「男女の賃金の差異」の情報公表について

 

令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正が行われ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を

追加するともに、常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主に対して、当該項目の公表が

義務づけられました。

 

1、我が国における男女間賃金格差の現状

 

我が国における男女間賃金格差は、長期的に見ると縮小傾向にありますが、他の先進国と比較すると、

依然として大きい状況にあります。

 

(1)令和3年6月分の賃金における現状(「令和3年賃金構造基本統計調査」参照)

・所定内賃金は、男女計30万7,400円、男性33万7,200円、女性25万3,600円となっています。

・男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は75.2で、

前年に比べ0.9ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

・一般労働者のうち、正社員・正職員の男女の所定内給与額を見ると、男性の給与水準を100としたときの

女性の給与水準は77.6となり、前年に比べ0.8ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

 

(2)男女間賃金格差の国際比較(「令和4年版男女共同参画白書」参照)

・男女間賃金格差を国際比較すると、男性のフルタイム労働者の賃金の中央値を100とした場合の

女性のフルタイム労働者の賃金の中央値は、OECD(経済協力開発機構)諸国の平均値が88.4と

なっています。

・これに対して、我が国は77.5であり、我が国の男女間賃金格差は国際的に見て大きい状況にあることが

分かります。

・OECD諸国の状況をみると、男女間賃金格差が小さい国は、1位がニュージーランド、

2位がノルウェー、3位がデンマーク、男女間賃金格差が大きい国は、1位が韓国、2位がイスラエル、

3位が日本となっています。

 

2、女性の職業選択に資する情報の公表

 

(1)一般事業主による女性の職業選択に資する情報の公表(女性活躍推進法20条)

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)に基づき、

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人を超えるものには、その事業における

女性の職業生活における活躍に関する情報の公表が義務づけられています。

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人以下のものについては、この情報の公表が

努力義務とされています。

 

(2)公表すべき事項

①その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績

(a:採用した労働者に占める女性労働者の割合その他の8項目、

b:その雇用する労働者の男女の賃金の差異)

②その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

(c:男女の平均継続勤務年数の差異その他の7項目)

 

一般事業主は、その企業規模(常時使用する労働者数)に応じて、次の事項を公表しなければなりません。

【300人を超える事業主】

上記①についてaの8項目から1項目以上及びb、並びに上記②についてcの7項目から1項目以上

(3項目以上の情報)

【300人以下の事業主】

上記①及び②の全16項目のうちから1項目以上

 

3、「男女の賃金の差異」の公表

 

前記2(2)の公表すべき事項のうち、①bの「その雇用する労働者の男女の賃金の差異」は、

今回の改正により追加され、常時使用する労働者の数が300人を超える一般事業主に公表が

務づけられたものです。

 

(1)算出方法等

・「男女の賃金の差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を

割合(パーセント)で示します。

・「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者(短時間・有期雇用労働者)」の

区分での公表が必要です(派遣労働者は、派遣労働者は派遣元事業主において算出します。)。

→全労働者の①女性・②男性、正規雇用労働者の③女性・④男性、非正規雇用労働者の⑤女性・⑥男性の

6区分で、それぞれ「総賃金額÷人員数」により平均年間賃金を計算します。

そのうえで、「①÷②×100」(全労働者の男女の賃金の差異)、

「③÷④×100」(正規雇用労働者の男女の賃金の差異)、

「⑤÷⑥×100」(非正規雇用労働者の男女の賃金の差異)を算出します

(小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。)。

・「男女の賃金の差異」の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するため、

「説明欄」において、より詳細な情報や補足的な情報を公表することもできます。

 

(2)公表時期・方法

・令和4年7月8日以後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後

おおむね3ヵ月以内に、公表した日を明らかにして、公表する必要があります。

・計算の前提とした重要事項(対象期間、対象労働者の範囲、賃金の範囲等)を付記します。

・インターネットの利用その他の方法により、女性の求職者等が容易に閲覧できるように

しなければなりません。

2022年8月2日

事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例の創設

 

令和4年7月1日施行の雇用保険法に改正により、基本手当の受給資格者が離職後に事業を開始した場合等に、

当該事業の実施期間を基本手当の受給期間に算入しない特例が新設されました。

 

1、基本手当の受給期間

 

(1)基本手当の原則的な受給期間

雇用保険の基本手当の受給期間は、原則、離職日の翌日から1年です。

具体的には、次のように定められています。

①次の②③以外の受給資格者にあっては、1年

②所定給付日数が360日である受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間

③所定給付日数が330日である受給資格者にあっては、1年に30日を加えた期間

 

(2)受給期間の延長

次の場合には、受給資格者の申出により、受給期間の延長が認められます。

①前記(1)の受給期間内に、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上職業に

就くことができない日がある場合

→この場合には、前記(1)の期間に、当該理由により職業に就くことができない日数を

加算した期間(その加算された期間が4年を超えるときは、4年)が受給期間となります。

②受給資格に係る離職が定年等の理由による者が当該離職後一定期間求職の申込みをしないことを

希望する場合

→この場合には、前記(1)の期間に、求職の申込みをしないことを希望するとしてその者が申し出た期間

(離職日の翌日から起算して1年が限度)に相当する期間を加算した期間が受給期間となります。

 

2、事業開始等による受給期間の特例

 

受給資格者が事業を開始した場合等においては、その事業を行っている期間等を、最大3年間、

基本手当の受給期間に算入しないことする特例が創設されました。

これにより、雇用保険に一定期間加入した後に離職し起業した者が休廃業した場合でも、

その後の再就職活動に当たって基本手当を受給することが可能となります。

 

(1)受給期間の特例の適用要件等

この特例の適用の対象は、離職日の翌日以後に、事業を開始した受給資格者、事業に専念し始めた受給資格者、

事業の準備に専念し始めた受給資格者です。

ただし、事業を開始し、事業に専念し始め、又は、事業の準備に専念した日は、

令和4年7月1日以降でなければなりません。

 

また、この特例の適用を受けるためには、その事業について、次の要件のすべてを満たす必要があります。

事業の実施期間が30日以上であること。

「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」の

いずれかから起算して30日を経過する日が本来の受給期間の末日以前であること。

当該事業について、就業手当又は再就職手当の支給を受けてないこと。

当該事業により自立することができないと認められる事業でないこと。

→例えば、雇用保険の被保険者資格を取得する者を雇い入れ、適用事業の事業主になる場合や、

登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で事業の開始、事業内容と事業所の実在が

確認できる場合には、この④の要件を満たすこととされます。

離職日の翌日以後に開始した事業であること。

→離職日以前に事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合も含まれます。

 

(2)特例が適用された場合の受給期間

この特例が適用された場合には、当該事業の実施期間(起業等から休廃業までの期間)が受給期間に

算入されないこととなります。

ただし、実施期間の日数が、4年から前記1により算定される期間の日数を除いた日数を

超える場合においては、当該超える日数は受給期間に算入されます。

つまり、前記1(1)の本来の受給期間が1年の受給資格者であれば、前記1(2)で加算された日数と

通算した期間が最大で3年間、受給期間に算入されないこととなるわけです。

 

3、受給期間の特例の申請手続等

 

前記2の特例の適用を受けるためには、公共職業安定所長にその旨を申し出る必要があります。

①この申出は、受給期間延長等申請書に、次の書類を添付して、管轄公共職業安定所の長に

提出することによって行います。

・受給資格者証(受給資格の決定を受けていない場合には、離職票-2)

・事業を開始等した事実と開始日を確認できる書類(登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等)

②この申請書の提出は、天災その他やむを得ない理由がある場合を除き、事業を開始した日

(又は事業に専念し始めた日、事業の準備に専念し始めた日)の翌日から2か月以内に行わなければ

なりません。

③この受給期間の特例の申請手続をした後、当該事業を廃止し、又は休止した場合等においては、

その旨を速やかに管轄公共職業安定所の長に届け出なければなりません。

2022年7月4日

職場における労働衛生基準について

 

事業者は、労働安全衛生法にも基づき、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、

通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置

その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければなりません。

事業者が講じなければならない措置の内容については、労働安全衛生規則及び事務所衛生基準規則に

具体的に定められています。

令和3年12月1日(一部未施行)及び令和4年4月1日に、これらの一部が改正されていますので、

いま一度、作業場における衛生基準が守られているかを確認したいところです。

 

1、トイレ(便所)(令和3年12月1日施行)

便所については、原則として、男性用と女性用に区別を区別し、男性用大便所は男性労働者60人以内ごとに

1個以上、男性用小便所は男性労働者30人以内ごとに1箇所以上、女性用便所は20人以内ごとに1個以上の

便房を設置しなければなりません。

これに対して、次のように、独立個室型の便所を設置した場合の特例が設けられました。

 

(1)少人数作業所における取り扱い

この設置基準について、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、便所を男性用と女性用に

区別することの例外として、独立個室型の便所(男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた

1個の便房により構成される便所)を設けることで足りることとなりました。

 

(2)付加的に設置した独立個室型の便所の取り扱い

男性用と女性用に区別した便所を設置したうえで、独立個室型の便所を設置する場合は、

男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする

同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ10人ずつ減ずることが

できることとなりました。

これにより、例えば、同時に就業する労働者数が男性65 人、女性65 人である場合に、男性用と女性用に

区別した便所のみを設けたときは、男性用大便所2個、男性用小便所3箇所、女性用便所4個が必要ですが、

「独立個室型の便所」を1個設けたときは、独立個室型の便所1個、男性用大便所1個、男性用小便所2箇所、

女性用便所3個で足りることとなります。

 

2、救急用具(令和3年12月1日施行)

 

