新型コロナウイルス感染症の感染拡大が大きな懸念事項となっており、企業活動などにも影響が出始めています。
このようなときこそ、業務の合理化を図るとともに、労使で十分に話し合い、労働者が安心して働き、または、休みやすい環境を整備することが求められます。
1、感染防止に向けた取り組み
(1)テレワークの活用
テレワークは、本拠地のオフィスから離れた場所で、ICT(情報通信技術)を使って仕事をすることです。
テレワークの制度が整備されている企業では、その制度の範囲内でテレワークを実施することができます。
なお、テレワーク時にも労働基準関係法令が適用されますので、制度導入に当たっては、労働時間管理などを含めて、まずは就業規則などの規定を確認する必要があります。
(2)時差通勤やフレックスタイム制の活用
時差通勤とは、混雑緩和のため、ラッシュ時間帯の前後に通勤時間をずらすことです。
労働者及び使用者がその内容について十分な協議を行い、合意することによって、始業や終業の時刻を変更することができます。
一方、フレックスタイム制は、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ね、清算期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内での労働を認める制度です。
フレックスタイム制の導入に当たっては、就業規則等の改定と労使協定の締結が必要です。
2、労働者の休業に関する取扱い
(1)事業の休止等により労働者を休ませる場合
新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合であっても、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するときは、使用者は、休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。
(2)感染した労働者が休業する場合
新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、使用者が休業手当を支払う必要はありません。
健康保険などの被用者保険に加入している労働者については、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。
(3)感染が疑われる労働者
感染が疑われる労働者を、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しますので、休業手当を支払う必要があります。
一方、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休業する場合は、通常の病欠と同様に取り扱い、年次有給休暇や、病気休暇などの特別休暇制度を活用することが考えられます。
(4)保育などを理由に休業する労働者
年次有給休暇その他の休暇制度の活用を含めて、労使で十分に話し合う必要があります。
場合によっては、テレワークでの対応なども検討し、柔軟に対応することが望まれます。
3、労働時間の関する取り扱い
(1)変形労働時間制の導入や変更
新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業活動を縮小したために労働時間が短くなる場合については、1年単位の変形労働時間制を導入することが考えられます。
また、すでに1年単位の変形労働時間制を採用している事業場において、新型コロナウイルス感染症への対策による影響により、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に、1年単位の変形労働時間制の労使協定を労使で合意解約をすることや、破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能でしょう。
(2)特別条項付き36協定
新型コロナウイルス感染症に関連して、休む労働者が増え、残りの労働者が多く働くこととなった場合には、特別条項付き36協定を活用することが考えられます。
すでに特別条項付き36協定を締結している事業場においては、この場合も、一般的には、特別条項の理由として認められるものとされています。
現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続きを踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの36協定を締結することが可能です。
4、助成金など
①新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業に雇用を維持してもらうため、雇用調整助成金の特例が実施され、その対象が拡大されています。
②新型コロナウイルスの感染防止のために要請された小中高校などの臨時休校に伴い、休業する保護者の所得減少に対応する新たな助成金制度が創設されます。
③経済産業省においても、経営相談窓口の開設、資金繰り支援(貸付・保証)、新型コロナウイルス対策補助事業、経営環境の整備(下請取引配慮要請、現地進出企業・現地情報及びジェトロ相談窓口、輸出入手続きの緩和等)等の施策がとられています。