働き方改革関連法~「フレックスタイム制」の拡充

 

働き方改革関連法の施行により、2019(平成31)年4月1日から、子育てや介護などをしながらでもより働きやすくするため、「フレックスタイム制」が拡充されます。

 

1、「フレックスタイム制」の意義と改正の趣旨

 

フレックスタイム制は、一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働く制度です。

今回の改正においては、子育てや介護、自己啓発などの様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、効率的な働き方を一層可能にするため、フレックスタイム制がより利用しやすい制度となるよう、清算期間の上限の延長等の見直しが行われます。

 

2、清算期間の上限の延長等

 

(1)清算期間の上限の延長

フレックスタイム制における清算期間とは、その期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えない範囲内において労働させる期間をいいます。

この清算期間は従来、1か月以内の期間に限られましたが、これが3か月以内の期間に延長されます。

これにより、例えば、清算期間を6月~8月の3か月とすると、この中で労働時間の調整が可能となるため、子育て中の親が6月や7月の労働時間を長くし、その分、8月の労働時間を短くすることで 、夏休み中の子どもと過ごす時間を確保しやくなることが考えられます。

 

(2)清算期間が1か月を超え3か月以内である場合の過重労働防止

清算期間を3か月以内に延長することにより、清算期間内の各月における労働時間の長短の幅が大きくなることが考えられます。

このため、対象労働者の過重労働を防止する観点から、清算期間が1か月を超える場合には、当該清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えないようにしなければなりません。

 

(3)完全週休2日制の場合の清算期間における労働時間の限度

完全週休2日制の下で働く労働者(1週間の所定労働日数が5日の労働者)にフレックスタイム制を適用する場合には、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも清算期間における法定労働時間の総枠を超えことがあります。

このような課題を解消するため、完全週休2日制の事業場において、労使協定により、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を清算期間における法定労働時間の総枠とすることができるようになります。

この場合には、「(8時間×清算期間における所定労働日数)÷(清算期間における歴日数÷7)」で計算した時間数を1週間当たりの労働時間の限度とすることができます。

 

3、労使協定の締結及び届出

 

フレックスタイム制の導入に当たっては、①就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることを定めるとともに、②労使協定により、所定の事項を定める必要があります。

これらに加えて、今回の改正により、清算期間が1か月を超えるものである場合には、③労使協定に有効期間の定めをするとともに、④当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出なければならないこととなります。

④の届出を行わなかった使用者は、30万円以下の罰金に処せられます。

 

4、法定時間外労働となる時間

 

フレックスタイム制を採用した場合には、次の①及び②の労働時間が、法定時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。

①清算期間が1か月以内の場合:清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間

②清算期間が1か月を超え3か月以内の場合:次のア及びイを合計した時間

ア 清算期間を1か月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)における実労働時間のうち、各期間を平均し1週間当たり50時間を超えて労働させた時間

イ 清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(ただし、上記アで算定された時間外労働時間は除きます。)

 

なお、清算期間が1か月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者については、当該労働させた期間を平均して1週間当たり40時間を超えて労働させた時間について、割増賃金を支払わなければなりません。

 

5、選択肢の一つとしてのフレックスタム制の導入

 

平成30年就労条件総合調査によれば、平成30年1月1日現在、フレックスタイム制を採用している企業割合は5.6%、適用を受ける労働者割合は7.8%にとどまっています。

フレックスタイム制の下では、各自の始業及び終業の時刻が労働者に委ねられるため、労働者が仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことが可能となります。

仕事と生活の調和を図りやすい職場になれば、労働者が長く職場に定着することも期待できますので、これを機会に働き方の選択肢に加えてもよいかもしれませんね。

2019年2月5日