事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に

周知させなければなりません。

従来は、事業者が少なくとも備えなければならない救急用具の品目が具体的に定めていましたが、

この規定が削除されました。

各事業場において想定される労働災害等に応じて、安全管理者や衛生管理者、産業医等の意見を交えながら、

衛生管理委員会等で調査審議、検討等を行い、応急手当に必要なものを備え付ける必要があります。

なお、この場合には、マスクやビニール手袋、手指洗浄薬等、負傷者などの手当の際の感染防止に必要な用具

及び材料も併せて備え付けておくことが望ましいものとされています。

 

3、温度(令和4年4月1日施行)

 

事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の労働者が常時就業する室の気温の努力目標値が、

「17度以上28度以下」から「18度以上28度以下」に変わりました。

事業者は、空気調和設備を設けている場合は、労働者を常時就業させる室の気温を18度以上28度以下に

なるように努めなければなりません。

なお、空気調和設備を設けている場合以外であっても、冷暖房器具を使用することなどにより

事務所における室の気温は18度以上28度以下になるようにすることが望ましいものとされています。

 

4、作業面の照度基準(令和4年12月1日施行)

 

事務所において労働者が常時就業する室における作業面の照度基準が、従来の3区分から2区分に

変更されます。「一般的な事務作業」(従来の「精密な作業」及び「普通の作業」に該当する作業)については

300 ルクス以上、「付随的な事務作業」(従来の「粗な作業」)については150ルクス以上であることが

求められます。

今回の改正は、照度不足の際に生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる

上肢障害等の健康障害を防止する観点から、すべての事務所に対して適用されます。

なお、個々の事務作業に応じた適切な照度については、この基準を満たしたうえで、日本産業規格

(JIS Z 9110)に規定する各種作業における推奨照度等を参照し、健康障害を防止するための照度基準を

事業場ごとに検討して定めることが適当であるとされています。

 

5、職場におけるその他の労働衛生基準

 

改正があった部分ではないですが、例えば、次のような基準が定められています。

 

(1)休養室・休養所について

常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に

区別して設け、随時利用することができるようにする必要があります。

 

(2)休憩の設備について

事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければなりません。

事業場の実状やニーズに応じて、休憩スペースの広さや設備内容について衛生委員会等で調査審議、

検討等を行い、その結果に基づいて設置するようにしましょう。

2022年6月1日

確定拠出年金の加入可能年齢が引き上げられました!

 

長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るための年金制度の機能強化の一環として、

確定拠出年金法の改正が行われ、2020(令和2)年6月から順次、施行されています。

この改正法の施行は2024(令和6)年12月まで続きますが、今回は、

2022(令和4)年4月及び5月施行分について、概要のみを簡単にご紹介します。

 

1、受給開始時期の選択肢の拡大【2022(令和4)年4月1日施行】

 

公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、確定拠出年金における老齢給付金の受給開始の上限年齢が

70歳から75歳に引き上げられました。

これにより、確定拠出年金における老齢給付金は、60歳(加入者資格喪失後)から75歳に達するまでの間で

受給開始時期を選択することができるようになりました。

ただし、この上限年齢の引上げの対象となるのは、1952(昭和27)年4月2日以降に生まれた者に限られます。

 

2、確定拠出年金の加入可能年齢の拡大【2022年5月1日施行】

 

(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)

従来、企業型DCでは、60歳未満の厚生年金被保険者を加入者とすることができました。

また、規約に定めがある場合には、60歳前と同一事業所で引き続き使用される厚生年金被保険者について

65歳未満の規約で定める年齢まで加入者とすることができました。

今回の改正により、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば、同一事業所で引き続き使用される者に限らず、

加入者とすることができるようになり、企業の高齢者雇用の状況に応じたより柔軟な制度運営が可能となりました。

ただし、加入できる年齢などは、規約で定められることになりますので、企業によって異なります。

 

(2)個人型確定拠出年金(iDeCo)

従来、iDeCoでは、60歳未満の国民年金被保険者が加入することができました。

高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、今回の改正により、国民年金被保険者であれば

加入することができるようになりました。

これにより、60歳以上であっても、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば

iDeCoに加入することができるようになったわけです。

また、これまで海外居住者はiDeCoに加入することができませんでしたが、国民年金に任意加入していれば

iDeCoに加入することができるようになりました。

 

・国民年金の第1号・3号被保険者は60歳に達した日に加入者の資格を喪失します。

施行日(2022年5月1日)以降に国民年金の任意加入被保険者となり、iDeCoに加入するには、

受付金融機関(運営管理機関)に手続きをする必要があります。

・国民年金の第2号被保険者であって、1962(昭和37)年5月1日以前に生まれた者は、

施行日前に60歳に達しているため、60歳に達した日に加入者の資格を喪失します。

施行日以降にiDeCoの加入者となるには、受付金融機関(運営管理機関)に手続きする必要があります。

・国民年金の第2号被保険者であって、1962(昭和37)年5月2日以降に生まれた者は、

60歳に達したときには、加入可能年齢が引き上がっているため、引き続き加入者となります。

掛金の拠出を停止したいときは、受付金融機関(運営管理機関)に運用指図者となる手続きをする必要があります。

 

3、脱退一時金の受給要件の見直し【2022年5月1日施行】

 

(1)企業型DCの脱退一時金の受給要件の見直し

これまで、企業型DCの中途引き出し(脱退一時金の受給)が例外的に認められていたのは、

個人別管理資産の額が1.5万円以下である者に限られていました。

そのうえで、個人別管理資産の額が1.5万円を超える者は、他の企業型DCやiDeCoなどに資産を移換する必要があり、

iDeCoに資産を移換し、iDeCoの脱退一時金の受給要件を満たしていれば、iDeCoの脱退一時金の受給が

可能でした。

今回の改正により、個人別管理資産の額が1.5万円を超える者であっても、iDeCoの脱退一時金の受給要件を

満たしていれば、iDeCoに資産を移換しなくても、企業型DCの脱退一時金を受給できるようになりました。

 

(2)iDeCoの脱退一時金の受給要件の見直し

これまで、iDeCoの中途引き出し(=脱退一時金の受給)が例外的に認められていたのは、

国民年金の保険料免除者である者に限られていました。

また、iDeCo加入者が海外に居住して国民年金被保険者(第1号・2号・3号)に該当しなくなった場合は、

iDeCoに加入することもできず、保険料免除者に該当することはなく、中途引き出しもできませんでした。

今回の改正により、国民年金被保険者となることができない者で、通算の掛金拠出期間が短いことや、

資産額が少額であることなどの一定の要件を満たす場合は、iDeCoの脱退一時金を受給できるようになりました。

 

4、制度間の年金資産の移換(ポータビリティ)の改善【2022年5月1日施行】

 

これまでも順次、個人の転職等の際の制度間の資産移換が可能となってきていましたが、

今回の改正により、「終了した確定給付企業年金(DB)からiDeCoへの年金資産の移換」と、

「加入者の退職等に伴う企業型DCから通算企業年金への年金資産の移換」が可能となりました。

2022年5月2日

子育てサポート企業に対する「くるみん認定」の認定基準が引き上げられます!

 

令和4年4月1日施行の次世代育成支援対策推進法施行規則の改正により、同法に基づく認定

(いわゆる「くるみん認定」)の認定基準が引き上げられました。

これに伴い新たな認定制度が創設されるほか、不妊治療と仕事との両立に取り組む企業を認定する

「プラス」制度が新設され、認定マークも新しくなります。

 

1、次世代育成支援対策推進法に基づく認定~「くるみん認定」について

 

「次世代育成支援対策推進法」は、常時雇用する労働者が101人以上の企業に、労働者の仕事と子育てに関する

「一般事業主行動計画」の策定等を行うことを義務づけています(100人以下の企業では努力義務)。

策定した「一般事業主行動計画」に定めた目標を達成したことなどの一定の基準を満たした企業は、

申請することにより、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

この認定を受けると、認定マークを商品や広告、企業のウェブサイトなどに使用することができるようになり、

子育てサポート企業であること等のアピールや企業イメージの向上なども期待することができます。

 

2、「くるみん認定」及び「プラチナくるみん認定」の認定基準の改正

 

(1)「くるみん認定」の認定基準の引上げ等

「くるみん認定」は、一定の要件を満たした企業が、子育てサポート企業として受けることができる

認定制度です。

この認定基準について、次のような改正が行われました。

①男性の育児休業等の取得に関し、次のいずれかを満たしていることとする。

・男性労働者のうち育児休業等を取得した者の割合が10%(従来は7%)以上であること。

・育児休業等を取得した者及び企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が、

合わせて20%(従来は15%)以上であり、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。

②男女の育児休業等取得率等を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することとする。

 

また、くるみん認定を受けた企業が使用することができる「くるみんマーク」が、

今回の認定基準の引上げに伴い新しくなります。新しいマークは、令和4年4月1日以降に、

新基準の下で認定を受けた企業に付与されます。

 

(2)「プラチナくるみん認定」の認定基準の引上げ

「プラチナくるみん認定」は、くるみん認定を受けた企業が、より高い水準の取り組みを行い、

一定の要件を満たした場合に受けることができる認定制度です。

この認定基準についても、次のような改正が行われました。

①男性の育児休業等の取得に関し、次のいずれかを満たしていることとする。

・男性労働者のうち育児休業等を取得した者の割合が30%(従来は13%)以上であること。

・育児休業等を取得した者及び企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が、

合わせて50%(従来は30%)以上であり、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。

②女性の継続就業に関し、出産した女性労働者及び出産予定だったが退職した女性労働者のうち、

子の1歳時点在職者割合が70%(従来は55%)以上であることとする。

 

プラチナくるみん認定を受けた企業に付与される「プラチナくるみんマーク」の変更はありません。

なお、プラチナくるみんを取得した企業は、その後の行動計画の策定・届出の代わりに

「次世代育成支援対策の実施状況」について毎年少なくとも1回、公表日の前事業年度の状況を

「両立支援のひろば」で公表する必要があります。

 

