障害者の法定雇用率が引き上げられました!

 

障害者の雇用の促進等に関する法律(通称:障害者雇用促進法)により、すべての事業主には、

法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。

この障害者雇用率制度に係る法定雇用率が、令和3年3月1日から引き上げられます。

 

1、障害者雇用促進法の改正(令和3年3月1日施行)

 

(1)障害者の法定雇用率の引き上げ

令和3年3月1日以降の法定雇用率は、民間企業が2.3%(←2.2%)、国、地方公共団体等が2.6%(←2.5%)、

都道府県等の教育委員会が2.5%(←2.4%)となります。

 

(2)障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲の拡大

障害者の法定雇用率の引き上げに伴い、1人以上の障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、

従業員43.5人以上(←45.5人以上)に拡大されます。

この範囲の事業主には、次の義務もありますので、これまで対象となっていなかった

従業員43.5人以上45.5人未満の事業主の皆様は注意してください。

①毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告すること。

②障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めること。

 

(3)障害者雇用納付金制度の取り扱い

障害者雇用納付金制度は、障害者雇用に関する事業主間の経済的負担の調整を図ることにより、

障害者の雇用の促進と職業の安定を図るための制度です。

現在、常用労働者の総数が100人を超える事業主について、法定雇用率未達成の場合に納付金を徴収し、

この納付金を財源として障害者雇用調整金等が支給されます。

①令和2年度分(申告期間:令和3年4月1日から同年5月15日までの間)については、

令和3年2月以前は改正前の法定雇用率(2.2%)、令和3年3月のみ改正後の法定雇用率(2.3%)で

算定します。

②令和3年度分(申告期間:令和4年4月1日から同年5月15日までの間)については、

新しい法定雇用率(2.3%)で算定します。

 

2、障害者雇用の現状~厚生労働省「令和2年障害者雇用状況の集計結果」より

 

(1)雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合

・民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は578,292.0人で、

17年連続で過去最高となりました。

・雇用者のうち身体障害者は356,069.0人、知的障害者は134,207.0人、精神障害者は88,016.0人となり、

いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きいです。

実雇用率は、9年連続で過去最高の2.15%、法定雇用率達成企業の割合は48.6%でした。

 

(2)企業規模別の状況

・企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45.5~100人未満規模企業で58,350.0人、

100~300人未満で113,199.0人、300~500人未満で50,824.5人、500~1,000人未満で66,588.0人、

1,000人以上で289,330.5人となり、すべての企業規模で前年より増加しました。

・実雇用率は、45.5~100人未満で1.74%、100~300人未満で1.99%、300~500人未満で2.02%、

500~1,000人未満で2.15%、1,000人以上で2.36%となりました。

法定雇用率達成企業の割合は、45.5~100人未満が45.9%、100~300人未満が52.4%、

300~500人未満が44.1%、500~1,000人未満が46.7%、1,000人以上が60.0%となり、

すべての規模の区分で前年より増加しました。

 

(3) 産業別の状況

・産業別にみると、雇用されている障害者の数は、「農,林,漁業」「宿泊業,飲食サービス業」

「生活関連サービス業,娯楽業」以外のすべての業種で前年よりも増加しました。

・産業別の実雇用率では、「医療,福祉」(2.78%)、「農,林,漁業」(2.33%)、

「生活関連サービス業,娯楽業」(2.33%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.31%)、

「運輸業,郵便業」(2.23%)が法定雇用率を上回っています。

 

(4)法定雇用率未達成企業の状況

・令和2年の法定雇用率未達成企業は52,742社です。そのうち、不足数が0.5人または1人である

企業(1人不足企業)が、65.6%と過半数を占めています。

・障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は30,542社であり、未達成企業に占める割合は

57.9%となっています。

 

3、障害者にも働きやすい職場づくり

 

障害者雇用率制度は、障害に関係なく、希望や能力に応じて、だれもが職業を通じた社会参加の

できる「共生社会」実現の理念に基づく制度です。

障害者雇用は年々、進展していますが、法定雇用率未達成企業も一定数、存在しています。

障害者雇用に対する社会的な関心を喚起し、先進的な取り組みを進めている事業主が社会的な

メリットを受けることができるよう、障害者雇用に関して優良な取り組みを行う中小事業主に

対する認定制度も、令和2年4月1日に創設されました。

ハローワークなどには、障害者雇用のための各種助成金や職場定着に向けた人的支援など、

様々な支援制度も用意されていますので、だれもが働きやすい環境を目指して、これを機に今一度、

職場環境を見直したいところです。

2021年3月1日

66歳以上働ける制度のある企業は約3分の1~「高年齢者の雇用状況」の集計結果より

 

先日、厚生労働省より、令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果が公表されました。

令和3年4月1日施行の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)の改正により、

65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることについて、事業主に努力義務が課せられます。

その内容は改めてご紹介することとして、まずは高年齢者雇用の現状を見てみましょう。

 

1、高年齢者の雇用状況の報告

 

高年齢者雇用安定法では、事業主に、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めており、

令和2年の集計結果においては、この報告した従業員31人以上の企業164,151社の状況が

まとめられています。

なお、この集計おいては、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

 

2、65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況

 

(1)高年齢者雇用確保措置の実施状況

高年齢者雇用安定法に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの

安定した雇用を確保するため、 ①定年制の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)

の導入いずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。

高年齢者雇用確保措置の実施済企業は164,033社(99.9%)、51人以上規模の企業で107,364 社(99.9%)、

未実施の企業は118社(0.1%)、51人以上規模企業で28 社(0.1%)となっています。

 

高年齢者雇用確保措置を実施済の企業の割合を企業規模別に見ると、大企業では17,069社(99.9%)、

中小企業では146,964社(99.9%)となっています。

また、高年齢者雇用確保措置を実施済の企業では、定年制度(「定年制の廃止」(4,468社、 2.7%)

又は「定年の引上げ」(34,213社、20.9%))よりも、継続雇用制度(125,352社、76.4%)により

高年齢者雇用確保措置を講じる企業の比率が高くなっています。

 

(2)60歳定年到達者の動向

過去1年間(令和元年6月1日から令和2年5月31日)の60歳定年企業における定年到達者(363,027人)のうち、

継続雇用された者は310,267人(85.5%)、継続雇用を希望しない定年退職者は52,180人(14.4%)、

継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は 580人(0.2%)となっています。

 

(3)65歳定年企業の状況

定年を65歳とする企業は30,250社、報告した全ての企業に占める割合は18.4%となっています。

企業規模別では、中小企業が28,218 社(19.2%)、大企業が2,032社(11.9%)です。

 

3、66歳以上働ける企業の状況

 

(1)66歳以上働ける制度のある企業の状況

66歳以上働ける制度のある企業は54,802社、報告した全ての企業に占める割合は33.4%となっています。

企業規模別では、中小企業が49,985社(34.0%)、大企業では4,817社(28.2%)です。

 

(2)70歳以上働ける制度のある企業の状況

70歳以上働ける制度のある企業は51,633 社、報告した全ての企業に占める割合は31.5%となっています。

企業規模別では、中小企業が47,172社(32.1%)、大企業が4,461社(26.1%)です。

 

(3)希望者全員が66歳以上働ける企業の状況

希望者全員が66歳以上まで働ける企業は20,798社、報告した全ての企業に占める割合は 12.7%となっています。

企業規模では、中小企業が19,984社(13.6%)、大企業が814社(4.8%)です。

 

(4)定年制廃止および66歳以上定年企業の状況

①定年制を廃止している企業は4,468社、報告した全ての企業に占める割合は2.7%となっています。

企業規模別では、中小企業が4,370社(3.0%)、大企業が98社(0.6%)です。

②定年を66~69歳とする企業は1,565社、報告した全ての企業に占める割合は1.0%となっています。

企業規模別では、中小企業が1,532社(1.0%)、大企業が33社(0.2%)です。

③定年を70歳以上とする企業は2,398社、報告した全ての企業に占める割合は1.5%となっています。

企業規模別では、中小企業が2,323社(1.6%)、大企業が75社(0.4%)です。

 

4、進む生涯現役社会の実現に向けた取り組み

 

人生百年時代ともいわれる昨今、高年齢者の労働参加も進んでいることが分かります。

内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)によれば、現在仕事をしている60歳以上の方の

約9割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。

働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、多様な雇用・就業機会の確保について、

企業でも様々な取り組みを模索する時期に来ているといえますね。

2021年2月16日

子の看護休暇及び介護休暇の活用を!

