中小企業退職金共済制度~加入促進強化月間によせて

中小企業における退職金制度の一つとして、中小企業退職金共済制度があります。

毎年10月は中小企業退職金共済制度の「加入促進強化月間」ですが、ご存じでしたか?

 

1、中小企業退職金共済制度とは?

中小企業退職金共済制度は、中小企業対策の一環として制定された中小企業退職金共済法に基づく社外積み立て型の退職金制度です。

単独では退職金制度を持つことが困難である中小・零細企業の実情を考慮して、中小企業者の相互扶助の精神と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図り、中小企業の振興と発展に寄与することを目的としています。

この制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構(機構)が運営しています。

一般の中小企業退職金共済制度と特定業種退職金共済制度があります。

 

2、一般の中小企業退職金共済制度のしくみ

(1)申し込み

事業主が雇用する従業員を対象に、機構と「退職金共済契約」を結びます。

この契約では、事業主が機構に掛金を納付することを約し、機構がその事業主の雇用する従業員の退職について、退職金を支給することを約します。

(2)掛金

毎月の掛金(加入従業員の総額)は、金融機関の預金口座から、振り替えられます。

加入従業員ごとの「納付状況」「退職金試算額」が、年1回事業主に通知されます。

(3)退職金の支払い

退職した従業員の請求に基づき、機構から退職金が直接、支払われます。

退職した従業員が、事業主から交付される「退職金共済手帳(請求書)」を機構に送付すると、これに基づいて、退職した従業員の預金口座に退職金が振り込まれます。

退職金額等は、事業主および従業員に振り込み前に通知されます。

 

3、加入できる企業

一般の中小企業退職金共済制度に加入できるのは、次の企業です。ただし、個人企業や公益法人等の場合は、常用従業員数によります。

一般業種(製造業、建設業等):常用従業員数300人以下または資本金・出資金3億円以下

卸売業:常用従業員数100人以下または資本金・出資金1億円以下

サービス業:常用従業員数100人以下または資本金・出資金5,000万円以下

小売業:常用従業員数50人以下または資本金・出資金5,000万円以下

 

加入後に従業員の増加などにより条件を満たさなくなった場合には、中退共制度との契約は解除されます(従業員には解約手当金が支払われます。)が、一定の要件を備えていれば、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度または特定退職金共済事業に退職金相当額を引き継ぐことができます。

 

なお、加入に際しては、原則として、従業員の全員を加入させる必要があります。

ただし、期間を定めて雇用される者、短時間労働者など一定の者は、加入させなくてもよいことになっています。

 

4、掛金月額

一般の中小企業退職金共済制度の掛金月額は、5,000円から30,000円までの範囲で定められた額の中から、従業員ごとに選択することができます。

掛金月額は、加入後いつでも増額できますが、減額する場合は、一定の条件が必要です。

なお、新規加入や掛金の増額に対して国の助成制度があります

 

掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります(ただし、資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されます。)。

 

5、退職金

一般の中小企業退職金共済制度において支給される退職金の金額は、基本退職金(掛金月額と掛金納付月数に応じて定められている金額)と付加退職金(運用収入の状況等に応じて定められる金額)を合算した額となります。

掛金の納付が1年未満の場合は、退職金は支給されません。

1年以上2年未満の場合は掛金相当額を下回る額になりますが、2年から3年6か月では掛金相当額となり、3年7か月から掛金相当額を上回る額になります。

なお、退職金は退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます。

 

6、従業員の将来の安心材料の一つに。

退職金制度があることは、従業員の将来への安心感や、仕事への意欲につながります。

また、国が掛金の一部を助成するほか、管理も簡単で、税制上の優遇措置が受けられるなどのメリットがあるため、平成30年7月末時点で約54万6,000の中小企業が中小企業退職金共済制度に加入しています。

企業の活性化や優秀な人材の確保のための企業の魅力づくりの一環として、選択肢の一つに加えてみるのもよいかもしれませんね。

2018年10月3日