3、新たな認定制度「トライくるみん」の創設

 

前記2のくるみん認定及びプラチナくるみん認定の認定基準の引上げを踏まえ、新たな認定制度

「トライくるみん」が新設されました。

トライくるみん認定の認定基準は、従来のくるみん認定のものと同様です。

この認定を受けたときは、「トライくるみんマーク」が付与されます。

トライくるみん認定を受けていれば、くるみん認定を受けていなくても、直接プラチナくるみん認定の

申請をすることができます。

 

なお、前記2及び3の認定基準については、労働者数300人以下企業の特例があります。

 

4、不妊治療と仕事との両立がしやすい環境整備に取り組む企業を認定する制度の新設

 

「くるみん」「プラチナくるみん」「トライくるみん」の一類型として、不妊治療と仕事を両立しやすい

職場環境整備に取り組む企業の認定制度「プラス」 が創設されました。

この認定基準には、①不妊治療のための休暇制度、又は不妊治療のために利用することができる

半日単位・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務

又はテレワークのうちいずれかの制度を設けていること、②不妊治療と仕事との両立に関する方針を示し、

講じている措置の内容とともに社内に周知していること等があります。

「くるみん」等の認定企業が不妊治療と仕事との両立にも取り組むものとして認定を受けたときは、

それぞれの「プラスマーク」が付与されます。

2022年4月4日

年金制度の改正について

 

今後、人手不足が進行するとともに、健康寿命が延伸し、中長期的には現役世代の人口の急速な減少が

見込まれる中で、特に高齢者や女性の就業が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり、

多様な形で働くようになることが見込まれています。

このような社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、

現在、段階的に、国民年金法及び厚生年金保険法などの改正が行われています。

令和4年4月1日からは、①在職中の年金受給の在り方の見直し、②受給開始時期の選択肢の拡大等に

関する部分が施行されます。

 

1、年金制度に関する主な改正の概要(令和4年4月1日施行分)

 

(1)在職中の年金受給の在り方の見直し(厚生年金保険法)

①高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金の受給権者(65歳以上)の年金額を

毎年、定時に改定する仕組みが導入されます。

60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、

支給停止とならない範囲が拡大されます。

 

(2)受給開始時期の選択肢の拡大(国民年金法、厚生年金保険法等)

現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢が、60歳から75歳の間に拡大されます。

 

2、在職中の年金受給の在り方の見直し

 

(1)在職定時改定の導入

在職定時改定は、65歳以上の在職中の老齢厚生年金の受給権者について、年金額を毎年10月に改定し、

それまでに納めた保険料を年金額に反映する仕組みです。

これまでは、退職等により厚生年金保険の被保険者の資格を喪失するまでは、

老齢厚生年金の額は改定されませんでしたが、在職定時改定の導入により、就労を継続したことの効果が、

退職を待つことなく、早期に年金額に反映されることとなります。

 

具体的には、老齢厚生年金の受給権者が毎年9月1日(基準日)において被保険者である場合

(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く。)には、基準日の属する月前(8月まで)の

被保険者であった期間をその計算の基礎として、基準日の属する月の翌月(10月)から、

老齢厚生年金の額が改定されます。

また、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、

かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が

1か月以内である場合(退職時改定の対象とならない場合)にも、同様に、老齢厚生年金の額が改定されます。

 

(2)在職老齢年金制度の見直し

在職老齢年金制度は、就労し、賃金と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金の受給権者を

対象として、老齢厚生年金の全部又は一部の支給を停止する仕組みです。

今回の改正により、60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、

年金の支給が停止される基準が支給停止調整開始額(令和3年度価額:28万円)から支給停止調整額

(令和3年度及び4年度価額:47万円)に緩和されます。

これにより、令和4年度以降は、65歳以上に支給される老齢厚生年金と同様に、総報酬月額相当額(賃金)と

基本月額(年金月額)の合計額が支給停止調整額を超える場合に、その超える額の2分の1に相当する部分の

支給が停止されることとなります(賃金と年金月額の合計額が28万円から47万円の方については、

老齢厚生年金の支給が停止されなくなります。)。

 

3、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給開始時期の選択肢の拡大

 

(1)受給開始時期の選択

老齢基礎年金及び老齢厚生年金は、原則として、65歳から受け取ることができますが、希望すれば、

65歳より早く受け取り始める(支給を繰り上げる)ことや、65歳より遅く受け取り始める

(支給を繰り下げる)ことができます。

支給を繰り上げた場合には一定の減額率で減額された年金を、支給を繰り下げた場合には一定の増額率で

増額された年金を、それぞれ生涯を通じて受け取ることができます。

 

(2)支給繰下げに関する上限年齢の引上げ

今回の改正により、65歳より遅く受け取り始める(支給を繰り下げる)場合の上限年齢が、70歳から75歳に

引き上げられます。増額率は、これまでと同様、1か月当たり0.7%ですから、最大で84%となります。

なお、この上限年齢の引上げの対象となるのは、令和4年4月1日以降に70歳に到達する方

(昭和27年4月2日以降に生まれた方)です。

 

(3)支給繰上げに関する減額率の引下げ

今回の改正により、65歳より早く受け取り始める(支給を繰り上げる)場合の減額率が、0.5%から0.4%に

引き下げられます。支給繰下げの請求をするこができるのは、60歳以上65歳未満の方ですので、

減額率は、最大で24%となります。

なお、この減額率の引下げの対象となるのは、令和4年4月1日以降に60歳に到達する方

(昭和37年4月2日以後生まれの方)です。昭和37年4月1日以前生まれの方については、

これまでの減額率(1か月当たり0.5%、最大30%)が適用されます。

2022年3月2日

育児・介護休業法が改正されます!

 

出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法(略称:育児・介護休業法)が改正され、令和4年4月1日から順次、施行されます。今回は、令和4年4月1日施行分を中心に、その内容をお知らせします。

 

1、改正の概要

 

今回の改正においては、次のような措置が講ぜられました。

【令和4年4月1日施行分】

・育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する

個別の周知・意向確認の措置の義務づけ

有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

【令和4年10月1日施行分】

男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設

(出生時育児休業(通称:産後パパ育休))

育児休業の分割取得

【令和5年4月1日施行分】

・育児休業の取得の状況の公表の義務づけ

 

2、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置

 

事業主は、育児休業の申出が円滑に行われるようにするため、次のいずれかの措置を

講じなければなりません。複数の措置を講じることが望ましいものとされています。

(1)その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施

その雇用するすべての労働者に対して研修を実施することが望ましいですが、

少なくとも管理職の者については研修を受けたことのある状態にすべきものとされています。

(2)育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口や相談対応者の設置)

実質的な対応が可能な窓口を設け、労働者に対してこれを周知すること等により、

労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。

(3)その雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及びその雇用する労働者に対する

当該事例の提供(事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等)

特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集して提供することにより、

特定の者の育児休業の申出を控えさせることにつながらないように配慮してください。

(4)その雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知

(方針を記載したものの配付や事業所内やイントラネットへ掲載等)

 

3、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

 

事業主は、本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、育児休業制度等の

所定の事項を周知するとともに、休業の取得意向を個別に確認しなければなりません。

(1)周知事項

周知事項には、①育児休業に関する制度、②育児休業申出の申出先、③育児休業給付に関すること、

④労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱いがあります。

(2)個別の周知・意向確認の方法

個別の周知及び意向の確認は、①面談(オンラインによるものを含む。)、②書面交付の方法によるほか、

労働者が希望した場合には、③ファクシミリを利用しての送信、④電子メール等の送信の方法に

よることも可能とされています。

 

4、有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

 

(1)有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件

これまで、有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件の一つとして、

「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることが規定されていましたが、

この要件が削除されます。

これにより、次に掲げる日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、

更新後のもの)が満了することが明らかでない有期雇用労働者は、事業主に引き続き雇用された

期間にかかわらず、育児休業及び介護休業の申出をすることができるようになります。

育児休業:その養育する子が1歳6か月に達する日

介護休業:介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日

(2)労使協定の締結

今回の改正により、引き続き雇用されていた期間が1年未満の有期雇用労働者についても、

育児休業・介護休業の申出の権利が付与されましたが、これまでと同様に、労使協定を

締結した場合には、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者から

育児休業・介護休業の申出を拒むことができます。

すでに締結している労使協定において、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者からの

育児休業・介護休業の申出を拒むことができることとしている場合であっても、

令和4年4月1日以降、有期雇用労働者も含めて、この申出を拒むことができることとするときは、

改めて労使協定を締結する必要があります。

(3)就業規則の変更

就業規則に、有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件として「事業主に引き続き雇用された

期間が1年以上である者」であることが記載されている場合は、これを削除する必要があります

(就業規則を変更した場合には、労働者へ周知するとともに、常時10人以上の労働者を使用する

事業場にあっては労働基準監督署へ届け出ることも必要です。)。

2022年2月1日

健康保険法が改正されました!