 

令和3年1月1日施行の育児・介護休業法施行規則の改正により、日々雇用される者を除き、

原則として、すべての労働者が、子の看護休暇及び介護休暇を時間単位で取得することが

できるようになりました。

子の看護休暇及び介護休暇は、あらかじめ制度が導入され、就業規則などに記載されるべきもの

ですから、必要に応じて就業規則などの変更も必要となります。

 

1、子の看護休暇及び介護休暇とは?

 

(1)子の看護休暇

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日

(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日)を

限度として、子の看護休暇を取得することができます。

子の看護休暇は、負傷し、又は疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な世話を

行う労働者に対し与えられる休暇であり、労働基準法の規定による年次有給休暇とは別に

与える必要があります。

子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるように

するための権利として位置づけられています。

「疾病の予防を図るために必要な世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいい、

予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

 

(2)介護休暇

要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることにより、

1年度において5日(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合にあっては、10日)を

限度として、介護休暇を取得することができます。

介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う労働者に対し与えられる休暇であり、

労働基準法の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。

要介護状態にある家族の介護や世話のための休暇を取得しやすくし、介護をしながら働き続けることが

できるようにするための権利として位置づけられています。

 

2、子の看護休暇や介護休暇を取得することができない者

 

次のような労働者について子の看護休暇又は介護休暇を取得することができないこととする労使協定が

あるときは、事業主は子の看護休暇又は介護休暇の申出を拒むことができ、拒まれた労働者は

子の看護休暇又は介護休暇を取得することができません。

①その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者

②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

③時間単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

(ただし、この者も1日単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することはできます。)

 

上記③の「時間単位で取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」の範囲は、

労使で十分な話し合いを行って定める必要があります。

また、上記③に該当することとなった労働者であっても、半日単位での休暇であれば取得することが

できるものについては、半日単位での休暇取得を認めるなど制度の弾力的な利用が可能となるように

配慮してください。

 

なお、これまでは、子の看護休暇又は介護休暇の半日単位での取得ができない

「1日の所定労働時間が短い労働者」として、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者が

定められていましたが、今回の改正により、この規定が削除されました。

したがって、労働者は、1日の所定労働時間数にかかわらず、子の看護休暇又は介護休暇を時間単位で

取得することができます。

 

3、取得単位

 

今回の改正により、子の看護休暇又は介護休暇は、1日単位又は時間単位で取得することが

できるようになりました。

 

時間単位で取得する場合の「時間」は、1日の所定労働時間数に満たない範囲とします。

休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数を取得する場合は、1日単位での取得として

取り扱います。また、「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいい、労働者からの申し出に応じ、

労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要があります。

 

時間単位で取得する子の看護休暇又は介護休暇の1日分の時間数は、1日の所定労働時間数とし、

1時間に満たない端数がある場合は、端数を切り上げます。

例えば、1日の所定労働時間数が7時間30分の場合は8時間分の休暇で1日分となります。

日によって所定労働時間数が異なる場合の1日の所定労働時間数の定め方は、

1年間における1日の平均所定労働時間数とします。

なお、法令で求められているのは、いわゆる「中抜け」なしの時間単位休暇ですが、

法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇取得を認めるような配慮が求められます。

また、すでに「中抜け」ありの休暇を導入している企業が、「中抜け」なしの休暇とすることは、

労働者にとって不利益な労働条件の変更になります。

2021年1月5日

パワーハラスメント対策は事業主の義務です!

 

令和2年6月1日施行の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称:労働施策総合推進法)の改正により、職場におけるパワーハラスメントについて雇用管理上の措置を講ずることが事業主に義務づけられました(中小事業主については、令和4年3月31日 までは努力義務)。

 

1、職場におけるパワーハラスメントとは?

 

(1)定義

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素をすべて満たすものをいいます。

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

 

(2)「優越的な関係を背景とした」言動

当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。例えば、職務上の地位が上位の者による言動は、これに該当します。

 

(3)「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。例えば、業務上明らかに必要性のない言動や業務の目的を大きく逸脱した言動は、これに該当します。

この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当とされています。

 

(4)「労働者の就業環境が害される」こと

当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。

 

(5)類型

職場におけるパワーハラスメントの代表的な類型としては、次のものがあります。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)

②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

2、事業主及び労働者の責務

 

(1)事業主の責務

・事業主は、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるパワーハラスメントに起因する問題(パワーハラスメント問題)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければなりません。

・事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければなりません。

(2)労働者の責務

労働者は、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、職場におけるパワーハラスメントについて事業主の講ずる措置に協力するように努めなければなりません。

 

3、職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置

 

事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません。

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

②相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

④上記①~③と併せて講ずべき措置

 

なお、事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについて相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。

2020年12月1日

副業・兼業に関心はありますか?~「副業・兼業の促進に関するガイドライン」より

1、副業・兼業の現状

多様な働き方が模索される中、副業・兼業を希望する労働者も増加傾向にあるようですが、労働者の副業・兼業を認めている企業はまだ多くはありません。

 

裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、①労務提供上の支障となる場合、②企業秘密が漏洩する場合、③企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、④競業により企業の利益を害する場合と考えられる旨を示しています。

また、厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則においては、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」としています。

 

政府も副業・兼業の普及促進を図っていますが、一方では、副業・兼業により労働者の長時間労働につながることも懸念されるため、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について、ガイドラインを示しています。

以下では、このガイドラインの概要を、かいつまんで取り上げます。

 

2、企業に求められる対応

(1)基本的な考え方

副業・兼業を進めるに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要です。

副業・兼業を認める場合には、就業規則において、原則として労働者は副業・兼業を行うことができること、例外的に、①安全配慮義務、②秘密保持義務、③競業避止義務、④誠実義務に支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくことが考えられます。

 

(2)労働時間管理について

労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合には、労働基準法38条1項に基づき、労働時間を通算して管理することが必要です。

①労働時間の通算が必要となる場合

労働者が事業主を異にする複数の事業場において、「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合には、労働時間が通算されます。

この場合には、法定労働時間、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の適用にあたっては、労働時間を通算することとなります。

一方、事業主、委任、請負など労働時間規制が適用されない場合には、その時間は通算されません。

 

②副業・兼業の確認

使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認します。副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うためには、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましいものとされています。

 

③労働時間の通算

副業・兼業を行う労働者を使用するすべての使用者は、労働時間を通算して管理しなければなりません。労働時間の通算は、自社の労働時間と、労働者からの申告等により把握した他社の労働時間を通算することによって行います。

 

④時間外労働の割増賃金の取扱い

副業・兼業の開始前に、自社の所定労働時間と他社の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した会社の時間外労働となります。

副業・兼業の開始後に、所定労働時間の通算に加えて、自社の所定外労働時間と他社の所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となります。

使用者は、これらによって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。

 

なお、労働時間管理は、労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)により行うことができます。

 

(3)健康管理

使用者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等を実施しなければなりません。

また、健康確保の観点からも、他の事業場における労働時間と通算して適用される労働基準法の時間外労働の上限規制を遵守すること等が求められます。

 

3、労働者に求められる対応

労働者は、自社の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要があります。

また、労働者は、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、自ら業務量や進捗状況、時間や健康状態を管理しなければなりません。

2020年11月4日

基本手当の支給に係る取扱いが一部変更されました!

 

失業し、所定の要件を満たす労働者には、雇用保険から基本手当が支給されます。

雇用保険法等の改正により、この基本手当の支給に関する取扱いが一部、変更されました。

 

1、改正の概要

 

(1)被保険者期間の算定方法の変更

勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算定に当たり、これまでの日数による基準に加え、労働時間による基準が補完的に設定されました。

 

(2)離職理由による給付制限期間の短縮

正当な理由がない自己の都合により離職した場合の給付制限期間が、2か月に短縮されました。

 

2、被保険者期間の算定方法の変更(令和2年8月1日施行)

 

(1)基本手当の支給要件

基本手当の支給を受けるためには、原則として、離職をした日以前の2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あること(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あることでも可)が必要です。

 

(2)被保険者期間の計算

被保険者として雇用された期間を、資格の喪失の日の前日からさかのぼって1か月ごとに区切っていき、この区切られた1か月の期間に賃金の支払い基礎となった日数(賃金支払基礎日数)が11日以上ある場合に、その1か月の期間を被保険者期間の1か月として計算します。

また、このように区切ることにより1か月未満の期間が生ずることがありますが、その1か月未満の期間の日数が15日以上あり、かつ、その期間内に賃金支払基礎日数が11日以上ある場合に、その期間を被保険者期間の2分の1か月として計算します。

 

(3)労働時間による基準

前記(2)の被保険者期間の算定方法では、雇用保険の被保険者となる要件(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、31日以上雇用される見込みがあること)を満たしながらも、賃金支払基礎日数が11日に満たないことにより、被保険者期間に算入されない期間が生ずることがあるため、新たに労働時間による基準が追加されました。

