健康保険制度における被保険者証ついては、令和3年10月1日より、保険者が支障がないと
認めるときは、これを保険者から直接被保険者に交付することが可能となりました。
また、一部の医療機関等において、マイナンバーカードの健康保険証利用が開始されたことが
話題となっていますので、そのメリットなどを簡単にご紹介します。
1、被保険者証の交付等に関する改正(令和3年10月1日施行)
(1)改正の趣旨
健康保険制度における被保険者証等については、原則として、保険者から事業主に送付し、
事業主から被保険者(任意継続被保険者を除く。)に交付することとされています。
この点について、テレワークの普及等に対応した柔軟な事務手続を可能とするため、
保険者が支障がないと認めるときは、保険者から被保険者に対して被保険者証等を
直接交付すること等が可能となりました。
(2)改正の内容
健康保険法施行規則の改正により、保険者が支障がないと認めるときは、任意継続被保険者以外の
被保険者についても、次のことが可能となりました。
①被保険者証の交付について、保険者が被保険者に直接送付すること。
②被保険者証の情報を訂正した場合における被保険者証の返付について、事業主を経由することを
要せず、行うこと。
③被保険者証の再交付について、事業主を経由することを要せず、行うこと。
④被保険者証の検認又は更新等を行った場合における被保険者証の交付について、
保険者が被保険者に直接送付すること。
なお、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証の
交付方法等についても、上記①~④に準じた改正が行われています。
(3)被保険者証等の直接交付に関する具体的な取扱い
①「保険者が支障がないと認めるとき」とは?
事務負担や費用、住所地情報の把握等を踏まえた円滑な直接交付事務の実現可能性や、
関係者(保険者・事業主・被保険者)間での調整状況等を踏まえ、保険者(全国健康保険協会・健康保険組合)が
支障がないと認める状況が想定されています。
具体的な運用については、法令上、特段の制限はありませんが、直送に要する費用は、
被保険者・事業主全体が負担する保険料等を原資としていることから、
被保険者・事業所間における不公平が生じないよう留意したうえで、各保検者の実情に応じて
決定されることとなります。
②被保険者証等の返納について
被保険者証等の返納については、その取扱いに変更はありません。
事業主は、被保険者が資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、
又はその被扶養者が異動したときは、遅滞なく、被保険者証を回収して、これを保険者に
返納しなければならない。
被保険者は、その資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、又はその被扶養者が
異動したときは、5日以内に、被保険者証を事業主に提出しなければなりません。
③事業所整理記号及び被保険者整理番号の管理
被保険者証を直接交付する場合であっても、厚生労働大臣又は健康保険組合が被保険者の
資格の取得の確認を行ったとき、又は事業所整理記号及び被保険者整理番号を変更したときは、
事業所整理記号及び被保険者整理番号が事業主に通知されます。
これまでと同様に、事業主は、通知された事業所整理記号及び被保険者整理番号を適切に
管理する必要があります。
2、マイナンバーカードの健康保険証利用について
医療保険制度自体と直接関係する事項ではありませんが、マイナンバーカードの健康保険証利用が、
オンライン資格確認が導入されている一部の医療機関・薬局で開始されています。
(1)マイナンバーカードを健康保険証として利用するメリット
・転職・結婚・引越しをしても、健康保険証の発行を待たずに、保険者での手続きが完了次第、
マイナンバーカードで医療機関等を利用することができます。
・顔認証付きカードリーダーで医療機関等での受付が自動化されます。
また、医療機関・薬局の窓口での限度額以上の一時支払いの手続きが不要になります。
・マイナンバーカードを用いて、薬剤情報、特定健診情報、医療費通知情報を閲覧することが
できるようになります。薬剤情報と特定健診情報については、患者の同意を得たうえで
医療関係者に提供し、よりよい医療を受けることができるようになります。
・このほか、確定申告が簡単になるなどのメリットもあります。
(2)その他
・マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、利用開始時に生涯に1回、
健康保険証利用の申込みをする必要があります(保険者が変わる場合の異動届等の手続は、
引き続き必要です。)。
・健康保険証も、従来どおり、使用することができます。
また、オンライン資格確認が導入されていない医療機関・薬局では、引き続き健康保険証が必要です。