厚生労働省では、本年12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、
集中的な広報・啓発活動を実施することとしています。
この機会に改めて、職場のハラスメントについて整理しておきましょう。
1、職場のハラスメントとは?
(1)職場のパワーハラスメント(パワハラ)
職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることをいいます。
次の6類型が挙げられますが、必ずしもこれがすべてというわけではありません。
①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の 妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(2)職場のセクシュアルハラスメント(セクハラ)
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをいい、次の2類型があります。
①対価型セクシュアルハラスメント:職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること
②環境型セクシュアルハラスメント:職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されること
(3)職場の妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ))
職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいい、次の2類型があります。
①制度等の利用への嫌がらせ型:出産・育児・介護に関連する制度の利用に際し、当事者が利用をあきらめざるを得ないような言動で制度利用を阻害すること
②状態への嫌がらせ型:出産・育児などにより就労状況が変化したことなどに対し、嫌がらせをすること
2、事業主の講ずべき措置
事業主は職場のセクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するために、次の措置を講じる必要があります。
(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
②行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
(2)相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
①相談窓口の設置
②相談に対する適切な対応
(3)職場ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
①事実関係の迅速かつ正確な確認
②被害者に対する適正な配慮の措置の実施
③行為者に対する適正な措置の実施
(4)職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
①再発防止措置の実施
②業務体制の整備など事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置
(5)これらの措置と併せて講ずべき措置
①当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
②相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発
3、労働施策総合推進法等の改正(令和2年6月1日施行予定)
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が令和元年6月5日に公布され、労働施策総合推進法について、次のような改正が行われました。
(1)国の施策の一つとして職場のハラスメント対策を明記
(2)パワーハラスメント防止対策の法制化
職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となり、適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります(中小事業主は令和4年3月31日までは努力義務の予定)。
また、労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等に関する相談をしたこと等を理由とした事業主による不利益な取扱いが禁止されるなど、セクシュアルハラスメント等防止対策の実効性の向上を図るための男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の改正が行われます。
4、ハラスメントのない職場に!
職場のいじめ・嫌がらせについては、都道府県労働局への相談が増加傾向にあるなど、大きな課題の一つとなっており、ハラスメント対策強化のための法改正も予定されています。
「ハラスメントなんて、うちの職場には関係ない」などと思わず、まず「ハラスメントとは何か」を理解し、必要な対策を講じてください。
事態が深刻化する前に、職場で十分なコミュニケーションを図ることも重要ですよ!