 

離職日以前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月に満たない場合は、前記(2)と同様に、資格の喪失の日の前日からさかのぼって1か月ごと区切られた各期間のうち、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上であるものを1か月(1か月未満15日以上の期間にあっては、2分の1か月)として計算します。

 

(4)留意点その他

・労働時間による基準は、離職日が令和2年8月1日以降である場合に適用されます。

・離職日が令和2年8月1日以降の労働者に関して「離職証明書」を作成する際は、賃金支払基礎日数が10日以下の期間については、所定の欄に、当該期間における賃金の支払いの基礎となった労働時間数を記載する必要があります。

・高年齢求職者給付金または特例一時金の支給に係る被保険者期間や、介護休業給付金または育児休業給付金の支給に係るみなし被保険者期間の計算についても、同様に、労働時間による基準が適用されます。

 

3、離職理由による給付制限期間の短縮(令和2年10月1日施行)

 

(1)離職理由による給付制限

次のいずれかに該当する場合には、待期満了後1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当が支給されません。

①被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合

②正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合

 

(2)給付制限期間の短縮

この場合の給付制限期間は、原則として、「3か月」とされています。

これに対して、正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合(前記(1)②の場合)の給付制限期間が、5年間のうち2回までは、「2か月」となります。

 

(3)留意点その他

・給付制限期間が2か月となりうるのは、令和2年10月1日以降に離職した者に限られます。令和2年9月30日までに離職した者の給付制限期間は、従来どおり、3か月です。

・給付制限期間が2か月となりうるのは、正当な理由がなく自己の都合によって退職した者(前記(1)②に該当する者)に限られます。自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された者(前記(1)①に該当する者)の給付制限期間は、従来どおり、3か月です。

・5年間に2回以上の自己の都合による退職をしている者の給付制限期間は、3か月となります。3回目以降の退職にあたっては、その退職からさかのぼって5年間に2回以上の自己の都合による退職があるかの確認が行われます。

・令和2年9月30日以前の自己の都合による退職は、令和2年10月1日以降の退職に係る給付制限期間に影響しません。

2020年10月1日

複数事業労働者に対する労災保険給付が変わります!

 

令和2年9月1日施行の労働者災害補償保険法の改正により、複数事業労働者に対する労災保険の保険給付について、複数の就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しが行われました。

 

1、「複数事業労働者」とは?

 

事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(複数の会社等に雇用されている労働者)のことを、「複数事業労働者」といいます。

 

令和2年9月1日以降に、けがをしたり、病気になったりした労働者や、死亡した労働者の遺族が、今回の改正事項の対象となります。

また、原則として、けがをしたときや病気になった時点で、複数の会社で働いている労働者が対象となります。

ただし、けがをしたときや病気になったときなどに一つの会社等でのみ雇用されている労働者やすべての会社等を退職している労働者であっても、そのけがや病気などの原因・要因となるもの(長時間労働、強いストレスなど)が、二つ以上の会社等で雇用されている際に存在していたものときは、対象となります。

 

2、改正の概要

 

複数事業労働者に対する保険給付について、次のような拡充が図られています。

(1)給付基礎日額の算定方法の特例

複数事業労働者については、すべての就業先での給付基礎日額を合算した額を基礎に給付額等が決定されることとなりました。

 

(2)新たな保険給付の創設

複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(複数業務要因災害)に関する保険給付が創設されました。

 

3、給付基礎日額の算定方法の特例

 

労災保険では、療養補償給付、介護補償給付、二次健康診断等給付などの一定の保険給付を除き、被災労働者の給付基礎日額によって具体的な保険給付の額が算出されます。

 

給付基礎日額とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。

この給付基礎日額の算定に当たり、これまでは、災害が発生した就業先の賃金額のみがその基礎とされていました。

この点に関し、複数事業労働者については、当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を給付基礎日額とすることとなりました。

 

例えば、A会社(給付基礎日額10,000円)とB会社(給付基礎日額5,000円)で働いている労働者が、B会社において業務上負傷し、休業した場合には、これまでは、B会社の給付基礎日額5,000円を基礎として、休業補償給付などが行われていました。

今後は、A会社とB会社の給付基礎日額を合算した15,000円(=10,000円+5,000円)を基礎として、休業補償給付が行われることとなります。

 

4、複数事業労働者に対する新たな保険給付の創設

 

(1)複数業務要因災害に関する保険給付

労災保険においては、これまで、①業務災害に関する保険給付及び②通勤災害に関する保険給付を行っていましたが、これらに加えて、③複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(これを「複数業務要因災害」といいます。)に関する保険給付を行うこととされました。

これにより、脳血管疾患・虚血性心疾患や精神障害などに関する労災認定にあたっては、すべての就業先の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して判断されることとなります。

 

例えば、A会社とB会社で働いている労働者が脳血管疾患を発症した場合において、これまでは、A会社とB会社それぞれにおける負荷を個別に評価して、労災認定するかどうかが判断されていました。

今後は、それぞれの会社の負荷を個別に評価して労災認定できない場合には、両社の負荷を総合的に評価して、労災認定するかどうかが判断されることとなります。

 

(2)保険給付の種類

複数業務要因災害に関する保険給付としては、次の保険給付が行われます。

その内容は、これまでの業務災害または通勤災害に関する各保険給付に準ずるものとなっています。

①複数事業労働者療養給付(療養補償給付、療養給付に相当する給付)

②複数事業労働者休業給付(休業補償給付、休業給付に相当する給付)

③複数事業労働者障害給付(障害補償給付、障害給付に相当する給付)

④複数事業労働者遺族給付(遺族補償給付、遺族給付に相当する給付)

⑤複数事業労働者葬祭給付(葬祭料、総裁給付に相当する給付)

⑥複数事業労働者傷病年金(傷病補償年金、傷病年金に相当する給付)

⑦複数事業労働者介護給付(介護保障給付、介護給付に相当する給付)

2020年9月1日

厚生年金保険料等の標準報酬月額の特例改定について

 

新型コロナウイルス感染症の影響による休業により報酬が著しく下がった被保険者であって、一定の条件に該当するものについて、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定によらず、翌月からの改定を可能とする特例が設けられています。

 

1、特例改定の対象者

 

次のすべてに該当する被保険者が、この特例による改定(特例改定)の対象となります。

(1)新型コロナウイルス感染症の影響による 休業 があったことにより、令和2年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月(急減月)が生じたこと

休業とは、労働者が事業所において、労働契約、就業規則、労働協約等で定められた所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全1日にわたり労働することができない状態または当該所定労働日の労働時間内において1時間以上労働することができない状態をいいます。

たとえば、①事業主からの休業命令や自宅待機指示などにより休業状態にあった者(1か月のうちに1時間でも休業のあった者)や、②日給や時間給の者であって、事業主からの命令や指示等により、通常の勤務やシフトによる日数や時間を短縮し、短時間休業が行われることとなったものが対象となりえます。

一方、休業を伴わずに報酬が低下した場合(テレワークの実施により残業時間が減少し、報酬が低下した場合等)や、休業が新型コロナウイルス感染症の影響によるものでない場合などは、特例改定の対象となりません。

 

(2)著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、すでに設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと

①通常の随時改定の場合とは異なり、急減月に固定的賃金(日給等の単価)の変動があったか否かは問われません。

②事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、賃金の支払い状況にかかわらず、休業した日を報酬支払基礎日数として取り扱って差し支えないものとされています。そのうえでも、休業のあった月とその前2か月のいずれか1月でも報酬払基礎日数が17日未満(または11日未満)となる場合は、特例改定の対象となりません。

③急減月に、報酬が何ら支払われていない者については、第1級の標準報酬月額として取り扱われます。なお、報酬には、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金は含みません。

④被保険者期間が急減月を含めて3か月未満の者については、特例改定の要件となる被保険者期間を満たさないため、特例改定の対象とはなりません。

 

(3)特例改定を行うことについて、本人が書面で同意していること

①改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が算出されることへの同意を含めて、被保険者本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。

②同一の被保険者について複数回、特例改定の申請を行うことはできません。

 

2、減額の対象となる保険料

 

令和2年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合が特例改定の対象ですので、その翌月の令和2年5月から8月分の保険料が減額の対象となります。

 

3、申請手続等

 

特定改定の適用を受けようとする場合には、事業主は、月額変更届(特例改定用)に申立書を添付し、管轄の年金事務所に申請します。

届書及び申請書は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

申請期限は、令和3年1月末日です。

それまでの間は遡及しての適用が可能ですが、事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするためにも、できるだけ速やかな申請が望まれます。