 

全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するため、

健康保険法等の改正が行われ、その一部が令和4年1月1日から施行されました。

また、産科医療補償制度の改正に伴い、同日より、出産育児一時金の額等が見直されました。

 

1、傷病手当金の支給期間の通算化

がん治療のために入退院を繰り返すなど、長期間にわたって療養のため休暇を取りながら

働くケースが存在します。このため、治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障が

できるよう、傷病手当金の支給期間が通算化されました。

 

(1)傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、従来、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、

その支給を始めた日から起算して1年6か月を超えないものとされていましたが、

今回の改正により、その支給を始めた日から通算して1年6か月間とされました。

これにより、支給期間中に途中で就労するなどして、傷病手当金が支給されない期間が

ある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給されるように

なりました。つまり、同一のケガや病気に関しては、最大で1年6か月分、傷病手当金の支給

受けることができるようになったわけです。

なお、傷病手当金の額は、1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の

直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に

相当する金額です。

 

(2)改正の対象となる傷病手当金

令和3年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金に

ついて、支給期間が通算化されます。つまり、令和2年7月2日以降に支給が開始された

傷病手当金が対象です。

なお、資格喪失後の傷病手当金の継続給付については、従来どおりです。被保険者として

受けることができるはずであった期間において、継続して同一の保険者から給付を受けることが

できますが、「継続」が要件となっていることから、一時的に労務可能となった場合には、

治癒しているか否かを問わず、同一の疾病等により再び労務不能となっても、傷病手当金は

支給されません。

 

2、任意継続被保険者制度の見直し

 

(1)任意継続被保険者の任意の資格喪失

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職した後も選択によって、引き続き最大2年間、

退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる制度です。

任意継続被保険者の任意の資格喪失は、これまで認められていませんでしたが、

被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から、今回の改正により、

これが認められることとなりました。

任意継続被保険者が、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合には、

その申出が受理された日の属する月の翌月1日に任意継続被保険者の資格を喪失します。

この任意の資格喪失の申出は、原則として、取り消すことができません。

なお、保険料の前納を行った任意継続被保険者についても、任意の資格喪失が可能です。

資格を喪失した場合には、前納した保険料のうち未経過期間に係るものは還付されます。

 

(2)健康保険組合における任意継続被保険者の保険料の算定基礎

任意継続被保険者の保険料の算定基礎(標準報酬月額)は、原則として「資格喪失時の標準報酬月額」

又は「任意継続被保険者が属する保険者の管掌する全被保険者の平均の標準報酬月額」の

いずれか少ない額とされています。

健康保険組合においては、実状に応じて柔軟な制度設計が可能となるよう、今回の改正により、

これらに加え、規約で定めることにより、「資格喪失時の標準報酬月額」又は

「当該健康保険組合における全被保険者の平均標準報酬月額を超え、資格喪失時の

標準報酬月額未満の範囲内において規約で定める額」を当該健康保険組合の任意継続被保険者の

保険料算定基礎とすることが可能となりました。

この範囲内であれば、標準報酬月額を多段階で設定するなど、健康保険組合の裁量により

設定することも可能とされています。

 

3、産科医療補償制度の改正に伴う出産育児一時金の額等の見直し

 

令和4年1月1日以後の出産に係る出産育児一時金及び家族出産育児一時金の支給額が、

従来の40万4,000円から40万8,000円に引き上げられました。

ただし、これは、産科医療補償制度の掛金が1万6,000円から1万2000円に引き下げられたことに

伴う見直しですので、産科医療補償制度の対象となる出産の場合には、従来と同様に、1児につき、

掛金を加算した42万円が支給されます。

 

なお、産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺の子とその家族の経済的負担を

補償する制度であり、出生した子が「補償対象基準」「除外基準」「重症度基準」の全てを

満たす場合に補償対象となります。

このうちの「補償対象基準」が、従来は、「在胎週数32週以上かつ出生体重1,400グラム以上で

あること」又は「在胎週数28週以上かつ低酸素状況を示す所定の要件に該当すること」でしたが、

令和4年1月1日以降は、「在胎週数28週以上であること」のみとなりました。

「除外基準」(先天性や新生児期の要因によらない脳性麻痺であること)及び「重症度基準」

(身体障害者障害程度等級1級又は2級相当の脳性麻痺であること)に変更はありません。

2022年1月4日

雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設されます!

 

令和4年1月1日施行の雇用保険法の改正により、65歳以上の高年齢労働者を対象とした

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されます。

これにより、複数の事業所で勤務する65歳以上の高年齢労働者であって、

一定の要件を満たすものは、特例的に雇用保険被保険者となることができるようになります。

 

1、雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?

 

雇用保険制度は、原則として、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上

かつ31日以上の雇用見込みであること等の要件を満たす場合に適用されます。

これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、

そのうち2つの事業所での勤務を合計して適用対象者の要件を満たす場合に、

本人からの申出により、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。

 

2、雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者

 

マルチ高年齢被保険者となるには、労働者が次の要件をすべて満たすことが必要です。

(1) 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること

(2) 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の

労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること

(3) 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

 

なお、次の点に注意が必要です。

加入後の取扱いは通常の雇用保険の被保険者と同様で、任意脱退はできません。

・雇用保険に加入後、別の事業所で雇用された場合も、上記の適用要件を満たさなくなった場合を除き、

加入する事業所を任意に切り替えることはできません。

・適用を受けた事業所を離職した場合も、2つの事業所以外の事業所で就労をしており、

それ以外の事業所での勤務を合計して上記の適用要件を満たす場合は、所定の手続きを経て、

引き続きマルチ高年齢被保険者として適用を受けることになります。

・マルチジョブホルダーがマルチ高年齢被保険者の資格を取得したときは、

その資格取得日から離職日まで、事業主及び本人に、雇用保険料の納付義務が発生します。

(資格取得年月日・離職年月日は、ハローワークからの事業主への通知書に記載されます。)

 

3、マルチ高年齢被保険者の資格の取得・喪失の手続き等

 

雇用保険マルチジョブホルダー制度においては、雇用保険資格の取得・喪失等の手続きは、

事業主ではなく、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する本人が行います。

まず、その資格取得にあたっては、本人が、手続きに必要な証明(雇用の事実や所定労働時間など)の

記載を事業主に依頼し、適用を受ける2社についての必要な書類をそろえて、

住所又は居所を管轄するハローワークに申し出ます(電子申請はできません。)。

 

本人が、資格取得の申出を行ったときは、その申出の日に、被保険者の資格を取得します。

申出の日より前に遡って資格を取得することはできません。

マルチ高年齢被保険者の資格は、その要件を満たさなくなったときは、その日に喪失しますので、

本人が10日以内に、資格喪失の届出をしなければなりません。

(ただし、死亡等による資格喪失の場合には、事業主が届出を行います。)

 

なお、事業主は、労働者から証明を求められた場合は、速やかに、その証明を行わなければ

なりません。また、事業主は、マルチジョブホルダーがこの申出を行ったことを理由として、

不利益な取扱いをしてはなりません。

 

4、失業した場合等の給付

 

(1)高年齢求職者給付

マルチ高年齢被保険者であった者が失業した場合において、離職の日以前1年間に被保険者期間が

通算して6か月以上あるときは、高年齢求職者給付金の支給を受けることができます。

2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合でも、支給要件を満たす限り、

高年齢求職者給付金の支給を受けることができます。

ただし、2つの事業所以外の事業所で就労をしており、離職していないもう1つの事業所と

当該3つ目の事業所を併せて、マルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が

継続されるため、高年齢求職者給付の支給を受けることもできません。

 

高年齢求職者給付の額は、原則として、離職の日以前の6か月に支払われた賃金の合計を

180で割って算出した金額(賃金日額)のおよそ5割~8割となる「基本手当日額」の30日分

または50日分であり、この額が一時金として支給されます。

この額は、1つの事業所のみを離職した場合には、離職した事業所で支払われていた賃金のみを

基礎として、算定されます。

 

(2)育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付等

マルチ高年齢被保険者も、それぞれの支給要件を満たす限り、育児休業給付、介護休業給付、

教育訓練給付等の支給対象となります。

ただし、育児休業給付・介護休業給付については、適用を受ける2つの事業所をともに休業する場合に限り、

支給対象となります。

2021年12月2日

健康保険の被保険者証等に関する取扱いについて

 

健康保険制度における被保険者証ついては、令和3年10月1日より、保険者が支障がないと

認めるときは、これを保険者から直接被保険者に交付することが可能となりました。

また、一部の医療機関等において、マイナンバーカードの健康保険証利用が開始されたことが

話題となっていますので、そのメリットなどを簡単にご紹介します。

 

1、被保険者証の交付等に関する改正(令和3年10月1日施行)

 

(1)改正の趣旨

健康保険制度における被保険者証等については、原則として、保険者から事業主に送付し、

事業主から被保険者(任意継続被保険者を除く。)に交付することとされています。

この点について、テレワークの普及等に対応した柔軟な事務手続を可能とするため、

保険者が支障がないと認めるときは、保険者から被保険者に対して被保険者証等を

直接交付すること等が可能となりました。

 

(2)改正の内容

健康保険法施行規則の改正により、保険者が支障がないと認めるときは、任意継続被保険者以外の

被保険者についても、次のことが可能となりました。

①被保険者証の交付について、保険者が被保険者に直接送付すること。

②被保険者証の情報を訂正した場合における被保険者証の返付について、事業主を経由することを

要せず、行うこと。

③被保険者証の再交付について、事業主を経由することを要せず、行うこと。

④被保険者証の検認又は更新等を行った場合における被保険者証の交付について、

保険者が被保険者に直接送付すること。

なお、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証の

交付方法等についても、上記①~④に準じた改正が行われています。

 

(3)被保険者証等の直接交付に関する具体的な取扱い

①「保険者が支障がないと認めるとき」とは?

