賃金のデジタル払いが可能になります!

 

令和5年4月1日施行の労働基準法施行規則の改正により、いわゆる賃金のデジタル払いができるようになります。

資金移動業者(●●Payなど)からの指定申請並びに厚生労働大臣による審査及び指定に数か月かかる見込み

ですので、実際に賃金のデジタル払いができるようになるのはもう少し先ですが、概要をお知らせします。

 

1、改正の概要

 

労働基準法においては、賃金は通貨で支払うことが原則ですが、労働者の同意を得た場合には、

銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への振込み等により支払うことができるものとされています。

キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に

活用するニーズも一定程度見られることから、使用者が、労働者の同意を得た場合には、厚生労働大臣の指定を

受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金の支払い(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることと

なりました。

 

2、賃金のデジタル払い開始までの流れ

 

賃金のデジタル払いに関する今後の流れは、次のとおりです。

実際に賃金のデジタル払いを行おうとする使用者及び労働者が執らなければならない手続きは、このうちの③及び④です。

①資金移動事業者からの指定申請

指定を受けようとする資金移動業者は、厚生労働大臣に指定申請をします。

②厚生労働大臣による審査及び指定

指定申請を受け付けた後、厚生労働省で審査を行い、基準を満たしている事業者を厚生労働大臣が指定します。

この審査には、数か月かかることが見込まれています。

③事業場での労使協定の締結

使用者は、賃金のデジタル払いを行おうとする場合には、各事業場で、利用する指定資金移動業者等を内容とする

労使協定を締結する必要があります。

④労働者から使用者への同意書の提出

労働者は、賃金のデジタル払いを希望する場合には、使用者に同意書を提出します。

 

3、労使協定の締結

 

使用者は、賃金のデジタル払いを行おうとする場合には、①対象となる労働者の範囲、②対象となる賃金の範囲

及びその金額、③取扱指定資金移動業者の範囲、④賃金のデジタル払いの実施開始時期について、

労使協定を締結しなければなりません。

 

4、労働者から使用者への同意書の提出

 

賃金のデジタル払いを希望する個々の労働者は、留意事項等の説明を受け、制度を理解したうえで、

同意書を使用者に提出します。

この同意書には、①賃金のデジタル払いで受け取る賃金の範囲及びその金額、②資金移動業者の口座番号等、

③開始希望時期、④代替口座情報を記載します。

 

5、留意事項その他

 

①使用者が知っておくべきこと

・賃金のデジタル払いを導入した事業所においても、すべての労働者の現在の賃金の支払い・受取方法の変更が

必須となるわけではありません。

・労働者に対して賃金のデジタル払いを賃金受取方法として提示する際は、銀行口座または証券総合口座を

選択肢としてあわせて提示しなければいけません。

・現金化できないポイントや仮想通貨での賃金支払いは認められません。

・希望しない労働者に、賃金のデジタル払いを強制してはいけません。労働者の同意がない場合や賃金の

デジタル払いを強制した場合には、罰則が適用されることがあります。

 

②労働者が知っておくべきこと

・賃金のデジタル払いを希望しない場合は、これまでどおり銀行口座等で賃金を受け取ることができます。

賃金の一部を資金移動業者口座で受け取り、残りを銀行口座等で受け取ることも可能です。

・指定資金移動業者口座は、「預金」をするためではなく、支払いや送金に用いるためのものですから、

支払いなどに使う見込みの額を受け取るようにしてください。また、受取額は、1日当たりの払出上限額以下の額と

する必要があります。

・口座の上限額は100万円に設定されています。上限額を超えた場合は、あらかじめ指定した銀行口座等に自動的に

出金されます。

・ATMや銀行口座等への出金により、口座残高を現金化(払い出し)することもできます。

また、少なくとも毎月1回は、手数料の負担なく、払い出しができます。

・口座残高については、最後の入出金日から少なくとも10年間は、申出などにより払い戻してもらうことが

できます。

 

③万が一の場合について

・口座の乗っ取りによる心当たりのない出金など、不正取引が起きた場合において、口座所有者に過失がないときは、

損失額全額が補償されます。労働者に過失があるときの補償については、個別のケースによります。

・指定資金移動業者が破綻した場合は、保証機関から速やかに弁済されます。

2023年4月4日

中小企業においても時間外労働の割増賃金率が引き上げられます!

