解雇等を行わないこと、②在留資格に応じた再就職の援助等)
4、今後に向けて。
外国人労働者については、不法就労の問題も含め、いまだ様々な問題が指摘されています。
また、政府が取り組んでいる専門的な知識・技術を持つ外国人(いわゆる「高度外国人材」)の就業促進については、企業側の受入れ環境が整っていないなどの理由で、まだ不十分な状況もあります。
とはいえ、外国人労働者は今後も増加すると思われますので、その雇用にあたっては、単に労働力の不足を補おうとするのではなく、その方が在留資格の範囲内で能力を十分に発揮しながら、適正に就労することができるよう適切な雇用管理に努めることが大切ですね。