事務負担や費用、住所地情報の把握等を踏まえた円滑な直接交付事務の実現可能性や、

関係者(保険者・事業主・被保険者)間での調整状況等を踏まえ、保険者(全国健康保険協会・健康保険組合)が

支障がないと認める状況が想定されています。

 

具体的な運用については、法令上、特段の制限はありませんが、直送に要する費用は、

被保険者・事業主全体が負担する保険料等を原資としていることから、

被保険者・事業所間における不公平が生じないよう留意したうえで、各保検者の実情に応じて

決定されることとなります。

 

②被保険者証等の返納について

被保険者証等の返納については、その取扱いに変更はありません。

事業主は、被保険者が資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、

又はその被扶養者が異動したときは、遅滞なく、被保険者証を回収して、これを保険者に

返納しなければならない。

被保険者は、その資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、又はその被扶養者が

異動したときは、5日以内に、被保険者証を事業主に提出しなければなりません。

 

③事業所整理記号及び被保険者整理番号の管理

被保険者証を直接交付する場合であっても、厚生労働大臣又は健康保険組合が被保険者の

資格の取得の確認を行ったとき、又は事業所整理記号及び被保険者整理番号を変更したときは、

事業所整理記号及び被保険者整理番号が事業主に通知されます。

これまでと同様に、事業主は、通知された事業所整理記号及び被保険者整理番号を適切に

管理する必要があります。

 

2、マイナンバーカードの健康保険証利用について

 

医療保険制度自体と直接関係する事項ではありませんが、マイナンバーカードの健康保険証利用が、

オンライン資格確認が導入されている一部の医療機関・薬局で開始されています。

(1)マイナンバーカードを健康保険証として利用するメリット

・転職・結婚・引越しをしても、健康保険証の発行を待たずに、保険者での手続きが完了次第、

マイナンバーカードで医療機関等を利用することができます。

・顔認証付きカードリーダーで医療機関等での受付が自動化されます。

また、医療機関・薬局の窓口での限度額以上の一時支払いの手続きが不要になります。

・マイナンバーカードを用いて、薬剤情報、特定健診情報、医療費通知情報を閲覧することが

できるようになります。薬剤情報と特定健診情報については、患者の同意を得たうえで

医療関係者に提供し、よりよい医療を受けることができるようになります。

・このほか、確定申告が簡単になるなどのメリットもあります。

 

(2)その他

・マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、利用開始時に生涯に1回、

健康保険証利用の申込みをする必要があります(保険者が変わる場合の異動届等の手続は、

引き続き必要です。)。

・健康保険証も、従来どおり、使用することができます。

また、オンライン資格確認が導入されていない医療機関・薬局では、引き続き健康保険証が必要です。

2021年11月1日

脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました!

 

業務による過重負荷を原因とする脳血管疾患及び虚血性心疾患等の労災認定に係る認定基準が、

今般、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」

として改正され、令和3年9月15日から施行されました。

新たな認定基準について、改正のポイントに関連する部分を中心に、ご紹介します。

 

1、改正のポイント

 

今回の改正においては、いわゆる過労死ラインといわれる「発症前1か月間に100時間

または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働」の基準が維持された一方で、

次のようなことが行われました。

①長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して

労災認定することが明確化されました。

②長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因が見直され、

「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」「身体的負荷を伴う業務」などが

追加されました。

③短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合が明確化され、

「発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が

認められる場合」などが例示されました。

④対象疾病に「重篤な心不全」が追加されました。

 

2、血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準

 

(1)対象疾病

この認定基準においては、次の脳・心臓疾患が対象疾病として取り扱われます。

・脳血管疾患:脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症

・虚血性心疾患等:心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)、重篤な心不全、大動脈解離

 

(2)認定要件

次の①②又は③の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患が、

業務に起因する疾病として取り扱われます。

①発症前の長期間(発症前おおむね6か月間)にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす

特に過重な業務(以下「長期間の過重業務」という。)に就労したこと。

②発症に近接した時期発症前(おおむね1週間)において、特に過重な業務

(以下「短期間の過重業務」という。)に就労したこと。

③発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事

(以下「異常な出来事」という。)に遭遇したこと。

 

3、長時間の過重業務に関する判断について

 

(1)労働時間の評価

疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間については、その時間が長いほど、

業務の過重性が増すものとされており、具体的には、次のように評価されます。

①発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が

認められない場合は、業務と発症との関連性が弱い。

おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる。

発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、

1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強い。

 

(2)労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価

前記(1)③の水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、

特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて、

次のような労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと

評価されます。

・勤務時間の不規則性(拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが

短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務)

・事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務、その他事業場外における移動を伴う業務)

心理的負荷を伴う業務、身体的負荷を伴う業務、作業環境

 

4、短期間の過重業務、異常な出来事に関する判断について

 

次のような場合には、業務と発症との関係性が強いと評価されます。

(1)短期間の過重業務

①発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合

発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が

認められる場合等(手待時間が長いなど特に労働密度が低い場合を除く。)

(2)異常な出来事

業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合

②事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合

生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合

著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合

著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業

温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合等

2021年10月4日

雇用継続給付及び育児休業給付の支給に係る取扱いの変更等について

 

雇用継続給付及び育児休業給付に関して、次のような取扱いの変更や法改正がありました。

 

1、雇用保険の手続きにおける一部添付書類の省略(令和3年8月1日施行)

 

(1)高年齢雇用継続基本給付金の申請に当たっての運転免許証等の省略

高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以上65歳未満の方を対象とする給付です。

そのため、最初の支給申請に当たっては、受給資格確認票・(初回)支給申請書に、

「被保険者の年齢が確認できる書類」を添付することとされています。

 

この「被保険者の年齢が確認できる書類」には、次のようなものがあります。

①運転免許証、住民基本台帳カード、マイナンバーカード、身体障害者手帳、

精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、在留カード、特別永住者証明書、

官公署から発行・発給された身分証明書又は資格証明書

(届出の時点で有効なもの又は発行・発給された日から6か月以内のものに限る。)

のうち本人の写真付きのものであって生年月日が掲載されているもの

②住民票の写し、年金証書、年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、

官公署から発行・発給された身分証明書又は資格証明書

 

今回の取扱いの変更により、令和3年8月1日以降、高年齢雇用継続基本給付金の

「受給資格確認票・(初回)支給申請書」提出時点において、個人番号(マイナンバー)の

届出がなされている場合(当該申請において初めて個人番号を届け出る場合を含みます。)は、

この「被保険者の年齢が確認できる書類」の添付が不要となりました。

マイナンバーの届出がなされている方については、情報連携による情報照会により

住民票情報を取得することにより、ハローワークにおいて年齢を確認することができるためです。

 

(2)高年齢雇用継続給付金等の申請に当たっての通帳等の写しの省略

高年齢雇用継続給付金等の最初の支給申請に当たっては、申請書の記載内容の確認書類として

「払渡希望金融機関確認書類」を提出することとされています。

 

この「払渡金融機関確認書類」とは、当該普通預(貯)金口座の通帳、キャッシュカード

若しくはその他の払渡金融機関の口座情報が確認できるもの又はその写しのことです。

 

今回の取扱いの変更により、令和3年8月1日以降、次の給付の

「受給資格確認票・(初回)支給申請書」の中の「払渡希望金融機関指定届」が

電磁的方法により記載されている場合は、「払渡希望金融機関確認書類」

(当該普通預(貯)金口座の通帳、キャッシュカードの写し等)の提出が不要となりました。

ただし、手書きでこれらの申請書を作成する場合は、引き続き「払渡金融機関確認書類」の

提出が必要です。

①高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金)

②介護休業給付金

③育児休業給付金

 

2、育児休業給付金に係るみなし被保険者期間の計算の特例(令和3年9月1日施行)

 

令和3年9月1日施行の雇用保険法の改正により、育児休業給付金の支給に係る

みなし被保険者期間の計算について、特例が設けられました。

これにより、特に、勤務開始後1年程度で産休に入った方など、これまで支給要件を

満たさなかった方でも、支給の対象となる可能性があります。

 

(1)育児休業給付金の支給要件とみなし被保険者期間の計算(原則)

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。)

が育児休業をした場合において、みなし被保険者期間が休業開始前2年間に

12か月以上あるときに、支給されます。

「みなし被保険者期間」とは、「育児休業を開始した日」を「被保険者でなくなった日」とみなして、

基本手当と同様の方法で計算した被保険者期間をいいます。

 

(2)みなし被保険者期間の計算の特例

前記(1)においては、みなし被保険者期間は、被保険者が育児休業を開始した日を

起点として計算します。

ただし、女性が育児休業をする場合においては、育児休業前に産前産後休業を取得していることが一般的であり、

1年程度勤務した後に産前休業を開始したようなケースでは、出産日に応じて育児休業を開始した日が

定まることから、そのタイミングによってはみなし被保険者期間の要件を満たさない場合がありました。

この点について、育児休業を開始した日を起点として計算されるみなし被保険者期間が

12か月に満たない場合においては、「労働基準法第65 条第1項の規定による休業(産前休業)を

開始した日」を起点として、みなし被保険者期間を計算することとされました。

 

また、次の場合には、それぞれに掲げる日を起算点として、被保険者期間を計算します。

・育児休業の申出に係る子について、産前休業を開始する日前に当該子を出生した場合:

当該子を出生した日の翌日

・育児休業の申出に係る子について、産前休業を開始する日前に当該休業に先行する

母性保護のための休業をした場合:当該先行する母性保護のための休業を開始した日

 

なお、改正後の方法によって被保険者期間を確認する場合には、「休業開始時賃金月額証明書」の

④及び⑦の「休業等を開始した日」欄に産前休業開始日等を記載します。

2021年9月2日

労働者災害補償保険法における特別加入制度の対象拡大

 

フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険のさらなる活用を図るための

特別加入制度の対象が拡大されています。

 

1、労働者災害補償保険法における特別加入制度について

 

労災保険は、労働者が仕事または通勤によって被った災害に対して補償する制度です。

労働者以外の者でも、一定の要件を満たせば、任意に加入し、労働者と同様に補償を

受けることができます。これを「特別加入制度」といいます。

 

2、特別加入の対象者の拡大

 

特別加入の対象は、大まかに「中小事業主等」、「一人親方その他の自営業者」、

「特定作業従事者」及び「海外派遣者」に分けられます。

労働者災害補償保険法施行規則の改正により、このうちの「一人親方その他の自営業者」及び

「特定作業従事者」の範囲の拡大が図られています。

 