 

労働基準法の改正による法定割増賃金率の引上げ等(平成22年4月1日施行)について、

これまでは中小企業に対する適用が猶予されていましたが、この猶予措置が令和5年4月1日か

ら廃止されます。

これにより、中小企業においても、1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げなど、

就業規則の変更が必要となる場合があります。

 

1、改正の概要(中小企業に対する適用猶予措置の廃止)

 

(1)1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ

労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、

1か月60時間を超える時間外労働についての法定割増賃金率が5割以上に引き上げられます。

(2)代替休暇

1か月60時間を超える時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の

代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

 

2、1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ

 

使用者は、法定労働時間(1週間40時間、1日8時間)を超える労働(時間外労働)について、

2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

ただし、時間外労働の時間が1か月について60時間を超えた場合には、その超えた時間の労働について、

5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

(1)対象となる時間外労働

「1か月」とは、暦による1か月をいい、その起算日を「賃金の決定、計算及び支払の方法」として

就業規則に記載する必要があります。

1か月の起算日については、毎月1日、賃金計算期間の初日、時間外労働協定における

一定期間の起算日等とすることが考えられます。

「その超えた時間の労働」として5割以上の率で計算した割増賃金の支払いが義務づけられるのは、

1か月の起算日から時間外労働時間を累計して60時間に達した時点より後に行われた時間外労働です。

 

(2)休日労働との関係

1か月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、

それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を

明確に分けておくことが望ましいものとされています。

 

(3)深夜業との関係

深夜労働(午後10時から午前5時までの間における労働)のうち、1か月について60時間に達した時点

より後に行われた時間外労働については、深夜労働の法定割増賃金率(2割5分)と

1か月について60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率(5割)とが合算され、

7割5分以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要となります。

 

3、代替休暇

 

労働者の健康を確保する観点から、特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることを

目的として、1か月について60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、労使協定により、

法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を与えることができます。

 

(1)代替休暇に係る労使協定の締結

代替休暇を実施する場合には、事業場において労使協定を締結する必要があります。

この労使協定は、当該事業場において、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払いによる

金銭補償に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇の付与による補償を行うことができる

こととするものであり、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけけるものではありません。

労使協定が締結されている事業場においても、個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、

労働者の意思に委ねられます。

 

(2)代替休暇に係る労使協定で定める事項

①代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法

「代替休暇として与えることができる時間の時間数=(1か月の時間外労働時間数-60)×換算率」の

算定方法に従って、具体的に定めます。

「換算率」とは、労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている

割増賃金率(2割5分以上)と、労働者が代替休暇を取得した場合に支払うこととされている

割増賃金率との差に相当する率(5割以上)との差に相当する率のことです。

②代替休暇の単位

1日、半日、1日又は半日のいずれかを代替休暇の単位として定めます。

③代替休暇を与えることができる期間

時間外労働が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内とされており、

この範囲内で定めます。

④代替休暇の取得日及び割増賃金の支払日

2023年3月2日

男性労働者の育児休業取得率等について

 

令和5年4月1日施行の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(略称:育児・介護休業法)の改正により、従業員が1,000人を超える企業の事業主に、

男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務づけられます。

これと併せて、男性の育児休業制度の利用状況をご紹介します。

 

1、公表が義務づけられる事業主の範囲

 

公表が義務づけられるのは、常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主です。

「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態(正社員、パート、アルバイト等)を問わず、

事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、次のような者がこれに該当します。

①期間の定めなく雇用されている者

②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き

雇用されると見込まれる者(一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者であって

その雇用期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる者)

 

2、公表の内容

 

(1)公表すべき事項

公表すべき「育児休業の取得の状況」とは、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度

(公表前事業年度)における次のいずれかの割合のことです。

①男性の「育児休業等の取得率」:公表前事業年度に育児休業等を取得した者の数÷公表前事業年度に

配偶者が出産した者の数(小数第1位以下切捨て)

②男性の「育児休業等及び育児を目的とした休暇の取得率」:公表前事業年度に育児休業等を

取得した者の数及び小学校就学前の子の育児を目的とした休暇を取得した者の数の合計数

÷公表前事業年度に配偶者が出産した者の数(小数第1位以下切捨て)

 

公表に当たっては、公表する割合と併せて、算定期間である公表前事業年度の期間

及び①②どちらの割合であるかを明示します。

 

(2)対象となる休業等

「育児休業等」とは、育児休業、産後パパ育休及び法第23条第2項(3歳未満の子を

育てる労働者について所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置義務)又は

第24条第1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として

育児休業に関する制度に準ずる措置が講じられた場合の当該措置によりする休業のことです。

「育児を目的とした休暇」とは、目的の中に育児を目的とするものであることが

明らかにされている休暇制度(例:失効年休の育児目的での使用や、

いわゆる「配偶者出産休暇」制度など)のことです。育児休業等及び子の看護休暇、

労働基準法上の年次有給休暇を除きます。

 

3、取得率の計算に当たっての具体的な取扱い

 

・産後パパ育休とそれ以外の育児休業等を分けて計算する必要はありません。

・育児休業を分割して2回取得した場合や育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合であっても、

それらが同一の子について取得したものである場合は、1人として数えます。

・事業年度をまたがって育児休業を取得した場合は、育児休業を開始した日を含む事業年度の

取得として計算します。また、分割して複数の事業年度に育児休業を取得した場合は、

最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とします。

・育児を目的とした休暇を出産予定日前の期間のみ取得し、出産予定日以後に取得していない場合は

計算から除外します。

 