また、申請により保険料が遡及して減額される場合には、被保険者へ適切に保険料を返還する必要があります。

 

4、特例改定後の対応等

 

(1)特例改定を受けた者に係る定時決定

5月・6月に特例改定が行われた者については、定時決定を行う必要があります。

一方、7月・8月に特例改定が行われた者については、定時決定を行う必要はありません。

 

(2)休業が回復した場合の取り扱い

特例改定後に、昇給など固定的賃金の変動により随時改定の要件に該当することとなった場合には、通常の随時改定の届出が必要となります。

なお、定時決定が行われない7月分または8月分保険料から本特例による改定が行われた者については、休業が回復した月から継続した3か月間の報酬による標準報酬月額が2等級以上上昇する場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、月額変更届の届出が必要となります。

(3)通常の定時決定や随時改定について

通常の定時決定や随時改定の対象者の要件や手続方法に変更はありません。

従来どおり、休業中で給与等の支給がない日は報酬支払基礎日数に含まれず、また、固定的賃金の変動があった場合のみが随時改定の対象となります。

2020年8月4日

新型コロナウイルス感染症の影響よる年度更新期間の延長と労働保険料の納付猶予制度

 

新型コロナウイスル感染症の影響を踏まえ、令和2年度の労働保険の年度更新期間が延長されています。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により労働保険料等を納付することが困難となった事業主の方々については、申請により、その納付が猶予されることがあります。

 

1、年度更新期間の延長

 

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和2年度の労働保険の年度更新期間が、「令和2年6月1日~7月10日」から「令和2年6月1日~8月31日」に延長されました。

これにより、令和2年度の労働保険料及び一般拠出金の概算保険料及び確定保険料に係る申告書の提出及び納付の期限が、令和2年8月31日となりました。

また、口座振替により労働保険料を納付している場合の全期及び第1期の口座振替納付日も、「令和2年9月7日」から「令和2年10月13日」に変更されました。

なお、延納(分割納付)をしている場合の第2期以降の納期限は、従来どおりです。

 

2、労働保険料等の納付猶予制度

 

労働保険料等については、次のような納付を猶予する制度があります。

これらの納付猶予制度の適用を受けようとする場合には、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局に、所定の申請書等を提出します(郵送や電子申請も可能)。

 

(1)労働保険料等の納付猶予の特例

次の要件に該当することとなった事業主については、申請により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する労働保険料等の納付が、1年間猶予されます。

新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業に係る収入が前年同期に比べておおむね20%以上減少していること

②前記①により、一時に納付を行うことが困難であること

 

令和2年度の全期または第1期分について、特例の適用を希望する場合には、年度更新期間延長後の令和2年8月31日までに申請をする必要があります。

 

(2)災害による納付の猶予

事業主が、災害により、全積極財産(負債を除く資産)のおおむね 20%以上に損失を受けた場合には、申請により、労働保険料等の納付が猶予されます。

例えば、事業主本人や家族、労働者等が新型コロナウイルス感染症に罹患したため、消毒作業等により財産(棚卸資産を含む。)に相当の損害を受けた場合等は、これに該当する可能性があります。

災害による納付の猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で、被害のあった財産の損失の状況及び財産の種類を勘案して決定されます。

猶予期間の延長はありませんが、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、次の「通常の場合の納付の猶予」を申請することにより、災害による納付の猶予期間と合わせて最長3年以内の範囲で延長が認められる場合があります。

 

災害による納付の猶予の対象となる労働保険料等は、損失を受けた日以後1年以内に納付するもの(その納期限が、その損失を受けた日以後に到来するもの)に限られます。

災害による納付の猶予に係る申請期限は、災害がやんだ日から2か月以内です。

 

(3)通常の場合の納付の猶予

前記(1)及び(2)の納付の猶予を受けることができない事業主であっても次の要件に該当するときは、労働保険料等の納付が猶予されます。

例えば、新型コロナウイルス感染症の発生に伴う各種イベントの中止・延期、観光客等の急減等により、売上が著しく低下した場合等は、これに該当する可能性があります。

①次のいずれかに該当する事実があること

・財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にあったこと

・事業主又はその生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと

・事業を廃止し、又は休業したこと

・その事業につき著しい損失を受けたこと(申請前の1年間において、その前年の利益額の2分の1を超える損失(赤字)を生じた場合)

・上記に類する事実があった場合

②前記①の該当事実により、納付すべき労働保険料等を一時に納付することができないと認められること

③原則として、猶予を受けようとする労働保険料等の金額に相当する担保の提供があること(猶予に係る金額が100万円以下である場合、猶予期間が3か月以内である場合、担保として提供することができる財産がない場合は不要)

納付の猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く労働保険料等を完納することができると認められる期間に限られます。

なお、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は 申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。

 

通常の場合の納付の猶予については、特に申請期限は設けられていませんが、猶予に該当する事実発生後、猶予を受けようとする期間より前に申請をする必要があります。

 

 

2020年7月4日

新型コロナウイルス感染症の影響よる厚生年金保険料等の納付猶予の特例

 

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業等に係る収入に相当の減少があった事業主の方について、厚生年金保険料等の納付を1年間猶予することができることとなりました。

この納付猶予の特例が適用された場合には、担保の提供が不要となり、延滞金もかからなくなります。

 

1、納付猶予の特例の適用要件

 

次の(1)から(4)に掲げる要件のすべてに該当する場合には、厚生年金保険料等の納付猶予の特例の適用を受けることができます。

(1)令和2年2月1日以後に適用事業所の事業につき相当な収入の減少(前年同期に比べておおむね20%以上の減少)があったこと

「事業につき相当な収入の減少」とは、令和2年2月1日から猶予を受けようとする保険料等の指定期限までの間の任意の期間(1か月以上。以下「調査期間」という。)の収入金額につき、その調査期間の直前1年間における調査期間に対応する期間(※1)の収入金額(※2)に対して、おおむね20%(※3)以上減少していると認められることをいいます。

 

(※1)調査期間に対応する期間がない場合は、その期間に近接する期間その他調査期間の収入金額と比較する期間として適当と認められる期間となります。

(※2)調査期間に対応する期間の収入金額が不明な場合は、調査期間の直前1年間の収入金額を12で割り、これを割り当てる方法その他適当な方法により算定した金額となります。

(※3)現に収入の減少が20%に満たないことのみをもって、一概に納付猶予の特例の適用が否定されるわけではなく、個々の適用事業所の状況を十分に聴取し、今後さらに減少率が悪化することが見込まれるなどによりおおむね20%以上減少していると認められるかどうかをみて、猶予を適用することが相当であるかが判断されます。

 

(2)その相当な収入の減少等が、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響によるものであること

新型コロナウイルス感染症の影響によるイベント開催又は外出等の自粛要請、入国制限、その他の理由で収入が減少していることが要件となります。

「海外からの材料の輸入停止」のような直接的な影響によるもののほか、間接的な影響によるものも広く含まれます。

 

(3)一時に納付することが困難であると認められる保険料等があること

「一時に納付が困難」とは、納付すべき保険料等を一時に納付する資金がないこと、又は納付すべき保険料等を事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金に充てた場合に保険料等を納付する資金がないことをいいます。

 

(4)指定期限内に申請がされたこと(やむを得ない理由がある場合を除く。)

納付猶予の特例の申請は、後述の「指定期限」までに提出する必要があります。

 

2、対象となる厚生年金保険料等

 

令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が、この納付猶予の特例の対象となります。

令和2年2月1日から令和2年4月30日(特例施行日)までの間に納期限が到来している厚生年金保険料等(令和2年1月分から3月分)は、令和2年6月30日までの申請により、遡って特例の適用を受けることができます。

 

3、猶予期間

 

この納付猶予の特例により、納付の猶予を受けることができる期間は、猶予を受ける保険料等ごとに納期限の翌日から1年間です。

 

4、申請手続

 

(1)申請書の提出

「納付の猶予(特例)申請書」を管轄の年金事務所に提出します(郵送での申請も可)。

申請書は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。

根拠となる書類の準備が難しい場合は、まずは、申請書のみを提出することでも差し支えないようです。

また、国税、地方税、労働保険料等の納付猶予の特例が許可された場合は、その際の申請書と許可通知書の写しを併せて提出することで、申請書の一部記載を省略することができます。

 

(2)申請期限

納付猶予の特例の申請は、指定期限までに行う必要があります。

この指定期限は、毎月の納期限からおおよそ25日後になります。

月々の指定期限は、納期限までに保険料等の納付がない場合に送付される「督促状」に記載されます。

なお、やむを得ない理由があって指定期限内の申請が困難な場合は、指定期限後の申請が認められることがあります。

やむをえない理由がある場合には、事業所の事業について新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことに伴う貸付けを受けるための手続を行っていたこと等により、猶予申請ができなかった場合などが該当します。

