働き方改革関連法~「高度プロフェッショナル制度」を新設

 

働き方改革関連法の施行により、2019(平成31)年4月1日から、労働基準法が改正され、高度プロフェッショナル制度が新設されました。

 

1、「高度プロフェッショナル制度」とは?

 

「高度プロフェッショナル制度」とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

その導入に当たっては、労使委員会の決議及び労働者本人の同意が前提となるほか、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずる必要があります。

 

2、対象となる労働者及び業務の範囲

 

(1)対象労働者

対象となる労働者は、次のいずれにも該当するものに限定されます。

①使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること

②使用者から確実に支払われると見込まれる1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上であること

③対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが原則であり、対象業務以外の業務にも常態として従事している者は対象労働者とはならないこと

 

なお、上記①については、使用者は、(ア)業務の内容、(イ)責任の程度、(ウ)職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準を明らかにした書面に労働者の署名を受けることにより、職務の範囲について労働者の合意を得なければなりません。

 

(2)対象業務

対象となる業務は、次に掲げるものに限られます。

また、当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものは除かれます。

金融工学等の知識を用いて行う商品開発業務

資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

 

3、高度プロフェッショナル制度の導入に当たって

 

(1)導入手続

高度プロフェッショナル制度を事業場に導入するに当たっては、労使委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により決議をし、かつ、使用者が、当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません

決議すべき事項には、①対象業務、②対象労働者の範囲、③健康管理時間の把握、④休日の確保、⑤選択的措置、⑥健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置、⑦同意の撤回に関する手続き、⑧苦情処理措置、⑨不利益取り扱いの禁止、⑩その他厚生労働省令で定める事項があります。

 

(2)対象労働者の同意

高度プロフェッショナル制度を労働者に適用するに当たっては、使用者は、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象 労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)により、当該対象労働者の同意を得なければなりません。

①同意をした場合には労働基準法第4章の規定が適用されないこととなる旨

②同意の対象となる期間

③同意の対象となる期間中に支払われると見込まれる賃金の額

 

(3)対象労働者の健康確保措置

使用者は、高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対して、①健康管理時間の把握、②休日の確保、③選択的措置、④健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を実施しなければなりません。

 

4、まずは制度を知ることから!

 

高度プロフェッショナル制度は、働き過ぎを防ぎながら、ワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方を実現するための一つの制度として、新設されました。

とはいえ、その導入は進んでおらず、厚生労働省の発表によると、その適用を受けた労働者は制度開始後1か月となる2019年4月末時点で、全国で1人だったそうです。

導入には少々ハードルが高く、慎重にならざるをえない感じもしますが、「指針」なども定められていますので、まずはこの制度を知るところから始めてみてくださいね。

2019年6月3日