4、公表の方法及び時期

 

公表は、インターネットの利用など、一般の方が閲覧できるように行う必要があります。

自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で

公表することも推奨されています。

公表は、毎年少なくとも1回、行う必要があり、公表前事業年度の状況について、

公表前事業年度終了後、おおむね3か月以内に行うものとされています。

 

5、男性の育児休業制度の利用状況~厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」結果より

 

(1)育児休業者の有無別事業所割合

令和元年10 月1日から令和2年9月30 日までの1年間に、配偶者が出産した男性がいた事業所に

占める男性の育児休業者(上記の期間に配偶者が出産した者のうち令和3年10 月1日までの間に

育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。))がいた事業所の割合は18.9%と、

前回調査(令和2年度)より上昇しました。

 

(2)育児休業者割合

令和元年10 月1日から令和2年9月30 日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、

令和3年10 月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合も

13.97%と、前回調査(令和2年度)より上昇しました。

 

(3)育児休業終了後の復職状況

令和2年4月1日から令和3年3月31 日までの1年間に育児休業を終了し、

復職予定であった男性のうち、復職した者の割合は97.5%、退職した者の割合は2.5%でした。

 

(4)育児休業の取得期間

令和2年4月1日から令和3年3月31 日までの1年間に育児休業を終了し、

復職した男性の育児休業期間は、「5日~2週間未満」が26.5%と最も高く、

次いで「5日未満」が25.0%、「1か月~3か月未満」が24.5%となっており、

2週間未満が5割を超えています。

2023年2月6日

マイナンバーカードで失業認定手続ができるようになりました!

 

マイナンバーカードは、労働・社会保険の手続きにおいても、すでにマイナンバーの提示や

本人確認に利用するほか、健康保険証として利用することができるようになっています。

さらに、令和4年10月1日施行の雇用保険法施行規則の改正により、

同日以降に受給資格決定が行われた方については、希望により、マイナンバーカードで

失業認定等の手続きができるようになりました。

 

1、改正の趣旨

 

「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」

(令和元年6月4日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)において、

ハローワークにおける雇用保険等の各種業務のフローについて、ペーパーレス化等の検討を

行うこととされました。

これを受けて、ペーパーレス化の観点から、本人の希望に応じて、受給資格者がマイナンバーカードを

提示して受給資格の確認を受けた場合には、失業認定等の手続きにおいて、

雇用保険受給資格者証(以下「受給資格者証」といいます。)の提出が不要となりました。

 

2、受給資格者証による失業の認定の手続き

 

通常の受給資格決定及び失業の認定の手続きは、次のとおりです。

①受給資格決定時:運転免許証等の本人確認書類を添えて、離職票等の必要書類及び顔写真2枚を

ハローワーク(管轄公共職業安定所)に提出します。

②雇用保険説明会時:受給資格者証が本人に交付されます。

③失業の認定時(認定日):受給資格者証を添えて失業認定申告書をハローワークに提出し、

本人確認及び失業の認定を受けます。処理結果が印字された受給資格者証が本人に返付されます。

 

3、マイナンバーカードによる失業の認定

 

令和4年10月1日以降において可能となった受給資格決定及び失業の認定の手続きは、

次のとおりです。

本人の希望により、マイナンバーカードを提示することで、受給資格者証等に貼付する顔写真や、

失業の認定等の手続きごとの受給資格者証等の持参が不要となりました。

①受給資格決定時:マイナンバーカードを提示のうえ、離職票等の必要書類を

ハローワークに提出します(顔写真2枚は不要)。

②雇用保険説明会時:受給資格通知が本人に交付されます。

③失業の認定時(認定日):マイナンバーカードによる本人認証等を行ったうえで、

失業認定申告書をハローワークに提出し、失業の認定を受けます。

処理結果が印字された受給資格通知が本人に交付されます。

※上記②③の「受給資格通知」等は、令和8年度のシステム更改後は、マイナポータルを

活用し電子的に交付することが検討されています。

 

4、対象となる受給資格者証等

 

手続きの際に、マイナンバーカードで本人認証を行う場合には、次の受給資格者証等の提出が

不要となり、各種手続きの処理結果は、受給資格通知等に印字され、交付されます。

・(基本手当を受給する場合)雇用保険受給資格者証が不要となり、雇用保険受給資格通知が

交付されます。

・(高年齢求職者給付金を受給する場合)

雇用保険高年齢受給資格者証が不要となり、雇用保険高年齢受給資格通知が交付されます。

・(特例一時金を受給する場合)

雇用保険特例受給資格者証が不要となり、雇用保険特例受給資格通知が交付されます。

・(専門実践教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金を受給する場合)

教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格者証が不要となり、教育訓練受給資格通知が

交付されます。

※一般教育訓練及び特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給申請手続では、

受給資格者証を用いません。

 

5、注意点等

 