2020年6月8日

新型コロナウイルス感染症に関する対応に伴う育児休業延長

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、保育所等の臨時休園や登園自粛の要請も続いています。
そのような状況の中、育児休業の取得に係る暫定的な取扱いも設けられました。

1、1歳に満たない子に係る再度の育児休業について

(1)1歳に満たない子に係る再度の育児休業
1歳に満たない子についての再度の育児休業は、原則として、特別の事情がある場合に限り、認められます。
この再度の育児休業が認められる「特別の事情」の一つに、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないときがあります。

(2)新型コロナウイルス感染症に関する対応に伴う暫定的な取扱い
この「特別の事情」について、当分の間、保育所等の内定を受けているとき又は保育所等へ子を入所させているときであって、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、再度の育児休業に係る育児休業期間の初日において保育所等が臨時休園となっているとき又は市町村若しくは保育所等から登園を控える旨要請がなされているときを含むものとされました。
つまり、保育所等における保育は実施されることとなっているけれども、新型コロナウイルス感染症の影響で、実際に保育所に子を預けることができなくなっている場合も、再度の育児休業の対象となるわけです。

2、1歳6か月又は2歳に満たない子に係る育児休業について

(1)1歳6か月又は2歳に満たない子に係る育児休業
1歳から1歳6か月に達するまでの子又は1歳6か月から2歳に達するまでの子についての育児休業は、次のいずれにも該当する場合に限り、することができます。
①当該申出に係る子について、当該労働者又はその配偶者が、当該子の1歳到達日又は1歳6か月到達日において育児休業をしている場合
②当該子の1歳到達日又は1歳6か月到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合に該当する場合

上記②の「厚生労働省令で定める場合」の一つに、当該育児休業の申出に係る子について、保育所等における保育の利用を希望し、申込みを行っているが、当該子が1歳到達日又は1歳6か月到達日後の期間について、当面その実施が行われない場合があります。

(2)新型コロナウイルス感染症に関する対応に伴う暫定的な取扱い
この「厚生労働省令で定める場合」についても、当分の間、保育所等の内定を受けている場合又は保育所等へ子を入所させている場合であって、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、子が1歳に達する日の翌日において保育所等が臨時休園となっている場合又は市町村若しくは保育所等から登園を控える旨要請がなされている場合を含むものとされました。
つまり、保育所等における保育は実施されることとなっているけれども、新型コロナウイルス感染症の影響で、実際に保育所に子を預けることができなくなっている場合も、1歳6か月又は2歳に満たない子について、育児休業をすることができるわけです。

3、現在取得中の育児休業に係る終了予定日の変更

新型コロナウイルス感染症に関連した暫定的な取り扱いではありませんが、育児休業の終了予定日を繰り下げることができます。

(1)1歳に満たない子に係る育児休業
1歳に満たない子についての育児休業は、その事由を問わず、1回に限り、終了予定日とされた日後の日に(繰り下げて)変更することができます。
変更後の育児休業は、原則として、最長で子が1歳までですが、両親がともに育児休業をする場合には、一定の要件を満たせば、最長で子が1歳2か月までとなります。
1歳の満たない子に係る育児休業の終了予定日の変更の申出は、法令上は、当初に終了予定日とされた日の1か月前の日までに事業主に行うこととなっていますが、その後の申出が可能かどうかについては、労使で話し合ってください。

(2)1歳6か月又は2歳に係る育児休業
1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業についても、前記(1)同様に、それぞれに終了予定日の変更の申出が可能です。
ただし、この申出は、法令上は、当初に育児休業終了予定日とされた日の2週間前の日までに行うこととなっています。

4、育児休業給付金

被保険者からの申出に基づき事業主が取得を認めた育児休業であって、休業開始日から、当該休業に係る子が満1歳(一定の要件を満たす場合は1歳2か月)に達する日(満1歳(1歳2か月)の誕生日の前日)又は1歳6か月若しくは2歳に達する日の前日までにあるものについては、所定の要件を満たせば、育児休業給付金が支給されます。
育児休業給付金の支給申請は、原則として、事業主を経由して行います。
また、子が1歳に達する日後又は1歳6か月に達する日後に育児休業を延長して取得した場合には、それぞれ延長の手続きが必要です。

2020年5月4日

働き方改革~不合理な待遇差の禁止(派遣労働者)

 

令和2年4月1日より、派遣労働者についても、「均衡待遇規定」「均等待遇規定」が整備され、派遣先の労働者と間に不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

 

1、派遣労働者の待遇を決定する際の規定の整備

派遣労働者については、就業場所が派遣先であるため、派遣先の労働者との均等(=差別的な取扱いをしないこと)、均衡(=不合理な待遇差を禁止すること)が求められます。

そこで、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(いわゆる「労働者派遣法」)の改正により、派遣元事業主には、①派遣先均等・均衡方式又は②労使協定方式いずれかにより、派遣労働者の待遇を確保することが義務化されます。

 

2、「派遣先均等・均衡方式」の概要

 

(1)派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇

派遣元事業主は、①職務の内容並びに②職務の内容及び配置が派遣先と同じ派遣労働者については、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはなりません(均等待遇)。

また、派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはなりません(均衡待遇)。

 

(2)職務の内容等を勘案した賃金の決定

派遣元事業主は、派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム)との均衡を考慮しつつ、その雇用する派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案して賃金を決定するように努めなければなりません。

ただし、職務の内容に密接に関連して支払われる賃金以外の賃金(例えば、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当)は、この対象から除かれます。

 

3、労使協定方式の概要

 

派遣元事業主は、労働者の過半数で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者)との間で、その雇用する派遣労働者の待遇について所定の事項を定めた労使協定を書面で締結し、労使協定で定めた事項を遵守しているときは、この労使協定に基づき待遇が決定されることとなります。

ただし、労使協定が適切な内容で定められていない場合や労使協定で定めた事項を遵守していない場合には、労使協定方式は適用されず、派遣先均等・均衡方式が適用されます。

 

また、次の①及び②の待遇については、労使協定方式による場合であっても、労使協定の対象とはならないため、派遣元事業主は、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保する必要があります。

①派遣先が、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練

②派遣先が、派遣先の労働者に対して利用の機会を与える給食施設、休憩室及び更衣室

 

4、派遣元事業主及び派遣先事業主の情報提供

 

(1)派遣元から関係者への待遇決定方式の情報提供

派遣元事業主は、派遣労働者の数、派遣先の数、いわゆるマージン率、教育訓練に関する事項等に加えて、次の事項に関し、関係者(派遣労働者、派遣先等)に情報提供をしなければなりません。

①労使協定を締結しているか否か

②労使協定を締結している場合には、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲及び労使協定の有効期間の終期

①及び②の事項に関する情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することが原則です。

 

(2)派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇情報の提供

派遣先は、派遣元の待遇決定方式がいずれであるかにかかわらず、労働者派遣契約を締結するに当たり、あらかじめ、派遣元事業主に対し、派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金等の待遇に関する情報を提供しなければなりません。

派遣元事業主は、派遣先から情報提供がないときは、派遣先との間で労働者派遣契約を締結してはいけません 。

 

5、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現のために

 

派遣労働者については、派遣先の労働者との待遇の均等・均衡を求める場合であっても、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、その所得が不安定になることが想定されます。

派遣労働者の待遇改善に当たっては、職務の内容や職務に必要な能力等の内容を明確化し、派遣労働者を含む労使の話し合いによって、待遇の体系全体を確認することから始める必要があります。

また、派遣労働者については、雇用関係にある派遣元事業主と指揮命令関係にある派遣先とが存在するという特殊性がありますので、不合理と認められる待遇の相違の解消等に向けて、関係者が認識を共有することが大切です。

2020年4月3日

新型コロナウイルス感染症への対応を!

