職場においても熱中症予防対策を!

 

東日本・西日本を中心とした「災害レベル」ともいわれる暑さとともに、熱中症に関するニュースが連日のように報道されていますね。

家庭のみならず、職場における熱中症による死傷災害も増加傾向にあるようです。

 

1、熱中症とは?

高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりすることなどから、発症する障害の総称です。

その症状としては、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣(けいれん)・手足の運動障害、高体温などが現れるそうです。

 

2、職場における熱中症による死傷災害の発生状況

平成30年5月31日に、厚生労働省から、平成29年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確報)が公表されました。

(1) 職場における熱中症による死傷者数の推移(平成20~29年)

過去 10 年間の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数(以下、合わせて「死傷者数」といいます。)は、平成22年が656人と最多であり、その後も400~500人台で高止まりの状態にあります。

平成29年の職場での熱中症による死傷者数は544名(平成28年比82人増)、このうち死亡者数は14名(同2人増)で、死傷者数、死亡者数いずれも2割程度増加しています。

 

(2)業種別発生状況(平成 25~29 年)

過去5年間の業種別の熱中症による死傷者数をみると、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しており、全体の約5割がこれらの業種で発生しています。

平成29年の業種別の死亡者をみると、建設業が最も多く、全体の約6割(8人)が建設業で発生しています。

 

(3)月・時間帯別発生状況(平成25~29年)

過去5年間の月別の熱中症による死傷者数をみると、全体の約9割が7月及び8月に発生しています。

また、時間帯別では、11時台及び14~16時台に多く発生しています。日中の作業終了後に帰宅してから体調が悪化し病院へ搬送されるケースも散見されます。

 

(4)発生状況(平成29年の職場における熱中症による死亡者14人について)

次のような基本的な対策が取られていなかったことが分かるとされています。

・WBGT値(暑さ指数:気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数)の測定を行っていなかった(13人)

・計画的な熱への順化期間が設定されていなかった(13人)

・事業者が水分や塩分の準備をしていなかった(4人)

・健康診断を行っていなかった(5人)など

 

3、熱中症の予防に関する数値目標

第13次労働災害防止計画において、「職場での熱中症による死亡者数を2013年から2017年までの5年間と比較して、2018年から2022年までの5年間で5%以上減少させる」との数値目標が設定されています。

具体的な対応策としては、次のことが掲げられています。

・ 日本工業規格(JIS)に適合したWBGT値測定器を普及させるとともに、夏季の屋外作業や高温多湿な屋内作業場については、WBGT値の測定とその結果に基づき、休憩の確保、水分・塩分の補給、クールベストの着用等の必要な措置が取られるよう推進すること。

・ 熱中症予防対策の理解を深めるために、建設業等における先進的な取り組みの紹介や労働者等向けの教育ツールの提供を行うこと。

 

4、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」

厚生労働省では、熱中症予防対策の徹底を図ることを目的として、関係省庁及び関係団体との連携の下、平成29年に続き、平成30年も「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(期間:5月1日から9月30日まで)を実施しています。

このキャンペーンの目的は、職場における熱中症予防対策の浸透を図るとともに、重篤な災害を防ぐために、事業場におけるWBGT値の把握や緊急時の連絡体制の整備等を特に重点的に実施し、改めて職場における熱中症予防対策の徹底を図ることにあります。

 

 

5、職場でも必要に応じた熱中症予防対策を!

「熱中症」は、高温多湿な環境の中での作業などに起因して発症する病気です。

職場における熱中症といえば建設業というイメージもあるかもしれませんが、製造業、運送業、警備業、商業、清掃・と畜業などでも死傷者が出ています。

熱中症の予防のためにWBGT値を活用するほか、労働衛生教育を行うことも大切です。

 

必ずしも熱中症対策ばかりではないのでしょうけれども、最近では、猛暑日のテレワークを推奨する企業も出てきているようです。

職場において熱中症が起こるリスクは、業種や職場環境によって大きく異なりますが、死傷災害につながることもありますので、必要に応じた対策を検討する機会としてください。

2018年8月1日