(1)手続きの選択

マイナンバーカードを活用した失業認定等の手続きを希望した場合には、それ以降、

原則として受給資格者証等による失業認定等の手続きに変更することができません。

なお、マイナンバーカードを持っていない方や、マイナンバーカードによるこのような取扱いを

希望しない方については、従来どおり、受給資格者証等による手続きとなります。

 

(2)本人認証の方法

マイナンバーカードによる本人認証は、職員の指示に従い、ハローワークに備え付けられた

タブレット端末で、利用者証明用電子証明書の4桁のパスワードを入力することにより行います。

その後、出力されたパスコード用紙(被保険者番号のバーコードが印字されたもの)を

窓口へ提出します。

※タブレット端末にパスワードを入力する際、3回連続でパスワードを誤って入力すると

ロックがかかり、住民票がある市区町村の窓口にてパスワードの再設定の手続きが必要となります。

 

(3)受給資格通知の再交付

受給資格者は、受給資格通知を滅失し、又は損傷したときは、管轄公共職業安定所の長に申し出て、

マイナンバーカードを提示して再交付を受けることができます。

2023年1月9日

育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直し

 

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律が順次施行され、

令和4年10月1日から、育児休業等期間中の社会保険料の免除に係る要件が見直されました。

 

1、育児休業等期間中の社会保険料の免除とは?

 

3歳に満たない子を養育するための育児休業等の期間は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を

提出することにより、健康保険・厚生年金保険の保険料が事業主負担分・被保険者負担分ともに

免除されます。

なお、社会保険料の免除を受けても、健康保険の給付は、通常どおり受けることができます。

また、免除された期間分についても、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

 

2、改正の概要

 

(1)保険料免除の対象となる休業

育児休業等の取得促進の観点から、出生時育児休業の期間も保険料免除の対象となります。

 

(2)毎月の報酬(標準報酬月額)に係る保険料の免除

育児休業等の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除となります。

この点は、これまでと同様です。

一方、これまでは、開始日の属する月と終了日の属する月が同一の場合は、終了日が同月の末日

である場合を除き、免除の対象となりませんでしたが、令和4年10月1日以降に開始した

育児休業等については、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合は、

免除の対象となることとなりました。

 

(3)賞与(標準賞与額)に係る保険料の免除

これまでは、育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与に係る保険料は、

その取得した育児休業等期間の長短にかかわらず、免除の対象となりましたが、

令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ

連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に限り、免除の対象となることとなりました。

 

3、保険料免除の対象となる育児休業等

 

保険料免除の対象となる育児休業等には、

①出生時育児休業、

②1歳(延長措置が適用される場合にあっては、1歳6ヵ月又は2歳)に満たない子を養育するための育児休業、

③3歳に満たない子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業が該当します。

②③が対象となる点はこれまでと同様ですが、今回の改正により、①が加わりました。

 

4、毎月の報酬(標準報酬月額)に係る保険料の免除

 

育児休業等開始日の属する月については、その月の末日が育児休業等期間中である場合に加えて、

その月中に14 日以上の育児休業等を取得した場合にも、標準報酬月額に係る保険料が免除されることと

なりました。

その際には、同月内に取得した育児休業等及び出生時育児休業による休業等は合算して育児休業等期間に

含めますが、労使間で合意したうえで出生時育児休業期間中に就業した日数は除きます。

この育児休業等期間の日数が14 日以上であれば、休業が必ずしも連続していなくても、

当該月の保険料が免除されます。

 

なお、この育児休業等の日数に関する要件は、開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する

育児休業等についてのみ適用されます。月末を含む育児休業等(開始日と終了予定日の翌日が

異なる月に属する育児休業等)の日数は、この要件の適用においては考慮されません。

したがって、「前月以前から取得している育児休業等」の最終月の保険料は、

その月の月末日が育児休業等期間中であるか、その月の月中に当該育児休業等とは連続しない

別途の育児休業等(14日以上)を取得している場合にのみ免除となります。

 

5、賞与(標準賞与額)に係る保険料の免除

 

標準賞与額に係る保険料(賞与保険料)は、賞与を支払った月の末日を含んだ連続した1か月を超える

育児休業等を取得した場合に限り、免除されることとなりました。

育児休業等の期間が1か月を超えるかは暦日で判断し、土日等の休日も期間に含みます。

したがって、例えば、11月16日から12月15日まで育児休業等の場合は、育児休業等の期間が

ちょうど1か月であるため、賞与保険料の免除の対象外となります。

 

なお、1か月を超える育児休業等については、これまでどおり、月末時点に育児休業等を

取得しているかどうかで保険料免除を判断するため、育児休業等の期間に月末が含まれる月に

支給された賞与に係る保険料が免除されることとなります。

 

6、育児休業等取得にかかる事業主から保険者への届出

 