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が大きな懸念事項となっており、企業活動などにも影響が出始めています。

このようなときこそ、業務の合理化を図るとともに、労使で十分に話し合い、労働者が安心して働き、または、休みやすい環境を整備することが求められます。

 

1、感染防止に向けた取り組み

 

(1)テレワークの活用

テレワークは、本拠地のオフィスから離れた場所で、ICT(情報通信技術)を使って仕事をすることです。

テレワークの制度が整備されている企業では、その制度の範囲内でテレワークを実施することができます。

なお、テレワーク時にも労働基準関係法令が適用されますので、制度導入に当たっては、労働時間管理などを含めて、まずは就業規則などの規定を確認する必要があります。

 

(2)時差通勤やフレックスタイム制の活用

時差通勤とは、混雑緩和のため、ラッシュ時間帯の前後に通勤時間をずらすことです。

労働者及び使用者がその内容について十分な協議を行い、合意することによって、始業や終業の時刻を変更することができます。

一方、フレックスタイム制は、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ね、清算期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内での労働を認める制度です。

フレックスタイム制の導入に当たっては、就業規則等の改定と労使協定の締結が必要です。

 

2、労働者の休業に関する取扱い

 

(1)事業の休止等により労働者を休ませる場合

新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合であっても、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するときは、使用者は、休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。

 

(2)感染した労働者が休業する場合

新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、使用者が休業手当を支払う必要はありません。

健康保険などの被用者保険に加入している労働者については、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

 

(3)感染が疑われる労働者

感染が疑われる労働者を、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しますので、休業手当を支払う必要があります。

一方、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休業する場合は、通常の病欠と同様に取り扱い、年次有給休暇や、病気休暇などの特別休暇制度を活用することが考えられます。

 

(4)保育などを理由に休業する労働者

年次有給休暇その他の休暇制度の活用を含めて、労使で十分に話し合う必要があります。

場合によっては、テレワークでの対応なども検討し、柔軟に対応することが望まれます。

 

3、労働時間の関する取り扱い

 

(1)変形労働時間制の導入や変更

新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業活動を縮小したために労働時間が短くなる場合については、1年単位の変形労働時間制を導入することが考えられます。

また、すでに1年単位の変形労働時間制を採用している事業場において、新型コロナウイルス感染症への対策による影響により、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に、1年単位の変形労働時間制の労使協定を労使で合意解約をすることや、破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能でしょう。

 

(2)特別条項付き36協定

新型コロナウイルス感染症に関連して、休む労働者が増え、残りの労働者が多く働くこととなった場合には、特別条項付き36協定を活用することが考えられます。

すでに特別条項付き36協定を締結している事業場においては、この場合も、一般的には、特別条項の理由として認められるものとされています。

現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続きを踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの36協定を締結することが可能です。

 

4、助成金など

 

①新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した企業に雇用を維持してもらうため、雇用調整助成金の特例が実施され、その対象が拡大されています。

 

②新型コロナウイルスの感染防止のために要請された小中高校などの臨時休校に伴い、休業する保護者の所得減少に対応する新たな助成金制度が創設されます。

 

③経済産業省においても、経営相談窓口の開設、資金繰り支援(貸付・保証)、新型コロナウイルス対策補助事業、経営環境の整備(下請取引配慮要請、現地進出企業・現地情報及びジェトロ相談窓口、輸出入手続きの緩和等)等の施策がとられています。

2020年3月3日

働き方改革~不合理な待遇差の禁止(短時間労働者・有期雇用労働者)

 

令和2年4月1日(中小事業にあっては令和3年4月1日)より、同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止され、短時間労働者及び有期雇用労働者についても、「均衡待遇規定」均等待遇規定」が整備されます。

 

1、短時間労働者(パートタイム労働者)、有期雇用労働者と通常の労働者

 

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム労働法」)が、短時間労働者だけでなく、有期雇用労働者をも法の対象として、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)に改称されます。

「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいいます。

「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます。

一方、「通常の労働者」とは、社会通念に従い、比較の時点で当該事業主において「通常」と判断される労働者をいい、具体的には、いわゆる正規型の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)が該当します。

 

2、「均衡待遇規定」について

 

(1)「均衡待遇規定」の内容(不合理な待遇差の禁止)

事業主が、その雇用する短時間労働者及び有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、不合理と認められる相違を設けることが禁止されます。

均衡待遇規定は従来から、短時間労働者についてはパートタイム労働法に、有期雇用労働者については労働契約法に設けられていましたが、今回の改正により、パートタイム・有期雇用労働法に統合され、明確化が図られます。

 

(2)待遇差が不合理と認められるか否かの判断

「待遇」には、基本的に、すべての賃金(基本給、賞与、役職手当、食事手当など)、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等のすべての待遇が含まれますが、短時間労働者及び有期雇用労働者を定義づけるものである労働時間及び労働契約の期間については、ここにいう「待遇」に含まれません。

また、不合理性の判断の対象となるのは、待遇の「相違」 であり、この待遇の相違は、「短時間・有期雇用労働者であることに 関連して生じた待遇の相違」を指します。

 

短時間労働者及び有期雇用労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する際の考慮要素としては、

①職務の内容(業務内容及び責任の程度)

②職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)

③その他の事情((職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯等)

が挙げられています。

不合理と認められるかどうかは、これらの考慮要素のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、判断します。

 

3、「均等待遇規定」について

 

(1)「均等待遇規定」の内容(差別的取扱いの禁止)

事業主が、通常の労働者と同視すべき短時間労働者及び有期雇用労働者について、短時間労働者及び有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをすることが禁止されます。

均等待遇規定が適用される場合には、すべての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等のすべての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)についての差別的取扱いが禁止されます。

均等待遇規定は従来、短時間労働者のみを対象としていましたが、今回の改正により、有期雇用労働者もその対象となります。

 

(2)「通常の労働者と同視すべき短時間労働者及び有期雇用労働者」

均等待遇規定の対象は、通常の労働者と同視すべき短時間労働者及び有期雇用労働者です。

「通常の労働者と同視すべき短時間労働者及び有期雇用労働者」とは、次のいずれにも該当する短時間労働者及び有期雇用労働者をいいます。

①職務の内容が通常の労働者と同一であること。

②当該事業所における慣行その他の事情からみて、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一である見込まれること。

 

4、まずは短時間労働者や有期雇用労働者の待遇の洗い出しを!

 

同一企業内に短時間労働者や有期雇用労働者がいる場合には、今回の改正に向けて、まず、それらの者の待遇がどのようなものとなっているかを洗い出してみることが不可欠です。

そのうえで、個々の待遇が正社員と同一か否か、異なる場合には、それを「不合理ではない」と説明できるか否かを確認してください。

もし待遇差が「不合理ではない」と言いがたい場合には、待遇の改善に向けた就業規則や賃金規程等の見直しも検討しなければなりませんので、早めに、十分な対応を!

2020年2月3日

働き方改革~雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 

働き方改革の目的は、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することにあります。

このための大きな柱の一つである「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」のための改正が、2020(令和2)年4月1日(中小事業主については、短時間・有期雇用労働者に係る規定は、2021(令和3) 年4月1日)から施行されます。

 

1、いわゆるパートタイム労働法の改称

 

パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も、パートタイム労働法の対象に含まれることとなります。

これに伴い、法律の名称も、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称:パートタイム労働法)から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称:パートタイム・有期雇用労働法)に改称されます。

 

2、不合理な待遇差をなくすための規定の整備

 

同一企業内において、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止され、裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」が整備されます。

どのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることが、この目的です。

 

(1)均衡待遇規定及び均等待遇規定

均衡待遇規定は、①職務内容、②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して不合理な待遇差を禁止するものです。

均等待遇規定は、①職務内容、②職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的取扱いを禁止するものです。

なお、これらの場合における「職務内容」とは、業務の内容及び責任の程度のことです。

 

(2)パートタイム・有期雇用労働法の改正

均衡待遇規定について、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されます。

均等待遇規定については、新たに有期雇用労働者も対象となります。

 

(3)労働者派遣法の改正

派遣労働者については、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務づけられます。

また、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供が義務づけられます。

 

3、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

 

非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができるようになります。

事業主又は派遣元事業主は、非正規社員に対して、次の事項を説明しなければなりません。

①雇入れ時:雇用管理上の措置の内容(賃金、福利厚生、教育訓練など)

②雇入れ後求めがあった場合:待遇決定に際しての考慮事項、待遇差の内容・理由

また、説明を求めた労働者に対する不利益取扱いを禁止する規定が創設されます。

 

4、行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

 

今回の改正により、有期雇用労働者についても、行政による助言・指導等の根拠となる規定が整備されます。

また、非正規社員に係る「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の対象となり、都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続が行われることとなります。

 

5、「同一労働同一賃金ガイドライン」の策定

 

正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現するために、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」)が策定されました。

このガイドラインにおいては、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかが示されています。

また、不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取り組みが必要であるため、これらの待遇についても記載されています。

 

6、改正法施行に向けて

 

今回は、2020(令和2)年4月1日に施行される法改正の概要を取り上げました。

この詳細な内容については、改めてお伝えしていきますが、今や、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者が欠かせない存在となっている企業も多いことと思います。

企業内にパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者がいる場合には、まずは、これらの労働者の待遇がどのようなものとなっているかを確認してみてくださいね。

 

2020年1月6日

職場のハラスメント防止対策を!~「職場のハラスメント撲滅月間」によせて

 

厚生労働省では、本年12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、

集中的な広報・啓発活動を実施することとしています。

この機会に改めて、職場のハラスメントについて整理しておきましょう。

 

1、職場のハラスメントとは?