(1)令和3年4月1日施行分

一人親方その他の自営業者に次の2つが追加されました。

①柔道整復師……労働者以外の者で、柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業を、

労働者を使用しないで行うことを常態とする者、及びその者の行う事業に常態として従事する者

②創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者……労働者以外の者で、創業支援等措置に

基づく事業を行う高年齢者、及びその高年齢者が行う事業に常態として従事する者

「創業支援等措置に基づく事業」とは、高年齢者雇用安定法に規定する創業支援等措置に

基づき、委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は社会貢献事業に

係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業をいいます。

 

また、特定作業従事者に次の二つが追加されました。

③芸能関係作業従事者……労働者以外の者で、放送番組(広告放送を含む。)、

映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは

企画の作業に従事する者

具体的には、次のような芸能実演家や芸能製作作業従事者が想定されています。

芸能実演家:俳優(舞台俳優、映画及びテレビ等映像メディア俳優、声優等)、

舞踊家(日本舞踊、ダンサー、バレリーナ等)、音楽家(歌手、謡い手、演奏家、作詞家、

作曲家等)、演芸家(落語家、漫才師、奇術師、司会、DJ、大道芸人等)、スタント、

その他類似の芸能実演に係る作業に従事する者

芸能製作作業従事者:監督(舞台演出、映像演出)、撮影、照明、音響・効果、録音、

大道具、美術装飾、衣装、メイク、結髪、スクリプター、アシスタント、マネージャー、

その他類似の芸能製作に係る作業に従事する者

 

④アニメーション制作作業従事者……労働者以外の者であって、アニメーションの制作の

作業に従事する者

具体的には、次のようなアニメーション制作に従事する者やアニメーション演出に従事する者が

想定されています。

アニメーション制作関係:キャラクターデザイナー、作画、絵コンテ、原画、動画、背景、

その他類似する作業を行う者

アニメーション演出関係:監督(アニメ映画監督、作画監督、美術監督等)、演出家、脚本家、

編集(音響、編集等)、その他類似する作業を行う者

 

(2)令和3年9月1日施行分

一人親方その他の自営業者として、自転車を使用して行う貨物の運送の事業を行う者が

追加されます。併せて、これまで通達において特別加入の対象と認めてきた原動機付自転車を

使用して行う貨物の運送の事業についても、明確に規定されます。

 

また、特定作業従事者として、情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業従事者が

追加されます。

 

3、特別加入の手続きその他

 

(1)特別加入の手続き

新たに対象とされたこれらの者は、「一人親方その他の自営業者」又は「特定作業従事者」

として取り扱われますので、特別加入の手続きも、都道府県労働局長の承認を受けた

特別加入団体が「特別加入申請書」を提出することによって行います。

 

(2)保険給付に関する事務

保険給付に関する事務は、当該特別加入団体の主たる事務所の所在地を管轄する

労働基準監督署長が行うこととなります。

 

(3)第2種特別加入保険料率

新たに特別加入の対象とされた事業又は作業のうち、原動機付自転車又は自転車を使用して

行う貨物の運送の事業については、既存の自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業と

同じく、「1,000分の12」です。

これ以外の事業又は作業については、いずれも「1,000の3」です。

2021年8月2日

夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

 

年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、

その子が無保険状態となって償還払いを強いられること等をなくす観点から、

被扶養認定に関する基準の明確化が図られ、令和3年8月1日から適用されることとなりました。

 

1、夫婦とも被用者保険の被保険者の場合

 

(1)被扶養者の認定に係る基準

被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、

将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者となります。

夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を

図るため、届出により、「主として生計を維持する者」の被扶養者となります。

夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る

扶養手当等の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない

ものとされています。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として

認定されないことはありません。

 

(2)認定に関する手続き

①被保険者(「主として生計を維持する者」に該当する夫婦の一方)は、被扶養者を有するに

至った場合には、5日以内に、被扶養者届を、事業主を経由して保険者等(夫婦の一方の健康保険の

保険者等)に提出します。

②上記①の届出をした者について、保険者等が被扶養者として認定しない場合には、

保険者等からその決定に係る通知が発出されますので、被保険者(夫婦の他方)は、

その通知を届出に添えて、次に届出を行う保険者等(夫婦の他方の健康保険の保険者等)に

提出します。

③前記②により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、

当該通知に基づいて届出を審査し、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、

届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、

不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきかについて、

年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議します。

④前記③の協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の

属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者となります。標準報酬月額が同額の場合は、

被保険者の届出により、「主として生計を維持する者」の被扶養者となります。

 

2、夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合

 

(1)被用者保険における被扶養者の認定

被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については

直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を「主として生計を維持する者」とします。

その結果として、被用者保険の被保険者が「主として生計を維持する者」である場合には、

その子について被扶養者の認定が行われます。

 

(2)認定に関する手続き

①被用者保険の被保険者は、被扶養者を有するに至った場合には、5日以内に、被扶養者届を、

事業主を経由して保険者等に提出します。

②上記①の届出をした者について、保険者等が被扶養者として認定しない場合には、

保険者等からその決定に係る通知が発出されますので、被保険者(世帯主又は国民健康保険の被保険者)は

その通知を届出に添えて、国民健康保険の保険者に提出します。

③被扶養者として認定されないことにつき国民健康保険の保険者に疑義がある場合には、

届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、

不認定に係る通知を発出した被用者保険の保険者等と協議します。

④前記③の協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方を

「主として生計を維持する者」とします。

 

3、その他の取扱いについて

 

(1)主として生計を維持する者が育児休業等を取得した場合

主として生計を維持する者(被扶養者の認定を受けている被保険者)が、育児休業等を取得

した場合であっても、当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に、

被扶養者を異動しないこととされています。

ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きが行われます。

 

(2)年間収入の逆転に伴い被扶養者の認定を削除する場合

年間収入の逆転に伴い、被扶養者の認定を受けている被保険者が「主として生計を維持する者」

でなくなった場合には、その被扶養者の認定は、削除されることとなります。

この場合の被扶養者の認定の削除は、年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が

認定することを確認してから行います。

 

(3)被扶養者の認定に関する結果に異議がある場合

被扶養者の認定後、その結果に異議があるときは、被保険者又は関係保険者の申立てにより、

被保険者の勤務する事業所の所在地の保険課長(地方厚生(支)局保険主管課長)が関係保険者の

意見を聞き、斡旋を行います。

なお、各被保険者の勤務する事業所の所在地が異なる場合には、申立てを受けた保険課長が

上記の斡旋を行い、その後、相手方の保険課長に連絡することとなります。

2021年7月5日

テレワークに要する費用の取扱い等について

 

テレワークの活用が求められる昨今ですが、いざ制度として導入するとなると、

対象業務や対象労働者の範囲から労働時間の管理、人事評価、安全衛生に至るまで、様々な面で、

労務管理上の問題が生じます。費用負担の問題も、その一つです。

 

1、テレワークに要する費用負担の取扱い

 

(1)労使での十分な話し合いと就業規則の変更

テレワークに要する費用負担については、テレワークを導入する前に、労使で十分に話し合い、

明確なルールをつくることが重要です。

また、労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、

これに関する事項を就業規則に定めなければなりませんので、就業規則の変更も必要となります。

 

(2)テレワークの導入よって発生しうる費用とその取扱い例

①情報通信機器の費用

パソコン本体や周辺機器、携帯電話、スマートフォンなどについては、会社から貸与し、

基本的には全額会社負担としているところが多いようです。

②通信回線費用

特に在宅勤務において発生する自宅内のブロードバンド回線の工事費については、

その負担を個人負担としている例も見られますが、会社が負担するケースもあります。

ブロードバンド回線の基本料金や通信回線使用料については、個人使用と業務使用との切り分けが

困難なため、一定額を会社負担としている例が多いようです。

③文具、備品、宅配便等の費用

文具消耗品については会社が購入した文具消耗品を使用することが多いようです。

切手や宅配メール便など事前に配布できるものは労働者に渡しておき、会社宛の宅配便は着払いに

することなどで対応することができます。

やむを得ず労働者が文具消耗品の購入や宅配メール便の料金を一時立て替えることも考えられます

ので、この際の精算方法等もルール化しておくことが必要です。

④水道光熱費

自宅の電気、水道などの光熱費も実際には負担が生じますが、業務使用分との切り分けが

困難なため、在宅勤務手当などに含めて支払っている企業も見受けられます

 

2、社会保険料等の算定における在宅勤務時の交通費や在宅勤務手当の取扱い

 

法律上、労働者が労働の対償として受けるものは、その名称を問わず、

すべて社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる「報酬等」や「賃金」に該当します。

一方、事業主が負担すべきものを労働者が立て替え、その実費弁償として受けるものは、

これに該当しません。

 

(1)テレワーク対象者が一時的に出社する際に要する交通費(実費)

①当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により企業等に一時的に出社し、

その移動にかかる実費を企業が負担する場合は、当該費用は原則として実費弁償と認められ、

社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金には含まれません。

②当該労働日の労務提供地が企業とされており、自宅から当該企業に出社するために要した費用を

企業が負担する場合は、当該費用は、原則として通勤手当として報酬等・賃金に含まれるため、

社会保険料・労働保険料等の算定基礎に含まれます。

 

(2)在宅勤務手当について

①在宅勤務手当が、労働者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、

その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が労働者に対して毎月5,000 円を

渡し切りで支給するもの)であれば、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる報酬等・賃金に

含まれます。

②在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に

要する費用を企業がテレワーク対象者に支払うようなものの場合であって、業務遂行に必要な費用に

かかる実費分に対応するものと認められるのであれば、社会保険料・労働保険料等の算定基礎となる

報酬等・賃金に含まれません。

 