事業主から保険者等への届出については、原則として、育児休業等期間中に行う必要があり、

育児休業等終了後の届出は、やむを得ない理由があるものに限り、認められます。

この点について、今回の改正により短期間の育児休業等の取得が増えること等が想定されることから、

令和4年10月1日以降に取得する育児休業等については、育児休業等期間終了後であっても、

一定期間(育児休業等の終了日から起算して暦による計算で1か月以内)であれば理由書等の添付が

なくとも、届出が認められることとされました。

2022年12月2日

育児・介護休業法の改正~育児休業の分割取得など

 

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(略称:育児・介護休業法)に関する改正が一部施行され、令和4年10月1日から、

1歳に満たない子に係る育児休業を2回に分割して取得することなどができるようになりました。

 

1、育児休業の取得に関する改正の概要

 

①1歳に満たない子に係る育児休業について

1歳に満たない子に係る育児休業は、従来は分割して取得することができませんでしたが、

分割して2回まで取得することが可能となりました。

なお、従来のいわゆる「パパ休暇」は、今回の改正に伴い、廃止されています。

②1歳以上の子に係る育児休業について

保育所に入所できない等の理由により1歳以降に延長する場合について、開始日が柔軟化され、

各期間途中でも夫婦で交代して取得することが可能となりました。

 

2、1歳に満たない子に係る育児休業

 

(1)2回までの分割取得

労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、

出生時育児休業を除き、分割して2回まで、育児休業をすることができます。

これにより、出生時育児休業と合わせた場合には、養育する子が1歳までの間に、

4回まで休業を取得することが可能となりました。

 

(2)育児休業の申出等

出生時育児休業については、2回に分割して取得する場合であっても、初めにまとめて

申し出なければなりませんが、1歳に満たない子に係る通常の育児休業については、

まとめて申し出る必要はありません。

なお、育児休業を2回に分割して取得する場合は、各申出について、育児休業の開始予定日の繰上げ

(出産予定日前に子が出生した場合等に限られます。)を1回、終了予定日の繰下げ

(事由は問われません。)を1回ずつすることができます。

 

(3)3回目以降の申出

1歳未満の子について、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合には、労働者は、

3回目以降の育児休業の申出をすることができます。

この「特別の事情がある場合」には、1歳未満の子に係る育児休業が、他の子についての

産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業又は新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、

これらの休業の対象だった子が死亡したとき等が該当します。

 

3、1歳以降の子に係る育児休業

 

労働者は、保育所に入所できない等の理由がある場合には、1歳以降の子についても、

最長で当該子が2歳に達するまで、育児休業をすることができます。

この1歳以降の育児休業の開始日が柔軟化され、配偶者の休業の終了予定日の翌日以前の日を、

労働者本人の育児休業開始予定日とすることができようになりました。

これにより、1歳以降の育児休業期間の途中で、夫婦で交代することが可能になりました。

 

(1)1歳以降の子に係る育児休業を取得するための要件

労働者は、その養育する1歳から1歳6か月に達するまでの子、又は1歳6か月から2歳に達するまでの

子について、次のいずれにも該当する場合に限り、その事業主に申し出ることにより、

育児休業をすることができます。

①当該申出に係る子について、当該労働者又はその配偶者が、当該子の1歳到達日、

又は1歳6か月到達日において育児休業をしている場合

②当該子の1歳到達日後、又は1歳6か月到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために

特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合に該当する場合

③当該子の1歳到達日後の期間において、1歳6ヵ月に達するまでの子に係る育児休業、

又は、当該子の1歳6か月到達日後の期間において、2歳に達するまでの子に係る育児休業を

したことがない場合

 

(2)特別の事情がある場合の再度の取得

1歳以降の子に係る育児休業の取得は、原則として、子が1歳から1歳6か月に達するまでの間、

1歳6か月から2歳に達するまでの間に、それぞれ1回に限られます。

この点に関し、従来は、1歳以降の子に係る再度の育児休業は認められませんでしたが、

特別の事情があるときは、再度、育児休業を取得できることとなりました。

この「特別の事情があるとき」には、1歳以降の子に係る育児休業が、他の子についての

産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業又は新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、

これらの休業の対象だった子が死亡したとき等が該当します。

 

4、雇用保険の育児休業給付について

 

・雇用保険の被保険者が育児休業をする場合には、育児休業給付金の支給対象となりますが、

その支給要件を満たすか否かは、1歳に満たない子に係る育児休業を2回に分割して取得するときは、

初回の育児休業について判断されます。

・育児休業給付金の支給額は、育児休業開始から180日目までは「休業開始時賃金日額×支給日数×

100分の67」による額ですが、この「180日」は、同一の子について支給を受けた出生時育児休業給付金の

日数を含めて、計算されます。

2022年11月2日

育児・介護休業法の改正~出生時育児休業の創設

 

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(略称:育児・介護休業法)に関する改正が一部施行され、令和4年10月1日から、出生時育児休業が創設されました。

 

1、出生時育児休業(通称:産後パパ育休)とは?

