働き方改革関連法~「労働施策総合推進法」施行から1年!

 

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、2018(平成30)年7月6日に公布されてから1年が経過しました。

具体的な制度が実施され始めたのは、2019(平成31)年4月1日からですが、これらに先だって、「雇用対策法」が「労働施策総合推進法」に改称・改正されています。

 

1、「労働施策総合推進法」

 

働き方改革関連法の公布と同時に、従来の「雇用対策法」が「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(通称:労働施策総合推進法)に改称されました。

同法の目的には、労働施策を総合的に講ずることにより、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実、労働生産性の向上を促進して、労働者がその能力を有効に発揮することができるようにし、その職業の安定等を図ることが明記されています。

また、労働者は、職務及び職務に必要な能力等の内容が明らかにされ、これらに即した公正な評価及び処遇その他の措置が効果的に実施されることにより、職業の安定が図られるように配慮されるものとされています。

 

2、「労働施策基本方針」の策定

 

労働施策総合推進法においては、国は、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、「労働施策基本方針」が策定されました(2018(平成30)年12月28日閣議決定)。

労働施策基本方針においては、働き方改革の意義やその趣旨を踏まえた国の施策に関する基本的な事項等について示されています。

 

3、改めて「働き方改革」の意義とその施策

 

(1)働き方改革の目指す社会

「労働施策基本方針」では、働き方改革の意義やその趣旨を踏まえた国の労働施策に関する基本的な事項等が示されています。

これによれば、働き方改革によって目指す社会は、次のようなものです。

①誰もが生きがいを持って、その能力を有効に発揮することができる社会

②多様な働き方を可能とし、自分の未来を自ら創ることができる社会

③意欲ある人々に多様なチャンスを生み出し、企業の生産性・収益力の向上が図られる社会

 

(2)労働施策に関する基本的な事項

働き方改革に関する国の労働施策においては、次のようなことがなされています。

①労働時間の短縮等の労働環境の整備(長時間労働の是正、過労死等の防止、最低賃金・賃金引上げと生産性向上、産業医・産業保健機能の強化、職場のハラスメント対策及び多様性を受け入れる環境整備など)

②均衡のとれた待遇の確保、多様な働き方の整備(雇用形態又は就業形態にかかわらない公正な待遇の確保など非正規雇用労働者の待遇改善、正規雇用を希望する非正規雇用労働者に対する正社員転換等の支援など)

③多様な人材の活躍促進(女性の活躍推進、若者の活躍促進、高齢者の活躍促進、障害者等の活躍促進、外国人材の受入環境の整備など)

④育児・介護・治療と仕事との両立支援(育児や介護と仕事の両立支援、治療と仕事の両立支援など)

⑤人的資本の質の向上、職業能力評価の充実(リカレント教育等による人材育成の推進など)

⑥転職・再就職支援、職業紹介等の充実(成長分野等への労働移動の支援など)

⑦働き方改革の円滑な実施に向けた連携体制整備

 

(3)労働者が能力を有効に発揮できるようにすることに関するその他の重要事項

前記(2)の労働施策に加えて、次のような施策がなされます。

①商慣行の見直しや取引環境の改善など下請取引対策の強化

②労働条件の改善に向けた生産性の向上支援

③学校段階における職業意識の啓発、労働関係法令等に関する教育の推進

 

(4)働き方改革の効果

これらの施策の効果としては、①労働参加率の向上、②イノベーション等を通じた生産性の向上、③企業文化・風土の変革、④働く人のモチベーションの向上、⑤賃金の上昇と需要の拡大、⑥職務の内容や職務に必要な能力等の明確化、公正な評価・処遇等が期待されます。

 

4、「働き方改革」とは言うけれど!?

 

国の大きな政策に取り上げられて以降、本当に「働き方改革」という言葉をよく耳にするようになりました。

そして、年次有給休暇の事業主による時季指定や時間外労働の上限規制など、具体的な制度がすでに導入されています。

しかし、事業主や実際に働く労働者の意識が変わらなければ、どのような制度も絵に描いた餅となってしまいます。

働き方改革関連法施行から1年のこの機会に、何のための改革なのかに思いをめぐらせつつ職場を見回してみると、改善すべきところが見つかるかもしれませんね。

2019年7月5日