3、在宅勤務手当が支給されることとなった場合の随時改定の取扱い

 

在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支払われる

こととなった場合は、固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となります。

交通費の支給がなくなった月に新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支給される等、

同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合において、それらの影響によって

固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定の

いずれの対象となるかを判断することとなります。

 

なお、新たに変動的な在宅勤務手当の創設と変動的な手当の廃止が同時に発生した場合等において、

創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できないときは、

3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となります。

また、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分が

ある場合においては、実費弁償分は「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に

含めます。この場合において、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償以外の部分の金額に

変動があったとしても、固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはなりません。

2021年6月1日

不合理な待遇差の解消に向けて~パートタイム・有期雇用労働法

 

「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」

(通称:短時間・有期雇用労働法)が、2021(令和3)年4月1日から、大企業のみならず、

中小企業にも適用されることとなりました。

 

1、短時間・有期雇用労働法の改正の概要

 

(1)不合理な待遇差の禁止

同一企業内における正社員と非正規社員(短時間労働者、有期雇用労働者)との間で、

基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されました。

(2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規社員は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることが

できるようになりました。

事業主は、非正規社員から求めがあった場合には、これを説明しなければなりません。

(3)行政による事業主への助言指導等や裁判外紛争解決手続の整備

「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明に関する事項も、

都道府県労働局における紛争解決手続(行政ADR)の対象となりました。

 

2、不合理な待遇差の禁止について

 

(1)均衡待遇規定

事業主は、雇用する非正規社員の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、

当該待遇に対応する正社員の待遇との間において、不合理と認められる相違を設けてはなりません。

待遇の相違が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、

職務の内容(業務の内容及びそれに伴う責任の程度)

当該職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)

その他の事情(職務の成果、能力、経験、労使交渉の経緯など)のうち、

当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して行います。

(2)均等待遇規定

事業主は、正社員と同視すべき非正規社員については、非正規社員であることを理由として、

基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはなりません。

この均等待遇規定は、職務の内容が正社員と同一の非正規社員であって、

当該事業所における慣行その他の事情からみて、人材活用の仕組み、運用等が、

当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、正社員と同一であるものに適用されます。

 

3、不合理でない待遇差とは?~「同一労働同一賃金ガイドライン」より

 

正社員と非正規社員との間に待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、

いかなる待遇差が不合理なものでないのかについては、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に

対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)において、

(1)基本給、(2)賞与、(3)手当、(4)福利厚生、(5)その他に関し、その原則となる考え方や具体例が

示されています。

以下では、その内容を少し抜粋してご紹介しますが、ガイドラインに掲げられていない待遇については、

各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれます。

(1)基本給

労働者の「①能力又は経験に応じて」、「②業績又は成果に応じて」、「③勤続年数に応じて」

支給する場合は、①②③に応じた部分について、同一であれば同一の支給が、

一定の違いがある場合には、その相違に応じた支給が求められます。

定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法が

適用されますので、実際に通常の労働者との間に職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲

その他の事情に相違があるときは、その相違に応じた賃金の相違が許容されます。

(2)賞与

会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与については、正社員と同一の貢献が

あるときは貢献に応じた部分につき正社員と同一の賞与を、貢献に一定の相違があるときは

その相違に応じた賞与を、それぞれ非正規社員にも支給しなければなりません。

例えば、会社の業績等への労働者の貢献に応じて賞与を支給している会社において、

正社員には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給し、

非正規社員には支給しない場合には、不合理な待遇差と判断される可能性があります。

(3)手当

①役職手当等……労働者の役職の内容に対して支給する役職手当等については、

正社員と同一の役職に就く非正規社員には同一の支給を、役職の内容等に一定の違いがある

非正規社員には、その相違に応じた支給をしなければなりません。

②時間外手当等……正社員と同一の時間外、休日、深夜労働を行った非正規社員には、

同一の割増率等での支給をしなければなりません。

③通勤手当等……非正規社員にも正規雇用労働者と同一の支給をしなければなりません。

(4)福利厚生

①福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室)……正社員と同一の事業所で働く非正規社員には、

正社員と同一の複利厚生施設の利用を認めなければなりません。

②病気休職……短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、正社員と同一の

病気休職の取得を、有期雇用労働者には労働契約が終了するまでの期間を踏まえた取得を

認めなければなりません。

(5)その他

現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために実施する教育訓練については、

正社員と職務の内容が同一であるときは正社員と同一の教育訓練を、職務の内容に一定の相違が

あるときは、その相違に応じた教育訓練を実施しなければなりません。

2021年5月6日

高年齢者雇用安定法が改正されました!~70歳までの就業機会確保~

 

働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮し、活躍することができる環境を整備するため、

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)が改正され、

65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置に関する努力義務が新設されました。

 

1、改正の概要(令和3月4月1日施行

 

高年齢者雇用安定法に基づき、事業主は、65歳までの雇用機会を確保するため、

高年齢者雇用確保措置(65歳まで定年引上げ、65歳までの継続雇用制度の導入、定年廃止)の

いずれかを講じなければなりません(義務)。

今回の改正により、これに加えて、事業主は、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、

高年齢者就業確保措置として、次の①~⑤のいずれかの措置を講ずるよう努めなければならない

こととなりました。

①70歳までの定年引上げ

②70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

③定年廃止

④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に次の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

b.事業主が委託、出資(資金提供)等をする団体が行う社会貢献事業

高年齢者就業確保措置は努力義務ですから、定年の引上げ及び定年廃止によりこの措置を講じる場合を除き、

対象者を限定する基準を設けることができます。

ただし、基準を設ける場合には、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議したうえで、

過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこととされています。

また、労使間での十分な協議のうえで設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を

排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められません。

 

2、70歳までの継続雇用制度について

 

継続雇用制度は、60歳以上65歳未満の労働者が対象の場合には、自社又は特殊関係事業主で

継続雇用をする制度に限られていましたが、65歳以降の労働者が対象の場合には、これらに加え、

特殊関係事業主以外の他社で継続雇用をする制度も可能となります。

自社以外で継続雇用をする場合は、特殊関係事業主等との間で、特殊関係事業主等が高年齢者を

継続して雇用することを約する契約を締結する必要があります。

 

3、創業支援等措置について

 

(1)「創業支援等措置」とは?

70歳までの就業確保措置のうち、雇用によらない次の措置をいいます。

・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(前記1の④)

・70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業又は事業主が委託、出資(資金提供)等を

する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入(前記1の⑤)

なお、「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業をいいますが、

特定の事業がこれに該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されます。

 

(2)創業支援等措置を実施する場合の手続き

①計画の作成

所定の事項(創業支援等措置を講ずる理由、高年齢者が従事する業務の内容に関する事項、

高年齢者に支払う金銭に関する事項など)を記載した計画を作成します。

計画の作成に際しては、例えば、高年齢者のニーズを踏まえるとともに、高年齢者の知識・経験・能力等を

考慮した上で業務の内容を決定し、契約内容の一方的な決定や不当な契約条件の押しつけに

ならないようにするなど、一定の事項に留意する必要があります。

②過半数労働組合等の同意

作成した計画について、過半数労働組合等の同意を得なければなりません。

なお、創業支援等措置と雇用による措置(前記1①~③)の両方を講じる場合は、雇用の措置により

努力義務を達成したことにはなりますが、この場合であっても、創業支援等措置に関して

過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいものとされています。

 

③計画の周知

過半数労働組合等の同意を得た計画を、次のいずれかの方法により労働者に周知します。

・常時当該事業所の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

・書面を労働者に交付すること。

・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、当該事業所に労働者が

当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 

④創業支援等措置の実施のために必要な契約の締結

高年齢者の就業先となる団体が別にある場合は、その団体との間で、その団体が高年齢者に対し

社会貢献活動に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があります。

また、制度導入後には、個々の高年齢者との間で、業務委託契約や社会貢献活動に従事する契約を

締結する必要があります。

2021年4月1日

障害者の法定雇用率が引き上げられました!

 

障害者の雇用の促進等に関する法律(通称:障害者雇用促進法)により、すべての事業主には、

法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。

この障害者雇用率制度に係る法定雇用率が、令和3年3月1日から引き上げられます。

 

1、障害者雇用促進法の改正(令和3年3月1日施行)

 

(1)障害者の法定雇用率の引き上げ

令和3年3月1日以降の法定雇用率は、民間企業が2.3%(←2.2%)、国、地方公共団体等が2.6%(←2.5%)、

都道府県等の教育委員会が2.5%(←2.4%)となります。

 

(2)障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲の拡大

障害者の法定雇用率の引き上げに伴い、1人以上の障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、

従業員43.5人以上(←45.5人以上)に拡大されます。

この範囲の事業主には、次の義務もありますので、これまで対象となっていなかった

従業員43.5人以上45.5人未満の事業主の皆様は注意してください。

①毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告すること。

②障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めること。

 

(3)障害者雇用納付金制度の取り扱い

障害者雇用納付金制度は、障害者雇用に関する事業主間の経済的負担の調整を図ることにより、

障害者の雇用の促進と職業の安定を図るための制度です。

現在、常用労働者の総数が100人を超える事業主について、法定雇用率未達成の場合に納付金を徴収し、

この納付金を財源として障害者雇用調整金等が支給されます。

①令和2年度分(申告期間:令和3年4月1日から同年5月15日までの間)については、

令和3年2月以前は改正前の法定雇用率(2.2%)、令和3年3月のみ改正後の法定雇用率(2.3%)で

算定します。

②令和3年度分(申告期間:令和4年4月1日から同年5月15日までの間)については、

新しい法定雇用率(2.3%)で算定します。

 

2、障害者雇用の現状~厚生労働省「令和2年障害者雇用状況の集計結果」より

 