 

出生時育児休業とは、原則として、出生後8週間以内の子を養育するためにする休業をいいます。

この出生時育児休業は、男性の育児休業取得促進のために、男性の育児休業取得ニーズが高い

子の出生直後の時期に、これまでの育児休業よりも柔軟で休業を取得しやすい枠組みとして

設けられたものです。

 

2、対象労働者

 

出生時育児休業を取得することができるのは、産後休業をしていない労働者

(日々雇用される者を除きます。)です。

出産した女性は通常、出産後8週間は産後休業期間になりますので、出生時育児休業の対象者は

主に男性ですが、女性も養子を養育している場合などには対象者となります。

 

期間を定めて雇用される労働者については、申出の時点で、子の出生日又は出産予定日のうち

いずれか遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに

労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限り、出生時育児休業が認められます。

 

なお、次の者については、労使協定を締結することにより、出生時育児休業の対象者から除くことができます。

①事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者

②申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者

③1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

 

3、出生時育児休業による休業期間

 

出生時育児休業をすることができるのは、原則として、子の出生後8週間以内の期間内に

4週間(28日)以内、分割して2回を限度として労働者が申し出た期間です。

ただし、出産予定日前に子が生まれた場合は、出生日から出産予定日の8週間後まで、

出産予定日後に子が生まれた場合は、出産予定日から出生日の8週間後までとなります。

出生後8週間を超える期間や4週間を超える期間について出生時育児休業をすることはできませんので、

これらの期間について休業を希望する場合は、育児休業の申出をする必要があります。

 

4、休業中の就業

 

労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、

事前に調整した上で休業中に就業することができます。

具体的には、次の流れによることとなります。

①労働者は、就業を希望する場合は、出生時育児休業の開始予定日の前日までに書面等で、

その条件等を申し出ます。

②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間(候補日等がない場合はその旨)を提示します。

③事業主の提示に対して、労働者が全部又は一部を同意する場合は、その旨を休業開始予定日の前日までに

書面等で事業主に提出します。

④事業主は、同意を得た旨と、就業させることとした日時その他の労働条件を書面等で労働者に通知します。

 

なお、休業中の就業については、日数等に次の上限があります。

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分

・休業開始日・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

 

5、出生時育児休業をするにあたっての手続き

 

労働者は、出生時育児休業をしようとするときは、その開始予定日と終了予定日その他所定の事項を

事業主に申し出なければなりません。

申出期限は、原則として、2週間前までですが、雇用環境の整備などについて、法を上回る取り組みを

労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができます。

出生時時育児休業を2回に分割して取得する場合であっても、初めにまとめて申出をする必要があり

初めにまとめて申出をしないときは、事業主は後から行われた申出を拒むことができます。

事業主は、労働者から出生時育児休業の申出があったときは、速やかに(おおむね1週間以内に)、

取扱通知書を書面で交付しなければなりません。

 

6、その他

 

①出生時育児休業についても、期間中の就業日数が一定の水準以内であることその他の所定の要件を

満たせば、雇用保険の育児休業給付(出生時育児休業給付金)が支給されます。

②一定の要件を満たしていれば、育児休業期間中の各月の標準報酬月額・標準賞与額に係る

社会保険料について、その納付が被保険者本人負担分・事業主負担分ともに免除されますが、

この場合の育児休業には、出生時育児休業も含まれます。

2022年10月4日

健康保険・厚生年金保険の適用が拡大されます!

 

令和4年10月1日施行の厚生年金保険法等の改正により、健康保険及び厚生年金保険法の適用が拡大されます。

 

1、改正の概要(令和4年10月1日施行)

 

健康保険・厚生年金保険の適用拡大に関する改正点は、次のとおりです。

(1)短時間労働者への適用拡大

(2)適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種への追加)

(3)被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

 

2、短時間労働者への適用拡大

 

1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者のものと比べて

4分の3以上の短時間労働者は、通常の労働者と同様に、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

それ以外の短時間労働者についても、所定の要件を満たす場合には、健康保険・厚生年金保険の被保険者と

なりますが、その適用対象が拡大されます。

 

(1)特定適用事業所の要件の見直し

短時間労働者(1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される

通常の労働者のものと比べて4分の3以上を除き、次の(2)の要件を満たす者に限ります。)であっても、

特定適用事業所で働くものは、健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。

特定適用事業所とは、事業主が同一である一又は二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く。)の

総数が常時500人を超える事業所をいいますが、今回の改正により、人数の要件が、常時101人以上となります。

これにより、厚生年金保険の被保険者数が101人以上500人以下の事業所で働く短時間労働者についても、

健康保険・厚生年金保険の加入が義務化されます。

 

(2)短時間労働者の勤務期間要件の撤廃

健康保険・厚生年金保険の適用対象となる短時間労働者の要件について、

「当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること」という要件が撤廃されます。

これにより、次のいずれにも該当する短時間労働者は、適用除外事由に該当しない限り、

健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

②報酬月額が88,000円以上であること。

③学生ではないこと。

 

3、適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種追加)

 

