産業医制度の充実を図ること等を目的として、平成29年6月1日から、労働安全衛生規則の一部が改正されました。
今回は、これを機に、産業医の役割などを含めて、少しご紹介したいと思います。
1、産業医とは?
産業医とは、労働者の健康管理等を行う医師です。
産業医になることができるのは、医師のうちでも、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識についての所定の研修を修了した者などに限られます。
労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、産業医の選任が義務づけられています。
なお、常時使用する労働者数が 50 人未満の事業場においても、産業医の選任義務はないものの、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならないこととされています。
2、産業医の仕事
産業医は、次のようなことを行っています。
(1)労働者の健康管理に関すること(健康診断、長時間労働者に対する面接指導等の実施及びその結果に基づく措置、ストレスチェック、高ストレス者への面接指導及びその結果に基づく措置、作業環境の維持管理、作業の管理)。
(2)健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
(3)労働衛生教育に関すること。
(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者や総括安全衛生管理者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をし、または、衛生管理者に対して指導や助言することができます。
また、産業医は、少なくとも毎月1回、作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
3、今回の改正で何が変わった?
過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策等が重大な課題となっていることから、これらの対策等に関して必要な措置を講じるための情報収集等について、次のような改正が行われました。
(1)定期巡視の頻度
産業医が、毎月1回以上、一定の情報(衛生管理者が行う巡視の結果など)が事業者から産業医に提供される場合であって、事業者の同意を得ているときは、定期巡視の頻度を少なくとも2か月に1回とすることができるようになりました。
(2)健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取を行ううえで必要となる情報の提供
事業場の規模にかかわらず、定期健康診断の異常所見者については、就業上の措置に関して医師または歯科医師からの意見聴取が事業者に義務づけられています。
事業者は、医師等から、この意見聴取を行ううえで必要となる当該労働者の業務に関する情報を求められた場合は、速やかに、当該情報を提供しなければならないこととなりました。
この「労働者の業務に関する情報」には、労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数等があります。
(3)産業医に対する長時間労働者に関する情報の提供
事業者は、時間外・休日労働時間(休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間)を算定したときは、速やかに、次の情報を提供しなければならないこととなりました。
①時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超えた労働者の氏名(そのような労働者がいない場合には、その旨)
②当該労働者に係る超えた時間に関する情報
これらの情報は、産業医による長時間労働者に対する面接指導の申出の勧奨のほか、健康相談等で、活用されることが想定されています。
4、よき相談相手の一人に。
平成29年3月28日に働き方改革実現会議において決定された「働き方改革実行計画」においても、「労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化」が掲げられています。
働く人々が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進するためにも、産業医の役割が今後さらに注目されます。
産業医を選任することで、労働者の健康管理が可能となるほか、衛生教育などを通じ職場の健康意識が向上したり、職場における作業環境の管理などについて助言が受けられたりします。
健康で活力ある職場づくりのために、産業医の先生方を、私たち社会保険労務士とはまた違った立場での相談相手の一人に加えてられるとよいかもしれませんね。