 

(1)職場のパワーハラスメント(パワハラ)

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることをいいます。

次の6類型が挙げられますが、必ずしもこれがすべてというわけではありません。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)

②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の 妨害)

⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

(2)職場のセクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをいい、次の2類型があります。

①対価型セクシュアルハラスメント:職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること

②環境型セクシュアルハラスメント:職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されること

 

(3)職場の妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ))

職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいい、次の2類型があります。

①制度等の利用への嫌がらせ型:出産・育児・介護に関連する制度の利用に際し、当事者が利用をあきらめざるを得ないような言動で制度利用を阻害すること

②状態への嫌がらせ型:出産・育児などにより就労状況が変化したことなどに対し、嫌がらせをすること

 

2、事業主の講ずべき措置

 

事業主は職場のセクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するために、次の措置を講じる必要があります。

 

(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

①ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発

②行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発

(2)相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

①相談窓口の設置

②相談に対する適切な対応

(3)職場ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

①事実関係の迅速かつ正確な確認

②被害者に対する適正な配慮の措置の実施

③行為者に対する適正な措置の実施

(4)職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

①再発防止措置の実施

②業務体制の整備など事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置

(5)これらの措置と併せて講ずべき措置

①当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知

②相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発

 

3、労働施策総合推進法等の改正(令和2年6月1日施行予定)

 

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が令和元年6月5日に公布され、労働施策総合推進法について、次のような改正が行われました。

(1)国の施策の一つとして職場のハラスメント対策を明記

(2)パワーハラスメント防止対策の法制化

職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となり、適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります(中小事業主は令和4年3月31日までは努力義務の予定)

 

また、労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等に関する相談をしたこと等を理由とした事業主による不利益な取扱いが禁止されるなど、セクシュアルハラスメント等防止対策の実効性の向上を図るための男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の改正が行われます。

 

4、ハラスメントのない職場に!

 

職場のいじめ・嫌がらせについては、都道府県労働局への相談が増加傾向にあるなど、大きな課題の一つとなっており、ハラスメント対策強化のための法改正も予定されています。

「ハラスメントなんて、うちの職場には関係ない」などと思わず、まず「ハラスメントとは何か」を理解し、必要な対策を講じてください。

事態が深刻化する前に、職場で十分なコミュニケーションを図ることも重要ですよ!

2019年12月3日

就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者で約3割!

 

先日、厚生労働省から、「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」が公表されました。

若年層の失業率は全年齢と比べて高いものの低下傾向にあります。また、新規学卒者の就職率も改善が進んでいますが、早期に離職してしまうことも少なくないようです。

 

1、「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」

(1)学歴別就職後3年以内離職率

新規高卒就職者の約4割、新規大卒就職者の約3割が就職後3年以内に離職しています。

【大学卒】

32.0%(前年比0.2ポイント増加)

うち、1年目が11.4%、2年目が10.6%、3年目が10%

【短大等卒】

42.0%(前年比0.5ポイント増加)

うち、1年目が17.5%、2年目が12.4%、3年目が12%

【高校卒】

39.2%(前年比0.1ポイント減少)

うち、1年目が17.4%、2年目が11.7%、3年目が10.1%

【中学卒】

62.4%(前年比1.7ポイント減少)

うち、1年目が41.1%、2年目が13.6%、3年目が7.7%

 

(2)大学卒及び高校卒の事業所規模別就職後3年以内離職率

大学卒及び高校卒とも、企業規模が小さいほど就職後3年以内離職率が高くなっています。

【大学卒】

1,000人以上規模:25.0%

500~999人規模:29.6%

100~499人規模:32.2%

30~99人規模:39.3%

5~29人規模:49.7%

5人未満規模:57.7%

【高校卒】

1,000人以上規模:26.0%

500~999人規模:33.1%

100~499人規模:37.6%

30~99人規模:46.0%

5~29人規模:55.4%

5人未満規模:64.9%

 

(3)大学卒及び高校卒の産業別就職後3年以内離職率(「その他」の業種を除く。)

離職率の高い上位5産業をみると、大学卒及び高校卒のいずれでも、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」「小売業」で高くなっています。

【大学卒】

「宿泊業・飲食サービス業」(50.4%、

「生活関連サービス業・娯楽業」(46.6%)

「教育・学習支援業」(45.9%)

「医療、福祉」(39.0%)

「小売業」(37.4%)

【高校卒】

「宿泊業・飲食サービス業」(62.9%)

「生活関連サービス業・娯楽業 」(58.0%)

「教育・学習支援業 」(58.0%)

「小売業」(49.4%)

「不動産業、物品賃貸業」(46.7%)

 

2、事業主が青少年の職場への定着促進のために講じるべき措置

「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」においては、事業主が青少年の職場への定着促進のために講ずべき措置として、次のものが掲げられています。

(1)雇用管理の改善に係る措置

①賃金不払い等の労働関係法令違反が行われないよう適切な雇用管理を行うこと。

②職場に定着し、就職した企業で安定的にキャリアを形成していくため、青少年の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するよう雇用管理の改善に努めること。

③能力・資質、キャリア形成等に係る情報明示、不安定な雇用状態にある青少年の正社員登用等、労働法制に関する基礎知識の付与に努めること。

 

(2)職業能力の開発及び向上に係る措置

次に掲げる措置等を講ずるよう努めること

・OJT(業務の遂行の過程内において行う職業訓練)及びOFF-JT(業務の遂行の過程外において行う職業訓練)を計画的に実施すること。

・実習併用職業訓練を必要に応じ実施すること

・青少年の希望等に応じ、青少年が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めるために、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度、企業内におけるキャリアパス等についての必要な情報の提供、キャリアコンサルティングを受ける機会の確保その他の援助を行うこと。

 

3、若者雇用促進法に基づく「ユースエール認定制度」

「ユースエール認定制度」とは、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況等が優良な中小企業(常時雇用する労働者が300人以下)を厚生労働大臣が認定するものです。

認定企業の情報発信を後押しすること等で、企業が求める人材の円滑な採用を支援し、求職中の若者とのマッチング向上を図ることが目的とされています。

この認定を取得すると、ハローワーク等で重点的PRの実施、若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算、本政策金融公庫による低利融資、公共調達における加点評価などといったメリットがあります。

 

4、若者を貴重な戦力に!

就職後3年以内離職率に影響を及ぼす要因の一つには、卒業時の就職環境があり、新規学卒者就職率が低かった年は、離職率が高くなる傾向があるといわれています。

とはいえ、人手不足が深刻化する昨今、採用した従業員が、会社の戦力となる前に離職してしまうことは、事業主にとっても従業員本人にとっても大きな損失です。

若者の採用や人材育成については、行政のサポートや助成制度などもありますので、なかなかよい人材が集まらないと悩んでいる前に、今ある従業員が定着し、その能力を発揮できるよう、職場環境の改善に取り組んでみませんか?

2019年11月5日

最低賃金制度~地域別最低賃金が引き上げられました!

 

令和元年度の地域別最低賃金が10月1日から順次、発効され、全国で初めて東京都と神奈川県で1,000円を超えました。

最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には罰則の適用もありますし、この影響は少なくないといえます。

 

1、最低賃金制度の概要

(1)そもそも最低賃金制度とは?

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

最低賃金額より低い賃金を労働者と使用者の合意の上で定めても、それは無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

 

最低賃金には、地域別最低賃金特定最低賃金があります。

地域別最低賃金は、各都道府県に一つずつ、全部で47件が定められています。

特定最低賃金は、全国で229件(平成31年3月31日現在)が定められています。

地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

 

(2)最低賃金の適用される労働者の範囲

地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。

特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。

派遣労働者には、派遣先の地域別最低賃金又は特定最低賃金が適用されます

 

なお、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者

②試みの使用期間中の者

③認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定めるもの

④軽易な業務に従事する者又は断続的労働に従事する者

 

(3)最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。

実際に支払われる賃金から一部の賃金(割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)を除いたものが対象となります。

 

(4)最低賃金額以上かどうかの確認

賃金額が最低賃金額以上となっているかどうかは、原則として、賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較して確認します。

時間給制の場合は「時間給」、日給制の場合は「日給÷1日の所定労働時間」、月給制の場合は「月給÷1箇月平均所定労働時間」が最低賃金額以上となっている必要があります。

 

2、最低賃金の改定

最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議を行ったうえで決定されます。

地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会から示される引き上げ額の目安を参考にしながら、地方最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されます。

特定最低賃金は、関係労使の申出に基づき地方(又は中央)最低賃金審議会が必要と認めた場合において、地方(又は中央)最低賃金審議会の審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長(又は厚生労働大臣)により決定されます。

 

3、令和元年度の地域最低賃金額

令和元年度の地域別最低賃金額については、次のような改定が行われました。

全国初めて東京都(1,013円)、神奈川県(1,011円)で、1,000円を超えました。

②全国加重平均額は901円で、昨年度の874円から27円の引き上げとなりました。この27円の引き上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額です。

最高額(1,013円)と最低額(790円)の金額差は、223円(昨年度は224円)となり、平成15年以降16年ぶりの改善となりました。また、最高額に対する最低額の比率も、78.0%(昨年度は77.3%)と、5年連続の改善となりました。

④東北、九州などを中心に全国で中央最低賃金審議会の目安額を超える引き上げが19県で行われました。目安額を3円上回る引上げ(鹿児島県)があったのは、6年ぶりです。

 

4、最低賃金・賃金引上げに向けた取り組みを!