これまで非適用業種とされていた事業のうち、「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に

基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」(一部の士業)が適用業種となります。

適用の対象となる士業は、弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、

土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士です。

これにより、常時5人以上の従業員を雇用しているこれらの士業の個人事業所は、健康保険・厚生年保険の

強制適用事業所になり、これに使用される70歳未満の者は、適用除外事由に該当しない限り、

厚生年金保険の被保険者となります。

 

4、被保険者の適用要件(雇用期間が2か月以内の場合)の見直し

 

これまで、2か月以内の期間を定めて使用される者については、健康保険・厚生年金保険の適用が除外

されており、この者は、所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合に限り、

そのときから被保険者となることとされていました。

今回の改正により、2か月以内の期間を定めて雇用される者のうち、適用除外となるのは、

当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものに限られることとなりました。

これにより、2か月以内の期間を定めて雇用される者であっても、当該期間を超えて雇用されることが

見込まれるものは、雇用期間の当初から、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

具体的には、次のいずれかに該当する場合には、当該期間を超えて雇用擦れることが見込まれるものと

判断されます。

①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」又は「更新される場合がある旨」が

明示されている場合

②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を

超えて雇用された実績がある場合

 

5、適用拡大に伴う主な手続き

 

(1)被保険者の資格取得の届出

特定適用事業所(令和4年10月以降新たに特定適用事業所に該当する事業所を含みます。)の事業主は、

令和4年10月から新たに被保険者となる従業員がいる場合は、5日以内に、「被保険者資格取得届」等を

提出しなければなりません。

 

(2)新規適用事業所の届出

常時5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所の事業主は、適用事業所となった日から5日以内に、

「新規適用届」を提出しなければなりません。

2022年9月2日

「男女の賃金の差異」の情報公表について

 

令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正が行われ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を

追加するともに、常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主に対して、当該項目の公表が

義務づけられました。

 

1、我が国における男女間賃金格差の現状

 

我が国における男女間賃金格差は、長期的に見ると縮小傾向にありますが、他の先進国と比較すると、

依然として大きい状況にあります。

 

(1)令和3年6月分の賃金における現状(「令和3年賃金構造基本統計調査」参照)

・所定内賃金は、男女計30万7,400円、男性33万7,200円、女性25万3,600円となっています。

・男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は75.2で、

前年に比べ0.9ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

・一般労働者のうち、正社員・正職員の男女の所定内給与額を見ると、男性の給与水準を100としたときの

女性の給与水準は77.6となり、前年に比べ0.8ポイント増加し、賃金格差が縮小しています。

 

(2)男女間賃金格差の国際比較(「令和4年版男女共同参画白書」参照)

・男女間賃金格差を国際比較すると、男性のフルタイム労働者の賃金の中央値を100とした場合の

女性のフルタイム労働者の賃金の中央値は、OECD(経済協力開発機構)諸国の平均値が88.4と

なっています。

・これに対して、我が国は77.5であり、我が国の男女間賃金格差は国際的に見て大きい状況にあることが

分かります。

・OECD諸国の状況をみると、男女間賃金格差が小さい国は、1位がニュージーランド、

2位がノルウェー、3位がデンマーク、男女間賃金格差が大きい国は、1位が韓国、2位がイスラエル、

3位が日本となっています。

 

2、女性の職業選択に資する情報の公表

 

(1)一般事業主による女性の職業選択に資する情報の公表(女性活躍推進法20条)

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)に基づき、

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人を超えるものには、その事業における

女性の職業生活における活躍に関する情報の公表が義務づけられています。

一般事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人以下のものについては、この情報の公表が

努力義務とされています。

 

(2)公表すべき事項

①その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績

(a:採用した労働者に占める女性労働者の割合その他の8項目、

b:その雇用する労働者の男女の賃金の差異)

②その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

(c:男女の平均継続勤務年数の差異その他の7項目)

 

一般事業主は、その企業規模(常時使用する労働者数)に応じて、次の事項を公表しなければなりません。

【300人を超える事業主】

上記①についてaの8項目から1項目以上及びb、並びに上記②についてcの7項目から1項目以上

(3項目以上の情報)

【300人以下の事業主】

上記①及び②の全16項目のうちから1項目以上

 

3、「男女の賃金の差異」の公表

 

前記2(2)の公表すべき事項のうち、①bの「その雇用する労働者の男女の賃金の差異」は、

今回の改正により追加され、常時使用する労働者の数が300人を超える一般事業主に公表が

務づけられたものです。

 

(1)算出方法等

・「男女の賃金の差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を

割合(パーセント)で示します。

・「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者(短時間・有期雇用労働者)」の

区分での公表が必要です(派遣労働者は、派遣労働者は派遣元事業主において算出します。)。

→全労働者の①女性・②男性、正規雇用労働者の③女性・④男性、非正規雇用労働者の⑤女性・⑥男性の

6区分で、それぞれ「総賃金額÷人員数」により平均年間賃金を計算します。

そのうえで、「①÷②×100」(全労働者の男女の賃金の差異)、

「③÷④×100」(正規雇用労働者の男女の賃金の差異)、

「⑤÷⑥×100」(非正規雇用労働者の男女の賃金の差異)を算出します

(小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。)。

・「男女の賃金の差異」の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するため、

「説明欄」において、より詳細な情報や補足的な情報を公表することもできます。

 

