新型コロナウイルス感染症の影響による休業により報酬が著しく下がった被保険者であって、一定の条件に該当するものについて、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定によらず、翌月からの改定を可能とする特例が設けられています。
1、特例改定の対象者
次のすべてに該当する被保険者が、この特例による改定(特例改定)の対象となります。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響による 休業 があったことにより、令和2年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月(急減月)が生じたこと
休業とは、労働者が事業所において、労働契約、就業規則、労働協約等で定められた所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全1日にわたり労働することができない状態または当該所定労働日の労働時間内において1時間以上労働することができない状態をいいます。
たとえば、①事業主からの休業命令や自宅待機指示などにより休業状態にあった者(1か月のうちに1時間でも休業のあった者)や、②日給や時間給の者であって、事業主からの命令や指示等により、通常の勤務やシフトによる日数や時間を短縮し、短時間休業が行われることとなったものが対象となりえます。
一方、休業を伴わずに報酬が低下した場合(テレワークの実施により残業時間が減少し、報酬が低下した場合等)や、休業が新型コロナウイルス感染症の影響によるものでない場合などは、特例改定の対象となりません。
(2)著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、すでに設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと
①通常の随時改定の場合とは異なり、急減月に固定的賃金(日給等の単価)の変動があったか否かは問われません。
②事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、賃金の支払い状況にかかわらず、休業した日を報酬支払基礎日数として取り扱って差し支えないものとされています。そのうえでも、休業のあった月とその前2か月のいずれか1月でも報酬払基礎日数が17日未満(または11日未満)となる場合は、特例改定の対象となりません。
③急減月に、報酬が何ら支払われていない者については、第1級の標準報酬月額として取り扱われます。なお、報酬には、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金は含みません。
④被保険者期間が急減月を含めて3か月未満の者については、特例改定の要件となる被保険者期間を満たさないため、特例改定の対象とはなりません。
(3)特例改定を行うことについて、本人が書面で同意していること
①改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が算出されることへの同意を含めて、被保険者本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。
②同一の被保険者について複数回、特例改定の申請を行うことはできません。
2、減額の対象となる保険料
令和2年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合が特例改定の対象ですので、その翌月の令和2年5月から8月分の保険料が減額の対象となります。
3、申請手続等
特定改定の適用を受けようとする場合には、事業主は、月額変更届(特例改定用)に申立書を添付し、管轄の年金事務所に申請します。
届書及び申請書は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。
申請期限は、令和3年1月末日です。
それまでの間は遡及しての適用が可能ですが、事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするためにも、できるだけ速やかな申請が望まれます。
また、申請により保険料が遡及して減額される場合には、被保険者へ適切に保険料を返還する必要があります。
4、特例改定後の対応等
(1)特例改定を受けた者に係る定時決定
5月・6月に特例改定が行われた者については、定時決定を行う必要があります。
一方、7月・8月に特例改定が行われた者については、定時決定を行う必要はありません。
(2)休業が回復した場合の取り扱い
特例改定後に、昇給など固定的賃金の変動により随時改定の要件に該当することとなった場合には、通常の随時改定の届出が必要となります。
なお、定時決定が行われない7月分または8月分保険料から本特例による改定が行われた者については、休業が回復した月から継続した3か月間の報酬による標準報酬月額が2等級以上上昇する場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、月額変更届の届出が必要となります。
(3)通常の定時決定や随時改定について
通常の定時決定や随時改定の対象者の要件や手続方法に変更はありません。
従来どおり、休業中で給与等の支給がない日は報酬支払基礎日数に含まれず、また、固定的賃金の変動があった場合のみが随時改定の対象となります。