最低賃金額の引き上げに伴い、賃金の引き上げが必要な事業所もあるでしょう。

労働者にとって、やはり賃金が高いことは魅力の一つです。

事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対する助成制度なども設けられていますので、業務の効率化や生産性の向上を図り、賃金の引き上げにも取り組みたいところです。

2019年10月1日

賃金不払残業をしたり、させたりしていませんか?

 

先般、厚生労働省より、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」が公表されました。

そこで、今回は、労働基準法上の割増賃金の支払義務と併せて、ご紹介します。

 

1、「賃金不払残業」とは?

 

賃金不払残業とは、所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して賃金又は割増賃金 を支払うことなく労働を行わせることをいいます。

いわゆるサービス残業のことですが、これをさせることは労働基準法違反であり、労働基準監督署による監督指導の対象となるほか、罰則の適用もあります。

 

2、「監督指導による賃金不払残業の是正結果」

 

(1)「監督指導による賃金不払残業の是正結果」の概要

厚生労働省は、年度ごとに、時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめています。

平成30年度の結果においては、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成31年3月までの期間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案が取りまとめられています。

 

(2)平成30年度結果のポイント

①是正企業数は、1,768企業(前年度比102企業の減)でした。

このうち、1,000万円以上の割増賃金を支払った企業数は、228企業(前年度比34企業の減)となっています。

業種別では、製造業が最も多く(332企業)、次いで商業(319企業)、保健衛生業(230企業)、建設業(179企業)などとなっています。

②対象労働者数は、11万8,837人(同89,398人の減)でした。

業種別では、保健衛生業が最も多く(23,981人)、製造業(23,922人)、商業(15,516人)、運輸交通業(10,355人)などとなっています。

③支払われた割増賃金合計額は、125億6,381万円(同320億7,814万円の減)でした。

業種別の是正支払額は、保健衛生業が最も多く(272,010万円)、次いで商業(186,407万円)、製造業(174,632万円)、教育・研究業(137,392万円)などとなっています。

④支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円でした。

 

3、割増賃金の支払義務

 

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増賃金率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。

(1)割増賃金率

①時間外労働(法定時間外労働 (1日8時間、1週40時間(特例措置事業場は1週44時間)を超える労働):2割5分以上(1か月60時間を超える時間外労働時間に対しては、5割以上(中小企業は令和5年4月から))

②休日労働(法定休日(週1日又は4週を通じて4日)における労働):3割5分以上

③深夜労働(午後10時から午前5時までにおける労働):2割5分以上

なお、時間外労働が深夜業となった場合は、合計5割(=2割5分+2割5分)以上の割増賃金を支払う必要がありますし、休日労働が深夜業となった場合は6割(=3割5分+2割5分)以上の割増賃金を支払う必要があります。

 

(2)割増賃金額

割増賃金は、「1時間当たりの賃金額×時間外労働等をさせた時間数×割増賃金率」により計算します。

例えば、通常1時間当たり1,000円で働く労働者の場合は、時間外労働1時間につき、割増賃金(250円=1,000円×1時間×0.25)を含め1,250円以上を支払う必要があるわけです。

なお、1時間当たりの賃金額は、月給制の場合には、「月の所定賃金額÷1か月の(平均)所定労働時間数」により計算します。

 

(3)割増賃金の基礎となる賃金及び除外できるもの

割増賃金は、所定労働時間の労働に対して払われる「1時間当たりの賃金」を基礎として計算します。

ただし、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、基礎となる賃金から除外することができます(なお、このような名称の手当であれば、すべて除外できるわけではありません。)。

 

4、適正な労働時間の把握と割増賃金の支払いを!

 

今回監督指導の対象となった企業では、タイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか定期的に確認するなど、賃金不払残業の解消のために様々な取組みが行われているようです。

しかし、全体からみれば、調査対象となる企業は、恐らくほんの一握りです。

もし「多少のサービス残業はやむを得ない」などという企業風土があるのであれば、まずはこれを改め、労働時間の管理を適正化し、賃金不払残業を解消する取り組みを始めましょう。

2019年9月4日

「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が過去最高~個別労働紛争解決制度の施行状況

 

先日、厚生労働省より「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

個別労働紛争解決制度と、その施行状況についてご紹介します。

 

1、「個別労働紛争解決制度」とは?

 

個別労働紛争解決制度は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度です。

紛争解決の方法としては、次の三つがあります。

(1)総合労働相談

都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所(平成31年4月1日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーが設置され、専門の相談員が対応しています。

個別労働紛争の未然防止及び自主的な解決の促進のため、労働者又は事業主に対し、情報の提供、相談その他の援助を行います。

(2)都道府県労働局長による助言・指導

民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。

助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭又は文書で行われます。

指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性が文書で示されます。

(3)紛争調整委員会によるあっせん

都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。

 

2、「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の概要

 

(1)総合労働相談件数、助言・指導の申出件数、あっせん申請の件数は、いずれも前年度より増加しています。

①総合労働相談件数は、111万7,983件(前年度比1.2%増)で、11年連続で100万件を超え、高止まりしています。

このうち、民事上の個別労働紛争相談件数は、26万6,535件(同5.3%増)です。

「民事上の個別労働紛争」とは、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(労働基準法等の違反に係るものを除く)をいいます。

②助言・指導申出件数は、9,835件(同7.1%増)です。

③あっせん申請件数は、5,201件(同3.6%増)です。

 

(2)相談内容別では、民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数のすべてで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高となっています。

①民事上の個別労働紛争の相談件数では、「いじめ・嫌がらせ」が82,797件(前年度比14.9%増)と最も多く、次いで、「自己都合退職」が41,258件(同5.9%増)、「解雇」が32,614件(同2.0%減)、「労働条件の引下げ」 が27,082件(同4.8%増)となっています。

②助言・指導の申出では、「いじめ・嫌がらせ」が2,599件(同15.6%増)と最も多く、次いで、「自己都合退職」が965件(同11.7%増)、「解雇」が936件(同5.5%減)、「労働条件の引下げ」が825件(同6.5%増)となっています。

③あっせんの申請では、「いじめ・嫌がらせ」が1,808件(同18.2%増)と最も多く、次いで、「解雇」が1,112件(同5.8%減)、「雇止め」が448件(同17.8%減)、「退職勧奨」が360件(同15.4%増)、「労働条件の引下げ」が338件(同4.8%減)となっています。

 

3、あっせん手続きの流れ

 

あっせんの手続きは、次のような流れで行われます。

①あっせんの申請をしようとする者は、あっせん申請書を当該あっせんに係る紛争当事者である労働者に係る事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の長に提出します。

②都道府県労働局長は、個別労働紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道県労働局に設置されている紛争調整委員会にあっせんを行わせます。

③あっせんの期日を定めて、紛争当事者に開始通知がなされ、あっせんへの参加・不参加の意思確認が行われます。

④紛争当事者の双方があっせん案を受諾した場合は、合意成立となります。

紛争当事者の双方又は一方が参加しない場合、あっせん案を受諾しない場合、あっせんの打切りを申し出た場合には、打ち切りとなります。

ちなみに、あっせん手続きの終了件数に占める合意成立件数の割合は、40%弱で推移しています。

 

4、トラブルの早期解決を!

 

個別労働紛争解決制度は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づき設けられたものですが、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争は、できれば未然に防止したいものです。

また、同法では、このような紛争が生じたときは、紛争当事者に、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めることも求めています。

たとえば、職場で「いじめ・嫌がらせ」の事案などが発生した場合にも、トラブルが小さいうちに職場内で解決できることが望ましいといえます。

そのような際に必要なことがあれば、私たち社会保険労務士にも相談してくださいね。

2019年8月2日