(2)公表時期・方法

・令和4年7月8日以後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後

おおむね3ヵ月以内に、公表した日を明らかにして、公表する必要があります。

・計算の前提とした重要事項(対象期間、対象労働者の範囲、賃金の範囲等)を付記します。

・インターネットの利用その他の方法により、女性の求職者等が容易に閲覧できるように

しなければなりません。

2022年8月2日

事業を開始した受給資格者等に係る受給期間の特例の創設

 

令和4年7月1日施行の雇用保険法に改正により、基本手当の受給資格者が離職後に事業を開始した場合等に、

当該事業の実施期間を基本手当の受給期間に算入しない特例が新設されました。

 

1、基本手当の受給期間

 

(1)基本手当の原則的な受給期間

雇用保険の基本手当の受給期間は、原則、離職日の翌日から1年です。

具体的には、次のように定められています。

①次の②③以外の受給資格者にあっては、1年

②所定給付日数が360日である受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間

③所定給付日数が330日である受給資格者にあっては、1年に30日を加えた期間

 

(2)受給期間の延長

次の場合には、受給資格者の申出により、受給期間の延長が認められます。

①前記(1)の受給期間内に、妊娠、出産、育児等の理由により引き続き30日以上職業に

就くことができない日がある場合

→この場合には、前記(1)の期間に、当該理由により職業に就くことができない日数を

加算した期間(その加算された期間が4年を超えるときは、4年)が受給期間となります。

②受給資格に係る離職が定年等の理由による者が当該離職後一定期間求職の申込みをしないことを

希望する場合

→この場合には、前記(1)の期間に、求職の申込みをしないことを希望するとしてその者が申し出た期間

(離職日の翌日から起算して1年が限度)に相当する期間を加算した期間が受給期間となります。

 

2、事業開始等による受給期間の特例

 

受給資格者が事業を開始した場合等においては、その事業を行っている期間等を、最大3年間、

基本手当の受給期間に算入しないことする特例が創設されました。

これにより、雇用保険に一定期間加入した後に離職し起業した者が休廃業した場合でも、

その後の再就職活動に当たって基本手当を受給することが可能となります。

 

(1)受給期間の特例の適用要件等

この特例の適用の対象は、離職日の翌日以後に、事業を開始した受給資格者、事業に専念し始めた受給資格者、

事業の準備に専念し始めた受給資格者です。

ただし、事業を開始し、事業に専念し始め、又は、事業の準備に専念した日は、

令和4年7月1日以降でなければなりません。

 

また、この特例の適用を受けるためには、その事業について、次の要件のすべてを満たす必要があります。

事業の実施期間が30日以上であること。

「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」の

いずれかから起算して30日を経過する日が本来の受給期間の末日以前であること。

当該事業について、就業手当又は再就職手当の支給を受けてないこと。

当該事業により自立することができないと認められる事業でないこと。

→例えば、雇用保険の被保険者資格を取得する者を雇い入れ、適用事業の事業主になる場合や、

登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で事業の開始、事業内容と事業所の実在が

確認できる場合には、この④の要件を満たすこととされます。

離職日の翌日以後に開始した事業であること。

→離職日以前に事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合も含まれます。

 

(2)特例が適用された場合の受給期間

この特例が適用された場合には、当該事業の実施期間(起業等から休廃業までの期間)が受給期間に

算入されないこととなります。

ただし、実施期間の日数が、4年から前記1により算定される期間の日数を除いた日数を

超える場合においては、当該超える日数は受給期間に算入されます。

つまり、前記1(1)の本来の受給期間が1年の受給資格者であれば、前記1(2)で加算された日数と

通算した期間が最大で3年間、受給期間に算入されないこととなるわけです。

 

3、受給期間の特例の申請手続等

 

前記2の特例の適用を受けるためには、公共職業安定所長にその旨を申し出る必要があります。

①この申出は、受給期間延長等申請書に、次の書類を添付して、管轄公共職業安定所の長に

提出することによって行います。

・受給資格者証(受給資格の決定を受けていない場合には、離職票-2)

・事業を開始等した事実と開始日を確認できる書類(登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等)

②この申請書の提出は、天災その他やむを得ない理由がある場合を除き、事業を開始した日

(又は事業に専念し始めた日、事業の準備に専念し始めた日)の翌日から2か月以内に行わなければ

なりません。

③この受給期間の特例の申請手続をした後、当該事業を廃止し、又は休止した場合等においては、

その旨を速やかに管轄公共職業安定所の長に届け出なければなりません。

2022年7月4日