令和元年度の地域別最低賃金が10月1日から順次、発効され、全国で初めて東京都と神奈川県で1,000円を超えました。
最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には罰則の適用もありますし、この影響は少なくないといえます。
1、最低賃金制度の概要
(1)そもそも最低賃金制度とは?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
最低賃金額より低い賃金を労働者と使用者の合意の上で定めても、それは無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金があります。
地域別最低賃金は、各都道府県に一つずつ、全部で47件が定められています。
特定最低賃金は、全国で229件(平成31年3月31日現在)が定められています。
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
(2)最低賃金の適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。
派遣労働者には、派遣先の地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます
なお、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
②試みの使用期間中の者
③認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定めるもの
④軽易な業務に従事する者又は断続的労働に従事する者
(3)最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
実際に支払われる賃金から一部の賃金(割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)を除いたものが対象となります。
(4)最低賃金額以上かどうかの確認
賃金額が最低賃金額以上となっているかどうかは、原則として、賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較して確認します。
時間給制の場合は「時間給」、日給制の場合は「日給÷1日の所定労働時間」、月給制の場合は「月給÷1箇月平均所定労働時間」が最低賃金額以上となっている必要があります。
2、最低賃金の改定
最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議を行ったうえで決定されます。
地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会から示される引き上げ額の目安を参考にしながら、地方最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されます。
特定最低賃金は、関係労使の申出に基づき地方(又は中央)最低賃金審議会が必要と認めた場合において、地方(又は中央)最低賃金審議会の審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長(又は厚生労働大臣)により決定されます。
3、令和元年度の地域最低賃金額
令和元年度の地域別最低賃金額については、次のような改定が行われました。
①全国初めて東京都(1,013円)、神奈川県(1,011円)で、1,000円を超えました。
②全国加重平均額は901円で、昨年度の874円から27円の引き上げとなりました。この27円の引き上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額です。
③最高額(1,013円)と最低額(790円)の金額差は、223円(昨年度は224円)となり、平成15年以降16年ぶりの改善となりました。また、最高額に対する最低額の比率も、78.0%(昨年度は77.3%)と、5年連続の改善となりました。
④東北、九州などを中心に全国で中央最低賃金審議会の目安額を超える引き上げが19県で行われました。目安額を3円上回る引上げ(鹿児島県)があったのは、6年ぶりです。
4、最低賃金・賃金引上げに向けた取り組みを!
最低賃金額の引き上げに伴い、賃金の引き上げが必要な事業所もあるでしょう。
労働者にとって、やはり賃金が高いことは魅力の一つです。
事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対する助成制度なども設けられていますので、業務の効率化や生産性の向上を図り、賃金の引き上げにも取り組みたいところです。