(1)雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合

・民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は578,292.0人で、

17年連続で過去最高となりました。

・雇用者のうち身体障害者は356,069.0人、知的障害者は134,207.0人、精神障害者は88,016.0人となり、

いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きいです。

実雇用率は、9年連続で過去最高の2.15%、法定雇用率達成企業の割合は48.6%でした。

 

(2)企業規模別の状況

・企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45.5~100人未満規模企業で58,350.0人、

100~300人未満で113,199.0人、300~500人未満で50,824.5人、500~1,000人未満で66,588.0人、

1,000人以上で289,330.5人となり、すべての企業規模で前年より増加しました。

・実雇用率は、45.5~100人未満で1.74%、100~300人未満で1.99%、300~500人未満で2.02%、

500~1,000人未満で2.15%、1,000人以上で2.36%となりました。

法定雇用率達成企業の割合は、45.5~100人未満が45.9%、100~300人未満が52.4%、

300~500人未満が44.1%、500~1,000人未満が46.7%、1,000人以上が60.0%となり、

すべての規模の区分で前年より増加しました。

 

(3) 産業別の状況

・産業別にみると、雇用されている障害者の数は、「農,林,漁業」「宿泊業,飲食サービス業」

「生活関連サービス業,娯楽業」以外のすべての業種で前年よりも増加しました。

・産業別の実雇用率では、「医療,福祉」(2.78%)、「農,林,漁業」(2.33%)、

「生活関連サービス業,娯楽業」(2.33%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.31%)、

「運輸業,郵便業」(2.23%)が法定雇用率を上回っています。

 

(4)法定雇用率未達成企業の状況

・令和2年の法定雇用率未達成企業は52,742社です。そのうち、不足数が0.5人または1人である

企業(1人不足企業)が、65.6%と過半数を占めています。

・障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は30,542社であり、未達成企業に占める割合は

57.9%となっています。

 

3、障害者にも働きやすい職場づくり

 

障害者雇用率制度は、障害に関係なく、希望や能力に応じて、だれもが職業を通じた社会参加の

できる「共生社会」実現の理念に基づく制度です。

障害者雇用は年々、進展していますが、法定雇用率未達成企業も一定数、存在しています。

障害者雇用に対する社会的な関心を喚起し、先進的な取り組みを進めている事業主が社会的な

メリットを受けることができるよう、障害者雇用に関して優良な取り組みを行う中小事業主に

対する認定制度も、令和2年4月1日に創設されました。

ハローワークなどには、障害者雇用のための各種助成金や職場定着に向けた人的支援など、

様々な支援制度も用意されていますので、だれもが働きやすい環境を目指して、これを機に今一度、

職場環境を見直したいところです。

2021年3月1日

66歳以上働ける制度のある企業は約3分の1~「高年齢者の雇用状況」の集計結果より

 

先日、厚生労働省より、令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果が公表されました。

令和3年4月1日施行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)の改正により、

65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることについて、事業主に努力義務が課せられます。

その内容は改めてご紹介することとして、まずは高年齢者雇用の現状を見てみましょう。

 

1、高年齢者の雇用状況の報告

 

高年齢者雇用安定法では、事業主に、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めており、

令和2年の集計結果においては、この報告した従業員31人以上の企業164,151社の状況が

まとめられています。

なお、この集計おいては、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

 

2、65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況

 

(1)高年齢者雇用確保措置の実施状況

高年齢者雇用安定法に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの

安定した雇用を確保するため、 ①定年制の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)

の導入いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。

高年齢者雇用確保措置の実施済企業は164,033社(99.9%)、51人以上規模の企業で107,364 社(99.9%)、

未実施の企業は118社(0.1%)、51人以上規模企業で28 社(0.1%)となっています。

 

高年齢者雇用確保措置を実施済の企業の割合を企業規模別に見ると、大企業では17,069社(99.9%)、

中小企業では146,964社(99.9%)となっています。

また、高年齢者雇用確保措置を実施済の企業では、定年制度(「定年制の廃止」(4,468社、 2.7%)

又は「定年の引上げ」(34,213社、20.9%))よりも、継続雇用制度(125,352社、76.4%)により

高年齢者雇用確保措置を講じる企業の比率が高くなっています。

 

(2)60歳定年到達者の動向

過去1年間(令和元年6月1日から令和2年5月31日)の60歳定年企業における定年到達者(363,027人)のうち、

継続雇用された者は310,267人(85.5%)、継続雇用を希望しない定年退職者は52,180人(14.4%)、

継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は 580人(0.2%)となっています。

 

(3)65歳定年企業の状況

定年を65歳とする企業は30,250社、報告した全ての企業に占める割合は18.4%となっています。

企業規模別では、中小企業が28,218 社(19.2%)、大企業が2,032社(11.9%)です。

 

3、66歳以上働ける企業の状況

 

(1)66歳以上働ける制度のある企業の状況

66歳以上働ける制度のある企業は54,802社、報告した全ての企業に占める割合は33.4%となっています。

企業規模別では、中小企業が49,985社(34.0%)、大企業では4,817社(28.2%)です。

 

(2)70歳以上働ける制度のある企業の状況

70歳以上働ける制度のある企業は51,633 社、報告した全ての企業に占める割合は31.5%となっています。

企業規模別では、中小企業が47,172社(32.1%)、大企業が4,461社(26.1%)です。

 

(3)希望者全員が66歳以上働ける企業の状況

希望者全員が66歳以上まで働ける企業は20,798社、報告した全ての企業に占める割合は 12.7%となっています。

企業規模では、中小企業が19,984社(13.6%)、大企業が814社(4.8%)です。

 

(4)定年制廃止および66歳以上定年企業の状況

①定年制を廃止している企業は4,468社、報告した全ての企業に占める割合は2.7%となっています。

企業規模別では、中小企業が4,370社(3.0%)、大企業が98社(0.6%)です。

②定年を66~69歳とする企業は1,565社、報告した全ての企業に占める割合は1.0%となっています。

企業規模別では、中小企業が1,532社(1.0%)、大企業が33社(0.2%)です。

③定年を70歳以上とする企業は2,398社、報告した全ての企業に占める割合は1.5%となっています。

企業規模別では、中小企業が2,323社(1.6%)、大企業が75社(0.4%)です。

 

4、進む生涯現役社会の実現に向けた取り組み

 

人生百年時代ともいわれる昨今、高年齢者の労働参加も進んでいることが分かります。

内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)によれば、現在仕事をしている60歳以上の方の

約9割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。

働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、多様な雇用・就業機会の確保について、

企業でも様々な取り組みを模索する時期に来ているといえますね。

2021年2月16日

子の看護休暇及び介護休暇の活用を!

 

令和3年1月1日施行の育児・介護休業法施行規則の改正により、日々雇用される者を除き、

原則として、すべての労働者が、子の看護休暇及び介護休暇を時間単位で取得することが

できるようになりました。

子の看護休暇及び介護休暇は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきもの

ですから、必要に応じて就業規則などの変更も必要となります。

 

1、子の看護休暇及び介護休暇とは?

 

(1)子の看護休暇

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日

(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日)を

限度として、子の看護休暇を取得することができます。

子の看護休暇は、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を

行う労働者に対し与えられる休暇であり、労働基準法の規定による年次有給休暇とは別に

与える必要があります。

子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるように

するための権利として位置づけられています。

「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、

予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

 

(2)介護休暇

要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることにより、

1年度において5日(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合にあっては、10日)を

限度として、介護休暇を取得することができます。

介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う労働者に対し与えられる休暇であり、

労働基準法の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。

要介護状態にある家族の介護や世話のための休暇を取得しやすくし、介護をしながら働き続けることが

できるようにするための権利として位置づけられています。

 

2、子の看護休暇や介護休暇を取得することができない者

 

次のような労働者について子の看護休暇又は介護休暇を取得することができないこととする労使協定が

あるときは、事業主は子の看護休暇又は介護休暇の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は

子の看護休暇又は介護休暇を取得することができません。

①その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者

②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

③時間単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

(ただし、この者も1日単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することはできます。)

 

上記③の「時間単位で取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」の範囲は、

労使で十分な話し合いを行って定める必要があります。

また、上記③に該当することとなった労働者であっても、半日単位での休暇であれば取得することが

できるものについては、半日単位での休暇取得を認めるなど制度の弾力的な利用が可能となるように

配慮してください。

 

なお、これまでは、子の看護休暇又は介護休暇の半日単位での取得ができない

「1日の所定労働時間が短い労働者」として、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者が

定められていましたが、今回の改正により、この規定が削除されました。

したがって、労働者は、1日の所定労働時間数にかかわらず、子の看護休暇又は介護休暇を時間単位で

取得することができます。

 

3、取得単位

 

今回の改正により、子の看護休暇又は介護休暇は、1日単位又は時間単位で取得することが

できるようになりました。

 

時間単位で取得する場合の「時間」は、1日の所定労働時間数に満たない範囲とします。

休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数を取得する場合は、1日単位での取得として

取り扱います。また、「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいい、労働者からの申し出に応じ、

労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要があります。

 

時間単位で取得する子の看護休暇又は介護休暇の1日分の時間数は、1日の所定労働時間数とし、

1時間に満たない端数がある場合は、端数を切り上げます。

例えば、1日の所定労働時間数が7時間30分の場合は8時間分の休暇で1日分となります。

日によって所定労働時間数が異なる場合の1日の所定労働時間数の定め方は、

1年間における1日の平均所定労働時間数とします。

なお、法令で求められているのは、いわゆる「中抜け」なしの時間単位休暇ですが、

法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇取得を認めるような配慮が求められます。

また、すでに「中抜け」ありの休暇を導入している企業が、「中抜け」なしの休暇とすることは、

労働者にとって不利益な労働条件の変更になります。

2021年1月5日